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【観戦記事】 準々決勝:Ari Lax(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)

【観戦記事】 準々決勝:Ari Lax(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(日本)

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Ray "blisterguy" Walkinshaw / Tr. Tetsuya Yabuki

2014年10月12日

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 現在世界ランキング11位にその名を刻む渡辺 雄也は、ここ10年で日本が生んだプレイヤーの中でも優れた者として知られている。しかしプロツアー・トップ8入賞は意外に少なく、今大会を含めて3回目だ。そして、長いときを経てプロツアー・トップ8入賞を果たしたプレイヤーがまたひとり――それがアリ・ラックス/ Ari Laxだ。ラックスは昨年のグランプリ・トロント2013での優勝を含め多数のグランプリ・トップ8入賞を達成しているが、プロツアー・サンデーの大舞台には今日に至るまで縁がなかったのだ。

 ラックスはこの週末、渡辺を一度下している。『タルキール覇王譚』ドラフトで行われた第10回戦を、2勝1敗で勝利したのだ。今度は、渡辺の「ジェスカイ・ウィンズ」に対しラックスは「アブザン・ミッドレンジ」を差し向ける。

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アリ・ラックスは、長いときを経て果たしたプロツアー・トップ8入賞を記念すべきものにしようとこの戦いに挑む。一方、世界ランキング11位の渡辺 雄也は、3度目のトップ8が彼に初優勝をもたらすことを願っている。

ゲーム展開

「先手もらいます」とラックスが宣言する。

「いい選択だね」渡辺は笑顔で返した。

「このマッチアップなら、7:3で有利かな」ラックスは初手を引きながら付け加え、キープを宣言した。

 口火を切ったのは渡辺だった。彼は素早く《ゴブリンの熟練扇動者》を展開するが、しかしそれが生み出すゴブリンの軍勢は無謀にもラックスの側にいる2体の《クルフィックスの狩猟者》のうち片方に向かって突撃していくだけだった。できるのは「扇動」するだけだ。

 渡辺の側に青マナを生み出せる土地が出てこないのを見て取ると、ラックスの顔に笑いが広がった。《クルフィックスの狩猟者》が彼のライフを24点まで伸ばし、ライブラリーの一番上に《風番いのロック》が姿を見せると、歯が見えるほど笑顔になるのを止められない。

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アリ・ラックスの百面相

 渡辺はようやく《島》を引き込むと、《ジェスカイの魔除け》で《クルフィックスの狩猟者》1体を《風番いのロック》の上に戻した。そのターンの終わりにラックスは《完全なる終わり》で《ゴブリンの熟練扇動者》を取り去り、アンタップ後《思考囲い》を放つ。渡辺の手札は《カマキリの乗り手》2枚、《オレスコスの王、ブリマーズ》、《龍語りのサルカン》というものだった。ラックスは《カマキリの乗り手》を1枚墓地に送り、残った《クルフィックスの狩猟者》で攻撃後《包囲サイ》を繰り出した。

 渡辺は《オレスコスの王、ブリマーズ》を召喚し、攻撃してくる《包囲サイ》の元へ猫・兵士・トークンとともに向かわせた。ラックスは《オレスコスの王、ブリマーズ》を倒し、渡辺は《マグマの噴流》で《包囲サイ》を焼き払う。渡辺の猫・トークンに《カマキリの乗り手》が加勢したが、ラックスが繰り出す一対のロック鳥を相手にしては、小さな刃を重ねた一対のはさみ程度にしかならなかった。

 ラックスはロック鳥たちで攻撃し、ライフを29まで伸ばす。渡辺はクリーチャーのタップを含めて放った《かき立てる炎》を《風番いのロック》に差し向けたが、これでライフが12点まで落ち込んだ。ラックスはそのターンの締めに《太陽の勇者、エルズペス》を呼び出し、3体の兵士・トークンを生み出した。

