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【観戦記事】 決勝:Owen Turtenwald(アメリカ) vs. Lukas Blohon(チェコ)

【観戦記事】 決勝:Owen Turtenwald(アメリカ) vs. Lukas Blohon(チェコ)

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年8月7日

原文はこちら

オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald(世界ランキング2位/ティムール「現出」) vs. ルーカス・ブロホン/Lukas Blohon(世界ランキング19位/白黒コントロール)

 対戦相手がフィーチャー・マッチ・エリアへ到着するまでの間、現在世界ランキング2位にして殿堂顕彰選出者、そしてまもなく自身2度目のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーを受賞するオーウェン・ターテンワルドは、決勝が行われるテーブルのあたりをゆっくり行き来していた。その視線はどこにでも投げかけられているようで、どこも見ていないようでもある。チーム「ChannelFireball: The Pantheon」に所属するターテンワルドは、試合前いつもこのように「ゾーン」に入るが、しかし今の彼の様子はいつもと違っていた。これまでプロツアー・トップ8入賞経験は3度あるものの、この最深部にたどり着いたのは今回が初めてなのだ。長年にわたりマジックを続けてきた彼は今年、再び信じられないほどの活躍を積み重ねてきた。だがその頂点はまだ空けてある。一番上に積むのは、ここでの勝利だ。

 やがて、対戦相手が姿を見せた。チェコ共和国のルーカス・ブロホンは、準決勝を無傷の3連勝で勝ち抜き、決勝の舞台へやって来た。前回大会で9位に終わった彼にとって、この舞台に立ったことはその悔しさが報われた気分だろう。チーム「Cabin Crew」の一員であるブロホンは、2012年のプロツアー『闇の隆盛』以来のプロツアー・トップ8入賞となる。彼は今年、ここまで目立たず、だが着実に「プラチナ」レベルを獲得するだけの戦績を収めてきた。今立っているこの舞台もまだ「今年」だ。2015-2016年シーズンの締めくくりに、世界を驚かせてやろうじゃないか。

 この試合のマッチアップ、すなわちブロホンの「白黒コントロール」とターテンワルドの「ティムール『現出』」の戦いは、非常に興味深い一戦となる。このマッチアップについては、ターテンワルドに一日の長があった。今大会のデッキ登録期限の前日まで、彼自身も「白黒コントロール」を使用する予定だったのだ。だが最後の瞬間に――《約束された終末、エムラクール》を用いるデッキに負け続けて頭を抱えていた彼は、チームが選択していた「現出」デッキに切り替えたのだった。

 素早く《約束された終末、エムラクール》を唱えて対戦相手のゲーム・プランを崩壊させることを狙ったこのデッキは、パーマネントとパーマネントを除去する呪文が豊富な「白黒コントロール」に強烈に効く。

 だがブロホンは、《約束された終末、エムラクール》に対するゲーム・プランも持っていた。背景ストーリーを再現し、ゲートウォッチのプレインズウォーカーたちを駆使すれば、「現出」デッキに対抗できる――とりわけ新たに加わった《最後の望み、リリアナ》なら。ブロホンが序盤にプレインズウォーカーを着地させそれを守り続ければ、覆しがたいアドバンテージ差をつけることができるだろう。

ゲーム展開

 ルーカス・ブロホンの先手で始まった第1ゲーム――彼は早速《最後の望み、リリアナ》を繰り出した。彼は続けてコントロール・デッキがいつもやるように、《骨読み》でカードを引いた。墓地の再利用が重要でないこのデッキで除去すべきクリーチャーもない現時点では、《最後の望み、リリアナ》の[+1]能力も[-2]能力もまともに機能しない。だが鍵となるのは、忠誠度を[+1]することにある。《最後の望み、リリアナ》の最終奥義で彼女の「紋章」を手に入れれば、あっという間にターテンワルドを圧倒できるだろう。

