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【観戦記事】 第6回戦:Christian Calcano(アメリカ) vs. Paul Rietzl(アメリカ)

【観戦記事】 第6回戦:Christian Calcano(アメリカ) vs. Paul Rietzl(アメリカ)

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Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年7月31日

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クリスティアン・カルカノ/Christian Calcano(スゥルタイ・コントロール)vs. ポール・リーツェル/Paul Rietzl(赤アグロ)

 プロツアーには、いつも大きなものがかかっている。だがプラチナ・レベル到達を目指すクリスティアン・カルカノと現在世界ランキング6位でプレイヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルに手を伸ばすポール・リーツェルの両名にとっては、「大きな」もの程度では済まされない。

 こうして、ドラマ性の高い試合が生まれることになった。この戦いに挑むのは、2014-2015年シーズンのベスト・プレイヤーたちの中のふたりだ。カルカノはプラチナ・レベル到達のために今大会、少なくとも28点のマッチ・ポイント(9勝6敗1分以上の成績)を必要としている。一方のリーツェルは、今シーズンのプレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースの走者だ。彼はこの週末、マジック最高の栄誉を決めるレースで、新たに殿堂顕彰者の仲間になることになったエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichをプロ・ポイント7点差で追いかけている。

 それだけのものがかかった試合に臨む両プレイヤーだが、まさかそんな両者がゲーム前に雑談に興じるとは思いもしなかった。

「さて、こんな感じでいいかな?」リーツェルがカルカノに声をかけた。ライフを記録するメモをさっと取り出して彼に見せると、カルカノのところに「ニューヨーク」と書かれ(カルカノは生粋の「メッツ」ファンなのだ)、リーツェル自身のところには「ボストン」と書かれていた(リーツェルは「レッドソックス」一筋のファンだ)。フィーチャー・マッチ・エリアを挟む両者が頷き合い、野球のトレード期限についての詳しい議論が始まった。

 人生最大の試合のひとつを迎えたプレイヤーは、皆こうなるものなのだろう。

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第6回戦にて、ニューヨークとボストンの伝統の試合が行われる。クリスティアン・「メッツ」・カルカノとポール・「レッドソックス」・リーツェルによる一戦だ。

 カルカノが携えるのは「スゥルタイ・コントロール」。彼のプレイヤーとしての強さを活かせる強力なデッキであり、《黄金牙、タシグル》という頼りになる脅威を扱えることでアグレッシブなデッキを止めることもできる。

 一方のリーツェルは、彼の得意とする「赤アグロ」にその身を落ち着けた。1マナ域のクリーチャー10枚を大量の火力呪文でバックアップする彼のデッキは、対戦相手が守りを固める前にゲームを素早く奪うだろう。

ゲーム展開

 カルカノが(このマッチアップの肝となる)ダイスロールに勝ち、《神秘の神殿》からゲームを始めた。リーツェルは早速《僧院の速槍》を戦場に出すと、続くターンに《大歓楽の幻霊》を繰り出した。

 まだ《サテュロスの道探し》を出せたのみで、カルカノは早くもアグレッシブなデッキを前に追い詰められていた。序盤の《大歓楽の幻霊/Eidolon of the Great Revel(JOU)》で、ライフに圧力をかけられただけでなく、軽い除去呪文を唱えることにも罰則を与えられた彼は、何か特別なものを用意する必要があった。さもなければ、早くもゲームを落としてしまう危険性がある。

 その特別なものとは、《黄金牙、タシグル》だ。これでカルカノは落ち着くことができたように見えた。だがそれも、最高のタイミングでリーツェルのもとへ《タイタンの力》が駆けつけるまでのことだった。《タイタンの力》はバナナ・キングを盤面から追い出すだけでなく、カルカノに与えるダメージを増やし、彼のライフを残り16点まで削ったのだった。

 カルカノにできたのは、《ヴリンの神童、ジェイス》を繰り出すだけだった。それもチャンプ・ブロックの役目を果たすのみで、続く《極上の炎技》がカルカノのライフを8点まで落とした。《衰滅》で盤面を一掃したものの、それでリーツェルの動きが鈍ることもなかった。彼は続けて2体のクリーチャーを戦場へ送り出し、とどめを刺せるダメージを再び確保したのだ。

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「ボストン14点、ニューヨーク5点」 リーツェルはライフ総量を並べて確認する

 続く攻撃がカルカノに突き刺さり、彼が《ラノワールの荒原》から色マナを出してリーツェルのクリーチャーを片方除去すると、残りライフは1点になった。

 それでも、盤面上ではカルカノ有利に見えた。ターンの終わりに《英雄の破滅》を放つと、このゲームに勝てるかどうか、というところまで来ることができた。だがそれも、リーツェルが対応して《乱撃斬》を撃ち込みゲームを奪うまでのことだった。

