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【観戦記事】 準々決勝: Lukas Blohon(チェコ) vs. 行弘 賢(日本)

【観戦記事】 準々決勝: Lukas Blohon(チェコ) vs. 行弘 賢(日本)

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Blake Rasmussen / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年8月7日

原文はこちら

ルーカス・ブロホン/Lukas Blohon(白黒コントロール) vs. 行弘 賢(赤緑ランプ)

 オーウェン(・ターテンワルド/Owen Turtenwald)、君が注目すべき1年を最高の形で終えたことは認めよう。だが今大会で最も熱い戦いを制してトップ8入賞を決めたのは、間違いなく行弘 賢だ。

 行弘 賢は、誰よりも厳しい綱渡りを超えてトップ8の舞台へやって来た。予選最終ラウンドでは、リード・デューク/Reid Dukeを相手に最後の延長ターンで《集団的抵抗》を放って勝利をもぎ取り、37点のマッチ・ポイントを獲得した。この日本人プロをプロツアー・サンデーへ運んだ試合を振り返る観戦記事は、最後の怒濤の展開だけでもぜひ読み直していただきたい。

 さらに言うなら、彼はなんと第15回戦も最後の延長ターンで勝利を決めているのだ。

 ブロホンの最終ラウンドは、もう少しリラックスしたものだった。彼は同意の上の引き分けで37点を確保し、トップ8入賞を確定させた。しかしこの決勝ラウンドの旅路には心配事がある。この週末を通して自身のプレイに不満はないものの、これから彼が対峙するデッキとの相性に若干の不安を抱えているというのだ。

 《約束された終末、エムラクール》をはじめとする巨大クリーチャーを叩きつけてくる戦略に対しては不利だと、彼は認識していた。ブロホンの「白黒コントロール」は、アグレッシブなデッキやミッドレンジを倒すことを想定して組まれている――とりわけ、「バント・カンパニー」や「スピリット」系、そして「黒緑『昂揚』」に狙いを定めていた。

 しかし困ったことに、《約束された終末、エムラクール》は今大会を席巻していた――そして行弘のデッキにも3枚採用されている。ブロホンにとっての不幸の象徴が3枚。今は本当に「十三恐怖症」に陥っているブロホンにとっては辛い13/13のクリーチャーが3枚。ブロホンの快進撃を止める「約束された終末」が3枚も。

 それでも、ブロホンの側にはゲートウォッチの新メンバー《最後の望み、リリアナ》がいる。さらに《大天使アヴァシン》の加護もあり、アヴァシンの生みの親である《死の宿敵、ソリン》も協力してくれている。使い手が黒の呪文を受け入れたにも関わらず、サイドボードには《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も控えてくれている。

 だが忘れることなかれ――「これは全部私の駒。ずっとここにあったもの

ゲーム展開

 両者ともお互いのデッキリストを知り尽くしており、ゲームが長引くことは理解していた。つまり、動き出しは遅い手札をキープするのが望ましい。両者とも積み重ねた練習と経験と、本能でそれを感じ取っていた。この戦いは最初の数ターンでは決着しない。ゲームを左右するのは《約束された終末、エムラクール》だ。

 行弘は《苦しめる声》、ブロホンは《骨読み》で、両者とも手札を整えるのに序盤を費やした。そして互いに、ゲーム中盤のプランを支えるカードを繰り出す。行弘は《搭載歩行機械》、ブロホンは《ゲトの裏切り者、カリタス》を。

 ここまではお互い、ゲーム後半をより有利にするための小競り合いに過ぎない。すぐに盤面は片付けられ、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が盤面を見守るのみとなった。

 おっと、「見守る」はないか。次元を見守る「ゲートウォッチ」にオブ・ニクシリスが入れるわけがない。

 実際に、続けて行弘の繰り出した《炎呼び、チャンドラ》はデーモンのプレインズウォーカーへ敵意を向け、2体のエレメンタルを放ち退場させた。だが《炎呼び、チャンドラ》もそのターン中に《苦渋の破棄》を受けて追放され、《約束された終末、エムラクール》のコストを軽減するという重大な使命も果たせなかった。

 だがここまでもすべて台本通り。本当の戦いは、いまだ謎に包まれた《約束された終末、エムラクール》が関わってから始まるのだ。行弘はエムラクールのために墓地を肥やす。ブロホンはそれを止めるべく、《精神背信》を撃ち込んだ。さらに《荒廃した湿原》を構え、上空では《大天使アヴァシン》が警戒飛行をしていた。

