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【観戦記事】 準決勝:Justin Cohen(アメリカ) vs. Jesse Hampton(アメリカ)

【観戦記事】 準決勝:Justin Cohen(アメリカ) vs. Jesse Hampton(アメリカ)

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年2月8日

原文はこちら

ジャスティン・コーエン/Justin Cohen(アミュレット・ブルーム) vs. ジェシー・ハンプトン/Jesse Hampton(アブザン)

「マリガンしてるところも映ってるんですか?」初手をデッキに戻しながら、ジェシー・ハンプトンが質問していた。そうでないことを確認すると、「よかった。あんまりたくさんの人に責められたくないので」と笑顔を見せる。ハンプトンは6枚の手札に頷き、ジャスティン・コーエンは初手の7枚をキープした。

 カメラ・クルーの準備を待つ間、ハンプトンがコーエンに尋ねた。「今回の権利はどこで取ったんですか?」

「PTQ(プロツアー予選)で」コーエンは胸を張って答えた。ハンプトンは、自分たちは置かれている状況が似ていると話した。たとえハンプトンの方がグランプリ・ナッシュビル2014で急浮上した選手であっても、両者ともグランプリを行脚するようなプレイヤーではないため、プロツアーの舞台に招待されているのは本当に嬉しいことなのだと。

「それじゃあ、ブリュッセルの権利は持っていなかったんだね?」コーエンはプロツアー『タルキール龍紀伝』について尋ねた。「ええ、お互いにうまくいってますよね」ハンプトンが頷くと、両プレイヤーは笑顔を向かい合わせた。

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ジャスティン・コーエンとジェシー・ハンプトンの両者はグランプリでよく見るようなプレイヤーではないが、今大会で印象に残る活躍を見せている。次回のプロツアーでまた戦えるというのも素敵なボーナスではあるが、それよりもトロフィーを獲得するまであと2試合のところまで来ているのだ。

 このマッチアップは、ハンプトンにとって厳しいものになるだろう。プロたちの会話の端々からも、そして昨晩テストしたプレイヤーたちからも、コーエンのデッキが圧倒的に有利だとの話が出ていた。「アミュレット・ブルーム」が素早くスタートを切れば、もうそれは「アンストッパブル」だ――デンゼル・ワシントンの映画のように。

ゲーム展開

 ジャスティン・コーエンがキープした手札には、《精力の護符》、《原始のタイタン》、《血清の幻視》が含まれ、さらに《血清の幻視》は《花盛りの夏》をもたらした。だが《花盛りの夏》はハンプトンの初手《コジレックの審問》ですぐに叩き落とされ、コーエンの最高の手札は振り出しに戻った。

 コーエンは苦笑し、彼と対峙する「アブザン」使いはほとんどが、たとえ彼がどのデッキを使っているか知らなくても、第1ターンに手札破壊が放てる手札をキープしてくる、と不満を漏らした。「こちらがマリガンせざるを得ないのは、どうしてだと思います?」ハンプトンが応える。

 そこから数ターンにわたり、コーエンは圧力を受けることがなかった。そこで彼は盤面を作り始める。土地を並べ、引き込んだ《トレイリア西部》を「変成」して《否定の契約》を手に入れ、《原始のタイタン》を展開する準備を整えた。だがハンプトンが《未練ある魂》を(2回)唱え、4体のスピリット・トークンと《包囲サイ》で攻撃を始めると、コーエンは彼の戦略を解き放つことを強いられた。

 ここにきてようやく、コーエンは手札に3枚ある《原始のタイタン》をプレイした。それを守るために「変成」で《否定の契約》を持ってきていたのだが、それは《コジレックの審問》が取り去ってしまう。《大渦の脈動》が《原始のタイタン》を退場させ、《包囲サイ》とスピリットの軍団がコーエンのライフを残り5点まで追い詰める。ハンプトンが圧倒的不利とされた試合の第1ゲームを取るまで、もうひと息だ。

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プレイテストで出た結果に抗うハンプトン。厳しいマッチアップとなったこの試合の第1ゲームでの勝利を狙う。

 コーエンは2枚目のタイタンを展開し、《処刑者の要塞》から攻撃に向かわせた。警戒によりブロッカーとして残しつつ、土地を2枚盤面に追加する。ターンを渡した時点でコーエンの戦場にはブロッカーが2体。しかしそれらに除去が差し向けられ、「2体」は「0体」に変わった。そしてハンプトンの軍勢が、コーエンを打ち倒したのだった。

「信じられない、まさか勝てるなんて。《未練ある魂》を引いたのに」と、ハンプトンがそう口にした。「プレイテスト中、《未練ある魂》を引いたゲームは全部負けたんです」そのジンクスを破ることができて、さぞ嬉しいことだろう。

