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【観戦記事】 準決勝:Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル) vs. Yam, Wing Chun(香港)

【観戦記事】 準決勝:Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル) vs. Yam, Wing Chun(香港)

By 矢吹 哲也

 フィーチャー・テーブルについた両者は、顔を合わせると満面の笑みで握手を交わした。

 準決勝。最後の試練へと続く最後の門。プロツアー優勝を目指す両者にとって、まずはここを突破することが果たすべき使命である。

 パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaは、今大会予選ラウンド11連勝を含む圧倒的なパフォーマンスを見せつけ、3日目の決勝ラウンドへ進出した。世界中の誰もが知るこの殿堂顕彰者の戦績を挙げれば、キリがない。むしろプロツアー優勝経験が1回であることが意外なほどだ。

 対するヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chunは自身初の決勝ラウンドを体験し、大いに燃えていた。多くの仲間の声援をその背中に受け、彼の使用する「ラムナプ・レッド」にふさわしい「熱情」を持ってこの試合に臨む。

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パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ(ラムナプ・レッド) vs. ヤン・ウィンチャン(ラムナプ・レッド)

 「OK」と頷きキープを選択したダモ・ダ・ロサに対し、ヤンも親指を上げてキープを伝える。

 先手のダモ・ダ・ロサが1ターン目《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》で火蓋を切ると、ヤンも《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を展開。ダモ・ダ・ロサが《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》を追加して攻撃に向かうと、《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》同士が相討ちに。ダモ・ダ・ロサは2枚目の《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を加えてターン終了。

 ヤンは《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》を展開したがダモ・ダ・ロサはそれを《削剥/Abrade(HOU)》で落とし、さらに3枚目の《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を戦線に加えて攻勢を維持した。ヤンは《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》と《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》を繰り出して防衛に回ったが、《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》がブロックを封じ、ヤンの残りライフは10点へ落ち込む。

 依然として盤面はダモ・ダ・ロサの優勢。ヤンは2枚目の《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》を追加し、攻撃後に土地のみの手札と入れ替える。しかし《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》から得たカードも《山/Mountain(AKH)》であり、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》も加えたダモ・ダ・ロサの戦線は、もはや止められないほどになった。

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まずはひとつ。先手のダモ・ダ・ロサが下馬評通りの勝利を収める。

 先手が極めて有利となるこの対決だが、第2ゲーム、ヤンは不運に見舞われた。

 ヤンは土地1枚の手札をマリガン。6枚の手札をゆっくりと確認すると、今度は土地が多い手札を引き込んだ。2ターン目に《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》を繰り出したものの、ダモ・ダ・ロサに《ショック/Shock(AER)》を撃ち込まれる。これに対してヤンもダモ・ダ・ロサに《ショック/Shock(AER)》を撃ち込み「果敢」で除去を回避する。

 そしてダモ・ダ・ロサが繰り出した《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》に《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》を撃ち込むと、これで彼の呪文は尽きてしまった。そこへダモ・ダ・ロサは《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》を着地させ、最後に残る《損魂魔道士/Soul-Scar Mage(AKH)》を[-3]能力で焼き払う。

 迎えたターンに《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》を引き込み《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》を退場させたヤンだが、ダモ・ダ・ロサは《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》と《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》を展開。ヤンは《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》によって手札を入れ替えるものの、こうなってしまうとひっくり返せないのが「ラムナプ・レッド」の宿命だ。続くダモ・ダ・ロサの猛攻を見て、ヤンはカードを片付けることになった。

 サイドボーディングを終えた両者は第3ゲームを7枚の初手で始め、先手のヤンが《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》で戦端を開いた。

 ヤンは2点のダメージをダモ・ダ・ロサに与えると、相手が2ターン目も動かないのを見て《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》を追加。ダモ・ダ・ロサはそこへ《削剥/Abrade(HOU)》を撃ち込み、返しのターンに《ピア・ナラー/Pia Nalaar(KLD)》を展開した。

 ヤンは《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》で《ピア・ナラー/Pia Nalaar(KLD)》を焼きつつダモ・ダ・ロサへダメージを与えたが、残った飛行機械・トークンで《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を相討ちに取られる。

 そしてダモ・ダ・ロサの盤面に、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》が降臨した。

 ダモ・ダ・ロサの手札は5枚あり、まだ《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》は顕現しないものの、これが動き出せば勝負は決するだろう。ヤンは《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》を「督励」し《削剥/Abrade(HOU)》も撃ち込み、なんとか攻撃を通そうとするものの、ダモ・ダ・ロサの《削剥/Abrade(HOU)》を受けてその目論見は失敗に終わった。

 ダモ・ダ・ロサは《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》の能力を起動すると、迎えたターンに《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》を展開し、残り手札が1枚に――すなわち、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》の高打点がヤンを襲う。

