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【観戦記事】 第1回戦:Ivan Floch(スロバキア) vs. Craig Wescoe(アメリカ)

【観戦記事】 第1回戦:Ivan Floch(スロバキア) vs. Craig Wescoe(アメリカ)

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年2月6日

原文はこちら

 多くのプレイヤーにとって、プロツアーは夢の舞台だ。その参加権を懸けた大会は世界中で毎週のように開催され、そこで戦うことこそが偉大なプレイヤーへの第一歩となっている。そして、この会場への道を開いたプレイヤーたちが次に向かうのは――必然、プロツアー優勝の頂ということになる。だがプロツアー優勝とは、長年にわたり招待を受け続けているような強豪プレイヤーにとってさえも、簡単に手にすることができない偉業中の偉業なのだ。

 そして優勝を果たしたとしても、戦いを続けずにはいられない。

 プロツアーには、初参加のプレイヤーから殿堂顕彰を受けた古豪まで、実に様々なプレイヤーが押し寄せ、優勝するにはそのすべてと争わなければならない。そしてそれこそがプロツアーを特別なものにし、新星がその名を知らしめる機会にも、偉大なプレイヤーがその力を見せつける機会にもなっているのだ。ワシントンDCで行われる今大会最初のラウンドでは、その後者の戦いが見られる。近年のプロツアー優勝者同士が対峙することになったのだ。

 クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoe。2013年、サンディエゴで行われたプロツアー『ドラゴンの迷路』優勝者にして、現在世界ランキング21位。対するは、イヴァン・フロック/Ivan Floch。昨年のプロツアー『基本セット2015』優勝者にして、現在世界ランキング2位。両者とも長年にわたり戦いを続け、優勝を勝ち取るまでに多くの時間をかけた。ある週末に「偉大な競技者」から「最強の一角」へと歩みを進めるために、大会の第1回戦がどれだけ大事なのかは互いに理解している。構築ラウンドでのトップ争いに参加できるのは第1ドラフトを勝ち抜いたプレイヤーであり、リミテッドでの成功なしには日曜日の舞台へ進むのはほぼ不可能なのだ。

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イヴァン・フロックとクレイグ・ウェスコー。長い戦いを経てプロツアー優勝の肩書きを掴んだふたりのチャンピオンが、この週末の第1回戦に臨む。

 今日という日の第一歩を踏み出せるのは、どちらかひとりだけだ。

それぞれのデッキ

 フロックがドラフトしたのは、《河水環の曲芸士》や《蓮道のジン》といった飛行クリーチャーと《突き刺し豚》でマナ・カーブを埋め、そして「変異」クリーチャーが盤面を埋め尽くす青赤2色のデッキ。《石弾の弾幕》や《ティムールの激闘》によって対戦相手に予想外の大量ダメージを与え、《前哨地の包囲》がメイン・デッキの主要なレアとなっている。サイドボードには《飛鶴の技》が控えているが、その決め技を使う助けとなる2色土地はない。

 ウェスコーのドラフトは、彼らしく白のクリーチャーを集めたものになった。白緑の2色にまとめた彼は、強力な「神話アンコモン」こと《ティムールの剣歯虎》を受け入れずにはいられなかった。《砂草原ののけ者》や《アイノクの先達》、《エイヴンの散兵》、そして《マルドゥの軍族長》との組み合わせはもちろん、《ティムールの剣歯虎》はそれ単体で勝負を決めることのできるカードだ。それでも《戦場での猛進》2枚と《増え続ける成長》に支えられたウェスコーのプランは、そこまでゲームを引き延ばすつもりもないらしい。

ゲーム展開

 《煙の語り部》、《高山の灰色熊》、《魂の召喚》(《平地》を「予示」)と繰り出すウェスコーに対して、フロックは《突き刺し豚》、《蓮道のジン》という立ち上がり。フロックは2枚目の《突き刺し豚》に続いて《戦名を望む者》を「強襲」でプレイし戦線を築くが、ウェスコーの攻勢を阻むには至らない。

