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【戦略記事】 スタンダードメタゲームブレイクダウン・2日目

【戦略記事】 スタンダードメタゲームブレイクダウン・2日目

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年10月11日

原文はこちら

 プロツアー・トップ8のデッキリストといえども、現実のメタゲームをそのまま反映したものではないことが多い。なぜなら、プロツアーにはドラフト・ラウンドが6回戦あり、その6戦を全勝することで、構築ラウンドでの成績が奮わなくてもなんとかトップ8に入り込む、ということがあり得るからだ。したがって、この2日目のメタゲームブレイクダウンも確認すべきだろう。依然として「ドラフト・ラウンドが好調だから」という問題は取り除けていないものの、プレイヤー数の多いデータから、何が使われたのかの基準が見えてくるはずだ。

 昨日、私たちはこの新しい構築環境の全体を俯瞰した。使用率上位3デッキ、すなわち「ジェスカイ・アグロ」、「アブザン・ミッドレンジ」、そして「マルドゥ・ミッドレンジ」の3つは、ローテーション前に存在したどのアーキタイプよりも今大会で使用者を集めた。しかし、「使われた」ことと「活躍した」ことは同じではない。2日目のスタンダードメタゲームブレイクダウンを見てみると、構築ラウンド5回戦を終え、この会場内でのふるい分けが始まったようだ。「緑黒信心」と「緑単信心」のふたつはなかなか多くのプレイヤーを集めたが、もしも真にそれらがベスト・デッキなら、好成績を収めたプレイヤーの数でトップに躍り出て、新デッキたちの場所を奪うのもたやすいはずだ。

 その他の新デッキや、また既存のアーキタイプを調整したものは、全体の数の上ではやや少ない。それでも2日目進出率の高さによってはその存在を誇示することができ、他のデッキはまだその戦い方が見つかっていないか、あるいは構築の完成度が不十分だったということを示すだろう。とはいえ、それはあるチームが、あるいは何人かのプレイヤーが、このプロツアーという大会のために最善を尽くしてきたという証でもあるのだ。

 おしゃべりはここまでにしよう。2日目のデータは以下の通りだ。

アーキタイプ2日目使用者数1日目使用者数2日目進出率2日目使用率
ジェスカイ・アグロ557770%24.22%
アブザン・ミッドレンジ386063%17.04%
ジェスカイの隆盛152171%6.73%
緑黒信心142361%6.28%
マルドゥ・ミッドレンジ142752%6.28%
青黒コントロール121675%5.38%
緑単信心111765%4.93%
シディシの鞭6875%2.69%
エスパー・コントロール5683%2.24%
「書かれざるものの視認」信心55100%2.24%
白青コントロール55100%2.24%
白青「英雄的」5683%2.24%
アブザン・アグロ4100%1.79%
マルドゥ・プレインズウォーカーズ4757%1.79%
赤緑モンスターズ41040%1.79%
ナヤ・ミッドレンジ3475%1.35%
白赤アグロ33100%1.35%
マルドゥ・アグロ2450%0.90%
マルドゥ・コントロール2450%0.90%
赤白「英雄的」2450%0.90%
4色ミッドレンジ11100%0.45%
4色シディシ1333%0.45%
アブザン「星座」1250%0.45%
アブザン「探査」11100%0.45%
青赤「英雄的」11100%0.45%
ジェスカイ・コントロール11100%0.45%
ジェスカイ・トークンズ11100%0.45%
赤単アグロ11100%0.45%
ナヤ・プレインズウォーカーズ1520%0.45%
スゥルタイ「星座」11100%0.45%
スゥルタイ・コントロール11100%0.45%
ティムール・アグロ1250%0.45%
ティムール・モンスターズ11100%0.45%
白黒コントロール11100%0.45%
赤白トークンズ11100%0.45%

 多くが前日と同じ、という結果になった。「ジェスカイ・アグロ」と「アブザン・ミッドレンジ」のふたつは最大勢力を維持し、合わせて40%を超えている(前者が24.22%、後者が17.04%だ)。このふたつのデッキは2日目進出率も60%を超えており、「ジェスカイ・アグロ」の方は70%に届いた。どうやらこのふたつのデッキは、大方の予想通りの活躍ができているようだ。「ジェスカイ・アグロ」は今大会の前にもいくつかの大会で勝っていたものの、「アブザン・ミッドレンジ」と比べるとその力は未知数だった。しかし今こうして、その力が明らかになった――「《カマキリの乗り手》+火力呪文」の答えは「成功」だったのだ。

 新たに登場した3つのデッキのうち、敗者の側になったのは「マルドゥ・ミッドレンジ」だった。2日目進出率もなんとか50%に届いたくらいだ。だがしかし、抜けた穴はまた別の新アーキタイプが素早く埋めた。「《ジェスカイの隆盛》コンボ」デッキだ。スタンダードにおいてコンボ・デッキが恐るべき力を発揮するのは久しぶりのことで(《ニクスの祭殿、ニクソス》と《旅するサテュロス》をコンボに含めるなら話は別だが)、このデッキが生き残るほど安定しているとは、多くの人が考えていなかった。だが、LSV(ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas)から世界ランキング9位のイーフロウ(エリック・フローリッヒ/Eric Froehlich)、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaまで多くのプロ・プレイヤーがこのデッキを使用し、(成績における優劣はありながらも)彼らがみな今日も戦っているところを見るに、このデッキの力は本物のようだ――少なくとも、今大会においては。このデッキは今後どのような活躍を見せてくれるだろうか? 私が話を聞いたほとんどのプレイヤーが、このデッキは安定性が足りていないと判断していた。これだけの成功を収めたことに、驚愕したことだろう。恐らく、色々と見回してもこのコンボを無力化できるデッキは、極めて少ないはずだ。