 ブロホンは時限爆弾の針を進めた。

 一方ターテンワルドは、《発生の器》を複数枚起動し墓地を肥やすことに序盤を費やした。5ターン目に6種類のカード・タイプが墓地に揃うと、ブロホンは正確な数字を知りたがった。あとどれくらいで《約束された終末、エムラクール》が出てくるのか、それを知っておかなければならない。6マナではまだ唱えられないか。だが「その時」は間違いなく近い――早すぎる。両者は互いの切り札の速度を競った。

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切り札の速度勝負に負けるわけにはいかないルーカス・ブロホン。

 実はこのとき、ターテンワルドの手札は土地5枚と《過去との取り組み》だった――《約束された終末、エムラクール》の姿はない。しかしブロホンにそれを知るよしはなく、対戦相手が持っている前提で動かなければならなかった。彼は《最後の望み、リリアナ》の忠誠度を上げ、ゲームの決め手となる「紋章」の獲得を目指した。

 ブロホンは手札を見て頭を悩ませた。《約束された終末、エムラクール》か《老いたる深海鬼》が着地したらまずい。ターテンワルドの墓地に《巡礼者の目》が落ち、墓地のカード・タイプは7種類になった。

 だがターテンワルドは《約束された終末、エムラクール》を引き込めない。ブロホンはそのまま邪魔をされず、《最後の望み、リリアナ》の「紋章」を得たのだった。

 天使/ゾンビ連合を作り上げたブロホンの猛攻を止めようと、ターテンワルドは《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を繰り出した。しかしブロホンは《大天使アヴァシン》と《保護者、リンヴァーラ》を追加し、ターテンワルドの防御はあえなく破られた。

 ブロホンが戦闘フェイズを迎えるたびに蜘蛛がチャンプ・ブロックに入り、時間を稼いだ。しかしターテンワルドのデッキは彼に救いの手を差し伸べなかった。やがてゲートウォッチの新メンバー、リリアナの命に従い、天使とゾンビの軍勢がターテンワルドを押し潰したのだった。

 2ゲーム目、ターテンワルドは先手を取ると序盤から墓地を肥やし始めた。ブロホンは《精神背信》(《ニッサの巡礼》を追放)から再び3ターン目に《最後の望み、リリアナ》を呼び出す強力な攻めを見せ、1ゲーム目と同様にターテンワルドを恐れさせた。

 しかし今度は《節くれ木のドライアド》(「昂揚」は達成済み)が《最後の望み、リリアナ》の忠誠度を上げさせない。ターテンワルドは続けて《節くれ木のドライアド》から《不憫なグリフ》を「現出」させた。小さなドライアドは内側から爆発してバラバラになり、墓地へ落ちていった。

 だがブロホンのプレインズウォーカー攻勢が止まらない。今度は《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が――彼は「誓い」をしていないものの――駆けつけた。ターテンワルドは《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で盤面を回復させたが、《最後の望み、リリアナ》の[+1]能力と《衰滅》によって戦線は崩壊した。

 だがターテンワルドにはまだ切り札がある。

「インスタント、ソーサリー、アーティファクト、クリーチャー、土地、エンチャント」 ターテンワルドは指を折って数えて言う。ここまで至ったブロホンは、それが何を意味するのか瞬時に察した――すなわち、《約束された終末、エムラクール》。ブロホンはこの災厄に備えることができているのだろうか?

 ブロホンはターテンワルドに手札を公開した――そこには《神聖なる月光》、《荒廃した湿原》、《放棄された聖域》、《闇の掌握》、そして《大天使アヴァシン》が2枚。戦場には《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が忠誠度3、《最後の望み、リリアナ》が忠誠度5で立っている。

 ターテンワルドはプレイを選択した――《最後の望み、リリアナ》の[-2]を起動。《荒廃した湿原》を置き、《大天使アヴァシン》をプレイ。そこへ《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》の[-3]能力を差し向け(これで《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》の忠誠度はなくなり墓地へ)、さらに対応して《闇の掌握》を撃ち込んで《大天使アヴァシン》を除去した。

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懸命に立ち向かったブロホンだったが、エムラクールの影から逃れることはできない。

 ターンを取り戻したブロホンは《荒廃した湿原》で《約束された終末、エムラクール》を除去したが、触手がもたらした大災害を受けて有利を失っていた。しかしまだ、《最後の望み、リリアナ》がいる。ターテンワルドは《老いたる深海鬼》を盤面に追加したが、それは有効打にならなかった――《ゲトの裏切り者、カリタス》が、相性抜群のプレインズウォーカーと手を組みゾンビ作りを楽しみ始めたならなおさらだ。もっと、ゾンビを!

