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【観戦記事】 第8回戦:八十岡 翔太(日本) vs. Valentin Mackl(オーストリア)

【観戦記事】 第8回戦:八十岡 翔太(日本) vs. Valentin Mackl(オーストリア)

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年10月14日

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八十岡 翔太(世界ランキング7位/グリクシス・コントロール) vs.ヴァレンティン・マックル/Valentin Mackl(黒赤「マッドネス」)

 「プロツアー初日全勝」には、単なる武勲以上の意味がある。全勝者はオポネント・マッチ・パーセンテージも高くなり、のちに負けを喫しても下位に沈まずトップ層を維持できる。大会後半に不運に見舞われても、他のプレイヤーほどの被害は受けないのだ。

 現在世界ランキング7位の八十岡 翔太は、大方の予想を裏切る途方もないデッキを手に今大会へ切り込み、この全勝を懸けた戦いへ至った。環境に革新をもたらし、発展させる。それが八十岡というプレイヤーだ。彼は2012年の世界選手権準優勝とふたつのプロツアー・トップ8入賞をもって、2015年度の殿堂顕彰を受けた。このまま彼の勢いを止めるものがなければ、今シーズン早々、通算3度目のプロツアー・トップ8入賞を決めることだろう。

 待望のプロツアー・トップ8入賞を狙うヴァレンティン・マックルも、この試合に初日全勝が懸かっている。グランプリ・トップ8入賞6回を誇る彼だが、6回とも準決勝で敗退してきた。彼は開花の瞬間を待ち続けているのだ。

 プロツアー『カラデシュ』は、マックルのキャリアの分岐点となり得る舞台であり、八十岡がその最高のスキルを発揮し続ける場でもあるのだ。

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今シーズン早くも、高いプレッシャーのかかる試合に臨むことになった八十岡 翔太とヴァレンティン・マックル。最高の結果で2日目を迎えるべく、両者は激突する。

それぞれのデッキ

 マックルが選択した「黒赤『マッドネス』」は強力なデッキだ。アグレッシブな戦略を墓地のシナジーで満たしたこのデッキは、速さと粘り強さを両立している。《安堵の再会》は《癇しゃく》の「マッドネス」や《秘蔵の縫合体》を墓地へ送る助けとなり、そこへ《憑依された死体》や《屑鉄場のたかり屋》が加わることで、クリーチャーの大半が繰り返し戦場へ戻ってくるのだ。そういった墓地から戻ってくるクリーチャーを生け贄に捧げたときの《ヴォルダーレンの下層民》は凄まじい力を発揮し、そして土地が手札に余っても《安堵の再会》や《墓所破り》で無駄なく活用できる。

 八十岡が使用する「グリクシス・コントロール」は、現在のスタンダードに存在する他のデッキとは一線を画したものだ。「機体」や《霊気池の驚異》によってコントロールは不利な環境だと見られていた中で、八十岡のこの選択は驚くべきものだろう。このデッキは《流電砲撃》や《光輝の炎》、《蓄霊稲妻》、《無許可の分解》、《本質の摘出》を駆使して時間を稼ぎ、《奔流の機械巨人》へ繋ぐ。必要なものを探し出す役目は、《予期》や《天才の片鱗》が担っている。また《氷の中の存在》は全体除去として機能するだけでなく、大量の除去が相手のブロッカーを排除するため、勝ち手段としても機能する。その上、クリーチャー除去では触れられない部分も《否認》や《虚空の粉砕》、《即時却下》で対処できる。

 実に目を惹く洗練されたこのリスト。きっと八十岡は今大会に向けてしっかりと準備を進めてきたに違いない。

ゲーム展開

「負けなし?」両者が席につくと、マックルが笑顔で問いかけた。

「そうだね」と、八十岡は頷く。

「ウチの母もあなたのこととっても素敵だって言っていますよ」

 これには八十岡も含み笑いを堪え切れず、笑顔で試合を始めるのだった。

 マックルが序盤から《墓所破り》を繰り出したものの、八十岡は《無許可の分解》を差し向けて無事にアンタップを迎えさせない。「グリクシス・コントロール」の肝は対戦相手に選択肢を与えないことだ。続く《苦い真理》で3枚のカードを引き、さらなる解答を用意したことも、このゲームの鍵となるだろう。

