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【観戦記事】 第9回戦:Lee Shi Tian(香港) vs. Gerry Thompson(アメリカ)

【観戦記事】 第9回戦:Lee Shi Tian(香港) vs. Gerry Thompson(アメリカ)

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年8月1日

原文はこちら

リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian vs. ジェリー・トンプソン/Gerry Thompson(ドラフト)

 初日を6勝2敗で終えて今日を迎えた両プレイヤーはどちらも、ドラフトしたデッキに大満足、という様子ではなかった。現在世界ランキング3位の香港出身のプレイヤー、リー・シー・ティエンは、肩をすくめて「2-1デッキだね」と言い、「まあいつも2-1だけど」と笑う。彼がドラフトしたのは、白と青の飛行クリーチャーを中心に十分な量の除去を添えたデッキだ。「2-1」という彼の予想は正しいかもしれないが、全勝も十分あり得るものに見える。

 リーは、フィーチャー・マッチ・エリアの反対側にいる世界ランキング2位のサミュエル・ブラック/Samuel Blackの方を見た。それから、現在のランキング・トップに君臨し、2015年度の殿堂顕彰も受けたエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichの方にも視線を投げた。リーは今、ブラックに1試合分負けている。だがこの2日目にしっかりと結果を残せば、この週末をプレイヤー・オブ・ザ・イヤーとして終える可能性がある。

「アジアのプレイヤーにとって、グランプリでポイントを稼ぐのは難しい......今年は本当に運が良かったよ」とリーは心境を語った。プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルが喉から手が出るほど欲しい彼だが、今この瞬間は、そこだけに気を取られない。それでもリーは、隣のテーブルでパトリック・コックス/Patrick Coxと対峙するブラックの方を見て、「心からパットの方を応援するよ」と笑顔を見せた。

 しかしブラックの勝敗を気にする前に、リーは今目の前にいる対戦相手に意識を向ける必要があった――プロツアー『ギルド門侵犯』にてトップ8入賞を果たした、ジェリー・トンプソンだ。リーと同様に、トンプソンも今回のドラフト・デッキを大いに喜べず、悔しさを漏らした。彼は「黒に行くべきだった」とため息と共に吐き出す。彼がドラフトしたのは白赤のアグレッシブなデッキだが、このデッキの決め手となるカードがいくつか抜けていた。《カラデシュの火、チャンドラ》があるのは悪くないものの、《残虐無道の猛火》を見てトンプソンは言う。「必ず、これよりは《焦熱の衝動》を優先したい」

 チームメイトのマイケル・メジャーズ/Michael Majorsは、トンプソンのデッキを次のように評した。「少なくとも、簡単に勝てるゲームはあると思うけどね」初日のドラフト・ラウンドで3戦全勝を果たしたトンプソンなら、勝てるときにそれを掴む方法は熟知しているはずだ。だが、その相手がプレイヤー・オブ・ザ・イヤー候補のリーとあっては、「簡単に」勝てるゲームは皆無に近い。

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リー・シー・ティエンは、接戦極まるプレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースのさなかにいる。しかし彼がそのレースで走り続けるには、プロツアー常連のジェリー・トンプソンを越えてゆかねばならない。

 リーのデッキリストを見てみると、トンプソンの猛攻をしのいで飛行クリーチャーで勝利を得られるだけの速さは十分にあるように見受けられる。メインデッキから採用された《鋤引きの雄牛》は、他の対戦より重要な役目を果たすだろう。だが私たちはよく知っている。実際の戦いがリスト通りにはならないことを。トンプソンがクリーチャーと強化呪文と、相手のクリーチャーを奪う絡め手をうまく使いこなせば、勝者は彼の方になるだろう。

