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【観戦記事】 準決勝:八十岡 翔太(日本) vs. Ben Hull(カナダ)

【観戦記事】 準決勝:八十岡 翔太(日本) vs. Ben Hull(カナダ)

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Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年10月16日

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八十岡 翔太(世界ランキング7位/グリクシス・コントロール) vs. ベン・ハル/Ben Hull(赤白「機体」)

 ベン・ハルは猛烈な勢いで今大会準決勝の舞台へ進み、夢を広げていった。ホノルルに到着するなり体調を崩し、初出場のプロツアーに向けて十分な準備ができなかった彼は、本来なら好成績を望むべくもなかった。しかしハルは「機体」を見事に操り自身初のトップ8入賞を果たし、そこからさらに強力なライバルと熱いレースを繰り広げた。フランスの強豪ピエール・ダジャン/Pierre Dagen、そして5度目のプロツアー・トップ8入賞という驚くべき成果を残したリー・シー・ティエン/Lee Shi Tianを相手に。

 プロツアーの新入りであるハルにとっては、信じられない光景を目の当たりにしていることだろう。そして彼の感じるプレッシャーは、相手が強くなっていくにつれて大きくなっていく。

 生ける伝説となった殿堂顕彰者、八十岡 翔太は、独自のコントロール・デッキを手に今大会を切り開き、自身4度目のプロツアー・トップ8入賞を決めた。マジック最高峰の大会に単身で挑み、誰も予想できないデッキで偉業を成すその姿は、彼のキャラクターを確固たるものにしている。予選ラウンドを2位で終えた八十岡は、この準決勝からの登場となった。プロツアー2勝目まで、あと2試合だ。

 ハルはこれまでで最強の敵に立ち向かうことになる。トーナメントの反対側を勝ち抜いたカルロス・ロマオ/Carlos Romaoが待つ決勝の舞台へ進むのは、どちらかひとりだ。

それぞれのデッキ

 ハルの「赤白『機体』」デッキは、今大会に先がけて行われたスタンダードの大型トーナメントを席巻した一作だ。《高速警備車》や《密輸人の回転翼機》といった「機体」に、それを強化する《模範操縦士、デパラ》や《経験豊富な操縦者》が採用されたこのデッキは、素早く強打を繰り出せる。また序盤から《スレイベンの検査官》や《模範的な造り手》を展開し2ターン目からプレッシャーをかけることもでき、とにかくスピードで相手を上回ることを目指している。

 八十岡の「グリクシス・コントロール」は、まさにその対極にあるデッキだ。クリーチャーはわずかな枚数(《奔流の機械巨人》2枚と《氷の中の存在》のみ)に抑えられ、対戦相手のあらゆる動きに対処することを重点に置いている。《蓄霊稲妻》や《無許可の分解》、《虚空の粉砕》、《流電砲撃》、《否認》、《本質の摘出》といった大量の呪文を《苦い真理》、《光輝の炎》、《予期》、《天才の片鱗》といった呪文で支えるこのデッキは、スタンダードで使用できるあらゆる解答をひとつのデッキに詰め込んだものと言えるだろう。その姿勢はサイドボードにも及び、例えば《稲妻織り》は小型クリーチャーを焼き払い、《密輸人の回転翼機》を完封する。

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初参加のプロツアーで堂々と決勝ラウンドを戦うベン・ハル(写真右)は、これまでで最大の難関を迎えた。殿堂顕彰者、八十岡 翔太との対戦だ。

ゲーム展開

 第1ゲームは、《スレイベンの検査官》と《氷の中の存在》が対峙する立ち上がり。《石の宣告》で八十岡のブロッカーを排除したハルは、続けて《無私の霊魂》と2体目の《スレイベンの検査官》を戦線に追加した。八十岡は《蓄霊稲妻》で《無私の霊魂》を除去したが、ハルは2体目を繰り出し、《密輸人の回転翼機》も加える。

 しかし八十岡は多くの解答を持っていた。

 《流電砲撃》が《無私の霊魂》を墓地へ送ったが、ハルは《模範操縦士、デパラ》でプレッシャーをかけ続ける。さらに《無許可の分解》がハルの《密輸人の回転翼機》を破壊したものの、《スレイベンの検査官》の攻撃が通り八十岡の残りライフは14点に。《蓄霊稲妻》が《模範操縦士、デパラ》を撃ち抜き、ハルの盤面には3枚目の《無私の霊魂》が現れた。