 ――しかしヤンは、勝利を諦めていない。

 ここまでの攻防でダモ・ダ・ロサのライフも残り5点に落ち込んでおり、ヤンは《カーリ・ゼヴの巧技/Kari Zev's Expertise(AER)》で《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》を奪ってその攻撃を通した。これで残り2点となったダモ・ダ・ロサのライフは、《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins(HOU)》で削り切られたのだ。

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最後まで諦めないヤンの強い心が、勝利を引き寄せる。

 ヤンが《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を繰り出し、ダモ・ダ・ロサが《ショック/Shock(AER)》で応じる第4ゲーム。ダモ・ダ・ロサは続けて《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》を展開し、対するヤンは《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》を繰り出す。

 ダモ・ダ・ロサは続くヤンの攻撃を《削剥/Abrade(HOU)》で防ぎ、ヤンも《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》でダモ・ダ・ロサのクリーチャーを屠った。しかし両者とも盤面にクリーチャーを残しておけない激しい消耗戦が終わると、土地が2枚で止まったダモ・ダ・ロサと土地が伸びたヤンの間に差が生まれた。ヤンは《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》を「永遠」で呼び戻し、除去しにくい高打点のクロックを手に入れたのだ。

 ダモ・ダ・ロサはその後《ピア・ナラー/Pia Nalaar(KLD)》と《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を盤面に加えたものの、《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》によって効率的に対処されてしまう。

 残りライフ5点のダモ・ダ・ロサは《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を立たせてターン・エンド。ヤンはさらに《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》を重ね、ダモ・ダ・ロサの残りライフを0点に落とした。

 迎えた最終戦、入念にシャッフルを繰り返す両者の表情は極めて険しい。特にダモ・ダ・ロサの視線は鋭さを増し、その気迫のほどが伺える。

 7枚の手札を見た両者はキープを宣言し、最後の戦いを始めた。

 ヤンの《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》とダモ・ダ・ロサの《ショック/Shock(AER)》の交換。

 ダモ・ダ・ロサの《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》とヤンの《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》の殴り合い。

 ダモ・ダ・ロサは続けて《ピア・ナラー/Pia Nalaar(KLD)》を展開し、ヤンは《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》をブロッカーとして盤面へ送り出す。ダモ・ダ・ロサは《削剥/Abrade(HOU)》でそれを除去すると全軍で攻撃、ヤンの防御を打ち破った。

 ダモ・ダ・ロサの盤面に《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》が追加され、ヤンは《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》と《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》で対応する。

 しかしダモ・ダ・ロサの除去も途切れず、ヤンはブロッカーを残しておけない。ライフは着々と削られ、苦しい戦いを強いられる。

 この状況を変えたのは、やはり《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》だった。

今大会、ハゾレト神は数多の信者に勝利をもたらしてきた。

 ヤンは両者のライフを確認。ダモ・ダ・ロサ16に対してヤンは8。大いに悩み、その末に《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》で攻撃に出る。返しの攻撃を受けても、ヤンには4点のライフが残った。

 そしてヤンの次のドローは......《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》! これでヤンは、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》の攻撃に加えて手札の《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》を撃ち込めば、勝利が確定する状況になった。ヤンもこのドローに決着を確信し、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》での攻撃を宣言する――

 ――しかし攻撃を宣言した時点で、彼の手札には2枚のカードがあった。

 したがって《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》での攻撃はできない。ここにきての痛恨のミスに昂ぶった感情は頂点に達し、ヤンは一拍呼吸を置くことになる。

 必死に盤面を整理し、《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》を放ったヤン。立たせることになった《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》は、しかし結果的に最強のブロッカーとしてダモ・ダ・ロサの前に立ちふさがる。

 ターンを終えたダモ・ダ・ロサに対し、ヤンは今度こそハゾレトでの攻撃を仕掛けた。ダモ・ダ・ロサは《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》でそれをチャンプ・ブロックし、ヤンは《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》で残る《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》を焼き、ターンを終えた。

 ダモ・ダ・ロサは終了時に《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins(HOU)》で2点のダメージを与え、最後のドローに望みをかける――

 その熱意に呼ばれて現れたチャンドラが、ダモ・ダ・ロサに勝利をもたらしたのだった。

ダモ・ダ・ロサ 3-2 ヤン
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 ヤンのプロツアー制覇への夢は、ここで終わりを告げた。あまりに衝撃的な結末に動揺を隠せないヤンだが、これも経験だ。きっとこの経験が、彼をより強くするだろう。

 ダモ・ダ・ロサにとっては思わぬ幸運となったが、これも彼が的確なプレイを続けたからこそだろう。気づけば、絶望的だと思われていた今期のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得まで、あと1勝のところに来ている。

 プロツアー『破滅の刻』は今まさに、最終局面を迎えようとしている。

パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサがヤン・ウィンチャンを3勝2敗で下し、決勝へ!

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