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【観戦記事】 第9回戦:口ひげを解き放て! Jared Boettcher(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)

【観戦記事】 第9回戦:口ひげを解き放て!
Jared Boettcher(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)

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Blake Rasmussen / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年5月17日

原文はこちら

ジャレッド・ベッチャー/Jared Boettcher vs. 渡辺 雄也(世界ランキング8位)

 ここでは、第9回戦のフィーチャー・マッチ、新進気鋭のプレイヤーであるジャレッド・ベッチャーと、長年にわたりプロとして活躍し現在も世界ランキング8位に名を連ねる渡辺雄也との試合をお届けしよう。まずは、こちらの口ひげを付けた渡辺の写真を見てもらいたい。

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世界ランキング8位の渡辺雄也。フィーチャー・マッチ・エリアの似合う男だ。

 ご覧いただけただろうか? これだけは見てもらいたかったんだ。

 さて、カバレージに戻ろう。まずは新たな仲間の紹介からだ。ジャレッド・ベッチャーは今大会がプロツアー参加2回目だが、彼はすでにその名を記録に残し、1年ほど前から順調に戦績を伸ばしているプレイヤーだ。初めてベッチャーの名前が現れたのはグランプリ・ワシントンDC2013でのことで、彼は見事に準優勝を果たした。続けて、今年行われたグランプリ・シンシナティ2014でも第3位に入賞している。中でもベッチャーの名前を一層高めたのは、数ヶ月前のプロツアー『神々の軍勢』に参加した彼が――プロツアー・デビューを第9位の成績で飾ったことである。

 箇条書きにすれば短いものかもしれないが、確かな戦績がそこにあるのだ。

 それでも、このラウンドでテーブルの反対側に座る男と比較するわけにはいかないだろう。その男の戦績は殿堂顕彰者たちでさえ羨望の眼差しを向けるほどなのだ。正直に言ってしまうと、彼自身が近いうちに殿堂顕彰者の仲間入りを果たすことだろう。

 世界ランキング8位の渡辺雄也はひと際輝く日本の星であり、マジックというゲーム全体を見ても偉大なプロ・プレイヤーのひとりだ。グランプリ・トップ8入賞は実に20回を数え、うち7回の優勝を誇る。プロツアー・トップ8にも2度の入賞を記録する彼の生涯勝率は65%にも届こうかというほどで――これは歴代9位の数字となっている。ドラフトの勝率――66.8%――に至っては、この週末に覇を競うプレイヤーたちの中で最も高い数値を示しているのだ。

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ジャレッド・ベッチャーのキャリアはまだ短いものの、その内容は驚くべきものだ。しかしそれでも、世界ランキング8位に名を連ねる渡辺雄也を前にしてはほとんどのプレイヤーが比肩できないだろう。

 ああ、そうだ。それから渡辺はプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得経験もあり、2012年マジック・プレイヤー選手権覇者の肩書もある。「ベスト・プレイヤー」の話になれば必ずと言っていいほど名前が挙がる男である。

それぞれのデッキ

 とはいえベッチャーは、少なくともここからの3ラウンドのうちふたつはどんな相手でも望むところだ、と意気込みを見せる。

「2-1は逃さないデッキができましたよ」と、ベッチャーは赤緑のドラフト・デッキを広げて言った。「3-0目指して頑張ります」

 マジック・プレイヤーがそう発言するということは、ベッチャーはデッキの出来に満足しているということだ。しかし鍵となるカードが1枚か2枚足りないと感じているため、やや控えめな評価になった。それでも彼のデッキには(脅威となる《英雄たちを破滅させるもの》など)強力なクリーチャーが数多く入っていて、それら怪物たちをサポートする火力呪文も搭載されている。強打で素早くゲームを終わらせるのが、彼の目論見だ。

 一方の渡辺はゲームを長引かせたい思いだが、もちろん、それだけでベッチャーのプランが失敗するわけではない。渡辺は《トロモクラティス》をフィニッシャーに据えたコントロール寄りの青黒デッキをドラフトした。《ファリカに選ばれし者》2枚と多数の除去を駆使して盤面を制圧し、満載した《予言》と《難破船の歌い手》で勝利への道を拓くつもりだ。

ゲーム展開

 想定された通り、渡辺が土地を置いている間にベッチャーが素早く動き出した。《名高い織り手》と《ケンタウルスの武芸者》が戦いの火蓋を切る。だが《ケンタウルスの武芸者》には《ニクスの注入》が向けられ、攻撃に入る前に潰されることとなった。

 ベッチャーの攻勢は緩まない。《セテッサ式戦術/Setessan Tactics(JOU)》と《名高い織り手》で渡辺の《潮流の合唱者》を討ち取ると、ベッチャーは2枚目の《ケンタウルスの武芸者》を繰り出し攻めの姿勢を続けた。渡辺はさらなるコンバット・トリックで《先見のキマイラ》も失ったが、盤面の有利に頓着することなく、ベッチャーのコンバット・トリックを消費させるためにクリーチャーを捨てることを甘んじて受けた。

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ベッチャーが素早い攻めを見せる。渡辺のデッキが機能し出す前に彼を沈めるつもりだ。

 そしてそれこそが、渡辺の狙いだった。

 《鷲の飛翔》が渡辺に一時の猶予をもたらすと、ベッチャーは1ターン攻撃を控え、《セテッサの英雄、アンソーザ》を繰り出した。この後の大攻勢を予感させるプレイだったが、しかしその攻撃がやって来ることはなかった。

 その理由は、渡辺が自らのプランを完遂したからだ。そのプランは実にシンプルながら、大きな恐怖をひき起こす。ベッチャーが恐怖のあまり凍りつき、再び攻撃に向かえなくなるほどに。そのプランとは?