 渡辺は頭を抱え、選択肢を吟味した。戦場では彼の猫・トークンと《カマキリの乗り手》が、3体の兵士と《クルフィックスの狩猟者》、《風番いのロック》が生み出したトークン、そして《太陽の勇者、エルズペス》と対峙している。《カマキリの乗り手》が《太陽の勇者、エルズペス》にダメージを加えた。

「そいつをなんとかしなきゃね」渡辺がさらなる《マグマの噴流》で《太陽の勇者、エルズペス》を退場させると、ラックスが言った。

 ラックスはゲーム序盤に戻された《クルフィックスの狩猟者》を再びプレイし、ライブラリーの一番上から土地を置くとその下には《思考囲い》が見えた。彼は攻撃で渡辺のライフを残り6点にし、ターンを渡した。渡辺はドローを確認すると、カードを片付けたのだった。

ラックス 1-0 渡辺

 ラックスはサイドボードを手早く済ませ、トイレ休憩を取った。そこまで書かなくても、と思われるかもしれないが、これが大事なことだったのだ。

 第2ゲームはラックスから攻勢を始めた。《思考囲い》を渡辺に差し向けると、《軽蔑的な一撃》、《ジェスカイの魔除け》そして《龍語りのサルカン》が姿を見せる。ラックスは《ジェスカイの魔除け》を選択し、ターンを渡した。渡辺はラックスのターンのエンド時に《溢れかえる岸辺》を生け贄に捧げた。

「《ゴブリンの熟練扇動者》は上に来ないで!」渡辺のデッキをシャッフルしながら声をあげるラックス。

「オーケー、じゃあ《カマキリの乗り手》でいいよ」渡辺は首肯し、ニヤリと笑う。

「どっちもダメだよ」ラックスは笑い声を飛ばした。

 渡辺はドロー後土地を置いて、ターンを渡した。ラックスが《クルフィックスの狩猟者》を繰り出すと、ライブラリーの一番上から《集団の石灰化》がめくれる。ラックスは「あちゃー!」と声に出した。

 これには面白いエピソードがある。この試合前、ラックスは舞台裏で、このマッチアップなら《集団の石灰化》「以外」全部のサイド・カードを入れるつもりだと語ってくれたのだ。彼は私たちを驚かせようとしたのだろうか? いや、そうではない。トイレに行きたいがためにサイドボードを慌てて済ませてしまったことを、自分で暴露したのだ。

 渡辺は土地を置いてターンを渡す。ラックスは《クルフィックスの狩猟者》をもう1枚繰り出し、2発目の《思考囲い》を放った。渡辺は2枚目の《龍語りのサルカン》を引いており、ラックスはそれを取り去った。1枚目の《龍語りのサルカン》が戦場に降り立つと、[-3]能力を《クルフィックスの狩猟者》へ。残った忠誠度は返しの攻撃を受けて失った。

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表情豊かなラックスに対して、渡辺 雄也の持つ顔はただひとつ。「勝負師の顔」だ。

 その後は両プレイヤーとも戦場を任せられるようなカードをあまり引き込めなかった。ラックスは渡辺に2点で攻撃する。《クルフィックスの狩猟者》が、ラックスのライブラリーの一番上から渡辺が意識していた《包囲サイ》を公開した。渡辺の手札では《軽蔑的な一撃》がくすぶっていることを知っていたラックスは、そのときが来るまで《包囲サイ》を温存しておくことを選んだ。彼の攻撃により、渡辺のライフは残り12点に。

 渡辺は再びドローからターン・エンド。ラックスのターンを経て、残りライフ10点。続く《真面目な訪問者、ソリン》は、《軽蔑的な一撃》で打ち消した。

 渡辺はこのゲームの勝利を求めて思案を重ねた。ラックスが憂いなく《包囲サイ》を繰り出せるようになったのはわかっている。彼は《龍語りのサルカン》を呼び出し、《オレスコスの王、ブリマーズ》も戦場に送った。《龍語りのサルカン》は《クルフィックスの狩猟者》を焼き払い、渡辺はタップ・アウトでターンを返す。