 《ウルヴェンワルド横断》が「約束された終末」を行弘の手にもたらした。しかし《荒廃した湿原》が13/13の登場に備えている。ここへ来てついに、戦いの火蓋が切って落とされたのだ。

 《約束された終末、エムラクール》の本体は《荒廃した湿原》に落とされたが、その精神干渉はブロホンを支配し、彼は積み上げてきた莫大なアドバンテージを取り去られた。それでもまだ燃料は残っている。改めて戦いの準備を整える。

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エムラクールに対する感情を露わにするルーカス・ブロホン。

 だがその抵抗も、行弘の手から再び《約束された終末、エムラクール》が降臨するまでだった。

 その被害は甚大だった。ブロホンは丁寧に築き上げたアドバンテージの崩壊を再び目の当たりにした。ゲートウォッチの最後の希望である《最後の望み、リリアナ》も、エムラクールを前に自ら退場していった。《大天使アヴァシン》が防衛に回ったが、強大なエルドラージを止めることは叶わなかった。

 第1ゲームはエムラクール......行弘のものになった。

 ブロホンにエムラクールを倒す希望があるとすれば、彼自身がゲートウォッチを結成することが必要だ。第2ゲーム、私たちはプレインズウォーカーが次々と参戦する姿を見ることになる。

 序盤はアクションの少ないまま進んだが、3ターン目に登場したブロホンの《最後の望み、リリアナ》がその忠誠度を6まで高めていった――だがその後彼女は行弘の《炎呼び、チャンドラ》によって退場させられ、ブロホンの《死の宿敵、ソリン》が《炎呼び、チャンドラ》を討ち取った。さらに、それもまた行弘の繰り出した2枚目の《炎呼び、チャンドラ》によって焼かれ、最後は《破滅の道》が《炎呼び、チャンドラ》を墓地へ送ったところで、この壮絶なプレインズウォーカーの争いはようやく終わった。

 そしてその間に、《約束された終末、エムラクール》召喚の準備が整った。このゲームも、行弘が巨大な触手を持つ怪物で幕を下ろすことになると思われた。しかしエムラクールは――いや、行弘は――、主たる《約束された終末、エムラクール》への奉仕に失敗した。《約束された終末、エムラクール》のコストを減らすべく《搭載歩行機械》をX=0でプレイした彼だが、不幸にもブロホンの戦場には《ゲトの裏切り者、カリタス》があり、《搭載歩行機械》は追放され、行弘の企みは潰えてしまったのだ。このミスによりブロホンは《精神背信》を放つことができ、《約束された終末、エムラクール》の追放にも成功した。

 そしてブロホンは《乱脈な気孔》での攻撃を始めた。しかしそれ以上盤面に脅威を追加できない。行弘はしばらく何もできなかったが、ブロホンはそこを攻め切ることができなかった。行弘が繰り出す脅威を追放する手立てはあったが、それでは止められないものがある。「約束された終末」は止められない。

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エムラクールはその目的のために、ブロホンと行弘の両者ともをその影響下で歪めた。

 再びそのときがやって来た。《約束された終末、エムラクール》は再度ブロホンがかき集めたアドバンテージを一掃した。あとは時間の問題だ。

 第2ゲームはエムラクール......行弘のものとなった。

 しかし《搭載歩行機械》のミスを見るに、どうやらエムラクールは完全でないようだ。恐らく彼女は全能ではないのだろう。たぶん、本当にたぶんだが、すべてが彼女の意のままにはならないはずだ。

 3ゲーム目、ブロホンはかなり良い回りを見せた。《強迫》で《ニッサの巡礼》を落とすと《不屈の追跡者》を除去し、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に続けて《大天使アヴァシン》も展開して弾みをつける。

 行弘は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》への対処に多くのリソースを割くことになったが、《不屈の追跡者》と《面晶体の記録庫》によって回復した。しかしブロホンの動きはこれまでにないほど速く、行弘に体勢を立て直す時間を与えなかった。土地を引き込めば《約束された終末、エムラクール》をプレイできた行弘だが、それも叶わず。《ゲトの裏切り者、カリタス》に《大天使アヴァシン》、2/2のトークン2体というブロホンの攻勢を耐え忍ぶ。

