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【戦略記事】 積極策に出るプロ・プレイヤーたち

【戦略記事】 積極策に出るプロ・プレイヤーたち

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年2月6日

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 倒すべきデッキが「アブザン」であると気づくのに、そう時間はかからなかったことだろう。たしかにこのデッキは、今大会で最高の活躍を見せているわけでも、全体のベスト・デッキであるわけでもない。だが今大会でその姿を見るであろうことは、誰もがわかっていたはずだ。「アブザン」は全体で115人もの使用者を集めた。全体の予想は正しかったと言って差し支えないだろう。何が起こり得るのかを予想するのは、決して難しいことではなかった。ブラジルのウィリー・エデル/ Willy Edelは次のように語る。「単純に、このフォーマットで最高のカードの詰め合わせだからね」

 だから、最初の一歩はこうだ――「アブザン」に強いデッキは? 会場にいるプロ・プレイヤーたちの大多数の答えが、積極的に攻める、アグレッシブな戦略だった。「アブザン」が最も使用されたアーキタイプ、つまり1位の座を占めるのは間違いないが、しかし2位~5位はすべて、アグレッシブなデッキなのだ。「バーン」、「親和」、「感染」、「Zoo」――この順番で、「アブザン」の次に使われたデッキが並ぶ。これらをひとつにまとめれば、《包囲サイ》擁する「アブザン」(もちろん、「アブザン」以外が《包囲サイ》を使っていない、ということではない)を超える使用率となり、実に全体の3分の1を占めるのである。

 積極的な戦略は、環境が明らかな場合にベストな方法となることが多い。最有力の「アブザン」に対する備えがあれば、より多くのチャンスが得られるのだ。2度の世界王者に輝くシャハール・シェンハー/Shahar Shenharは、次のように述べる。「アブザンのサイドボードは40枚必要ですよね」すべてのマッチアップに対応しようとすると、そうなってしまう。そこで、多くのプレイヤーは「アブザン・ミッドレンジ」を使用するのではなく、次点のデッキを選択することにしたのだった。

 ここでは、「アブザン」以外で使用率の高かったアーキタイプを通して見ていこう。

Zoo

 使用率第5位のデッキは「Zoo」だ。高効率のクリーチャー群と高効率の火力呪文を組み合わせたこのデッキは、強打と速さを武器とする。「Zoo」には多くの型が存在するのだが、そのすべてに共通して盤面を制圧するクリーチャーやとどめの一撃となる強力な火力が採用されている。

 チーム「ChannelFireball」のパトリック・コックス/Patrick Coxは、この「Zoo」戦略を好む者としてよく知られている。そして今大会でも、彼は5色すべてをひとつのデッキにまとめるという最も欲張りな「ドメインZoo」で参加している――各色の最高のカードと、《部族の炎》を入れた形だ。

「本気で2ターン目《聖トラフトの霊》、3ターン目《包囲サイ》って動きを狙うんだ。その動きなら、大抵のデッキに負けない」これはとりわけ、《稲妻》や《稲妻のらせん》で《聖トラフトの霊》のために道を開けるプランを狙うなら当てはまることだろう。

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ゴールド・レベル・プロのパトリック・コックスは、「Zoo」戦略にこの週末を託すことにした。強力な火力を携え、これ以上ないほどに最高のクリーチャーで戦う戦略だ。

「Zoo」について、コックスは次のように語る。「デッキ内のカードすべてが最高で、押し込まれる心配がまったくない。1ターン目ですら超強力な《野生のナカティル》が出てくるんだから」

「《出産の殻》が環境からいなくなったから、《台所の嫌がらせ屋》と《包囲サイ》が4枚ずつ入って、さらにそれらを探してくる手段が4つもあるようなデッキがなくなった」コックスは《野生のナカティル》が禁止解除されてからも「Zoo」は大きな活躍を見せていないとしながらも、状況は良くなってきていると話す。活躍に向けた準備中なのだと。

「『アブザン』を使うプレイヤーは『Zoo』との相性は良いと考えているかもしれないけれど、実はそれは違う。7枚入った1マナのクリーチャー(《貴族の教主》と《極楽鳥》)のおかげで、『アブザン』が本領を発揮する前に倒してしまえるのさ」その言い分はもっともなことだろう。《ヴェールのリリアナ》が戦場に出た時点で3体も4体もクリーチャーがいたら、決して効果的とは言えないはずだ。

 ひとたび1マナ3/3や2ターン目に繰り出された天使を呼び出す呪禁クリーチャーの対処に手間取れば、ひどい目にあうことだろう。

感染

 チームメンバー全員がこの「感染」を使用しているところがある。チーム「The Pantheon」、普段は多くのプレイヤーがコントロールかコンボを扱っているこのチームが、最新のメンバーが組み上げたデッキにほぼ全員で乗り換えたのだ。そして、《墨蛾の生息地》で攻撃するために全力を尽くすこのデッキに、メンバーはみな惜しみない称賛を送ったのだった。ゴーデニス・ヴィドゥギリス/Gaudenis Vidugirisに話を聞いてみると、彼はシンプルにこう答えた。「木曜日、最終的に僕を説得したのは彼だ。トムに話を聞いたほうがいいよ」

