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【トピック】 プロツアー『破滅の刻』注目の出来事

【トピック】 プロツアー『破滅の刻』注目の出来事

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Chapman Sim / Tr. Keiichi Kawazoe

2017年7月30日

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 ここ京都でのプロツアーの幕は降りた。この週末の注目すべき出来事を今一度思い返してみよう。このプロツアーは2016-17シーズン最後の大会であり、多くの記録すべき瞬間にあふれていた。マーク・カルデラロ/Marc Calderaroの助けも借りつつ、よりエキサイティングな形で振り返ろう!


赤の支配

 過去のプロツアーを見返しても、参加総数の4分の1ものプレイヤーが赤単を選択したことなどなかっただろう。『破滅の刻』で追加された《削剥/Abrade(HOU)》、《地揺すりのケンラ/Earthshaker Khenra(HOU)》、そして《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins(HOU)》といったカードが、赤のための道を確たるものにした。過去、多少はプレイされていた《ファルケンラスの過食者/Falkenrath Gorger(SOI)》、《ボーマットの急使/Bomat Courier(KLD)》、《村の伝書士/Village Messenger(SOI)》、そして《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ/Kari Zev, Skyship Raider(AER)》らも、今までにないほどに重用されていた。《アン一門の壊し屋/Ahn-Crop Crasher(AKH)》、《陽焼けした砂漠/Sunscorched Desert(AKH)》、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》、そして他の見落とされていた優秀なカードによって、「ラムナプ・レッド」はこの週末最も成功したデッキの地位を確たるものにした。

 初日時点で「ラムナプ・レッド」の使用率は24.8%にものぼった。その後2日目の足切りが行われると、その比率は29.2%にまで上昇した。それだけでなく、この週末もっともプレイされた赤いカードの1つである《削剥/Abrade(HOU)》は、463人のプレイヤーのうち、実に約300人に使用されていた。

 ただひとつ変わらないことは物事が変化し続けるということであり、それはマジックのメタゲームについても同じである。それがマジックというゲームを進化させ、よりエキサイティングなものとしているのだ。プロツアーにおいてしばしば赤いデッキの存在が見落とされてしまうが、今回は逆に赤が輝く刻だったと言えよう。


チーム「MTG Bent Card」の猛追

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 この週末が始まる前の時点で、チーム「MTG Bent Card」はプロツアー・チームシリーズのランキングで10位に甘んじていた。しかし、この出遅れにも関わらず、驚くべきことに日曜の決勝ラウンド前の時点で4位にまで上り詰めていたのだった。

 チーム「MTG Bent Card」はトップ8にメンバーを送り込むことこそできなかったが、3人がトップ16に入った。このことによりランキング上で実に45ポイントもの上積みを成し遂げたのだ。クリスティアン・カルカノ/Christian Calcanoとハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezは自身の来期のプラチナ・レベルと世界選手権の出場権のために必要であった12勝に到達し、さらにアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciも彼の経歴にプロツアー・トップ16を書き加えることができた。

 上位2チームに入れる見込みこそなかったものの、彼らは日曜の決勝ラウンド次第ではトップ4に残る可能性が残されていた。上位4チームのメンバーは次のプロツアーの招待を獲得できるため、チーム内でゴールド・レベルに到達できなかったアンソニー・リー/Anthony Leeとマイケル・ボンデ/Michael Bondeにとって大事なことであった(そしてコリー・バウマイスター/Corey Baumeisterも直前までその立場であった)。

 この順位を保つためにはサム・ブラック/Samuel Blackが準決勝までに敗退し、チーム「Munity」に追い越されないことが必要だった。また一方で、もしパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaかサミュエル・パーディー/Samuel Pardeeが優勝すると、チーム「ChannelFireball Ice」か「Face to Face Games」にタイブレーカーで逆転されてしまうのだ。結局ダモ・ダ・ロサが優勝してチームのポイントで同率となり、プロツアー・トップ8の数というタイブレーカーによってチーム「ChannelFireball Ice」に逆転されてしまったのだった。

 しかしながら、これはこのプロツアー・チームシリーズで展開された最も面白い争いのひとつであった。そして、世界選手権2017と同時に開催される決勝戦で、チーム「Musashi」と「Genesis」が相見えることになるだろう。


精神的つまづきとバタフライ効果

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 決勝ラウンド中に起きたある「事故」は、その後極めて大きな結果をもたらした。結果的には、この2016~17シーズン全体の結果をも左右したのだった。

 世界ランキング7位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサとヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chunで行われていた準決勝は、両者2ゲームを取り最終戦へともつれ込んでいた。試合展開は複雑で、どちらが勝ってもおかしくない状況だ。ヤンのライフは4でダモ・ダ・ロサのライフは11だった。もしこのターンでヤンが決めなければ、その返しのターンで敗退となる可能性が高かった。しかしヤンは《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》をコントロールしており、ダモ・ダ・ロサにはブロッカーはいなかった。手札には《集団的抵抗/Collective Defiance(EMN)》があり、5マナを生み出せる状況であり、勝つためのトップデッキを必要としていた。

 そして、引き当てたのだ!