 2枚目の《墓所破り》が生き延びると、マックルの「黒赤『マッドネス』」が火を噴いた。《癇しゃく》はゾンビ・トークンを生み出す《稲妻》と化す。八十岡は《墓所破り》を除去すると続く《安堵の再会》にも《虚空の粉砕》を合わせ、さらに《本質の摘出》をゾンビ・トークンへ撃ち込みライフを12点に回復した。

 八十岡がゲームをコントロールしているように見えるが、しかし今やマックルの墓地には大量の選択肢があった。

 八十岡は勝ち手段のひとつである《氷の中の存在》を着地させた。マックルは大きなチャンスが訪れるのを待ち、八十岡とともに「ドロー・ゴー」を続ける。《安堵の再会》から《稲妻の斧》を放って《氷の中の存在》を除去したマックルは、《ヴォルダーレンの下層民》と十分に肥えた墓地でゲームの主導権を取り戻しにかかった。

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ひとたび墓地が肥えれば、マックルのデッキは容赦ない。

 八十岡の続く一手は2枚目の《氷の中の存在》。《ヴォルダーレンの下層民》は攻撃に出る。そして《憑依された死体》がスピリット・トークンを連れて墓地から戻ると、さらに《屑鉄場のたかり屋》も続いた。八十岡は盤面を一掃すべく除去を立て続けに撃ち込んだ。マックルは《憑依された死体》と《屑鉄場のたかり屋》を再び墓地から戻し、盤面が一掃されるのは変わらないものの《ヴォルダーレンの下層民》の「変身」で《氷の中の存在》を道連れにした。

 手札の枚数では八十岡が有利だが、マックルは《屑鉄場のたかり屋》が死亡するたびに首尾よく戦場へ戻し、攻め続けた。

 しかしここで、《奔流の機械巨人》が動き出す。《本質の摘出》を再利用すると八十岡はライフを9点に回復できたが、マックルはまたもや《憑依された死体》を墓地から戻した。今度は《秘蔵の縫合体》も加わり、《屑鉄場のたかり屋》も戦線に復帰させて面で攻める。

 だが八十岡は2枚目の《奔流の機械巨人》を繰り出し、強力なブロッカーと勝ち手段を手に入れた。マックルの繰り出せる手は尽きており、ついに八十岡が攻勢に転じるときが来た。そして八十岡はマックルが再び盤面を回復させる前に、一気に攻め切ったのだった。

「強すぎる」マックルは頭を振りながらカードを片付けた。「強すぎるよ」

「この前は僕が勝ってあなたがトップ8に入ったので、今回はここであなたが勝って僕がトップ8ですかね」とマックルは言い添えた。プロツアー『イニストラードを覆う影』での直接対決とその顛末の話だ。

「なるほど?」

 八十岡は笑ったが、無論それには同意しない。

 マリガンを喫したものの、マックルは《屑鉄場のたかり屋》から《墓所破り》と序盤の展開を進めた。早くも除去を使わざるを得ない八十岡だが、サイドから投入した《稲妻織り》がブロッカーとして戦線を支え、さらに除去を撃つたびにマックルのクリーチャーへダメージが飛んだ。

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誰もが認める青コントロールの達人としての所以を改めて証明する八十岡。

 マックルは持てるすべてを出し尽くした。

 だが《ヴォルダーレンの下層民》には《虚空の粉砕》。もう一度繰り出したところへ《蓄霊稲妻》。《密輸人の回転翼機》にも再び《蓄霊稲妻》。

 マックルは2枚目の《密輸人の回転翼機》を繰り出そうとしたが、今度は《奔流の機械巨人》がそれを阻んだ。「3枚目」を繰り出してもなお、それにも《蓄霊稲妻》を当てられた。そして、マックルの手が止まった。

「なんてこった!」マックルはついに声を上げ、押し寄せる八十岡の《奔流の機械巨人》を前に投了した。完全にコントロールし切った今、八十岡が勝利を掴むには1ターンあれば十分だった。

「遅すぎた!」と、マックルは自身の高速デッキに言う。「これじゃ遅いんだ」

 八十岡は、ここでもただ頷くだけだった。

八十岡 2-0 マックル

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