 マジックの試合はいったん置いて、リーツェルとカルカノは本題に戻った――野球の話だ。彼らは互いに子どもの頃のひいきのチームの思い出を語り合い、この試合を終わらせる必要がないならいつまでも話を続けそうな勢いだった。

 リーツェルの後攻で始まる2ゲーム目、彼は開始早々リスクの計算をすることになった。手札には強力な赤の呪文が6枚並び、《山》が1枚しかない。殿堂顕彰者はリスクを取ってチャンスにかけたが、そこへカルカノが《強迫》で切り込み、リーツェルの手札を暴露した。

「さすが」 リーツェルがライブラリー・トップで待ち受けていた土地を引き込み《大歓楽の幻霊》を唱えると、カルカノが笑った。これでリーツェルの手札が欲張り過ぎたものから最高のものになったのだ。

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プレッシャーをかけていくリーツェルの「赤アグロ」

 リーツェルのクリーチャーの群れが駆け抜けて攻撃が終わると、このゲームは転換点を迎えた。カルカノの残りライフは4点。リーツェルの手札には、仕事を完遂すべく火力呪文が大量に待機している。解答を求めてデッキの一番上を見たカルカノは、あることを知った。この試合では、グッド・ターンがどちらにも訪れるのだということを。

 カルカノのライブラリー・トップから、《黄金牙、タシグル》が戦場に現れた。さらに最初から手札に握っていた《部族養い》が、彼のライフを危険域から一気に14点もの安全圏まで回復させた。

 それでもリーツェルの勢いは止まらず、《極上の炎技》を駆使して《黄金牙、タシグル》を倒すと《紅蓮の達人チャンドラ》を繰り出し、再び攻勢に乗り出した。

 《紅蓮の達人チャンドラ》は大きなカード・アドバンテージを生み出したが、それは《黄金牙、タシグル》を手札に戻したカルカノの《棲み家の防御者》も同じだ。連続して攻撃を受けた《紅蓮の達人チャンドラ》は倒れ、さらに2枚目の《部族養い》がカルカノのライフを手の届かないところまで上げると、両者の勝負は3ゲーム目に向かったのだった。

 最初のふたつのゲームがこつこつ用意を整えて点をとったものだとすれば、3ゲーム目はまさにホームランと言えるものだった。

 ゲームが始まると、リーツェルがすかさず《稲妻の狂戦士》の能力を起動しながらカルカノを攻撃し、2ターン目に彼のライフを17点にした。その後にも《かき立てる炎》を本体に撃ち込み、アグレッシブなプランを続ける。

 カルカノは、対戦相手が火力呪文でライフを攻め始めた場合の戦い方を心得ていた。彼は続くターンに《黄金牙、タシグル》を繰り出し、守りを固めることに全力を尽くした。同時に《稲妻の一撃》が彼のライフを残り10点まで落とす。リーツェルの攻撃は止んだものの、ダメージ自体が止まったわけではなかった。《稲妻の一撃》がカルカノに向けてもう1枚放たれた。しかしそのとき、彼は駆けつけた《部族養い》を対応して唱え、10点のライフを回復したのだ。

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「スゥルタイ・コントロール」と、《部族養い》という思いもよらない1枚に支えられながら、アグレッシブな戦略をとる対戦相手との試合を制するための道を探るカルカノ

 積み重ねた動きが1枚のカードで覆され、リーツェルはロープ際まで追いやられた。それでも彼は《前哨地の包囲》を「カン」モードで置き、そこから脱する道を探る。だがそれはすぐにはリーツェルの助けにならず、カルカノの《黄金牙、タシグル》が攻勢に出ると決着までの短いクロックが刻まれた。それでも2枚目の《前哨地の包囲》を見つけると、リーツェルは毎ターン多くのカードを手にし、《黄金牙、タシグル》を焼き払うことに成功した。

 完全に閉ざされたと思われた勝利への扉を、リーツェルは少しずつこじ開けていく。カルカノはさらに2回にわたり《部族養い》を唱えてライフを28点としたが、それも残り3点となったリーツェルのライフを削りきる手段がなければ意味がない。

 デッキ・トップから現れた《棲み家の防御者》が墓地の《棲み家の防御者》を戻し、脆さはあるもののカルカノは戦線を組み立てることができた。リーツェルは反撃を続け、カルカノのライフを20点以下まで引き戻す。戦いは際どいシーソーゲームとなり、カルカノはライブラリー・トップのカードを伏せたままデッキから離し、慎重にめくった。

 この週末にプラチナ・レベルに到達する、という夢を追うカルカノに、幸運が訪れた。ドローしたカードは除去。それはリーツェルの盤面に残る最後のクリーチャーを薙ぎ払い、致命打を与えるために必要な1枚だった。

クリスティアン・カルカノ 2-1 ポール・リーツェル

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