 《焼夷流/Incendiary Flow(EMN)》を引き当て、この2枚の火力呪文をダモ・ダ・ロサに打ち込みライフを5まで減らせば、《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》の攻撃でちょうど勝利となるはずであった。

 しかし、彼はそのトップデッキで興奮しすぎたあまりに、一瞬魔が差してしまった。普段もっと注意深いはずの、赤単を使い慣れているヤンは、勝ち急ぐあまりに《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent(AKH)》を攻撃宣言しながらタップしてしまったのだ。しかし、それはダモ・ダ・ロサからの冷静な言葉によって止められた。

「君の手札は2枚ある、ハゾレトは攻撃できないだろう」

 その瞬間、大きなミスをしたことを悟ったヤンは、ゲームが、そしてマッチが手から離れていくのを感じた。既に攻撃クリーチャーを指定しようとしてしまったため戦闘前メイン・フェイズに戻ることもできなかった。ダモ・ダ・ロサはその後《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins(HOU)》でヤムのライフを2まで減らし、そして続くターンで《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance(KLD)》を唱え逆転を決めたのだった。

 もしヤンが正しい手順でプレイできていれば、ダモ・ダ・ロサは決勝に進むことはできなかっただろう。その時点でプロポイント1位であったマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoはプレイヤー・オブ・ザ・イヤーをそのまま受賞できていただろう。また、ヤンが決勝に進出したことで、彼自身初のプロツアー優勝を決めていたかもしれないし、または世界ランキング21位のパーディーが勝っていたかもしれない。もしヤンが優勝していれば、そのことで世界選手権の椅子を手に入れることになり、世界ランキング16位のエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichに最後の椅子が回ることもなかっただろう。

 これは、たった一瞬が私たち全員の人生を左右しうるという良い例である。ほんの一瞬の出来事が、大きな影響を及ぼすこともあるのだ。物事がどのように作用するかは誰も知り得ないことであり、それゆえに将来は謎のままなのだ。


ジュザにとって素晴らしい週末

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 世界ランキング10位のマーティン・ジュザ/Martin Jůzaはこの週末、多くの賞を受賞することになった。

 そして、それは全く不思議なことではないのだ!

 金曜にプロツアー殿堂に顕彰されただけにとどまらず、第12回戦で勝利したことでマキス・マツォカス/Makis Matsoukasとパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサの追撃を振り切って、ドラフト・マスターのタイトルも獲得したのだ。ジュザのタイトル争いについては、マーク・カルデラロの記事に詳しい。


ダモ・ダ・ロサがプロツアー覇者に返り咲く

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 プロツアー『破滅の刻』直前では、世界ランキング1位のマルシオ・カルヴァリョ/Márcio Carvalhoは圧倒的なリードを保っていると見られていた。プロ・ポイントにして13点のリードもあり、逆転の可能性のあるプレイヤーはすでに12人に絞られていた。例えば世界ランキング2位の八十岡翔太と同4位の渡辺雄也はトップ8に進出することが条件となっていたが、残念ながら成績が振るわずその目は潰えた。ラウンドが進むにつれ可能性の残る者は減っていき、最後に残ったのはパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサその人であった。

 無敗の11連勝からの第13回戦での勝利により、彼はトップ8の座を最初に射止めたプレイヤーとなった。しかしながら、彼にとってプレイヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルは、最低でも準優勝で終えてカルヴァリョに並ぶか、優勝して逆転するかしか残されていなかった。

 半年以上ランキングのトップを走っていたカルヴァリョにとって、ダモ・ダ・ロサの猛追は心臓に悪いものだっただろう。彼が自身のキャリアで成し遂げた素晴らしい実績を考慮しても、まず難しいことだと思われていた。

 ダモ・ダ・ロサは結局、自身12回目となるトップ8進出を成し遂げるだけでなく、2回目となるプロツアー優勝を達成し、そして初のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを獲得したのだった。

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