 トム・ロス/Tom Ross。ごく最近までは、プロツアーの権利がないプレイヤーの中で最も有名だった彼だが、再びプロツアーの舞台に戻り、そしてあるデッキの名を高めた――それが「感染」だ。

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トム・ロス。「感染」デッキに情熱を注ぐ、チーム「The Pantheon」の新メンバー。彼はチームメンバー全員に、毒カウンターを心から愛することを説き、納得させた。

 小型のクリーチャーをばらまき毒をもって対戦相手を倒すという戦略は、たしかに申し分ない。しかし、このデッキは昨年大きな影響を残すことはなかった。ではこのデッキはなぜ、プロツアー殿堂顕彰者であり現在世界ランキング8位のウィリアム・ジェンセン/William Jensenやジョン・フィンケル/Jon Finkelといったプレイヤーたちに気に入られたのだろうか?

「まず、ジョンが選んだストームより速かったから」と、ロス。プロツアーが近づくにつれて、それでもプレイテストでロスが全員に対して勝ち続けていたため、チームは「感染」に心を奪われていったのだ。

「こいつはコンボ・デッキなんです」とロスは続ける。彼の言うコンボとは、《野生の抵抗》と《強大化》のことだ。この「探査」を持ったインスタントは+6/+6の修整を与え、そこへ《野生の抵抗》の能力が誘発すればさらに+3/+3。もちろん、採用されているクリーチャーはパワーが1あるため、戦闘中にインスタント・タイミングで必要な毒が用意できてしまうのだ。

 彼が結果記入用紙をとっくに提出して、試合中のプロツアー会場を練り歩いていたとしても、驚くことではない。確かに、除去の影響はかなり大きい。だがそれは、チーム「The Pantheon」でも徹底的に議論されている。初日に彼らの手の内を明かしてしまうわけにはいかないが、彼らは彼らの持ち込んだデッキが様々な手段で勝てることをしっかりと確かめている――たとえ1ターン目の《ぎらつかせのエルフ》か《墨蛾の生息地》にこだわらなくても。

「感染」の持つ積極性は、「コンボ」にありがちな「干渉力のなさ」と紙一重だ。それでも、その積極性がジェンセンやオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald、リード・デューク/Reid Dukeといったプレイヤーたちに受け入れられているのなら、恐らく誰にでも広く受け入れられるものなのだろう。

親和

「感染」と同じ数のプレイヤーを集めた、もうひとつのアグロとコンボのハイブリッド・デッキ、それが「親和」だ。「親和」を「コンボ」と呼ぶのが相応しくないことはわかる。実際には強大なシナジーを持っているだけだ。だが、これまでに一度でも《羽ばたき飛行機械》から15点のダメージを受けたり、盤面をすべて生け贄に捧げて《墨蛾の生息地》で10点の毒ダメージを与えたりと、その力を目の当たりにしたことがあるなら、まるで「コンボ」のようだと感じるに違いない。

 この週末でも、多くのプロが「親和」戦略を選んでいる。アレックス・マイラトン/Alex Majlatonと殿堂顕彰者フランク・カーステン/Frank Karstenのふたりが、この0マナ満載のデッキを手にしたのはもはや驚くことではないが、マシュー・スパーリング/Matthew Sperlingや殿堂顕彰者にして現在世界ランキング14位のポール・リーツェル/Paul Rietzlも「親和」を選択しているのだ。とはいえ、スパーリングとリーツェルが組み上げたのは、最近見受けられるモダン「親和」デッキというよりは、どちらかと言えばかつての「金属術」デッキ側に寄っている。

「『親和』のことは意識していたし、僕らのプレイテストの方針はすべてのデッキをテストすることだったんだ。だから、『親和』も試した」スパーリングとリーツェルのふたりは、「アブザン」を使用したくないという点ではっきりしていた。そこで彼らは様々なデッキをすべてテストしたのだった。「『風景の変容』に、『Zoo』――」

「すべての型の『Zoo』をね」と、スパーリングが口を挟む。

「――そして、結果的に『親和』を選んだんだ」とリーツェルは締めくくった。だが、ふたりが『親和』を選んだそのとき、面白いことが起きた。彼らは《鍛えられた鋼》の存在に気づいたのだ。対策が刺さるカードと異なり、《鍛えられた鋼》はより積極的な戦略でありながら、対策カードを空振りにさせることができる。《石のような静寂》に《摩耗+損耗》を撃つくらいなら、《石のような静寂》の方を無駄にしてしまえばいいじゃないか? 自軍全体が+2/+2の修整を受けるなら、起動型能力なんかいらないだろう? 《紅蓮地獄》でも《神々の憤怒》でも生き残れるくらいにこちらのクリーチャーが大きくなってしまったら、対戦相手は冷静でいられるだろうか?

