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【戦略記事】 エルドラージの支配

【戦略記事】 エルドラージの支配

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Jacob Van Lunen / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年2月6日

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 この週末のモダン部門で起きた一大事、それは《ウギンの目》と《エルドラージの寺院》による加速から《難題の予見者》や《現実を砕くもの》といった強力なカードへ繋げる「エルドラージ」デッキの成功だった。プロツアー『ゲートウォッチの誓い』を迎える以前よりこのデッキは知られていたものの、ここまで完璧に、徹底的に会場を支配するとは誰が予想していただろうか。

 「エルドラージ」デッキは、ふたつのバージョンのいずれも目覚ましい活躍を見せた。「ChannelFireball」と「Face-to-Face Games」の大型チームは強い相互作用と安定感を持ったバージョンを作り上げ、現在のモダン環境へあらゆる方角から侵攻していった。一方、結成間もないチーム「East West Bowl」は青赤のバージョンを生み出し、今大会で特筆すべき存在感を放っている。

 「ChannelFireball」と「 Face-to-Face Games」は、いずれもマジック界のベスト・チームだ。達人揃いのこのグループが今大会で最も活躍したデッキのひとつを生み出したというのは、驚くことではないだろう。

「ChannelFireball」と「Face-to-Face Games」の「無色エルドラージ」
モダン
2 《荒地》
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウギンの目》
4 《ちらつき蛾の生息地》
3 《変わり谷》
4 《幽霊街》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(24)-

4 《エルドラージのミミック》
2 《呪文滑り》
4 《作り変えるもの》
4 《猿人の指導霊》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
4 《果てしなきもの》

-クリーチャー(26)-
2 《漸増爆弾》
4 《四肢切断》
4 《虚空の杯》

-呪文(10)-
1 《呪文滑り》
3 《忘却蒔き》
4 《大祖始の遺産》
3 《はらわた撃ち》
2 《真髄の針》
1 《漸増爆弾》
1 《歪める嘆き》

-サイドボード(15)-

 エルドラージを取り巻く活気は以前からあった。だがほとんどのプレイヤーが試していたのは様々な色の組み合わせだった。白黒で《未練ある魂》や《流刑への道》を使うタイプや青黒で《希望を溺れさせるもの》を用いる形、それから黒緑で《古きものの活性》を駆使するものもあった。ジェイコブ・ウィルソン/Jacob Wilsonも、当初は《希望を溺れさせるもの》を使ったものや《エルドラージの寸借者》を利用したものなど、様々なバージョンを試したという。しかしその後、ふたつのスーパー・チームはこれらの選択肢をすべて避けた。高い安定性を持つ無色のバージョンを好んだのだ。確かにこのデッキは、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》を採用することで黒マナを用いて《四肢切断》を唱えることができるようになってはいるものの、その本当の目的は、《ウギンの目》がさらにマナ加速できるようになることだった。

 無色にすることでクリーチャー化する土地や《幽霊街》を多く採用できるようになった、とウィルソンは解説する。《ちらつき蛾の生息地》は「感染」や「親和」に対して効果抜群であり、《幽霊街》もまたこれらのマッチアップに有効で、さらに《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《ウルザの塔》などの土地に対抗する手段にもなるのだ。

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この週末に「エルドラージ」デッキを操ったプレイヤーのひとり、チーム「Face-to-Face Games」のメンバー、ジェイコブ・ウィルソン。

 ウィルソンはこのデッキが「死せる生」や「親和」との相性が最悪であることを意識し、《虚空の杯》を採用することで相性差を一気に埋めた。また《虚空の杯》はX=1でプレイすることで「ストーム」や「感染」といったデッキを封殺し、速さに勝るコンボ・デッキも咎めることができる。さらに驚くべきことは、《猿人の指導霊》の存在だろう。これにより「エルドラージ」デッキは1ターン目に《虚空の杯》をX=1で唱えることができるようになり、それだけでモダン環境に存在する多くのデッキに対して勝利の道が開けるのだ。ウィルソンは、モダンのデッキの大半が1マナのカードを12枚~28枚採用していることを突き止めた。まさに、《虚空の杯》を投げ込むのに絶好の機会だったわけだ。