ゲーム展開

 ジェリー・トンプソンが《前線の僧侶》に《秘儀術師の掌握》をエンチャントし、開幕からリーのライフを17点へ落とした。トンプソンの狙いは、できる限り早くゲームが終わることだ。彼はその狙いがうまくいくことを期待した。そして彼の願いは叶った。だがランプの精の物語にもあるように、願いというものは決して、願った者の望み通りにはならないものだ。

 リーの初動は《狩漁者》で、それから《前線の僧侶》へ《閉所恐怖症》を貼り、続けて何の変哲もない飛行クリーチャーを繰り出した。だがそこへ《騎士の勇気》がエンチャントされると、リーは毎ターン基本的にブロックされない4点のダメージを叩き出すことになったのだ。空中に手出しできず、地上のクリーチャーも効果的な反撃はできず、トンプソンは肩を落としてカードを片付け、2ゲーム目へ向かうのだった。

「願い」の内容には気をつけよう。

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固い守りと強烈な空からの攻撃を持つ、リーのドラフト・デッキ。

 2ゲーム目はどちらのプレイヤーも2マナ域のクリーチャーを出さなかったが、攻勢に出たのはトンプソンからだった。彼は《巡礼者の道の騎士》へ《秘儀術師の掌握》をエンチャントし、「高名」達成を助けた。それから《トーパの自由刃》、《アンプリンの戦術家》と続けた。

 リーは残りライフ7点の状態で5ターン目を迎えた。戦場には《突進するグリフィン》と《巡礼者の道の騎士》があるものの、不利は明白だ。4ターン目に+1/+1カウンターが置かれた《巡礼者の道の騎士》を擁するトンプソンの盤面を打ち破るのは、難しい。トンプソンの《巡礼者の道の騎士》は、攻撃するたびブロッカーをタップする5/4になっているのだ。

 リーは軽く頭を振ったが、やや冷静さを失っていた。2枚目の《島》がないのに《護輪のフクロウ》を唱えようとし、勝利が逃げていくにつれて元気を失くしていった。《トーパの自由刃》をブロックし、《アンプリンの戦術家》は《天界のほとばしり》で対処して、リーはもう1ターン生き長らえた。だがトンプソンは止まらなかった。

 トンプソンの手札からクリーチャーが送り出されると、リーは敗北を悟った。彼は今一度頭を振り、最終ゲームに向けてカードを片付けたのだった。トンプソンの側に必要なのは、クリーチャーと除去の噛み合わせだ。

 迎えた最終ゲーム、トンプソンは6枚の手札をキープし、デッキの狙い通りの動きを始めた。彼は2/2のクリーチャーを繰り出すと、《包み込む霧》と《投げナイフ》でリーのクリーチャー2体――《確固たるエイヴン》と《突進するグリフィン》――に対処し、道を拓く。

 だがリーのライフはまだ多い。彼は《勇者の守護神》を繰り出すと、続けてそこへ《騎士の勇気》をエンチャントした。これで危機を逃れたと思われたが、トンプソンの手にはまだ策があった。

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トンプソンの手札にカードがあるなら、そこに策がない方が珍しい

 トンプソンは《トゲイノシシ》を盤面に加え、それから《心酔させる勝者》で《騎士の勇気》から生まれた騎士・トークンを奪うと、リーは一気に9点のライフを失い、残りライフ7対10でトンプソン有利の状況になった。あとひと息、それで6/6警戒飛行とのライフ・レースを制することができる。

 悲しいかな、そこでトンプソンのデッキは燃料切れに陥った。あと1枚、コンバット・トリックでも除去でも、「何でもよかった」。それで勝利は彼のものだった。だが、そうはならなかった。

 プレイヤー・オブ・ザ・イヤーの夢を追う者が、彼の対戦相手の頭上を飛び越え、この試合を勝ち取った。フィーチャー・マッチ・エリアを後にする際に、リーは最後にもう一度、サミュエル・ブラックの方へ視線を投げた。その先にあるさらに大きなゴールを見据えて。

リー・シー・ティエン 2-1 ジェリー・トンプソン

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