 もうひとつ勝者の側に立ったのが、コントロールだった。アグレッシブなデッキとの相性が有利であったことが今大会でプラスになり(ご覧の通り、多くのアグロ・デッキ使いたちがコントロール・デッキとのマッチアップを嫌がっていた)、2日目進出率も全体的に高い。世界ランキング5位のイヴァン・フロック/Ivan Flochや同6位のスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaが使用している「青黒コントロール」は16人中12人を2日目に送り込み、「エスパー・コントロール」は6人中5人、そして「白青コントロール」は6人中6人の100%が初日を突破した。

 私は多くのプロ・プレイヤーから話を聞いた。その中でもシャハール・シェンハー/Shahar Shenharは、彼の所属するグループでは「青黒コントロール」にそこまで大きな信頼を寄せていなかった、と言う。プロ・プレイヤーのほとんどが、人々が考える以上に《対立の終結》は強力なカードだと見なしていて(実際に、このカードは「マルドゥ・プレインズウォーカーズ」や「マルドゥ・コントロール」、そして青をベースにしたコントロール・デッキで多く採用されていた)、それが入らないコントロールは生き残れないと考えていたのだ。この後の大会、例えばグランプリ・ロサンゼルス2014では、エスパーや白青だけでなく「青黒コントロール」のことも考慮に入れる必要が出てくるだろう。そして恐らく、その大会は服を試着するようにデッキを試す大会になるはずだ。《カマキリの乗り手》がそれを阻止するかもしれないが、その結果は時間が教えてくれるだろう。

 意外な結果と言えば、「赤緑モンスターズ」や「ナヤ・プレインズウォーカーズ」、そして「ラブル・レッド(《ゴブリンの熟練扇動者/Goblin Rabblemaster(M15)》アグロ)」を含む赤単系の結果だろう。「赤緑モンスターズ」は2日目進出率の点で最悪の結果を出したデッキのひとつになった――初日を突破したのは10人中4人で、「ナヤ・プレインズウォーカーズ」の5人中1人に次いで2番目に悪い。そして、赤単もまた、もはや過去のものとなっている。会場内にひとりは残っているのだが、それを数には入れにくい。なぜなら、その残ったひとりは齋藤 友晴だからだ。断言してもいい、彼なら《神の怒り》系の呪文が6枚あるような環境でも、アグレッシブなデッキを使って勝利を重ねることだろう。とはいえ紛らわしい言い方になってしまったが、そんな彼でも今大会では現在、構築ラウンドの成績は3勝2敗に留まっている――エリート・プレイヤーのひとりでも、確実に結果を出せるとは限らないわけだ。

 「緑黒信心」は、これを選択したのは正解であったことを引き続き示している。2日目進出率も堅実で、ここにチーム「ChannelFireball The Pantheon」(と殿堂顕彰者、三原 槙仁)が選択した「『書かれざるものの視認』信心」を加えれば、その数字はさらに伸びるだろう。「『書かれざるものの視認』信心」のデッキリストは「緑黒信心」のものに似通っているが、はっきりとした違いもある。メインデッキに採用された《書かれざるものの視認》の数だ。正直に言って、このデッキを躍進させた起爆剤はこのカードだろう。「『書かれざるものの視認』信心」を使用したプレイヤーはすべて初日を突破しているため、これを「緑黒信心」に合わせると68%に伸び、上位のデッキと並ぶことになるのだ。

 もし君たちが完璧主義者なら、たぶん構築ラウンド全勝中の5人のプレイヤー(ひとりは4勝1分け)が気になっていることだろう。全勝しているのは「アブザン・ミッドレンジ」(アリ・ラックス/Ari Lax、マット・セヴェラ/Matt Severaが使用)と「ジェスカイ・アグロ」(世界ランキング11位の渡辺 雄也、アンドレイ・ストラスキー/Ondrej Strasky、ジェイムズ・リンキヴィッツ/James Rynkiewiczが使用)、そして「アブザン・アグロ」(マイク・シグレスト/Mike Sigristが使用)だけだ。「アブザン・ミッドレンジ」と「ジェスカイ・アグロ」のふたつは強力なデッキであることが知られていて使用者数も多かったため、少なくともひとりは勝ち続けると君たちも予想していたかもしれない。

 「アブザン・アグロ」について特筆すべきは、全勝者を輩出しただけでなく、このデッキを選択したプレイヤー全員が2日目に進出したことだ。確かに、人数としては4人しかおらず、その4人ともがチーム「Face to Face」のメンバーだが、このデッキは現時点で良い位置につけているようだ。恐らく、《森の女人像》から《クルフィックスの狩猟者》という動きを予想していた対戦相手に対して《ラクシャーサの死与え》から《責め苦の伝令》で応えるというのが効果的だったのだろう。いずれにしても、この構築は正解だった。今後アブザン・カラーのデッキを目にしても、初動を《包囲サイ》と決めつけることはできなくなるだろう。

 それにしても素晴らしい環境だ。今大会前は、ミッドレンジ・デッキがミッドレンジ・デッキを叩き潰すだけのメタゲームになるのではないか、と恐れられていた。しかし実際は、まるで違う環境になっているようだ。コンボ・デッキを使いたい? ここにあるよ。ミッドレンジ・デッキがいい? よろしい。コントロール・デッキはどう? いいとも。バーンやテンポ、アグロ、飛行ビートは?(君たちが本当にそれらを求めているかわからないけれど)いけるさ。プロツアー・トップ8は、さらにこの先へと進むプレイヤーを決定するだろう。だがその8人が環境全体で最高であることを意味するわけではないのだ。

 2日目がやって来る!

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