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【観戦記事】 第16回戦:Spencer Garnier(アメリカ) vs. Lee Shi Tian(香港)

【観戦記事】 第16回戦:Spencer Garnier(アメリカ) vs. Lee Shi Tian(香港)

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年10月11日

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 世界ランキング16位、リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianの名は、ここ最近響き渡っている。直近2年間で2度のプロツアー・トップ8入賞を達成している彼は、革新的なデッキを使うプレイヤーとしても知られているのだ。「ブルー・ムーン」がモダン環境で目覚ましい活躍を遂げた以上、彼が今大会で「ジェスカイの隆盛コンボ」デッキを使用していることに驚きはないだろう。

 普段は物静かなリーが、興奮していた。彼は努めてそれを隠そうとするが、どうしても溢れてくる。今ここで勝利すれば、スター選手の数々と肩を並べてトップ8に入賞する目算があるのだ。

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世界ランキング16位のリー・シー・ティエンは、自身3度目のプロツアー・トップ8入賞に手が届きそうなところにいる。スペンサー・ガルニア/Spencer Garnierにとっては、あと1勝で初のビッグ・フィニッシュを迎えられるのだ。

 ただし、リーはまずスペンサー・ガルニアを越えて行かねばならない。ガルニアが使用するのは、すでにその強さが証明されている「アブザン・ミッドレンジ」。彼はこのデッキを的確に操縦し、ここまでの道を切り開いてきた。ここで勝利すれば、恐らく自身初のプロツアー・トップ8入賞へ躍進することだろう。

ゲーム展開

 第1ゲームを始めるにあたって、リーには重圧を和らげるものが必要不可欠だった。彼は手札4枚でのスタートを強いられる。一方ガルニアの初手7枚は土地と《太陽の勇者、エルズペス》、《クルフィックスの狩猟者》、《英雄の破滅》というもので、リーの苦戦が予想された。必要なのは、速さ。わずか4枚の手札から4枚コンボを集めるのは至難の業だ。しかし彼のデッキには様々な技が秘められていて、それは確かに速かった。

 リーはゲーム序盤から《苦しめる声》を使い、《爪鳴らしの神秘家》を引き込んだ。そこから《神々との融和》に繋ぐと《ジェスカイの隆盛》を引き込み、さらに墓地のほとんどのカードを追放して、《時を越えた探索》。全部揃ったというのか? ガルニアは1枚ずつ目で追って確認することになった。それでも彼はマナを立たせていて、《残忍な切断》を放つ用意があった。ジェスカイ・コンボが、《森の女人像》から始まらないことを祈る。リーは欲しいものをすべて引き込んだ。しかし、クリーチャーに何かを貼れなければ、コンボは成立しない。

 次のターン、《森の女人像》が戦場に降り立った。まだすべてのピースが揃ったわけではないが、ガルニアとしてはダメージを稼がなくてはならない。彼は速いクロックを求め、タップ・アウトで《太陽の勇者、エルズペス》を呼び出した。クロックとして申し分ない。

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リーはマリガン後4枚からコンボを決められるのか?

 リーは今こそ最初で最後のチャンスだと感じ取った。《撤回のらせん》で《森の女人像》を対象に取り《双つ身の炎》を撃つと、コンボが始動する。10枚引いたところで、《贈賄者の財布》を引き込んだ。ガルニアは頷き、それが戦場に出るのを見送る。リーは初手4枚からこのコンボを決めようというのか?

 ここからリーは《贈賄者の財布》をバウンスし、唱え直し、無限にマナを生み出した――1体の《森の女人像》がマナを生み、もう1体は《撤回のらせん》に与えられた能力を駆使して。《ジェスカイの隆盛》が2体のクリーチャーをアンタップする。リーは《世界を目覚めさせる者、ニッサ》を呼び出した。その[+1]能力が土地を4つアンタップすると、それから彼女を手札に戻して唱え直す動きを4回繰り返し、すべての土地を4/4エレメンタルへと変えた。

 リーは《贈賄者の財布》を4,996回唱え直し(この回数がわかるのは、彼が土地を示して5000/5000と言っていたからだ)、一気に勝利を手にしたのだった。

ガルニア 0-1 リー

 私はリーに、彼のデッキは4枚までマリガンしても普通に勝てるのか、と尋ねた。「いやまったく。今大会で初めてだよ」実際のところ、プレイ・テスト中にも4枚からやってみたことはないという。

 2ゲーム目はガルニアがマリガンを喫した。彼は6枚でキープした、それは《思考囲い》と序盤の攻め手があったからだろう。リーは《撤回のらせん》、《ジェスカイの隆盛》、《森の女人像》、《苦しめる声》、そして3枚の土地という手札。彼の初手では、コンボ完成が極めて近かった。ガルニアの《思考囲い》により《森の女人像》は墓地へ送られ、彼はしばらく自由に動ける余裕を得た。