 こうして《鍛えられた鋼》と《急送》をメインに採用し、彼らの「親和」デッキはたとえ「親和」であるとわかっていても、想定通りに動いてこないデッキに変貌を遂げた。スパーリングとリーツェルのふたりにとっては、同様に積極策を取ってくる相手と当たったときに、これこそが重要なのだという。

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この週末、殿堂顕彰者ポール・リーツェルとマシュー・スパーリングのふたりは、ユニークな「親和」を手に挑む。

「『Zoo』が出てくるのはかなり予想されていたから、もし『アブザン』が『Zoo』を倒すような調整をしてきたら勝てないね」とリーツェル。

「このフォーマットのことをみんながわかっていれば、わざわざそんなことしないでしょ」とスパーリングが付け加える。

「つまり、モダンにおいて『最初に』意識すべきなのは何なのかって話。それは《瞬唱の魔道士》からの《稲妻》だよ。瞬唱稲妻相手に《野生のナカティル》使うかい?」

 とはいえ、これまで《鍛えられた鋼》が輝いたときはなく、モダン・フォーマットには常に《出産の殻》があった。スパーリングは言う。「みんな《鍛えられた鋼》のこと忘れちゃったんだね」

 今大会のようにメタゲームが明らかな場合、一工夫を加えた積極的な戦略や、あるいは大きな調整が功を奏することがあるのだ。

バーン

 私はこの手のデッキのことも、「アグロ・コンボ」デッキと呼んだことがあるかもしれない。とはいえ、素直にコンボ・デッキを使うことができず、それでもコンボ・デッキに極めて近いものを使いたい場合、「バーン」がうってつけだ。このデッキには、2度の世界選手権王者に輝き現在世界ランキング4位につけているシャハール・シェンハーやプロツアー殿堂顕彰者パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa、世界ランキング6位リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian、クリス・フェネル/Chris Fennell、ユージン・ファン/Eugene Hwang、ロス・メリアム/Ross Merriamなどのプレイヤーが力を注いでいる。

 話を聞いた限りでは、各プレイヤーともこの多様性あるメタゲームにおいてはできるだけ「積極的な戦略」をとりたい、という意見で一致した。シェンハーにとってそれは、まともじゃないコンボ・デッキのことを指すことが多いという。しかし、彼は説明を続ける。「このフォーマットには、壊れたコンボ・デッキが存在しないとわかりました――コンボを使うに足りる理由がないんです」

「『親和』は爆発力がありますけれど、安定感が全然なくて」と、シェンハーは続ける。「『Zoo』はそもそも今大会で倒すべき相手である『アブザン』に不利だし」

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シャハール・シェンハーが「バーン」を選択したのには適切な理由があり、驚くほどのことではない。

 シェンハーとダモ・ダ・ロサが「バーン」を選択したのは、「アブザン」との相性だった。「『アブザン』の持つ切り札や除去を無駄にできますから」一方、リー・シー・ティエンはTwitter上で「バーン」デッキについての意見を控えめに表明しているが、彼はこのデッキが「メタゲーム的に良い」と考え、彼のチームもまた成功を収めている。

 この週末に「バーン」を選択することには、もうひとつ利点がある。それは同じ積極的な戦略の中でも、通常このデッキが最速だということだ。シェンハーが言うには「単純に他のどのデッキよりも速く、それから、大抵の火力は必要とあれば除去の役目もできますから」

 今大会は、プレイヤーの多くが積極的な戦略を選ぶことにしたと考えて間違いないだろう――それは「アブザン」の使用者数を超える。多様性のあるメタゲームにおいて、積極的な戦略には利点がある。「アブザン」が環境最高カードの詰め合わせだということに疑いはないが、この週末に大きな変化を与えることになるのは、プレイヤーたちが選んだ75枚だ。サイドボードに40枚欲しいという状況で15枚を選択するのだから、今大会での1勝が、1敗が、より多くのバリエーションを生み出すことだろう。

 私たちは、「アブザン」がトップ8に入賞するものだと思っている。ただしそれが単に数が多いから入賞したというだけならば、それはメタゲームを本当に理解した結果ではなく、サイドボードの選択は(あるいはメイン・デッキの選択でさえも)単純に時の運なのかもしれない。そうでなければ、最も使用者を集めたアーキタイプが積極的な戦略をとったものであると理解した上で、それらに対する備えをしっかりと取った「アブザン」デッキということになるだろう。

 なぜなら、この週末には積極的な戦略が多くあり、それらはみな理にかなったものなのだから。

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