 《最後の望み、リリアナ》が再び「紋章」をもたらし、ゾンビ・レースが開幕した。(レースと言うには遅いかもしれないが、短距離走ではなくマラソンなのだ)。《ゲトの裏切り者、カリタス》が「紋章」から生み出されるゾンビを食べ、ブロホンは大量のライフを得ていった。

 ターテンワルドが体勢を立て直した頃には、両者のライフは36対1となり、ターテンワルドは11/12まで膨れ上がった《ゲトの裏切り者、カリタス》と《浄化の天使、アヴァシン》を相手取ることになった。彼は《過去との取り組み》で《約束された終末、エムラクール》を回収し、再度それを唱えた。

 ブロホンの手札は2枚目の《ゲトの裏切り者、カリタス》と《闇の掌握》、《究極の価格》、そして《平地》。

 果たしてターテンワルドは勝ち筋を見出だせるのか?

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時間をかけて熟考するターテンワルド。きっと生き抜くすべがあるはずだ!

 《浄化の天使、アヴァシン》を《約束された終末、エムラクール》へ突撃させる。2枚目の《ゲトの裏切り者、カリタス》をプレイし、1枚目と置き換える(伝説のパーマネントについての厄介なルールを思い出してくれ)。そしてターン終了時にゾンビが生み出されたところで、1体を《ゲトの裏切り者、カリタス》の能力で生け贄に捧げ、それに対応して残った2マナで《闇の掌握》を撃ち込んだ。なんて酷いターンなんだ。どうしてブロホンがそんなプレイをしたのか、まるで理解できない。だがこれで、ターテンワルドは危機を脱しただろうか?

 ターテンワルドが《巡礼者の目》を生け贄に《不憫なグリフ》を唱えると、墓地から誘発した《コジレックの帰還》がブロホンのゾンビを焼き払った。彼のライフは残り22点へ。

 しかしターテンワルドはいまだ危険な状態にあった。《老いたる深海鬼》をくれ。《過去との取り組み》でもいい。「何か」来てくれ――だが彼が引いたのは土地だった。

 ターテンワルドはブロホンのライフをさらに16点削ることに成功したが、再び生み出された2体のゾンビと《乱脈な気孔》の攻撃を前に、ライフを削り切られたのだった。

 オーウェン・ターテンワルドのサイドボーディングは以下の通り。

  • -4 《節くれ木のドライアド》
  • -1 《不憫なグリフ》
  • -4 《コジレックの帰還》
  • +1 《棲み家の防御者》
  • +1 《久遠の闇からの誘引》
  • +2 《侵襲手術》
  • +2 《失われた業の巫師》
  • +2 《ヴリンの神童、ジェイス》
  • +1 《否認》

ルーカス・ブロホンのサイドボーティングは以下の通り。

  • -1 《死の宿敵、ソリン》
  • -1 《保護者、リンヴァーラ》
  • -3 《最後の望み、リリアナ》
  • -4 《衰滅》
  • -1 《究極の価格》
  • -2 《神聖なる月光》
  • +1 《精神背信》
  • +1 《苦渋の破棄》
  • +4 《強迫》
  • +2 《無限の抹消》
  • +4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

「いやはや、サイド前はこっちが有利だと思ったんだが」と、ターテンワルドが言う。

「僕もそう思っていたよ......」と、ブロホンは応えた。両者とも軽く笑った。ブロホンの方が元気そうだ。

 第3ゲームを迎えたターテンワルドは追い詰められていた。有利だと思っていたメインの2ゲームを落とした。強力な《約束された終末、エムラクール》をもってしても、勝利はもたらされなかった。直前になって変更したこのデッキは、今大会を通して彼に勝利をもたらし続けてきたというのに、変更前のデッキと当たってこの結果か。何とかしなくてはならない。エムラクールよ、力を与え給え!