 《突き刺し豚》が《高山の灰色熊》と相討ちになり、フロックのライフは15点に落ちる。ウェスコーは5マナを残してそのターンを終えた。フロックは《霧炎の織り手》を「変異」で繰り出し、再び《突き刺し豚》と《蓮道のジン》で攻撃に向かった。ウェスコーは《武器を手に》で兵士トークンを3体生み出し、1体で《突き刺し豚》を討ち取った。彼は続くターン、《まばゆい塁壁》でさらに守りを固める。

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白マナの達人ウェスコーが、小型クリーチャーでの攻勢を続けつつ守りも固める。

 フロックは《霧炎の織り手》を表向きにし、続く攻撃でウェスコーのライフを残り12点にすると、《ジェスカイの長老》を展開。ウェスコーは2枚目の《高山の灰色熊》と《エイヴンの散兵》を繰り出し、フロックの攻勢を許さない。攻撃でフロックのライフを残り9点とすると、ダメージ・レースで優位に立った。

 そしてゲームは終わりを告げた。

 フロックの手札から放たれた《石弾の弾幕》はブロッカーを無効化しなかったが、ウェスコーの軍勢の半分を取り去った。フロックは全軍で攻め込み、ウェスコーは《高山の灰色熊》でのブロックを選ばず、ライフを4点まで落とした――だが、彼の手札には《増え続ける成長》があり、フロックに致死量のダメージを与えることができたのだった。

 第2ゲーム、ウェスコーは第1ゲームと同様に《煙の語り部》と《高山の灰色熊》からスタートし、フロックは《ジェスカイの風物見》と《突き刺し豚》で切り出す。ウェスコーが《開拓地のマストドン》を「獰猛」で繰り出したのちに、《高山の灰色熊》と《突き刺し豚》は相討ちに。それでもフロックの盤面は衰えず、《マルドゥの斥候》と「変異」状態の《氷河の忍び寄り》が続いた。

 《砂草原ののけ者》がブロックに使えるスピリット・トークンをウェスコーにもたらし、フロックは5マナ残してターンを返した。ウェスコーは《煙の語り部》と《砂草原ののけ者》で攻撃し、フロックは《氷河の忍び寄り》を表向きにして《煙の語り部》をブロックした。ウェスコーは《停止の場》でフロックの大型クリーチャーを追放し、《軍用ビヒモス》を「変異」で繰り出す。フロックの《河水環の曲芸士》が制空権の掌握を知らせると、ウェスコーは続くターン、《道の探求者》を盤面に追加するだけでターンを渡した。

 《河水環の曲芸士》が攻撃を始め、フロックは《戦名を望む者》を「強襲」で追加。ウェスコーは《軍用ビヒモス》を表向きにすると、反撃したらどうなるかをしばらく考え込んだ。導き出した答えは、《軍用ビヒモス》、《砂草原ののけ者》、そして《道の探求者》での攻撃。フロックは《ジェスカイの風物見》で《道の探求者》を、残りの2体で《軍用ビヒモス》をブロックし、《目潰しのしぶき》でウェスコーの軍勢のパワーをすべて奪った。

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フロックのドラフト・デッキは極めて獰猛な怪物を擁している。

 戦場の混乱は収束し、ライフは13対13の同点だった。ここでフロックは《ゴブリンの踵裂き》を「疾駆」させてスピリット・トークンによるブロックを禁じ、ウェスコーのライフを一気に残り1点まで追い詰めた。

「オーライ、次にいこう」ウェスコーはドローを確認し、そう漏らした。

 第3ゲーム、ウェスコーは《魂の召喚》で《ティムールの軍馬》を「予示」し、それを表向きにすると《煙の語り部》も加え、再びライフ・レースに打って出た。フロックは《峡谷に潜むもの》を「変異」で繰り出すものの、3ターン目まで《島》が置けない。《ティムールの軍馬》と「変異」クリーチャーが相討ちになり、ウェスコーは続けて《アイノクの先達》をプレイし、《森》をライブラリーの一番上へ。フロックは《霧炎の織り手》を「変異」でプレイしたが、4ターン目は土地が置けなかった。ウェスコーも4枚目の土地が手に入らず(3枚目の土地も《アイノクの先達》でようやく手に入れたところだった)、《高山の灰色熊》を展開する。