 第2ゲームは両プレイヤーとも初手をキープし、すぐにゲームを開始した。

 ジェシー・ハンプトンは2ターン目に《コジレックの審問》と《思考囲い》を続けて放ち、《女王スズメバチ》、《殺戮の契約》、《原始のタイタン》、《精力の護符》、《花盛りの夏》、《召喚士の契約》というコーエンの手札を公開させた。熟考の末、ハンプトンは《殺戮の契約》を手に取り、そして最も重要な時間が訪れた。

 ハンプトンはこの選択に大いに苦労した。ジャッジが彼にゲームを進めるよう促した。自分がどれだけ積極的に進められるかを見計るべく努めていた。爆発力なら《花盛りの夏》か《精力の護符》だが、それらに欠かせない「バウンスランド」がコーエンの手札にはない。ハンプトンは積極的に行かなければならないと決断した。彼の手札もまた、《タルモゴイフ》が0マナで対処されてしまっては勝利に向かえるものではなかった。

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ハンプトンはいくらかの妨害手段を持っていたが、それでもコーエンのデッキはわずかなパーマネントからでも《花盛りの夏》のビッグ・アクションへ繋ぐことができる。

 しかし、ハンプトンが残したカードは、トップデッキひとつで莫大なエネルギーを生み出す可能性を秘めたものだった。数ターン後、コーエンは《セレズニアの聖域》を引き込み、そのエネルギーが現実のものとなった。彼は《精力の護符》設置後《セレズニアの聖域》を置き、《花盛りの夏》を唱える。「セレズニアの聖域」の名に相応しい6マナものマナを生み出し、それから《召喚士の契約》で《原始のタイタン》を持ってきた。《ボロスの駐屯地》と《処刑者の要塞》が戦場に現れ、《精力の護符》の能力でアンタップする。

 ここでハンプトンが語り出した。「このゲームは負けですね」それから彼は「《召喚士の契約》を墓地に落とすべきだった」とつぶやく。コーエンがシャッフルする間、ハンプトンは手札破壊を行ったターンを振り返り、同じ轍を踏まないよう自身に言い聞かせた。

 戦場に目を戻すと、攻撃時に《シミックの成長室》と《宝石鉱山》が追加されていた。コーエンは《トレイリア西部》で《召喚士の契約》を手札に加え、ビッグ・ターンを終えた。万に一つも、ここからハンプトンが勝つ可能性はなかった。

 契約は使うまでもなかった。さあ、最終ゲームを始めよう。

 第3ゲームは、第1ターンを迎える前に始まった。コーエンの初手に《神聖の力線》があり、彼はそれを戦場に出した状態でゲームを始めたのだ。ハンプトンはマリガンせざるを得なかった手札に苦しい表情を向けていたが、《神聖の力線/Leyline of Sanctity(M11)》の姿を見ると「ああ、マリガンしてよかったと『心から』思います」と言って笑った。ハンプトンは《神聖の力線》を3ターン目に《大渦の脈動》で除去した。

「それ1枚挿しだったよね? おいおい頼むよ、せっかく置けたのに」コーエンは《神聖の力線》をいたく気に入っていたようだが、状況は悪くない。ターンを迎えると、彼は《迷える探求者、梓》を繰り出し、「バウンスランド」2枚(《シミックの成長室》と《ボロスの駐屯地》)を置いてマナ加速をした。次のターンには必要なマナが揃うコーエンだが、《神聖の力線》を失った今こそ、ハンプトンが《思考囲い》でコーエンの手札を攻めるのだった。

 《思考囲い》は《原始のタイタン》、《軍の要塞、サンホーム》、《宝石鉱山》、そして《召喚士の契約》というコーエンの手札を公開させた。「いい手札ですね」とハンプトンは言い、《原始のタイタン》を取り去った。

「この手札が守れればもっと良かったんだけど」コーエンも前のターンの《大渦の脈動》を指してそう言った。ハンプトンの側から《召喚士の契約》まで取り去るような手札破壊が続かないことを確認すると、コーエンはやや表情を和らげた。

 続くターン、コーエンは《召喚士の契約》で《女王スズメバチ》を手札に加えたが、彼はマナの計算を誤り、それをプレイするにはもう1ターン待たなければならなくなった。「アミュレット・ブルーム」に採用されている土地はそれぞれ生み出せるマナに大きな違いがあるため、長く集中していると混乱してくるときがあるのだ。《氷の橋、天戸》の能力1回分という小さなミスが、カード1枚の運命を変えた。コーエンは時間をかけて深く考え、《トレイリア西部》を「変成」し《召喚士の契約》を手札に加えた。

