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プロツアー『運命再編』

戦略記事

プロツアー『運命再編』 モダンメタゲーム・ブレイクダウン

矢吹 哲也
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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年2月6日


 モダンというフォーマットはいかなる「再編」を遂げたのだろうか? 1ヵ月前、グランプリ・オマハ2015はモダンで行われたが、それが《出産の殻》最後の活躍の舞台となった。《出産の殻》と《時を越えた探索》、そして《宝船の巡航》の退場により、カードとデッキの評価が大きく変わるときが来たのだ。

 それらの穴を埋めたのは、《包囲サイ》の存在であった。以下がプロツアー『運命再編』における全アーキタイプの分析結果だ。

アーキタイプ使用者数使用割合
アブザン11528.30%
バーン4811.80%
親和286.90%
感染286.90%
Zoo266.40%
赤緑トロン194.70%
青赤双子163.90%
風景の変容122.90%
ジェスカイ・コントロール112.70%
ジャンド102.50%
ストーム92.20%
アミュレット・ブルーム82.00%
グリクシス双子82.00%
マーフォーク82.00%
白黒トークン71.70%
死せる生51.20%
フェアリー41.00%
ジャンド・ローム41.00%
タルモ双子41.00%
白青コントロール30.70%
黒緑20.50%
4色コントロール20.50%
緑黒20.50%
呪禁オーラ20.50%
砂の殉教者20.50%
ソウル・シスターズ20.50%
白緑ヘイトベアー20.50%
むかつき10.20%
バント・アグロ10.20%
ブルー・ムーン10.20%
青トロン10.20%
ドラン10.20%
ドレッジヴァイン10.20%
エルフ10.20%
エスパー「探査」10.20%
5色ティムールの隆盛10.20%
4色ズアー10.20%
けちな贈り物リアニメイト10.20%
黒単10.20%
青単トロン10.20%
ストーム・Zoo10.20%
スゥルタイ10.20%
スゥルタイ・デルバー10.20%
ティムール10.20%
アリストクラッツ10.20%
裂け目の突破10.20%
白赤キキジキ・コントロール10.20%
合計407100.00%

 そうつまり......大量の《包囲サイ》の採用。

 いくつかの有名なチームを含め、およそ30%の大会参加者が「アブザン」デッキを選択した。これはこの週末に登場するのが「明らか」であったデッキのひとつではあるものの、完成形は様々であった。多くのプレイヤーが選択したのは、《黄金牙、タシグル》を加えた形だった。軽いクリーチャー――《黄金牙、タシグル》は「探査」を持つため、わずか{B}でプレイできるのだ――の追加と、カードアドバンテージを生み出すエンジンとしての採用だ。ミラー・マッチを意識するなら、膠着した状況を打破する助けになることだろう。その他のパーツについては、オマハでも見受けられた従来の形を踏襲している。ただし、メイン・デッキの《未練ある魂》や《復活の声》などの枚数はプレイヤーによって様々だった。《黄金牙、タシグル》を意図的に採用しないグループは、その代わりに《ロクソドンの強打者》や《萎れ葉のしもべ》といったカードでより攻撃力を増強する方へ進んでいる。

 少なくともメタゲームの観点から見て、意外な躍進を見せたのは「バーン」と「感染」だ。アグレッシブなデッキの脅威の側では、「親和」はこれまで同様に虎視眈々と機会を狙っており、また「Zoo」系のデッキもオマハでトップ8入賞を果たしている(これは《包囲サイ》の存在が少なからず影響しているだろう)。その中で、『タルキール覇王譚』で登場した《強大化》が「感染」デッキの地位を押し上げたのだ。グランプリ・オマハ2015では、世界選手権2連続優勝を果たし現在世界ランキング4位につけているシャハール・シェンハー/Shahar Shenharが「バーン」デッキを操り、トップ8入賞までタイブレーカーであと一歩のところまで迫った。単純なプレッシャーの大きさと圧勝できる力を秘めたこれらのアーキタイプは、それぞれ使用者を集めた。これらを使用するプレイヤーたちが、遅く長いゲームを見据えた「アブザン」デッキの台頭を見越していたことは、疑いないだろう。

 他にこのフォーマットで活躍していた強力なデッキが、再び上がってくるということは起こらなかった。「青赤双子」デッキは《宝船の巡航》の影響で「青赤《秘密を掘り下げる者》」系のデッキにその座を奪われていたが、今大会でも『タルキール覇王譚』発売以前ほどの活躍は見せていない。それでも、グリクシス・カラーの形は「アブザン」デッキと同様に《黄金牙、タシグル》を採用しているという点で注目すべきだろう。

太古のカン、タシグルはこの週末「アブザン」デッキに好んで採用された。しかしそれだけでなく、「《欠片の双子》」系のデッキにもその姿が見受けられる。

「《風景の変容》」はいくつものグランプリ・トップ8入賞を達成してきた強力なデッキであり、《時を越えた探索》を失ったとはいえ、それが現れる前からグランプリの優勝も経験しているデッキだ。だがこのデッキもまた、人気を集めることはなかった。「赤緑トロン」はこれまでと同じ程度の使用者を集めたが、かなり多くのプレイヤーが《解放された者、カーン》とともに新たな無色のプレインズウォーカー《精霊龍、ウギン》を1枚か2枚採用していた。「アミュレット・ブルーム」は《精力の護符》と《花盛りの夏》が力を合わせるデッキであり、グランプリ・オマハ2015でも決勝まで駒を進めたが、これまでと同じ程度の使用者を集めた。優勝デッキが新たな環境で使用者数を伸ばせないということは、次点のデッキも同様に伸びないものなのだろう。

 これら以外にも、常にモダン環境に存在するアーキタイプもある。「ストーム(《紅蓮術士の昇天》デッキ)」や「ジャンド(《壌土からの生命》型も含む)」、「マーフォーク(こちらもグランプリ・オマハ2015でトップ8に入賞している)」、「《死せる生》」、「白黒トークン」、そして「ジェスカイ・コントロール」などが挙げられるだろう。

 さあ、この週末、プレイヤーたちに課せられた問題は以下の通りだ。

  • 「アブザン」のミラー・マッチで勝利する鍵は?
  • 「アブザン」の侵攻を受けて生き残ることのできるデッキはどれか?
  • 使用者1名のデッキたちの中に、大活躍を見せるものはあるだろうか?

 この週末、モダン環境は様々なデッキのるつぼと化している。どうやら、理想的な形を保っているようだ。

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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