 フロックは待望の《島》を引き込み、《憤怒変化》をプレイ。ついにウェスコーを守勢に回らせる。ライフは13対20でウェスコー有利だが、フロックは《ゴブリンの踵裂き》を手始めに追いついていった。ウェスコーは《軍用ビヒモス》を「変異」でプレイし抵抗を試みるが、フロックの《前哨地の包囲》が覇者への道を拓いた。

「それ、ドローが増えるやつ?」ウェスコーが尋ねる。

「いえ、追放して、それをプレイできるやつです。《紅蓮の達人チャンドラ》みたいに」フロックは答える。

 盤面が不利な中、実質的に毎ターン1枚多くカードを手に入れたフロックは、《道の探求者》も加わったウェスコーの広い戦線に対抗する必要があった。最初に追放されたのは《マルドゥの斥候》で、フロックはそれをプレイし、さらに《ジェスカイの風物見》を戦場に続かせた。一方のウェスコーも《わめき騒ぐマンドリル》を追加。フロックが次に追放したのは《急流の崖》だったが、フロックはそれをプレイするだけでターンを渡した。ウェスコーもそのままターンを返し、ターンの終わりに《打ち倒し》が《道の探求者》を焼いた。

 フロックが3回目に追放したのは、《山》。彼はそれをプレイし、《河水環の曲芸士》を繰り出し攻撃のきっかけにする。だがウェスコーは《大物潰し》を持っており、さらに彼は《増え続ける成長》を使って《わめき騒ぐマンドリル》を7/7、《高山の灰色熊》2体をそれぞれ6/4、5/3にし、全軍で攻撃した。

《前哨地の包囲》はゆっくりと、だが確実に効果を発揮し、フロックの戦場に次々と追加のカードをもたらしていく。

「こいつがあれば大丈夫」ライフは7点まで落ち込み、盤面には《憤怒変化》をエンチャントした「予示」クリーチャーと「変異」状態の《霧炎の織り手》のみとなっても、フロックはそう口にした。《水渦》がウェスコーの盤面に残るクリーチャーをすべて手札へ戻し、+1/+1カウンターを取り除く。《わめき騒ぐマンドリル》と《高山の灰色熊》はすぐに戦場へ戻ってきたが、フロックは《蓮道のジン》と「変異」クリーチャーを盤面に追加した。

 ウェスコーは《戦場での猛進》に後押しを受けて、再びクリーチャーで攻め込んだ。フロックは全軍でブロックに入り、先ほど追加した「変異」クリーチャーと《突き刺し豚》が残った。「変異」クリーチャーはウェスコーの次のターンの終わりに表向きになり、《氷河の忍び寄り》が姿を現す。しかしウェスコーのもとには、《ティムールの剣歯虎》と《マルドゥの軍族長》という強力な組み合わせが舞い込んだ。彼は《ティムールの剣歯虎》で攻撃し、《マルドゥの軍族長》を手札に戻して再びプレイすることで、ブロッカーを生み出したのだ。

 だが続くウェスコーによる攻撃も、大勢に影響を与えることはなかった。

 《前哨地の包囲》が《ティムールの激闘》を追放すると、フロックは《激情の発動》で「予示」し4/4となったクリーチャーを含め全軍で攻撃。ウェスコーも全軍でブロックに入る。

「残りライフは15?」と、フロック。ウェスコーが頷き、フロックは計算する。

 《龍の握撃》を《突き刺し豚》へエンチャントし、さらに《ティムールの激闘》。戦士トークン1体では止めようのない攻撃だった。

「グッド・ゲーム」とウェスコーが言い、握手を求めた。第1、第2ゲームと同様に、劇的な幕切れであった。フロックは勝利を噛み締め、フィーチャー・テーブルをあとにする。後ろは振り返らなかった。

フロック 2-1 ウェスコー

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