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【観戦記事】 第15回戦:Samuel Pardee(アメリカ) vs. 藤村 和晃(日本)

【観戦記事】 第15回戦:Samuel Pardee(アメリカ) vs. 藤村 和晃(日本)

By 矢吹 哲也

 スポーツの世界では、競い合う両者の間に勝利と敗北で天と地の差が生まれる状況のことを「on the bubble」と呼ぶ。いつしかそれはマジックの世界でも使われるようになり、そこから転じて「バブル・マッチ」という言葉が生まれた。

 今、藤村 和晃はそのバブル・マッチに臨んでいる。ここで勝てばトップ8入賞が大きく近づき、そして負ければトップ8入賞への挑戦はここで終わる。

 口を結んでやや力の入った表情の藤村に、「Hi」と対戦相手が右手を差し出してきた。

 相手はプロツアー『異界月』トップ8入賞者のサミュエル・パーディー/Samuel Pardee。彼は今大会でもここまで2敗の高いパフォーマンスを見せ、ついにこのときを迎えた。ここで負けても敗退が決まるわけではないものの、勝利すれば自身2度目のプロツアー・トップ8入賞確定。当然、彼としても勝ちを譲るつもりはさらさらない。

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サミュエル・パーディー vs. 藤村 和晃。天と地を分かつ当落線上、藤村の大いなる挑戦は今まさに最高潮を迎えた。

それぞれのデッキ

 奇しくも「緑黒」の同系戦となったこの試合。両者とも赤系アグロの隆盛を見越した黒絡みのミッドレンジであり、それが今回の結果に繋がったのだろう。

 パーディーの緑黒は、メインデッキに《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》やプレインズウォーカー、《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald(SOI)》が投入されており、より消耗戦に強い形に見受けられる。一方の藤村の側では、4枚フル投入された《新緑の機械巨人》が目を引く。クリーチャー・サイズの勝負ではこちらに分がありそうだ。

 初手の7枚をキープした両者は、試合開始の合図を静かに待つ――この緊張感は、この場の人間しか味わえない。


藤村 和晃(黒緑エネルギー) vs. サミュエル・パーディー(黒緑「巻きつき蛇」)

 《風切る泥沼/Hissing Quagmire(OGW)》のタップインから始めた藤村に対し、パーディーは2ターン目に《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》。それを《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》で対処した藤村は、《地下墓地の選別者/Catacomb Sifter(BFZ)》で盤面の構築を始める。

 パーディーが《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar(OGW)》を呼び出すと、藤村は迎えたターンに《巻きつき蛇/Winding Constrictor(AER)》と《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》を盤面へ追加して植物・トークンを排除すると、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar(OGW)》を攻撃してその忠誠度を1まで落とした。

 パーディーは[+1]能力を起動し、優先権を保持したまま《造反者の解放/Dissenter's Deliverance(AKH)》を《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》へ撃ち込んだ。藤村は植物・トークンに2枚目の《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》を差し向け、続く攻撃でパーディーの《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar(OGW)》を退場させる。パーディーは《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》で《巻きつき蛇/Winding Constrictor(AER)》を墓地へ送り、藤村の攻勢を和らげた。

 依然として《地下墓地の選別者/Catacomb Sifter(BFZ)》と末裔・トークンを戦場に残す藤村は、攻めの姿勢を崩さない。パーディーは《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》をX=2で繰り出したが、藤村の《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》がそれを除去し、彼はさらに《光袖会の収集者/Glint-Sleeve Siphoner(AER)》を追加する。

 パーディーは2枚目の《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》を展開し、《光袖会の収集者》を除去。しかしその返しのターン、藤村の手札からは《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》が解き放たれる! +1/+1カウンターが3個置かれた《地下墓地の選別者/Catacomb Sifter(BFZ)》は、パーディーの残りライフを一気に11点まで後退させた。

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前へ、前へ。極限の緊張の中でも藤村は攻め手を緩めず、パーディーに対応を迫る。

 パーディーは「昂揚」を達成した《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》を2体展開し、盤面を固めた。藤村は構わず《風切る泥沼/Hissing Quagmire(OGW)》の起動を含めて全軍で攻撃し、パーディーは《地下墓地の選別者/Catacomb Sifter(BFZ)》を2体の《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》でブロック。これで7点が入り、残り4点。

 パーディーは《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》を盤面に追加し、藤村の攻撃を迎え撃つ。藤村は《風切る泥沼/Hissing Quagmire(OGW)》のみで攻撃し、それは残った《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》と相討ちになった。

 ここで盤面の追加ができなかった藤村に対し、パーディーは《ウルヴェンワルド横断/Traverse the Ulvenwald(SOI)》で《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》をサーチ。《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》と《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》を強化すると、《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》で反撃。危険域だったライフも一気に回復した。

 これで盤面を制圧された藤村は、最後のドローでも対抗する手段が見つからないことを悟り、カードを片付けた。

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押されていた盤面を的確なプレイで覆すパーディー。

 両者とも《風切る泥沼/Hissing Quagmire(OGW)》でスタートした第2ゲームは、再びパーディーが2ターン目に《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》を繰り出し、先手の藤村は《大災厄/Doomfall(HOU)》でそれを屠った。

 しかしパーディーが3ターン目に《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》を繰り出すと、ここから藤村はプレッシャーをかけられ続けることになる。

 《牙長獣の仔/Longtusk Cub(KLD)》を展開した藤村は続くターンに《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》を繰り出し、《牙長獣の仔/Longtusk Cub(KLD)》に+1/+1カウンターを3個置いた。これで《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》の[+1]能力を受けた上で忠誠度を一気に減らしたが、返しのターンに《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》と《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》の[+1]の合わせ技で《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》を失う。それでも藤村は2枚目の《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》を繰り出し、誘発対応の《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》で《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》自体は墓地へ送られたものの、《牙長獣の仔/Longtusk Cub(KLD)》を強化し続けた。

 ......だがしかし、パーディーの《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis Reignited(BFZ)》が、藤村の希望を断ち切った。

 盤面を失った藤村は《風切る泥沼/Hissing Quagmire(OGW)》で《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis Reignited(BFZ)》を落としたものの、依然として苦しい状況。パーディーの側には《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》も加わり、藤村の攻勢を最後まで睨む。

 それでも藤村は《闇の掌握/Grasp of Darkness(OGW)》で《歩行バリスタ/Walking Ballista(AER)》を除去すると、《風切る泥沼/Hissing Quagmire(OGW)》で《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope(EMN)》も退場させた。

 だがパーディーの繰り出す脅威は止まらない。《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》を盤面に追加し、さらに《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar(OGW)》を戦線に加える。

パーディーのプレインズウォーカー攻勢が藤村を苦しめた。

 最後に引き込んだ3枚目の《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》にも《不帰/Never(AKH)》を受けると、藤村は再び盤面を制圧され、間もなくして右手を差し出すことになったのだった。

パーディー 2-0 藤村


「1ゲーム目ですね。《致命的な一押し/Fatal Push(AER)》を植物・トークンに撃ってしまったのはミスでした。あれが残っていれば、最後に《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》の攻撃を通すこともできた」と、試合後に敗北を噛み締める藤村。沈痛な面持ちで名残り惜しそうにデッキのひとり回しを始めたが、やがて顔を上げると「プロツアーはまだまだ、そんな甘いもんじゃないぞってことか!」と次を見据えて立ち上がった。

 今大会の活躍で、藤村はプロ・プレイヤーズ・クラブ「ゴールド」レベルを達成。「次のチャンス」は目の前に広がっている。

サミュエル・パーディーが最終戦を残し、トップ8入賞確定!

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