マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

【戦略記事】 プロツアー『タルキール覇王譚』メタゲームブレイクダウン・1日目

【戦略記事】 プロツアー『タルキール覇王譚』メタゲームブレイクダウン・1日目

calderaro.jpg

Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年10月10日

原文はこちら

 かつて、スタンダードのローテーションは大きな変化をもたらすものではなかった。私たちの多くは、まったく新しい見事なブロックが現れたにも関わらず、それまでのトップ・デッキがそのままトップ・デッキであり続けるという悲劇のローテーションを憶えているはずだ。具体的なブロック名は、ここでは伏せておこう。しかし今、最近のプロツアー『テーロス』を見返しても、ブロックのローテーションがスタンダードの情勢に影響を与えているのがわかる。

 そして本日その姿を現したデッキたちを見ると、プロツアー『タルキール覇王譚』もまた、少なくとも革新を迎えた大会であるようだ。会場全体の50%を占める上位3つのアーキタイプは、『タルキール覇王譚』が出たことで構築可能になったまったく新しいものだった。前シーズン最も使われたアーキタイプである《破滅喚起の巨人》を採用した「黒緑信心」が再び姿を見せたものの、上位を占めたのは「ジェスカイ・アグロ」、「アブザン・ミッドレンジ」、そして「マルドゥ・ミッドレンジ」の3つなのだ。

アーキタイプ使用者数使用率
ジェスカイ・アグロ7721.57%
アブザン・ミッドレンジ6016.81%
マルドゥ・ミッドレンジ277.56%
緑黒信心236.44%
「ジェスカイの隆盛」215.88%
緑単信心174.76%
青黒コントロール164.48%
赤緑モンスターズ102.80%
シディシの鞭82.24%
マルドゥ・プレインズウォーカーズ71.96%
エスパー・コントロール61.68%
赤単アグロ61.68%
白青「英雄的」82.24%
ナヤ・プレインズウォーカーズ51.40%
「書かれざるものの視認」信心51.40%
白青コントロール51.40%
アブザン・アグロ41.12%
マルドゥ・アグロ41.12%
マルドゥ・コントロール41.12%
ナヤ・ミッドレンジ41.12%
赤白「英雄的」41.12%
4色シディシ30.84%
白黒コントロール30.84%
白赤アグロ30.84%
アブザン「星座」20.56%
ジェスカイ・ミッドレンジ20.56%
黒単アグロ20.56%
赤単「英雄的」20.56%
白青ソウルブレード20.56%
ティムール・アグロ20.56%
4色ミッドレンジ10.28%
アブザン「探査」10.28%
緑青ミッドレンジ10.28%
青赤「英雄的」10.28%
ジェスカイ・コントロール10.28%
ジェスカイ・トークンズ10.28%
マルドゥ「英雄的」10.28%
白単「英雄的」10.28%
フィナックス信心10.28%
スゥルタイ「星座」10.28%
スゥルタイ・コントロール10.28%
ティムール・ミッドレンジ10.28%
ティムール・モンスターズ10.28%
赤白コントロール10.28%
赤白トークンズ10.28%

 まだ調整が完璧でないデッキはあるだろう。これらのアーキタイプは、最終的にTier1であり続けるものではないかもしれない。これについては、ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonの言葉が的を射ている。「今、君は最適な戦略がわかっていないかもしれない。でもそれは、対戦相手も同じことだ」。この広い環境では、45もの異なるアーキタイプがしのぎを削っているのだ。

 使用率上位のデッキは、見事に分かれた。この日の上位2デッキは、「ジェスカイ・アグロ」と「アブザン・ミッドレンジ」だ。次点には、これまで好まれていた「黒緑信心」や「緑単信心」(赤をタッチするものが多いが、青や白をタッチするものもある)と並んで、《ジェスカイの隆盛》を用いたコンボ・デッキや「青黒コントロール」のような新デッキが見受けられる。それ以外には、かつて隆盛を誇った「赤緑モンスターズ」がそれ単体では使用率3%を切っていることが挙げられるだろう(とはいえ、同系統のデッキをすべてまとめれば32.5%を占める)。

 《カマキリの乗り手》やテンポを重視したカード、そして火力のサポートを受ける「ジェスカイ・アグロ」は、「氏族らしさ」を表現する様々なデッキの救世主になっている。中には、マナ・カーブをコストの重い方へ寄せて「ミッドレンジ」の方向性に手を出し、《龍語りのサルカン》のような最高の脅威を搭載したり、その一方で《天空のアジサシ》や《蒸気の精》のようなカードを序盤のダメージ源として用いたりするものもあった。今大会では《静翼のグリフ》が効果的だと予想して、メイン・デッキから4枚投入するグループも一定数いた。私たちとしては、それらの戦略が成功するのか、あるいはメタゲームの推測に基づかない戦略こそが安全なのか、そういったことを見極めなければならないだろう。