 ターテンワルドは3枚目の土地が必要となる手札をキープした。《山》、《シヴの浅瀬》、《巡礼者の目》、《久遠の闇からの誘引》、《老いたる深海鬼》、《発生の器》、そして《約束された終末、エムラクール》の7枚だ。十二分にキープできる手札。あとは3枚目の土地を引き込むだけだ。

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完璧な初手を手に入れたターテンワルド。あとはもう1枚土地を引き込むだけだ。

 先手はターテンワルドだが、先に呪文を放ったのはブロホンだった――彼が唱えたのは《無限の抹消》。ターテンワルドの手札にあった「2枚」を含め、すべての《約束された終末、エムラクール》が追放される。一体何が起きたのか。ターテンワルドは、土地を引き込めなかった。それどころか、ブロホンが《無限の抹消》で指定することになるカードを引き込んでしまったのだ。

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が登場しても、3枚目の土地は現れなかった。ターテンワルドは笑顔だった。やがて彼は声を上げて笑い出した。相好を崩したのは少しの間だけだったが、他にどうすることもできないだろう?

 ターテンワルドは再びプロの顔になった。しかし、最後の最後で変更したデッキは彼を決勝の舞台まで運んだが、プロツアー王者にすることはできなかった。

 ブロホンは最後まで隙のないプレイを行った。エムラクールはゲートウォッチの面々により、(最後はギデオンの手で)3度続けて敗北したのだった。

 最終ターン、ターテンワルドは右手を差し出し、ブロホンはそれを握った――プロツアー『異界月』王者誕生の瞬間であった。

 こうしてチーム「Cabin Crew」のルーカス・ブロホンがオーウェン・ターテンワルドを3連勝で下し、自身2度目のトップ8入賞となるプロツアー『異界月』にて優勝を果たした! おめでとう!

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プロツアー『異界月』王者、ルーカス・ブロホン。チーム「Cabin Crew」の仲間たちと。

Owen Turtenwald
プロツアー『異界月』 準優勝 / スタンダード (2016年8月5~7日)
7 《森》
3 《島》
1 《山》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
3 《獲物道》
3 《シヴの浅瀬》

-土地(21)-

4 《節くれ木のドライアド》
3 《巡礼者の目》
2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《不憫なグリフ》
3 《老いたる深海鬼》
3 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー(16)-
4 《発生の器》
4 《過去との取り組み》
4 《群れの結集》
2 《崩れた墓石》
4 《コジレックの帰還》
4 《ニッサの巡礼》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-呪文(23)-
2 《ヴリンの神童、ジェイス》
1 《棲み家の防御者》
2 《失われた業の巫師》
2 《払拭》
2 《焦熱の衝動》
2 《侵襲手術》
1 《翼切り》
1 《久遠の闇からの誘引》
1 《否認》
1 《即時却下》

-サイドボード(15)-
Lukas Blohon
プロツアー『異界月』 優勝 / スタンダード (2016年8月5~7日)
9 《沼》
4 《平地》
4 《コイロスの洞窟》
4 《乱脈な気孔》
4 《放棄された聖域》
1 《荒廃した湿原》

-土地(26)-

3 《ゲトの裏切り者、カリタス》
3 《大天使アヴァシン》
1 《保護者、リンヴァーラ》

-クリーチャー(7)-
4 《闇の掌握》
2 《神聖なる月光》
2 《精神背信》
2 《究極の価格》
3 《骨読み》
2 《苦渋の破棄》
2 《破滅の道》
4 《衰滅》
3 《最後の望み、リリアナ》
2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
1 《死の宿敵、ソリン》

-呪文(27)-
4 《強迫》
2 《死の重み》
1 《精神背信》
1 《究極の価格》
2 《無限の抹消》
1 《苦渋の破棄》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-サイドボード(15)-

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