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【観戦記事】 第8回戦:熊谷 陸(日本) vs. 佐々部 悠介(日本)

【観戦記事】 第8回戦:熊谷 陸(日本) vs. 佐々部 悠介(日本)

By 矢吹 哲也

 プロツアーの初日最終戦にて、互いに1敗の上位卓で日本人プレイヤーふたりのフィーチャー・マッチが実現した。

 グランプリ・東京2016王者の熊谷 陸は、今大会のドラフト・ラウンドを全勝で切り抜けると、その後の構築ラウンドでも極めて高いパフォーマンスを見せつけ、最終戦のフィーチャー・テーブルにつくことになった。

 そしてそれは佐々部 悠介も同じであり、このまま初日1敗で予選ラウンドを折り返すべくこの日最後の戦いへ臨む。グランプリ・静岡2017春で自身初のグランプリ・トップ8入賞を遂げた彼は、プロ・シーンにおける存在感を増すチャンスを得たのだ。

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熊谷(写真左) vs. 佐々部(同右)。世界的に見ればまだ有名でないふたりが、プロツアーのフィーチャー・マッチで相見えるのは驚くべきことだ。このまま勝ち上がり続ければ、きっと世界にその名を轟かすことができるだろう。

それぞれのデッキ

 熊谷が選択した「ラムナプ・レッド」は今大会で最も多くの使用者を集め、猛威を振るっている。ブロックを封じる能力を持つ《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》や《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》によって、生半可な防御は容易く貫き通すことだろう。また、熊谷は苦手なマッチアップに対しても「ブン回り」があることを、「赤単ならではの強み」として挙げた。

 しかし佐々部の「黒単ゾンビ」は軽量除去が豊富で横に戦線を広げるデッキであるため、「ラムナプ・レッド」との相性は良いと思われる。事実、今大会を迎えるにあたり「ラムナプ・レッド」の存在はかなり強く意識されており、それが「黒単ゾンビ」の隆盛(「ラムナプ・レッド」に続いて使用者数第2位)に繋がったのだろう。その点については使用者の佐々部も認めており、これまで「ラムナプ・レッド」を3回中2回下している(ひとつの黒星は、初日全勝のセス・マンフィールド/Seth Manfieldによって付けられた)。


熊谷 陸(ラムナプ・レッド) vs. 佐々部 悠介(黒単ゾンビ)

 ゲームが始まると、熊谷が早速《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》から《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》と高速展開――しかしこれに対する佐々部の受けは完璧だった。《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》で捌き、さらに追加された2枚目の《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》にも《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》を当て、そして最後に《闇の救済/Dark Salvation(EMN)》で熊谷の盤面を更地にしつつ、佐々部の側にはゾンビを生成してみせたのだ。

 それでも熊谷は《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》を繰り出し、《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》で佐々部のブロッカーを排除しつつ攻撃するが、佐々部が《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》を盤面に追加すると、序盤の攻防で攻め手を失った熊谷は潔く敗北を認めた。

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素早い展開を大量の除去で受け切った佐々部。

 第2ゲームは両者ともマリガンを選択し、続く6枚をキープ。今度は佐々部が1ターン目から《墓所破り/Cryptbreaker(EMN)》で動き出した。熊谷はそれを《削剥/Abrade(HOU)》し、さらに繰り出された《呪われた者の王/Lord of the Accursed(AKH)》にも《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》を撃ち込む。

 2枚目の《墓所破り/Cryptbreaker(EMN)》にも2枚目の《削剥/Abrade(HOU)》。佐々部が繰り出す軍勢を熊谷が除去で受けるという、第1ゲームとは逆の展開になった。

 だが熊谷の盤面には《山/Mountain》1枚の他には《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds(HOU)》2枚と《陽焼けした砂漠/Sunscorched Desert(AKH)》が並んでおり、赤マナはひとつしか供給できない状態だった。ここで彼の動きは1度止まり、「不穏な感じが......」と苦笑を浮かべる。それでも続くターンに《山/Mountain(AKH)》を引き込んだ熊谷は《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》を呼び出し、[+1]能力でアドバンテージを取り始めた。

 実質的にドローが増え攻勢に転じた熊谷に対し、《イフニルの死界/Ifnir Deadlands(HOU)》も駆使して苦しい防衛を続ける佐々部だったが、対面する脅威はクリーチャーだけではない。熊谷の《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》は着々と忠誠度を伸ばし、ついにその「奥義」が放たれた。

 《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》を唱えて5点。

 《マグマのしぶき/Magma Spray(AKH)》を唱えて5点。

 そして、《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》を唱えて5点。

 チャンドラの怒りの炎が、佐々部を焼き尽くした。

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やられたらやり返す。佐々部の序盤の展開を除去で抑え、プレインズウォーカーによる勝利を決めた熊谷。

 迎えた最終ゲーム、佐々部は1ターン目《戦慄の放浪者/Dread Wanderer(AKH)》でゲームを始めると、熊谷も《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》で1ターン目から攻勢を仕掛けた。しかしそれは《闇の救済/Dark Salvation(EMN)》で除去され、佐々部のもとに2/2のゾンビが生成される。

除去とブロッカーの生成を同時に行うこのカードが、熊谷の「ラムナプ・レッド」に突き刺さる。

 ゾンビ・トークンは《削剥/Abrade(HOU)》で対処したものの、《戦慄の放浪者/Dread Wanderer(AKH)》による攻撃を受け続けた熊谷のライフは残り14点。熊谷は《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》で《戦慄の放浪者/Dread Wanderer(AKH)》を焼却しようとしたが、佐々部はそこへ《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》を差し向け、追放を免れた。

 《戦墓の巨人/Diregraf Colossus(SOI)》(サイズは3/3)を盤面に追加した佐々部に対し、熊谷は《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》の「督励」でそれを焼いた。続けて2枚目の《戦墓の巨人/Diregraf Colossus(SOI)》を着地させた佐々部だが、熊谷は《ショック/Shock(AER)》と《削剥/Abrade(HOU)》でそれを除去。だが「督励」が明けた《栄光をもたらすもの/Glorybringer(AKH)》での攻撃は、《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》で防がれた。

 激しい除去の応酬の末に、佐々部は《墓所破り/Cryptbreaker(EMN)》を戦場に残し、続けて「お願い」と祈るように《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》を盤面へ。ところがその願いは届かず、熊谷は《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》と《ショック/Shock(AER)》でこの脅威を退けたのだった。

 だが、1枚の脅威へ対処するために2枚の除去を使い続けた熊谷。佐々部とのリソース差は明白だ。手札が空になった熊谷に対して、佐々部は《無情な死者/Relentless Dead(SOI)》を盤面に追加し、熊谷の《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》にも《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》を当ててドローを進めさせない。

 佐々部のゾンビがクロックを刻み、熊谷が生き残る時間を削っていく――残りライフは8点。熊谷は《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》を「永遠」で戦場に戻したものの、《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》がブロッカーを退場させた。

 追い詰められた熊谷だが横に広がるゾンビの軍勢を止める手立てはなく、「負けました」と頭を下げたのだった。

熊谷 1-2 佐々部


 試合後、佐々部は熊谷へサイド・プランを尋ねた。そこで熊谷が軽量クリーチャーを減らしていたことを知り、《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》は効果が薄かったことを悟る。最高の舞台でひとつずつ勝利と学びを得ていく佐々部と、ふたつ目の敗北を喫したものの悪くない位置で折り返した熊谷。両者の明日の活躍にも期待したい。

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