 ウィルソンは、《猿人の指導霊》がカード・アドバンテージの損失に十分見合うものであると確信している。このデッキでは2ターン目か3ターン目に何としてもビッグ・プレイが必要であり、早いターンで《現実を砕くもの》を繰り出せるならカード1枚分の損失は問題にならないのだ。

 メインから投入された《呪文滑り》は大型のエルドラージを除去から守り、同時にモダンのコンボ戦略として勢いに乗っている「感染」に対する解答にもなっている。

 また《漸増爆弾》は「エルフ」や「マーフォーク」、あるいはトークンの群れを対処する手段となる。これによりサイズで勝る怪物を攻撃へ送り込めるようになり、ゲームを素早く終わらせることができるのだ。

 ジェイコブ・ウィルソンとサミュエル・パーディー/Samuel Pardeeは、この週末のモダン部門におけるベスト・デッキを生み出し、世界最高のチームふたつを勝利へ導いた。だが驚くべき成績を叩き出したチームは彼らだけではない。無名選手を含めた新興のチーム、「East West Bowl」もまた、独自の「エルドラージ」デッキを作り上げたのだ。

チーム「East West Bowl」の「青赤エルドラージ」
モダン
2 《島》
2 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
4 《シヴの浅瀬》
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウギンの目》
3 《魂の洞窟》
1 《宝石の洞窟》

-土地(24)-

4 《エルドラージのミミック》
4 《エルドラージの寸借者》
4 《空中生成エルドラージ》
4 《不快な集合体》
1 《破滅を導くもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
4 《希望を溺れさせるもの》
4 《果てしなきもの》

-クリーチャー(33)-
3 《四肢切断》

-呪文(3)-
1 《宝石の洞窟》
3 《頑固な否認》
2 《はらわた撃ち》
2 《大祖始の遺産》
1 《墓掘りの檻》
3 《虚空の杯》
3 《ハーキルの召還術》

-サイドボード(15)-

 私たちが目にしてきた他の「エルドラージ」デッキとは一線を画すこのデッキについて、アンドリュー・ブラウン/Andrew Brownに話を聞いてみた。

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チーム「East West Bowl」から、アンドリュー・ブラウン/Andrew Brownと他に3人のメンバーが「青赤エルドラージ」を手に今大会へ挑み、大きな成功を収めた。

 ブラウンが最初に取り挙げたのは、3マナ域のクリーチャーの数と、それが《ウギンの目》と組み合わさったときの爆発力だった。3マナ域のクリーチャーを最初に繰り出せるのは2ターン目だが、続く3ターン目にはもう2体追加できるのだ。

 3マナ域のクリーチャーの内容について、ブラウンは《空中生成エルドラージ》がモダンでは場違いに感じられることは認めながらも、このカードが実は「親和」や「感染」に滅法強くこのフォーマットにうってつけなのだと明かした。また《エルドラージの寸借者》は同系戦において状況を一変させ、ゲームを素早く終わらせることができるという。そして《不快な集合体》は《野生のナカティル》などに対して強固な壁となり、ゲーム後半には恐ろしい脅威へと変わる。

 ブラウンはさらに、《希望を溺れさせるもの》も環境に極めてマッチしている同系殺しであると評価する。「このデッキの最強カードなんじゃないかと思うときもありますよ」と、彼は付け加えた。

 こうして、モダンの世界に新たな悪役が登場した。エルドラージは今、競技シーンに荒廃をもたらしている。ぜひ明日の決勝ラウンドにも注目し、このまま新たなデッキが今大会を制圧するのか、それとも他のアーキタイプがエルドラージの支配を食い止めるのか、その目で確かめてほしい。

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