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「機体」で戦場を押し破るべく奮闘するハル。

 再び《蓄霊稲妻》が飛んだが、八十岡は《さまよう噴気孔》でブロックに回り出した。八十岡の対抗手段がついに尽きたここで、ハルは《ピア・ナラー》を展開。クリーチャー化する土地でブロックを続ける八十岡だが、ハルの軍勢は膨れ上がっていく。

 続く《密輸人の回転翼機》と《模範操縦士、デパラ》を《虚空の粉砕》で防いだ八十岡だが、ハルのクリーチャーは八十岡のライフを脅かしていった。残りライフ3点となった八十岡は、今や3枚目の《密輸人の回転翼機》も加わり盤面を埋め尽くすハルの軍勢に対処しなければならない。

 しかしそれは叶わず。ハルが一歩リードした。

 第2ゲームも八十岡が《氷の中の存在》を繰り出し、ハルが《石の宣告》でそれを対処した。だが今度は八十岡が2枚目の《氷の中の存在》を持っており、それは戦場に残った。

 《精神背信》で《模範操縦士、デパラ》を着地前に取り去った八十岡だが、《ピア・ナラー》と《スレイベンの検査官》2体が再びハルの盤面を築いていく。攻撃を開始すると、《密輸人の回転翼機》をプレイ。それを通した八十岡は《天才の片鱗》でドローを進める。

 そして放たれる《光輝の炎》。ハルが苦労して築いた盤面は振り出しに戻った。

 ハルは「手掛かり」を使って《模範的な造り手》を引き込み、《密輸人の回転翼機》に「搭乗」させた。《密輸人の回転翼機》がクリーチャー化すると、八十岡は《氷の中の存在》を《目覚めた恐怖》へ「変身」させる。再び繰り出された《密輸人の回転翼機》にも攻撃される前に《蓄霊稲妻》で対処し、さらにプレイされた《密輸人の回転翼機》も《否認》し、八十岡がこのゲームを掌握した。

 残りライフ6点となったハルは《鋭い突端》でチャンプ・ブロックせざるを得ない。《スレイベンの検査官》から生み出された「手掛かり」を使っても、この状況を返すことはできなかった。

 こうして八十岡が勝ち星を取り返し、両者は1勝1敗でサイドボーディングに入る。形を変えてより強化される八十岡の守りと構成を変えたハルの攻め。ここからあと2本取った方が決勝へ進出する。

 だがハルは、第3ゲームに向けてシャッフルをしながら悩ましげに頭を振っていた。

 第3ゲーム、ハルの初動は《密輸人の回転翼機》。八十岡の《氷の中の存在》にも《石の宣告》を当てる。ハルは《模範的な造り手》も戦線に加えたが、《稲妻織り》が八十岡の守りを支えた。《予期》1枚では3/2の《模範的な造り手》を《稲妻織り》で落とすには至らなかったものの、八十岡は2枚目の《氷の中の存在》を手に入れることができた。

 反撃を受けて残りライフ16点となった八十岡は、土地を置いてターンを渡す。この時点ではそれほどプレッシャーを受けていなかったが、ハルが《模範操縦士、デパラ》を繰り出すと状況が変わった。八十岡は《稲妻織り》の能力と《蓄霊稲妻》でハルのクリーチャーを的確に除去したものの、搭乗員の魂を乗せた《密輸人の回転翼機》が空を翔ける。しかしここでも、《稲妻織り》がハルの攻勢を抑える立役者となった。

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ゲームの流れを変えるべく、そのきっかけを探る八十岡。

 ハルは2枚目の《模範操縦士、デパラ》と《経験豊富な操縦者》を繰り出し、それらは《密輸人の回転翼機》に「搭乗」した。一挙9点もの攻撃が空から八十岡へ襲いかかったが、《無許可の分解》によってダメージは4点に抑えられた。

 ハルは再び、《密輸人の回転翼機》に乗せるクリーチャーを失った。

 それでも2枚目の《経験豊富な操縦者》が《密輸人の回転翼機》に力を与え、八十岡は4点のダメージを受けた。しかし続けて繰り出された《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は《否認》を受け、八十岡の優位は変わらなかった。