 あらゆる除去がハンプトンから飛んでくる以上、《女王スズメバチ》を選択したのは安全を取ったルートと言えるだろう。ただしそれは、ハンプトンの猛攻をしのげればの話だ。ハンプトンは《包囲サイ》と《樹上の村》で攻撃し、《黄金牙、タシグル》を盤面に追加した。この『運命再編』から登場の4/5は、その後数ターンにわたりハンプトンへカードをもたらした。《樹上の村》と《活発な野生林》がにらみを利かせ、コーエンは《女王スズメバチ》と、新たに加えた《原始のタイタン》を抱えながらも守勢に回った。

 だが《原始のタイタン》の誘発型能力が解決し、《幽霊街》と《シミックの成長室》がアンタップ状態で戦場に現れると、状況は一変した。コーエンはほっと息をつき、残り手札が1枚のハンプトンに対して《召喚士の契約》を見せた。だが、ガードを下げたそのときこそ、悪い出来事は滑り込んで来るものだ。ハンプトンの手札の最後のカードは、《エイヴンの思考検閲者》だった。

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第3ゲーム、コーエンは盾を構えたが、それは打ち砕かれたままだ。

 これを境に、コーエンのプレイにやや恐れが見られるようになってきた。プロとして新人の彼は、本来段階的に積み上げるべき大会経験をすべて飛ばしてここまで来た。彼は今大会が初のプロツアー参加であることをまったく感じさせることなく2日間を戦い抜き、そして準々決勝も越えてきたのだ。しかし今、準決勝最終ゲームの席に座る彼のライフは、残り6点。マナの計算を間違え、さらに命取りになりかねない釘を打ち込まれた直後に、不安が顔を覗かせてきたのだ。

 盤面は膠着していたが、コーエンの心許ない盤面を崩せるカードはいくつもあった。カードを動かすたびに、その手は軽く震える。スタックに積まれる能力は複雑を極め――クリーチャー化する土地や《黄金牙、タシグル》の能力、盤面に追加された《ヴェールのリリアナ》、《精力の護符》のアンタップさせる能力が誘発したのに対応して(「バウンスランド」の誘発が解決される前に)《迷える探求者、梓》へ差し向けられる《突然の衰微》――、やるべきことは多かった。その戦いは、さながら塹壕戦のようだった。一歩ずつ正しい道を進むことでようやく少し目的へ近づき、一歩でも間違えれば大きな損害が出る戦い。

 最終的に膠着状態を破ったのは、《ヴェールのリリアナ》だった。コーエンはじわじわと盤面の有利を奪われていく。彼は《原始のタイタン》で攻撃に出た。《黄金牙、タシグル》が回収する《突然の衰微》(これによりコーエンの昆虫トークンは除去され続けていた)に対して盤面を守る助けとなる、《カルニの庭》を求めて。

 ハンプトンの攻撃の番が来ると、彼はコーエンの盤面に残った2体の昆虫・トークンに《包囲サイ》をダブルブロックさせるよう釣り出そうとした。ハンプトンの手札には2枚目の《エイヴンの思考検閲者》があり、うまくいけば次のターンに空からの攻撃で勝負を決めることができたのだ。しかし、コーエンはこれに引っかからなかった。

 コーエンにはもうひと押しが必要だった。もはや彼を動かすものは惰性と化していた。《原始のタイタン/Primeval Titan(M11)》で攻撃。土地を探す能力が誘発する。しかし《エイヴンの思考検閲者》によって、コーエンは4枚しかカードを見ることができない。ハンプトンのライフは、なんとか射程圏内にあった。ただしそれは、この4枚の中に必要な土地がある場合だけだ。

 ハンプトンはコーエンをじっと見守り、4枚のカードにわずかな光明が見えたのかを確かめようとした。

 その4枚は、「まさに」コーエンの望んだそのものだった。《処刑者の要塞》に《ヴェズーヴァ》。可能な限り静かに、穏やかに、コーエンは2つの土地を置いた(《ヴェズーヴァ》はアンタップ状態の《ボロスの駐屯地》をコピーした)。そしてその2枚は、《精力の護符》でアンタップされる。

 ハンプトンは出せる限りの戦力――《黄金牙、タシグル》と《エイヴンの思考検閲者》――を《原始のタイタン》にぶつけた。だがそれも無意味だった。コーエンが《ボロスの駐屯地》2枚を駆使して《処刑者の要塞》と《軍の要塞、サンホーム》を起動すると、《原始のタイタン》は二段攻撃とトランプルを持つ8/6になった。これで10点のダメージがハンプトンに通る計算になり――それは勝利を得るのに十分な量だった。

 コーエンは緊張と興奮の渦に身を震わせた。それをほぐせるのは、彼を勇気づけるハンプトンとの握手と、彼のこの上なく最高の笑顔だけだった。

 ジャスティン・コーエンは、決勝の舞台へ進む。

ジャスティン・コーエンがジェシー・ハンプトンを2勝1敗で下し、決勝へ!

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