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プロツアー『マジック2015』

観戦記事

準々決勝:市川ユウキ(日本) vs. Jackson Cunningham(カナダ)

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Josh Bennett / Tr. Masashi Koyama

2014年8月3日


 たった4回目のプロツアーにして、日本の市川ユウキは2度目のトップ8入賞を記録している。実際、彼は今シーズン複数回日曜日に登場した唯一のプレイヤーなのだ。彼のこの週末の望みは、プロツアー『ニクスへの旅』のトップ4という成績からさらに前進し、トロフィーを掲げることだ。そしてより彼を駆り立てているのは、もしこの準々決勝を突破すれば、渡辺雄也から日本代表チームのキャプテンを奪取できるということだ。

 対するは、キャリアにおいて最初の大きな第一歩を踏み出したプレイヤーだ。ジャクソン・カニングハム/Jackson Cunninghamは、カナダの宝として知られるジェフ・カニングハム/Jeff Cunninghamを兄に持つ。今彼はジェフの影から抜け出し、スポットライトの中へと踏み出した。プロツアー予選を抜けたプレイヤーが栄光へ向けて多少なりとも神経質になってしまうことは仕方のないことだが、カニングハムは週末を通して落ち着き、悠然としたプレイを刻みつけている。

デッキ

 市川がプレイしているのは、よく知られているジャンド・プレインズウォーカーズ・デッキの改訂版で、『基本セット2015』の非常に強力なカード、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》でアドバンテージを獲得する。彼のデッキは印象的な11枚ものプレインズウォーカーを搭載しており、脇を固める《エルフの神秘家》と、《森の女人像》でマナ加速していく構成となっている。あちこちで散見される《クルフィックスの狩猟者》も自然に入り、細かいながらも用途の広い除去呪文のパッケージがデッキの完成度を高めている。

 カニングハムは週末を通して、昨年のプロツアー『ドラゴンの迷路』でクレイグ・ウェスコーが優勝を飾ったことを思い起こさせるような緑白ビートダウンデッキで対戦相手をなぎ倒してきた。デッキの持ち味は、タイトなマナカーブで構成される効率のよいクリーチャーたちだ。《払拭の光》で障害を除去し、多様な用途を持つ《セレズニアの魔除け》と致命的な《群れの統率者アジャニ》でフィニッシュを決める。

試合

「昨晩は眠れた?」とカニングハムが尋ねた。

 市川は肩をすくめて、顔をしかめた。「ちょっとだけ...まあまあですね」

 私はカニングハムに何か得ることはできたかと尋ねた。

「あんまりだね。厳しいよ。何だって不安だし、11時にはご飯を食べて寝なきゃいけないからね。」

 市川は彼の初手を7枚でキープした。カニングハムは難しい顔をして長い時間考えていたが、キープすることを選んだ。

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ジャクソン・カニングハムは彼の初めてのプロツアーを記録に残るものにしようと虎視眈々とうかがっている。一方、市川はこの試合を勝てばワールド・マジック・カップのキャプテンの座が手に届くところまで来ている。

 市川は《悪意の神殿》で上のカードをそのままにしてゲームを開始した。カニングハムは《寺院の庭》で2点のライフを支払い、《実験体》を召喚した。市川は《ラノワールの荒原》を置いてターンを返すと、カニングハムは《復活の声》を彼の軍勢に追加し、対応して市川は《ゴルガリの魔除け》で《実験体》を除去した。彼はアンタップし、手札を少し揺らして、2点を払って《踏み鳴らされる地》をプレイし、さらに《ラノワールの荒原》から1点を受けて、《クルフィックスの狩猟者》を送り出した。すでにライフは16となっていたが、戦闘で《クルフィックスの狩猟者》を失うリスクを避けて、ライフは14まで落ち込むこととなった。カニングハムはさらに《ロクソドンの強打者》を盤上に追加した。市川はアンタップすると、ライブラリートップからもう1枚の《踏み鳴らされる地》を、差し引き1点のライフを支払いセットすると、4マナから《歓楽者ゼナゴス》をプレイし、2/2のサテュロスを従えた。