 ガルニアは3枚目の土地を引き込めなかったものの、《羊毛鬣のライオン》を繰り出してプレッシャーをかけ始めた。引けなかった土地も《悲哀まみれ》を撃ちたいタイミングでちょうどやって来て、これで2体のクリーチャーを取り去ると「占術」でもう1枚《悲哀まみれ》を用意する。

 ガルニアは熱を込めて手札のカードを放っていった。リーにターンを返すたび、彼がコンボに必要なパーツを引き込まないように祈り、頭を振った。毎ターン攻撃を続け、リーを着々と死に追いやっていく。ようやくリーのライフを残り4点まで落とすと、さらに《包囲サイ》で残り1点に。リーは最後のターンを迎えた。

 ガルニアは大きく息を吐き、カードを持つ手をテーブルに置いた。「『持ってる』のはあなたの方だ。それはわかる」彼は顔を上げ、椅子に座り直す。

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ガルニアは毎ターン、これが自分の最後にならないことを祈り、居住まいを正した

 リーは「持って」いなかった。

ガルニア 1-1 リー

 ここまで両プレイヤーともマリガンから勝利を掴んだ。しかし第3ゲームではキープの声があがり、ここで初めて両者とも7枚の手札でゲームを始めることになった。

 《双つ身の炎》、《爪鳴らしの神秘家》、《神々との融和》と十分な内容のリー。一方のガルニアも《森の女人像》、《包囲サイ》、《今わの際》、《異端の輝き》、そして土地という噛み合った手札だ。

 ガルニアの動き出しは速かったが、この時点ではリーを妨害するすべがなかった。彼はずっと綱渡りを続けた。毎ターン怯えながらタップ・アウトでターンを渡し、それで最後になることを恐れた。しかしタップ・アウトを恐れていては、勝利に不可欠なプレッシャーをかけ続けることができない。

 ガルニアは《包囲サイ》を繰り出し、身構える。何も起こらない。

 再び自分のターンを迎え、《風番いのロック》を戦場へ。再び身構えて待つ。何も起こらない。

 ターンを迎えるたびに、彼はリーのライフ総量を削っていった。

 さらなる攻撃で、15点あったリーのライフはついに4点まで落ち込んだ。恐らく次のターンがリーの最後のターンになるだろう。戦闘後、《包囲サイ》が彼のライフを残り1点にする。

 掛け値なしの最終ターン。

 ここに至るまで、リーは《ジェスカイの隆盛》を1枚たりとも見ていなかった。マナを生み出すものは戦場にあるが、手札には土地と《双つ身の炎》1枚のみ。だが彼には、ドロー・ステップが1回残されている。

 リーはデッキの一番上のカードを手札に加え、それをすぐには見なかった。カバレージ・スタッフがそのカードを確かめるため彼に近寄ったが、リー本人はそれを知らない。彼はひと息に手札を見て、私たちが確認したあるカードから動き始めた。

 カードの束の最後に、《ジェスカイの隆盛》が置かれた。

 リーはにわかに湧き立つと、何もないところから即座にコンボを始めた。《双つ身の炎》を唱えると《ジェスカイの隆盛》でカードの交換を行う。彼は再びカードを見ずに手札に加えた。

 そのカードは《苦しめる声》。それを唱えると、リーは大当たりを引き当てた――《時を越えた探索》2枚。彼の身体は椅子を引き、飛び上がった。歯の間から息を吐き出す音が聞こえる。

 その場の全員が緊張を解くのにぴったりな瞬間だった。リーは必要なものを引き込んだことを理解したのだ。ついに手に入れた。4枚までマリガンしたゲーム1を鮮やかに勝利したのち、リー・シー・ティエンは3ゲーム目最後の最後に《時を越えた探索》の力を使い、コンボ達成の道を見出したのだった。

 リーは文字通り椅子から飛び跳ね、椅子をひっくり返した。声援を送っていたチーム「MTG Mint Card」のチームメイトたちの元へ走り寄り、彼らの腕に抱えられる。

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友人でありチームメイトであるプレイヤーたちに抱きしめられ、感情を爆発させるリー。ここ2年間で3度目のプロツアー・トップ8入賞を果たした。

 フィーチャー・テーブルに座る者はみな、放心していた。リーはそこへ駆け戻り、スペンサー・ガルニアと力強く握手を交わす。

「ありがとう」と、リーがひとこと。彼を囲む全員が彼を祝福した。そしてリーは席に戻り、軽く足を抱えて涙を見せた。

 彼は声に応じて顔を上げる。「香港は今、苦境にあります」

「だからこの勝利には、大きな意味があるんです」

ガルニア 1-2 リー

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