 《予期》で《氷の中の存在》が「変身」し、八十岡は《さまよう噴気孔》も合わせてブロッカーのいないハルの盤面へ攻め込んだ。ハルの残りライフは5点になり、続くターンには《密輸人の回転翼機》をブロックに回してライフを1点残した。

 《経験豊富な操縦者》が占術のチャンスをもたらし、ハルは《密輸人の回転翼機》でさらにもう1枚ライブラリーを掘り進めた。だが八十岡を止められる手段は見出せなかった。

 八十岡がマッチ・ポイントを迎えた第4ゲーム、ハルはここでも頭を振りながら思い悩み、シャッフルを続けた。一方、八十岡の所作は一切乱れず、見る者に何の情報も与えない――これも八十岡の強さだ。

 ハルは2ターン目に《密輸人の回転翼機》をプレイし、八十岡の対処の手が伸びる前に展開することができた。しかし眼前には《氷の中の存在》が待ち受けている。ハルは3枚目の土地をプレイできず、クリーチャーも展開できなかった。そして4ターン目も。さらに、5ターン目にようやく引き込んだ土地はタップ状態で戦場に出る《鋭い突端》だった。ハルが動けるようになる頃には、八十岡は2体の《氷の中の存在》と豊富なマナを有していた。

 この週末を驚くべき勢いで走り抜けたハルの足が、ついに悲鳴を上げたのだ。

 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が着地したが、《餌食》を受けて退場するのみだった。ハルは《密輸人の回転翼機》で攻撃できたものの、時すでに遅し。八十岡は《光輝の炎》で騎士・同盟者・トークンを焼き払い、これで片方の《氷の中の存在》に置かれた氷カウンターが残りひとつに。そして《流電砲撃》によって「変身」した《目覚めた恐怖》が、ハルの盤面を一掃した。

 八十岡の盤面に3枚目の《氷の中の存在》が置かれ、八十岡の勝利は固まった。2枚目の《氷の中の存在》が「変身」し、2体の《目覚めた恐怖》がハルに致命打を与えたのだった。

「君の勝ちだ」とハルは言い、右手を差し出した。「決勝、頑張ってくれ」

 八十岡は頷き返した。「はい」

八十岡 翔太がベン・ハルを3勝1敗で下し、決勝へ!
八十岡 翔太 - 「グリクシス・コントロール」
プロツアー『カラデシュ』 トップ8 / スタンダード (2016年10月14~16日)
5 《島》
2 《沼》
2 《山》
4 《窪み渓谷》
3 《燻る湿地》
4 《尖塔断の運河》
2 《さまよう噴気孔》
4 《進化する未開地》

-土地(26)-

4 《氷の中の存在》
2 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー(6)-
4 《流電砲撃》
1 《儀礼的拒否》
3 《予期》
3 《蓄霊稲妻》
2 《否認》
1 《精神背信》
3 《苦い真理》
3 《虚空の粉砕》
2 《光輝の炎》
2 《無許可の分解》
1 《本質の摘出》
2 《天才の片鱗》
1 《秘密の解明者、ジェイス》

-呪文(28)-
3 《稲妻織り》
2 《儀礼的拒否》
1 《否認》
1 《精神背信》
2 《餌食》
1 《光輝の炎》
2 《即時却下》
2 《慮外な押収》
1 《秘密の解明者、ジェイス》

-サイドボード(15)-
Ben Hull - 「白赤機体」
プロツアー『カラデシュ』 トップ8 / スタンダード (2016年10月14~16日)
10 《平地》
6 《山》
4 《感動的な眺望所》
4 《鋭い突端》

-土地(24)-

4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《経験豊富な操縦者》
3 《無私の霊魂》
3 《模範操縦士、デパラ》
2 《ピア・ナラー》

-クリーチャー(20)-
4 《石の宣告》
3 《蓄霊稲妻》
4 《密輸人の回転翼機》
2 《高速警備車》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(16)-
3 《稲妻織り》
4 《流電砲撃》
2 《断片化》
1 《蓄霊稲妻》
2 《空鯨捕りの一撃》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》

-サイドボード(15)-

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