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【観戦記事】 準々決勝:導師と怪物 Reid Duke(アメリカ) vs. 市川 ユウキ(日本)

【観戦記事】 準々決勝:導師と怪物
Reid Duke(アメリカ) vs. 市川 ユウキ(日本)

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Blake Rasmussen / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年5月18日

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リード・デューク/Reid Duke(世界ランキング2位/黒青緑コントロール) vs. 市川 ユウキ(赤緑エルズペス)

 この舞台では、何が起きてもおかしくない。たとえ天が堕ち、世界ランキング2位に名を連ねるリード・デュークの完璧に整った髪が崩れ、呪文をひとつも投じることなく舞台を後にするようなことであっても。私たちにわかるのは、今後はデュークがプレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースの先頭に立ち、そして恐らく、ランキングもトップに登り詰めるだろう、ということだけだ。ここに、大一番が開幕する。

 マジックというゲームにおけるデュークの才能とここ数年の活躍を見ると信じ難いことだが、実は今回が彼にとって初のプロツアー・トップ8入賞だ。この試合に臨む彼の姿からは、到底そうは思えないだろう。他のプレイヤーたちがどこか別の場所で自分の試合を待ち心の準備を整えていたのに対し、デュークは戦いを続けていた。調整を喜んで手伝うチームメイトたちを相手に、マジックをプレイし続けていたのだ。

 彼と対峙するのは、プロツアー予選から参戦の市川 ユウキ。生涯獲得プロ・ポイント12点の彼もまた、わずか3度目の挑戦で初のプロツアー・サンデー進出を果たした。彼はこの時点ですでに今後ふたつのプロツアー参加権を得ている――再編されたプロ・プレイヤーズ・クラブ「シルバー・レベル」の特典でもうひとつ招待される――が、決勝までの道を踏破すればさらに上の世界が開けることだろう。

それぞれのデッキ

 このマッチアップは、今大会中たびたび見受けられたものだ。

 ひとつは「赤緑エルズペス」。今大会の開催前は「ベスト・デッキ」の評価を固めていたものだ。このナヤらしさ溢れるデッキは、ゲームのどの段階でも強烈な一撃を持つ。このフォーマットで最高の「矛」の多くを搭載し、それらを各種マナ・クリーチャーで素早く繰り出すのだ。《嵐の息吹のドラゴン》、《世界を喰らう者、ポルクラノス》、《太陽の勇者、エルズペス》、《歓楽者ゼナゴス》、とビッグ・プレイには事欠かないデッキだ。

 そしてもうひとつ、多くのプロ・プレイヤーがこの週末に同じくらいマッチアップしたと感じたものが、「黒青緑コントロール」だ。『ニクスへの旅』と共に『テーロス』ブロック構築へ参戦したこのデッキは、プレインズウォーカーや《予知するスフィンクス》、《クルフィックスの狩猟者》でゲームを組み立て、少しずつアドバンテージを重ねていく。今大会、このデッキはここまででトップ8に3人のプレイヤーを送り出しており、さらなる成功をこの週末に刻もうとしている。

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世界ランキング2位のリード・デュークが自身初のプロツアー・トップ8に入り、そのまま初のタイトル獲得に挑む。比較的新しいプレイヤーである市川も、プロツアー・サンデー進出により確定したシルバー・レベルのさらに先を目指している。

 これらふたつのデッキの相性差は、極めて拮抗していた。

「ほぼ50/50ですかね」と、デュークは言う。「こちらにあまり効かない除去をサイド・アウトされる前に、メインで勝つのが大切だと思います」

「でも本当にどっちが勝ってもおかしくない。こういうゲームは好きですよ」

ゲーム展開

 市川は序盤の動きに乏しいものの後半に力を発揮する初手をキープ。それはつまり、デュークが対戦相手の脅威に翻弄されたり多くのリソースを費やしたりすることなく、序盤の守りを固められるということだ。彼の《森の女人像》から《クルフィックスの狩猟者》という動きは、まさに彼のデッキが理想とするスタートだった。