 行弘は《集団的抵抗》で《ゲトの裏切り者、カリタス》を除去し、「変身」した《浄化の天使、アヴァシン》の炎で残りも焼き払うことに成功した。小さな抵抗でわずかな猶予を得ただけだが、《約束された終末、エムラクール》を降臨させる時間を稼ぐには十分だった。

 だが不運なことに、ダメージは十分に受け過ぎていた。ブロホンの手札は、いかに13/13のクリーチャーがいようとも行弘の残るライフを守り切れるようなものではなかった。

 流れは変わった。希望はある。

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「約束された終末」の兆候を求めて深淵を見つめる行弘 賢。

 エムラクールの影響は、サイド後のゲームでは弱まったように感じられた。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》に支えられたブロホンは、《約束された終末、エムラクール》が干渉できないほどの速度で行弘を追い詰める。3ゲーム目と同様、4ゲーム目も《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が戦線を切り開き、行弘はそれに対処するため多くの時間とリソースを失った。今度は《約束された終末、エムラクール》も間に合わず、《大天使アヴァシン》が空から行弘を仕留めたのだった。

 ブロホンは希望以上のものを手に入れた。勢い、ゲーム・プラン、そしてサイド後の3戦目。

 再び、ブロホンは序盤から道を切り開いた。しかし今度ばかりは行弘も序盤から対抗し、《搭載歩行機械》を2枚続けて展開してブロホンにプレッシャーをかけていった。行弘は、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》も戦線に加えた。

 しかし《ゲトの裏切り者、カリタス》が《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》と手を組み、盤面を制圧し始めた。さらに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も加わり、ブロホンの混成軍がこのゲームの主導権を握った。

 エムラクールの姿は......なし。「私の時」ではなかったのだろう。まだ種が蒔かれていなかったのだろう。

 《ゲトの裏切り者、カリタス》は手がつけられないほど大きくなっていた。行弘はそれに対し、チャンプ・ブロックしかできなかった。《約束された終末、エムラクール》を唱えるのも遠く、ゾンビの群れと吸血鬼の長がドアを叩くのを抑えられるほどの軍勢もなかった。エムラクールは行弘を見捨てたのだ。

 そしてブロホンは、行弘とエムラクールを追い返すことに成功したのだった。

ルーカス・ブロホン 3-2 行弘 賢

 だがこの試合、もしかしたら初めから仕組まれていたのではないだろうか? エムラクールは、この試合ではない、と判断したのではないだろうか。「私の時じゃない、今はまだ」――彼女は自ら敗北を選んだというのか。

「これは全部私の駒」。この戦いの両者もまた、彼女の駒だったのだろう。

Lukas Blohon
プロツアー『異界月』 トップ8 / スタンダード (2016年8月5〜7日)
9 《沼》
4 《平地》
4 《コイロスの洞窟》
4 《乱脈な気孔》
4 《放棄された聖域》
1 《荒廃した湿原》

-土地(26)-

3 《ゲトの裏切り者、カリタス》
3 《大天使アヴァシン》
1 《保護者、リンヴァーラ》

-クリーチャー(7)-
4 《闇の掌握》
2 《神聖なる月光》
2 《精神背信》
2 《究極の価格》
3 《骨読み》
2 《苦渋の破棄》
2 《破滅の道》
4 《衰滅》
3 《最後の望み、リリアナ》
2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
1 《死の宿敵、ソリン》

-呪文(27)-
4 《強迫》
2 《死の重み》
1 《精神背信》
1 《究極の価格》
2 《無限の抹消》
1 《苦渋の破棄》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード(15)-
行弘 賢
プロツアー『異界月』 トップ8 / スタンダード (2016年8月5〜7日)
7 《森》
5 《山》
4 《獲物道》
2 《燃えがらの林間地》
2 《見捨てられた神々の神殿》
4 《進化する未開地》

-土地(24)-

3 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《世界を壊すもの》
3 《約束された終末、エムラクール》
4 《搭載歩行機械》

-クリーチャー(11)-
4 《焦熱の衝動》
4 《ウルヴェンワルド横断》
4 《苦しめる声》
4 《集団的抵抗》
4 《ニッサの巡礼》
3 《コジレックの帰還》
2 《炎呼び、チャンドラ》

-呪文(25)-
3 《不屈の追跡者》
3 《稲妻織り》
3 《ゴブリンの闇住まい》
2 《龍王アタルカ》
1 《世界を壊すもの》
2 《龍詞の咆哮》
1 《面晶体の記録庫》

-サイドボード(15)-

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