 今度はラックスが考える番だ。渡辺のターンの終わりに《英雄の破滅》で《龍語りのサルカン》に対処すると、アンタップ後《胆汁病》と《悲哀まみれ》で《オレスコスの王、ブリマーズ》も除去。渡辺はドローだけしてターンを渡す。ラックスは《真面目な訪問者、ソリン》を呼び出し、ソリンは吸血鬼・トークンを生み出した。

 渡辺は《かき立てる炎》で《真面目な訪問者、ソリン》を退場させたが、吸血鬼・トークンが彼のライフを残り8点に落とす。ラックスはさらに《真面目な訪問者、ソリン》を繰り出し、吸血鬼がもう1体現れた。

「ターン・エンドに火力が飛んでこないのはありがたい」渡辺がドロー・ステップを迎えると、ラックスがそう口にした。

 《思考囲い》と《ラノワールの荒原》により、ラックスのライフも残り11点まで落ち込んでいた。渡辺の手にかかれば、またたく間にそれ以上のダメージを送り届けることもあり得るのだ――燃え上がるような高速輸送で。だがしかし、眷属を引き連れたプレインズウォーカーを前にして残りライフ8点というこの状況は、渡辺にとって好ましくなかった。

 ラックスは自軍に+1/+0の修整と絆魂を与えて攻撃。吸血鬼1体が《かき立てる炎》で除去されたが、もう1体の攻撃が通り、ラックスのライフを14点に伸ばし渡辺のライフは5点に落ちた。渡辺は《カマキリの乗り手》を繰り出し、《真面目な訪問者、ソリン》に攻撃。ラックスが《胆汁病》を見せると、渡辺はただ笑い、頷いた。自分を倒した男を祝福し、握手を求める。

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渡辺 雄也は、敗北を喫したときでも常に礼儀を忘れない。これは誰にでも真似できることではないだろう。
アリ・ラックスが渡辺 雄也を2連勝で下し、準決勝へ!
Ari Lax - アブザン・ミッドレンジ
プロツアー『タルキール覇王譚』 トップ8 / スタンダード
4 《砂草原の城塞》
4 《疾病の神殿》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《森》
2 《コイロスの洞窟》
2 《ラノワールの荒原》
2 《平地》
1 《マナの合流点》
1 《静寂の神殿》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(24)-

2 《エルフの神秘家》
4 《森の女人像》
4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》

-クリーチャー(16)-
4 《思考囲い》
4 《アブザンの魔除け》
3 《英雄の破滅》
2 《真面目な訪問者、ソリン》
2 《完全なる終わり》
2 《英雄の導師、アジャニ》
3 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(20)-
3 《胆汁病》
1 《霊気のほころび》
3 《悲哀まみれ》
2 《残忍な切断》
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》
1 《対立の終結》
1 《リリアナ・ヴェス》
1 《砂塵破》
1 《集団の石灰化》

-サイドボード(15)-
渡辺 雄也 - ジェスカイ・ウィンズ
プロツアー『タルキール覇王譚』 トップ8 / スタンダード
4 《神秘の僧院》
4 《凱旋の神殿》
3 《戦場の鍛冶場》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《山》
3 《シヴの浅瀬》
2 《島》
2 《平地》

-土地(24)-

4 《道の探求者》
4 《ゴブリンの熟練扇動者》
4 《カマキリの乗り手》
3 《オレスコスの王、ブリマーズ》

-クリーチャー(15)-
2 《神々の思し召し》
4 《稲妻の一撃》
4 《マグマの噴流》
4 《ジェスカイの魔除け》
4 《かき立てる炎》
3 《龍語りのサルカン》

-呪文(21)-
3 《マグマのしぶき》
1 《神々の思し召し》
4 《停止の場》
3 《軽蔑的な一撃》
1 《紅蓮の達人チャンドラ》
2 《予知するスフィンクス》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-サイドボード(15)-

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