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【トピック】 スタンダード・マスターへの最終行程と勝利者インタビュー

【トピック】 スタンダード・マスターへの最終行程と勝利者インタビュー

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Marc Calderaro / Tr. Chikara Aoki

2017年7月29日

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 プロツアー『破滅の刻』の最初の13回戦が終わり、絶えず変化していたスタンダード・マスターの星雲が最終的な形をとり始めた。プロツアー開始時点ではルクセンブルクのスティーヴ・ハット/Steve Hattoとプロツアー『神々の軍勢』チャンピオン、カナダのショーン・マクラーレンが同点でがっぷり四つで組んでいたところに、アルゼンチンから新しい有力候補が現出した。

 アルゼンチン出身のセバスチャン・ポッツォ/Sebastian Pozzoは、彼の母国でゴールド・レベルになった最初の2人のうちの1人としてこの週末を迎えた。ポッツォとチームメイトで、プロツアー『イニストラードを覆う影』トップ8のルイス・サルヴァット/Luis Salvattoはプラチナ・レベルを見据えており、ポッツォは一段階上に行くことができるだろう。母国の最初のプラチナ・レベルプロになるだけでなく、南米大陸初のスタンダード・マスターと、アルゼンチン人初の世界選手権出場もだ! さらに彼にとって初めてのプロツアートップ8の可能性も残している。

 ポッツォは第13回戦終了時点で、プロツアートップ8入賞5回、香港の世界ランキング11位リー・シー・ティエン/Lee, Shi Tienに5点差、先頭を走っていたマクラーレンに6点差をつけた。諸藤拓馬との歴史に残る「ラムナプ・レッド」ミラーマッチに勝利し、ポッツォは彼ら以外を圏外へと押し出した。

 ポッツォは自分の勝利だけでリードを固めたわけではない。「Ligamagic」のチームメイト、マルコス・パウロ・ド・ヘスス・フレイタス/Marcos Paulo de Jesus Freitasは第13回戦でマクラーレンに勝利した。昼食の際、フレイタスはポッツォに、対戦が組まれることがありえないとしてもマクラーレンを倒すつもりだと伝え、彼は実際にその約束を成し遂げ、ポッツォのリードを守ったのだ。

 第14回戦で、ポッツォは構築ラウンド初の黒星を世界ランキング9位のセス・マンフィールド/Seth Manfield相手に喫してしまう。マクラーレンもまたイヴァン・フロック/Ivan Flochに敗れたが、リーはマックス・マクヴィティー/Max McVetyに勝利してポッツォに2点差まで詰め寄る。

 2戦を残し、ポッツォとリーがふたりとも0-2しないとマクラーレンは目がなくなり、ポッツォは2連勝すると勝利が保証される。同点になった場合はプロポイントの多いリーが勝つことになるので、引き分けはポッツォにとって安全とはいえない。それはリーが敗北し、ポッツォが勝利しても同様である。

 第15回戦でリーはアリ・ラックス/Ari Laxと対戦し、ラックスの特徴的な大言壮語によってそのマッチは誰が勝っているのかが簡単にわかった。ポッツォはフィーチャーマッチエリアの反対側でドミトリー・ブタコフ/Dmitriy Bukatovと対戦していた。

 ポッツォの「ラムナプ・レッド」は「青赤コントロール」に対して相性が良くなかっただろうが、たとえ相性が悪かろうと、やることは変わらない。ポッツォは常にレッドゾーンを赤の小型クリーチャーと1~2体のアーティファクト・クリーチャーで攻め続け、ブタコフを追い詰めた。

 この対戦のハイライトは間違いなくポッツォの運命じみた《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》による7回の連打で、自身を生け贄に捧げることによって初手と同じ枚数の意外な授かり物をポッツォにもたらした。この小さなクリーチャーの下にあるカードを見てほしい! しかも全部で2マナしかかからない。《Wheel of Fortune》よりも効率がいいなんて!

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小さな急使がやり遂げた。

 ポッツォは砂漠をデザートに対戦相手を飲みこみ、リーとラックスの対戦へと目を向けた。黒単ゾンビのリーは黒緑のラックスの猛攻を凌ぎつつ、不死のクリーチャーでラックスを圧倒できるようになるまで溜め込んだ。リーは負けるとそれでおしまいなのだ。

 膠着状態に持ち込みたいリーではあったが、ラックスの2体の《新緑の機械巨人/Verdurous Gearhulk(KLD)》が素早く第3ゲームを決めた。

 マッチが終わった時にしわがれた喝采があったものの、ラックスのチームメイトの声援は南米、メキシコ、ポルトガル、そしてスペインのチーム「DEX Army」の咆哮によって完全にかき消されてしまった。セバスチャン・ポッツォがスタンダード・マスターを確定させたのだ。

 明白な喜びと安堵の表情がポッツォに同時に見て取れた。この週末、よほど強制されない限りはタイトルレースについて話すのを拒んでいた。キリキリと締め付けるような環境から、この瞬間、やっと解放されたのだ。

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タイトルレースが終わり、応援してくれた友人に胸襟を開くポッツォ。

 話をしてくれるために座ったポッツォは、まず自身の腕にもたれかかった。

「いまあるのは次のラウンドへのそこまで大きくないプレッシャーだけかな」 肘を曲げた腕の内側に頭を快適に乗せて言う。ひとつの目標にたどり着いたポッツォだが、アルゼンチン初のプラチナ・レベルになるにはもう1戦の勝利が必要なのだ。

「大変なことだけど、もし先週の時点で来週あと1勝でプラチナになれるって教わっても多分信じないから、つまり気分は最高なんだろうね」

 世界選手権について尋ねても、非現実的で冗談にもできないようだ。「だって世界選手権が何なのかすらわからないのに!」 冗談というか本音というか。

 真顔になったポッツォは「正直なところ、場違いなんじゃないかって思ってるんだ。プロツアーでトップ8になったこともないし、優勝すると50,000ドルなんだよ。それにふさわしいかはわからない。ご存知の通り、毎回のプロツアーでアグレッシブにプレイしているだけだし」 笑顔が少しナーバスだった。

 しかし最後の言葉を述べている時に現実味を帯びてきたようだ。もちろんポッツォはふさわしい。やり始め、やり遂げた。プロツアーの構築ラウンドで彼よりも良い成績を残したプレイヤーは世界に存在しない。正式に自分の居場所を手に入れたのだ。だが、2年前にアルゼンチン以外で彼の名前を知るものは数少なかっただろう。

「とりあえずもう一回、Traveling Argentine(訳注:同じライターによるポッツォへのインタビュー記事)のために旅行すればいいんだっけ?」 ドヤ顔のポッツォ。

「占星術はわかるかい? 僕は天秤座で、もう少し若かった時はそれに執着していたんだ。天秤はバランスがすべてで、可能な限りバランスが取れるようにしていたんだ。勉強して、働いて、好きなマジックをして。バランスを取るのが簡単な人もいるだろうけど、ぼくは働かなくちゃいけなかった」

 数年間期待はずれのトーナメント・マジックを続けたあと、ポッツォは意識的にバランスを崩すことにして、マジックへの比重を高めた。「ここ数年は生活の他の部分をマジックに捧げたんだ。今はそれが価値のあることだったと思える」 祖国を代表することを誇るポッツォは、一人の男としても誇りを持つ。

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2016-17スタンダード・マスター、セバスチャン・ポッツォ

「今、僕は本当にスーパーハッピーだ。たくさんマジックをやってきて、それが報われたことが、ね」 満足そうに。

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