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【戦略記事】 地球の裏から届いたデッキ

【戦略記事】 地球の裏から届いたデッキ

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Ray "blisterguy" Walkinshaw / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年8月6日

原文はこちら

「安定のデッキを選ぶべきか、それとも夢を追うべきだろうか?」

 こんな質問をわざわざカバレージ・チームにしてくるのだから、マーティン・ジュザ/Martin Juzaという男は危険が好きなのだろう。そんなの、夢を追うべきと返ってくるに決まっているじゃないか。

「いや実は、今週のはじめにダン・アンウィン/Dan Unwinから突然メッセージが届いたんだ。『ブッ壊してやったぜ』って。そこで僕は答えた。『おいおい、久しぶりじゃないか!?』」

 少なくともマジック界隈で、アンウィンはここしばらく音信不通の状態であった。もちろん私も時々Facebookを更新し彼の近況を探っていたが、かつては「オーストラリアが生んだデッキ構築の巨匠」と恐れられた(プロツアーでオーストラリアのプレイヤーが活躍したとき、そのデッキはほぼ間違いなく彼のデザインであった)アンウィンの姿はまったく見当たらなかった。

 そしてあるとき、私の携帯にメッセージが届いた。送り主はダニエル・アンウィン――「デッキについて話したいなら、電話をくれ」

 私自身オーストラリア/ニュージーランド圏の古参プレイヤーであり、アンウィンとの付き合いも長い。彼が何度も大会で9位に入り、トップ8入賞がないままオーストラリア最強プレイヤーの一角として名声を高めていった姿を私は見ているし、ついに最後の一歩を超えてトップ8入賞を果たした瞬間にも立ち会った(彼は今では、4度のグランプリ・トップ8入賞を記録している)。それから、オーストラリアのプレイヤーが記録した最高の成績(世界選手権2010のチーム戦準優勝、ジェレミー・ネーマン/Jeremy Neemanのプロツアー・サンファン2010トップ8入賞)は、アンウィンがデザインしたデッキを原動力に果たされたことも知っている。そして寂しいことに、その後アンウィンとネーマンが学業を優先する決意をしたときも、私はその場にいた。

 だから当然、私は電話をとった。

 アンウィンはようやく時間を見つけ、Magic Onlineでマジックを再開していた。「前環境で『バント・カンパニー』を使ったけれど、あれは嫌いだった。『異界月』が出ると面白い新カードばかりで、そっちに夢中になったんだ」

「最初にティムール『現出』を試したけれど、やがてMOのリーグでちらほら姿を見るようになった。そこで僕は青黒ゾンビに切り替えて、《秘蔵の縫合体》を《ウルヴェンワルド横断》と《過去との取り組み》のエンジンへ組み込むことを思いついたんだ。それがかなり良い感触だったから、今大会に出るプレイヤーたちに声をかけていった。このデッキが知れ渡らないように、MOのリーグで4連勝したらドロップしてたよ」と、アンウィンは笑う。

 アンウィンは組み上げたデッキをチーム「Cabin Crew」とチーム「MTG Mint Card」へ送った。大会前の時期に新デッキへ変更することを嫌ったプレイヤーもいたが、喜んで《秘蔵の縫合体》をスリーブに入れて会場へ向かった者もいた。チーム「Cabin Crew」の面々はアンウィンのリストにおのおの手を加え、グジェゴジュ・コヴァルスキー/Grzegorz Kowalski、バルトロメイ・レヴァンドフスキー/Bartlomiej Lewandowski、マチェイ・ヤニク/Maciej Janikが2日目へ進出した。チーム「MTG Mint Card」では、使用者はわずかながらデイヴィッド・マインズ/David Minesとジェイソン・チャン/Jason Chungが2日目へ進出したのだった。

 そして同じ時期に、日本のスーパースター浅原 晃もまた同じ形のデッキを見出し、先週末に行われた大会を制圧した。彼はわずか1ゲームしか失わず、しかもその1ゲームも、デッキ登録の不備によるゲーム・ロスだった。これにインスピレーションを受けた市川 ユウキをはじめとする日本のプレイヤーたちは、この週末に向けてリストを洗練させてきた。大磯 正嗣もまた、《秘蔵の縫合体》を用いない形を今大会で使用した。

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(右から)アンウィンのデッキの使用をためらったマーティン・ジュザと、そのデッキを操り初日を突破したマチェイ・ヤニク、グジェゴジュ・コヴァルスキー、バルトロメイ・レヴァンドフスキー

 この週末、墓地を利用した戦略を選択したプレイヤーたちの多くが、《約束された終末、エムラクール》の絶大な力を取り入れた。しかしこのデッキは、そのエルドラージの巨人の力に惹かれていない。その理由をアンウィンに尋ねてみた。

「ティムール『現出』を使っていたときは《約束された終末、エムラクール》を欠かさず採用していたけれど、このデッキを作ることにしたとき、土地をそんなに多く入れたくないという点に気づいたんだ。だから《憑依された死体》を採用することにした。そもそもこのデッキにはカード・タイプが4種類しかないから、《約束された終末、エムラクール》を唱える想定はしていない。最初はサイドに1枚挿していたけど、それも《州民を滅ぼすもの》に変わったよ」

 この点については、デイヴィッド・マインズも同じ意見を述べる。

「このデッキでは《約束された終末、エムラクール》は唱えられない。とはいえエムラクールを相手にすることになっても速さで勝つことができるし、大事な場面では《老いたる深海鬼》でタップすることもできる。サイド後は《精神背信》も効くけれど、《ウルヴェンワルド横断》で持ってこられる恐れはあるかな。でも《約束された終末、エムラクール》は倒せる相手だよ」

ジェイソン・チャン - 「4色現出」
プロツアー『異界月』 / スタンダード (2016年8月5~7日)
3 《森》
2 《島》
1 《沼》
1 《山》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
3 《伐採地の滝》
3 《ラノワールの荒原》
1 《窪み渓谷》
4 《進化する未開地》

-土地(22)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《首絞め》
4 《秘蔵の縫合体》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
4 《憑依された死体》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《龍王シルムガル》
4 《老いたる深海鬼》

-クリーチャー(22)-
4 《ウルヴェンワルド横断》
4 《群れの結集》
4 《過去との取り組み》
4 《コジレックの帰還》

-呪文(16)-
3 《節くれ木のドライアド》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《龍王シルムガル》
1 《州民を滅ぼすもの》
2 《精神背信》
1 《首絞め》
2 《苦い真理》
1 《知恵の拝借》
2 《衰滅》
1 《沼》

-サイドボード(15)-

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