 カニングハムはアンタップすると、彼の選択肢について検討した。彼が選んだのは、《歓楽者ゼナゴス》の脅威を無視して両方のクリーチャーで直接市川に攻撃することだった。市川は《復活の声》をトークンでブロックし、《ロクソドンの強打者》をスルーした。ダメージはそのまま与えられ、市川のライフは9まで落ち込み、カニングハムはスピリット・トークンを手に入れることとなった。カニングハムは2点を支払い、さらなる《寺院の庭》をアンタップ・インすると、《陽刃のエルフ》と《群れの統率者アジャニ》を送り出し、プレインズォーカーは《ロクソドンの強打者》を5/5とした。

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これが彼にとって初めてのプロツアーなのにもかかわらず、カニングハムは週末を通して、プレイが示す通りの強心臓を見せてきた。

 市川にとっては切迫している状況のように見えた。《群れの統率者アジャニ》は次のターンにどのクリーチャーでも空を飛ばして、二段攻撃を与え攻撃へ送り出すことができる。市川はアンタップすると、《変わり谷》をプレイして、ライフを得た。2マナから《ミジウムの迫撃砲》で《陽刃のエルフ》へと差し向ける。《歓楽者ゼナゴス》が早急に新たなトークンを作り出し、《クルフィックスの狩猟者》と共に《群れの統率者アジャニ》に向けて突撃した。4点のダメージが入れば、《群れの統率者アジャニ》の飛行能力を止めることができる。ゆえにカニングハムはトークンを2/2スピリットでブロックした。アジャニの忠誠度は3まで落ち込んだ。市川は3マナを立ててターンを返す。カニングハムは素早くメンタルチェックを済ませると、死に至らせる《ロクソドンの強打者》を空へと送り出し、市川は即座にカードをたたんだ。

 市川はまたも「神殿」でトップのカードをそのままにしてゲームを開始した。カニングハムの1ターン目には何もなく、市川はゆったりと2枚目の占術土地を置くことができた。彼はトップのカードを下へと送り、ターンを返した。カニングハムは《羊毛鬣のライオン》を2ターン目に召喚すると、市川はまたも揺れながら《変わり谷》と《漁る軟泥》をプレイした。彼は3ターン目を返し、カニングハムが《ロクソドンの強打者》を召喚するのを眺めていた。

 市川は劣勢を巻き返す手段を欲していた。彼は選択肢を検討すると、指で計算してから、《森の女人像》を出し、《ミジウムの迫撃砲》を《ロクソドンの強打者》に差し向けることを決断した。カニングハムは4枚目の土地を置いてターンを返した。市川は占術でカードをさらに下に送ってから5マナをオープンの状態でターンを返した。予想通り、カニングハムはターン終了時に《ワームの到来》をキャストした。市川は解決を許可すると、《突然の衰微》をトークンに打ち除去した。さらに2マナを出し、2枚の《マグマのしぶき》を《羊毛鬣のライオン》に差し向けた。カニングハムの盤上は一掃されたが、市川の手札は空になった。

 カニングハムは《実験体》を《復活の声》で2/2に進化させながら再構築していく。市川はカードを引くと、《ロクソドンの強打者》を《漁る軟泥》で追放し、そのまま返す。カニングハムは6枚目の土地を置き盤面をじっと眺めていた。最終的に、両方のクリーチャーで攻撃することを決断した。市川は《森の女人像》をふらふらさせていたが、結局、《復活の声》の前に送り出すことにした。カニングハムは5マナをタップし、《加護のサテュロス》を授与した。市川のライフは10まで落ち込み、カニングハムはもう1枚手札にカードを残している。市川は2枚目の《漁る軟泥》をプレイしてターンを返した。

 カニングハムは物思いにふけると、ジャッジを呼んだ。「ええと...もうちょっと...考える時間をもらえるかな?」

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市川は4回しかプロツアーでプレイしたことがないにも関わらず、巧みに華々しくプレイする技術がある。

 ジャッジは愛想よく微笑んだ。「そんなにはありません。ほんの少しだけです。これは普通のマジックのゲームなのですから。」

 競技者たちが何千ドルもかかる試合が普通のものなのかと意見を申し立てたいとしても、ジャッジは同じ考えを持ってはくれないようだ。

 カニングハムはため息をついて、6/4となった《実験体》を単独で攻撃に向かわせた。《森の女人像》が差し出され、カニングハムはターンを返した。市川は少考して、《漁る軟泥》の片割れの能力の起動を保留した。市川はカードを引き、《化膿》を《実験体》へと打ち込んだ。《加護のサテュロス》は単なるクリーチャーへと戻り、さらなる《ワームの到来》とともに攻撃に行く準備ができている。彼はアンタップすると、クリーチャー全てで攻撃へと向かった。