 一方の市川は最初の3ターン、土地を引き続けた。彼の初動は《クルフィックスの狩猟者》への《払拭の光》。続くデュークの《世界を喰らう者、ポルクラノス》にも2枚目の《払拭の光》を当て、ペースを握らせない。

 このゲームの歯車が大きく動き出したのは、市川が《英雄の導師、アジャニ》を通し、そこから《クルフィックスの狩猟者》が手札に加わったターンだった。《英雄の導師、アジャニ》は莫大なカード・アドバンテージを生み出し得る存在であり、デュークは対応に迫られた。その上、続くターン市川は《太陽の勇者、エルズペス》をも戦場に加えたのだ。

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複数のプレインズウォーカーを相手に奮闘するデューク。

 デュークは《予知するスフィンクス》から反撃を始めた。確かにその後を期待させる切り出し方ではあったが、しかし彼の眼前にはふたりのプレインズウォーカーが手を組んで立ちはだかり、強烈なプレッシャーをかけてくる。デュークは少しでも早く解答を引きこまなければならなかった。「占術」を繰り返しドローを進めるも、《英雄の破滅》が姿を見せない。次のターンも、その次のターンも。

 デュークは《胆汁病》を引き込み、今や3/3になった兵士トークンの軍団を取り払うと、彼にできることを続けた。市川は再びトークンを生み出したが、次のターンには《予知するスフィンクス》の攻撃で《太陽の勇者、エルズペス》を失った。それでも彼は続くターンにもう1枚《太陽の勇者、エルズペス》を送り出す。脅威が取り払われるたび、そこに新たな脅威が置かれた。

 この試合の市川は、まさにハイドラのごとき回復力を持っていたのだ。

 デュークが挽回の兆しを見せるたびに、市川がまた別の脅威を引き込み、優位を取らせない。クリーチャーが2体倒されても、プレインズウォーカーが戦場に降り立つ。《クルフィックスの狩猟者》が(《信者の沈黙》を受けて)沈黙しても、また別のカードが現れる。《太陽の勇者、エルズペス》が倒されると、市川のライブラリー・トップからさらにもう1枚がめくれる。デュークは《信者の沈黙》2枚と《胆汁病》を駆使し、盤面で負けるゲームをなんとか渡っていた。しかし、プレインズウォーカーの後押しを受けた市川がターンを迎えるたびにアドバンテージ差を広げていくと、形勢の不利が進むデュークにできることはほとんどなくなっていった。

 デュークは最後の最後まで戦いを続けたが、圧倒的人数のプレインズウォーカーを前に抵抗を続けるのは彼をもってしても叶わなかった。

 そして結果的に、彼は自身のデッキに抗うこともできなかった。第2ゲーム、彼のもとへ2度にわたり悪い初手が送られ、手札は5枚に減ってしまう。市川も土地5枚にマナ加速という比較的弱いハンドをキープし、デッキが応えてくれるのに期待する。それでもデュークがチャンスを得るには、市川が数ターンの足踏みをしていなければならないという状況だった。

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市川の「赤緑エルズペス」デッキは、強大な脅威を次々と送り出すことができる。

 運命の女神は、市川に微笑んだ。3ターン目に《歓楽者ゼナゴス》が戦場へ降り立つと、ゼナゴスは早速サテュロスを送り出し悪だくみを始める。さらに続くターンには《世界を喰らう者、ポルクラノス》が戦線に加わった。その次のターン? 《嵐の息吹のドラゴン》だ。

 あえて言葉にしよう。ここで必要とされるプレッシャーをかけるカードを、市川は正確に引き切ったのだ。

 マリガンに捕まり、土地を置けず、その上市川は爆発的なスタート。デュークになすすべは無かった。彼の初めてのプロツアー・サンデーは、ここで幕を下ろしたのだった。

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一方、市川の戦いは始まったばかりだ。
市川 ユウキが2連勝でリード・デュークを破り、準決勝へ!

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