 ク ラ ー ケ ン を 解 き 放 つ こ と だ。

 クラーケンの中のクラーケン、《トロモクラティス》がベッチャーの軍勢を何ターンにもわたり押し留める間に、鳥トークンが《タッサの試練》を受けサイズを上げた。恐ろしきクラーケンを突破するすべがなく、鳥トークンを止めるすべもなく、ベッチャーの緑の怪物たちは見る間に渡辺の軍勢に呑まれていったのだった。

 残念ながら第2ゲームは、ドラマティックな展開に欠けるものだった。ゲームの始めから、マリガンがベッチャーのチャンスを潰してしまったのだ。ドローに恵まれず大きなカード・アドバンテージ差に沈みながらも、ベッチャーは奮闘したと言えるだろう。彼は思うように呪文が唱えられない状況に陥り、ゲーム中ずっと酸素を求めて苦しんでいた。

 ダブル・マリガンを喫し5枚となった手札でも、やはりゲームを作ったのはベッチャーだった。渡辺が最初に出したクリーチャーに《稲妻の一撃》が刺さると、その後両プレイヤーともマナ・フラッド起こし、戦場にある合計3体のクリーチャーはその場から動けなくなった。ベッチャーはマリガンによりゲーム序盤の不利を被ったものの、どちらのプレイヤーもマナ・フラッドしたため挽回することができた。

 その上ベッチャーは、《稲妻の髪飾り》と《ハイドラの血》で有効な攻撃に出ることまでできた――およそ12ターンほど経ってからのことだ。彼はうまく渡辺のクリーチャーを2体墓地へ送ったのだが、その分のクリーチャーは《蘇りし者の行進》で補充された。渡辺が《欺瞞の信奉者》と《オドゥノスの黒樫》の2体を手札に戻すのを見て、ベッチャーは口に笑いを含ませるしかなかった。デッキ・トップから現れた《予言》が、すでにカード・アドバンテージ差の海に沈みかけているベッチャーに、さらなる差を突きつけた。

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渡辺のデッキが、カード飢餓に陥った対戦相手へ追い打ちをかける。

 ターンを迎えるたびに、ベッチャーの状況は悪くなっていった。彼の攻撃に対しては《トリトンの戦術》が待ち受けており、これで彼の戦線が崩壊する。《英雄たちを破滅させるもの》のサイズは他の大型クリーチャーと共に十分に渡り合えるものだったが、渡辺は《欺瞞の信奉者》で《悪意の幻霊》を持ってくるとそれをベッチャーの《英雄たちを破滅させるもの》へエンチャントした......もちろん、《夢の饗宴》で除去するためだ。

 選択肢は多くあったが、渡辺はそれぞれのレバーを鮮やかな手並みで適切に動かした。この試合のハンドルは最初から最後まで渡辺の手を離れなかったのだ。

ベッチャー 0-2 渡辺

 このラウンドでベッチャーのチャンスが完全に潰えたわけではない。このプロツアー参戦2年目のプレイヤーは本日のドラフト・ラウンド全勝こそ逃したものの、まだ2勝1敗の目は残っている。

 一方の渡辺は、これで7勝1敗1分けと戦績を伸ばした。彼の殿堂顕彰ページにひとつだけ「足りないもの」があるとすれば――それを「足りない」と言っていいのなら――、プロツアーでのトップ8入賞が2回「しか」なく優勝経験もない、ということだけだろう。そうとも、彼はまだ25歳だ。それでも、今大会でトップ8入賞、延いては優勝ということになれば、彼が殿堂顕彰の受賞資格を得た最初の年に選出されるのはほぼ間違いないだろう。

 とりあえず眼前に迫った話をするなら、渡辺は今、世界選手権への切符を求め、また来期のプラチナ・レベルを追っている。現在34点のプロ・ポイントを持つ彼は、レベルを維持するために最低でも5点の上乗せが必要なのだが(目標は45点で、この大会と次のプロツアーに出場することで、少なくとも各3点ずつ獲得できる)、それはまだ確定していない。ここでトップ8に入れば目標の達成は決定的になり、今年最大の大会に臨む日本代表入りをかけたレースでも、大きく前進することだろう。終わり良ければすべて良し。トップ8入賞以外だと、このプレイヤー・オブ・ザ・イヤー受賞経験者は満足できないかもしれない。

 だが、もう一度言おう。彼は渡辺雄也なのだ。どうしてこの顔の持ち主を疑うことができようか?

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最後に、もう一度この顔を。

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