 市川は深く考えこんだが、思うように決断を下せないように見えた。彼はゆっくりと《漁る軟泥》をアタッカーたちの前に押し出した。2体の《漁る軟泥》のうち、2/2が《加護のサテュロス》を、3/3が《復活の声》をブロックした。市川はそのままダメージの解決を許可し、彼のライフは5まで落ち込み、《漁る軟泥》の片方を失うこととなった。結果、カニングハムはスピリット・トークンを手に入れた。市川はターンエンドに《漁る軟泥》を4/4に成長させた。彼はドローすると、《変わり谷》を含む6マナを立ててターンを渡した。

 カニングハムはゆっくりと慎重にプレイを続けていた。彼はアンタップすると、ワーム・トークンだけで殴りかかった。市川は今や4/4となった《漁る軟泥》をそっと動かしてブロックさせた。カニングハムが優先権をパスすると、市川は《漁る軟泥》を5/5へと成長させる。カニングハムはこれを待っていたと言わんばかりに《セレズニアの魔除け》をプレイし、《漁る軟泥》を追放しにかかる。市川は2マナをタップし、《ゴルガリの魔除け》を見せながら宣言する。「マイナス1、マイナス1。」 隣のホールで中継を見ていた観衆が大きな歓声を上げる。カニングハムの《セレズニアの魔除け》が打ち消される。適正な対象はもはや存在しないのだから。そして、市川はさらにカウンターを《漁る軟泥》の上に乗せ、4/4となったワームを討ち取った。あわれ、孤独な《復活の声》のスピリット・トークンは死んでしまった。

 市川の《漁る軟泥》はすぐに8/8になり、《変わり谷》と協力してカニングハムのライフを半分削り、そして次の攻撃で最終ゲームへともつれ込むことになった。

 カニングハムはゲームを決めるのに優位な先手を持っていた。《実験体》から《羊毛鬣のライオン》で口火を切った。市川が2ターン目に《思考囲い》すると見えたのは、《寺院の庭》と2枚の《羊毛鬣のライオン》、そして《復活の声》だった。《羊毛鬣のライオン》を1枚取り去ったが、もはや完全に劣勢に立たされている。《エルフの神秘家》を召喚するのに2点のライフを支払わなければならなかった。カニングハムはアンタップすると、2枚目の《羊毛鬣のライオン》をプレイし、2回目の攻撃を加えた。市川はそれを受けると、残りライフはたったの8だ。彼のターンにセットした《奔放の神殿》が意味しているのは、たった3マナしか使うことができないということだ。彼の《エルフの神秘家》がもう1体を呼び、《戦慄掘り》で《羊毛鬣のライオン》の片方に対処した。

 カニングハムは4枚目の土地を置くと、攻撃を仕掛けた。市川の新たな《エルフの神秘家》が主人を健気に守り死亡した。彼はもはや残りライフが5まで落ち込んだ。さらに悪いことに、カニングハムは4マナを立ててターンを返したのだ。これは間違いなく彼が《ワームの到来》を引いたというサインだ。市川は《クルフィックスの狩猟者》をプレイし(ライブラリーの上は《森の女人像》)、手札の《》がライフを6へと引き戻した。カニングハムは予想通りの《ワームの到来》をプレイし、アンタップした。彼は《羊毛鬣のライオン》を怪物化することができるようになる5枚目の土地を置き、軍団を送り出した。

 市川は《クルフィックスの狩猟者》をライオンに差し出し、《実験体》を通した。カニングハムが《羊毛鬣のライオン》を怪物化すると、市川にはほとんど何も残されていなかった。怪物たちが再度襲来するとに、市川はほんの少しだけ息をついて、微笑んだ。「グッド・ゲーム」と言葉を残し、カードを片付けたのだった。

カニングハムが市川を2-1で下し、準決勝進出!
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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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