 使用率第2位を占めた「アブザン・ミッドレンジ」は、今大会のフォーマットにおける「Zoo」デッキと言える。このデッキの強さは誰もが理解していて、今大会での活躍は誰もが予想していた。モダンにおける「Zoo」は、しばしば「これに勝てないならそのデッキを使うべきじゃない」と言われるものであり、多くのプレイヤーが同じことをこのアブザン・デッキに対して見て取ったようだ。《包囲サイ》の棲み家がこのデッキなのは明らかであり、それはアグロ・デッキを完封するほどの力を持つ。またコントロールに対しては(《エルフの神秘家》や《爪鳴らしの神秘家》によって)3ターン目に現れる重大な脅威となり、それらを支える《完全なる終わり》は、ゲームそのものを終わらせることもできるだろう。もちろん、他にも素晴らしい仲間たちがずらりと並ぶ。あるデッキはマナ・カーブを軽い方へ寄せて、《羊毛鬣のライオン》や、新カードの《ラクシャーサの死与え》を採用していた。またあるデッキは、私たちも良く知り、愛好家も多い「《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》コンビ」を好んで使っていた。

 《ジェスカイの隆盛》コンボの使用率が5番目に多いという結果には、誰もが心に大きなクエスチョン・マークを描いていることだろう。4枚ものカードを用いるコンボは、通常ならばスパイク志向のプレイヤーたちがキッチン・テーブル・レベルの脅威としか思わないようなものだ。しかし、溢れんばかりに豊富なパーツが、20人を超えるプレイヤーの心を掴む魅力的なデッキを生み出した――その中にはトップ・プロも含まれるほどだ。コスタリカのミゲル・ガティカ/Miguel Gaticaは、大会前にこう述べている。「このデッキはまだ完全に信頼するわけにはいかないけれど、もし《森の女人像》がもう4枚使えるなら信じるほかにないだろうね」。そして、《森の女人像》が4枚しかなくても、このデッキに挑戦したプレイヤーは確かにいるのだ。

 氏族別に並べると、ジェスカイが最も多くのプレイヤーを輩出し、また最も多くのアーキタイプを用意した。使用プレイヤー数は102人を数え、アーキタイプは先述したふたつに加えてコントロール・デッキがひとり、トークン・デッキがひとり、そしてミッドレンジ・デッキがふたりいるため、合わせて5つのアーキタイプがある。アグレッシブな氏族だと知られているマルドゥだが、しかしそこには主にミッドレンジ使いとコントロール使いが集まった。「マルドゥ・コントロール」とそれに極めてよく似た「マルドゥ・プレインズウォーカーズ」をひとまとめにすると、11人のプレイヤーがそれらを選択しており、コントロール・デッキで一番使われた「青黒コントロール」に続く使用者数となる。

 大会前、ミッドレンジ・デッキですら打ち倒す速度の超高速アグレッシブ・デッキが飛び出してくるようなこのフォーマットで、コントロール・デッキは生き残れるのかどうか、多くの人が思いを巡らせていた。しかし今ここに、その身が滅ぶまで延々と続く苦難の道を行くプレイヤーが、約40人いる。そう、このアーキタイプはまだ死んではいないのだ。

 最も少ない氏族はスゥルタイだった。かろうじてその名前が現れたのは、コントロール・デッキにひとつ、「星座」デッキにひとつだ。とはいえ、「シディシの鞭」デッキにはスゥルタイに所属する《血の暴君、シディシ》が採用されており、墓地をクリーチャーで埋め尽くした後に(その途中でゾンビも生み出しながら)、《エレボスの鞭》で対戦相手の世界を縛り付けている。《残忍な切断》と《サグのやっかいもの》が取り憑く墓地には、ときに《死滅都市の悪鬼》の姿も見えることだろう。《血の暴君、シディシ》を用いたもので、4色で組んだプレイヤーは3人、3色で組んだプレイヤーは8人。合わせて約3%の使用率になり、「赤緑モンスターズ」単体を上回っている。

 氏族のカテゴリに含まれないものを見ると、「英雄的」デッキはアグロ・デッキの中でも好まれたアーキタイプだが、色の選択は様々だ。赤単色、白単色、白赤、白青、青赤、マルドゥのものまである。合計17個のデッキはどれも、「英雄的」を持つクリーチャーをプレイしたのちにそれを対象に取り、その能力と、そして恐らくその後に続く攻撃によって対戦相手を打ち倒す、というプランをとっている。

 他にもほとんどのデッキが、そのデッキの動きを想像させる名前を持っている――その例外なのが、「ソウルブレード」だ。言ってしまえば、このデッキには《アーティファクトの魂込め》=En「soul」 Artifactと《幽霊火の刃》=Ghostfire 「Blade」が4枚ずつ採用されているのだ。

 1日目も半分を終えたばかりで、まだまだ大量のマジックの試合が残っている。ご紹介した新しいデッキたちがすべて脱落し、トップ8には私たちがすでに知っているカードだけ、という可能性はあるかもしれない。しかし、こうして数字を見てみると、(a)多くのプレイヤーがそう思っていないこと、そして(b)単に数学的に、それはありそうにないことがわかるのだ。

 私たちは、長く続いた変化の少ないローテーションの日々を越えてきた。『ラヴニカへの回帰』ブロックが舞台を降りるとともに、「信心」を恐るべきものにしたマナ・シンボルの濃いパーマネントの多くもまた、失われた。『タルキール覇王譚』の「氏族」は、ここまででも十二分にその後を継いできたように見えるが、本当にそれが実現できているのかどうかを確認するには、明日の夜を待たなければならないだろう。

前の記事: 【観戦記事】 第6回戦:Shahar Shenhar(イスラエル)vs. Jeremy Dezani(フランス) | 次の記事: お知らせ:第7回戦における失格処分について
プロツアー『タルキール覇王譚』 一覧に戻る