マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

イベントカバレージ

【戦略記事】 ドラフト全勝者たち

【戦略記事】 ドラフト全勝者たち

calderaro.jpg

Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年8月1日

原文はこちら

 プロツアーにおいては、ドラフト・ラウンドが軽んじられる場合がしばしばある。構築ラウンドの10回戦と比べてその数は6回戦しかなく、新しいカードを用いた刺激的な60枚デッキに、40枚デッキの魅力ではかなわないのだ。だが実は、プレインズウォーカーの灯を点す前のプレイヤーと、灯を点しその才能を開放したプレイヤーを分けるのは、ドラフト・ラウンドに他ならないのだ。

 今大会、プロツアー『マジック・オリジン』にて、無傷でドラフト・ラウンドを終えたのはわずか6人のプレイヤーだった。フランチェスコ・ジョルジオ/Francesco Giorgio、松本 友樹、マイク・ブライアント/Mike Bryant、ペーター・フィーレン/Peter Vieren、ブライアン・ゴットリーブ/Bryan Gottlieb、そしてプロツアー殿堂顕彰者のズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzの6人だ。この6人で特筆すべきことを挙げるなら、ゴットリーブとモーショヴィッツは同じチーム「NYC」で練習を共にしている。その練習は正しいものだったようだ。

「どの色も良いです。やりたくない色はないですね」 ベルギー出身のペーター・フィーレンは、話をするべく席に着くとそう言った。毎回のように多彩さと楽しさが増していくドラフトができる、と話す彼だが、それでも青が一番だと続けた。白の優秀なカードは、予想より早くピックされてしまうからだという。この意見は、白の持つ優れたカードが非常に使い勝手の良いものであるためだと考えられる(ズヴィも、前回の記事(英語)では他の色と比べて白はアーキタイプをすぐに決めない、と語っている)。そのため、白のカードは早い段階でピックされていく。同時に、青をピックできるチャンスが増える、というわけだ。

 フィーレンは初手に選びたい青のコモンとして《閉所恐怖症》と《分離主義者の虚空魔道士》を挙げたが、もう1枚素晴らしいカードがあるという。「練習を重ねるうちに、《屑肌のドレイク》の評価は大きく変わりましたね。この環境の青は超アグレッシブで、テンポを基盤にした戦略です。普段なら《雲の精霊》みたいなカードは欲しいものじゃないんですが、この環境では違います」

vieran_draft.jpg
この週末、ドラフト全勝を果たした6人のうちのひとりであるペーター・フィーレン。彼は色にこだわらず空いたところを活かし、成功を収めた。

 だがドラフトの練習については、満足いくほどはできなかったという。彼はベルギーの仲間であるアマンド・ドシモン/Amand Dosimontやベンジャミン・デュポン/Benjamin Dupont、ブランコ・ネランク/Branco Neirynckと共にドラフト・デーを設け、6回のドラフトとバーベキューを楽しんだ。フィーレンは笑顔でそのときのことを話す。

「でもドラフトの練習をできたのはそれっきりだったんです」そう断言するフィーレン。だが間違いなく、それは最も思い出に残るドラフトだったという。そう、プロツアーの舞台でドラフト・ラウンドを6連勝するまでは。

 一方、同じ全勝のマイク・ブライアントの練習はシンプルそのものだった。「Magic Onlineだけ。チームも組んでいないし、他に何も」 つまり悲しいことに、バーベキューもなかったということだ。いや、あったかもしれないが、そこにベルギーのマジック・プレイヤーはいなかっただろう。

 そんなブライアントが持つ『マジック・オリジン』ドラフトの戦略は「できるなら受けは広くしておけ」だったのだが、実際の彼のドラフトは自身の考えに反するものだったように思える。初日のドラフトでは、彼は6手目までに3枚の《雷鳴のワイヴァーン》を手に入れ(強力な白青になった)、2日目のドラフトでは、1パック目が終わるまでに《隠棲した工匠》、《猛火のヘルハウンド》、《ゼンディカーの具現》、と3枚の多色カードを手に入れたのだ。「いや、どれも共通の色を持ってるじゃないか!」と弁明するブライアント。彼は続けて緑の薄さが好ましくないと言いながらも(以前から彼はそう言っていた)、しっかりとサインを読んでからいけば質の高いデッキも組める、と述べた。

bryant_draft.jpg
マイク・ブライアントもまた、どの色にでもいけるように空けておく、という戦略を強調する。

 多色のアンコモンからは目を離さない方が良いのは間違いないだろう。それらはどれも強力なだけでなく、卓内のプレイヤーがその色の組み合わせに傾注していないこと示す最高のサインなのだ。

 しかし卓内の立ち位置を知る手段はそれで確保できるものの、もうひとつ、目を離すべきでないものがある――それは自分のデッキをどうするか、だ。同じく全勝、ニューヨーク出身のブライアン・ゴットリーブは、その点が最も重要だと語った。「ドラフト中にデッキを組むこと」。何を狙うのか、その方針を決めておけば、本当は必要のないカードをミスピックすることはないのだという。

「もっぱらMagic Onlineで練習を重ねて『リミテッドのスペシャリスト』であると自負していましたが、初めてのプロツアーで、その練習が抱える大きな問題に気づけませんでした」 彼は、Magic Onlineでは文字通りドラフト中にデッキを組めるが、紙のカードではそれができないことを知ったのだ。それでも彼はその誤りを修正し、成功を収めたのだった。

 彼のやり方は、2日目のドラフトで功を奏した。初手に強力ではあるが専用のデッキが必要な《輪の信奉者》をピックしたゴットリーブだが、彼は必要なインスタントやソーサリーの枚数がわかっていた。さらに《意志を砕く者》をピックすると、この戦略がぴったりと噛み合った。ピックが進むにつれて必要なパーツが集まりデッキの枠は埋まっていき、(《眠りへの誘い》が3枚搭載された)一風変わったインスタント・デッキが完成した。彼はそれを操り、3戦全勝を掴んだのだった。

gottlieb_draft.jpg
ブライアン・ゴットリーブをプロツアーのドラフト・ラウンド6戦全勝へと導いた戦略? それは、「ドラフト中にデッキを組むこと」だ。

 ゴットリーブは、地元ニューヨークのチーム「NYC」の一員として練習できたことに感謝の言葉を述べた。ゴットリーブとズヴィ・モーショヴィッツがドラフト・ラウンドを全勝で走り切っていることから、その成果が大きかったのは明らかだ。「でも面白い話があるんです」と、ゴットリーブは言う。「実は、直接一緒に練習した回数は少なかったんです。それぞれがテストし、その報告を行っていました」 ゴーデニス・ヴィドゥギリス/Gaudenis Vidugirisが昨日述べたように、チームといってもそれぞれに仕事や家庭があるため、練習を効率的に行うことが重要となる。「『デジタルの強み』を活かせましたね」と、ゴットリーブは振り返った。

 こうしてドラフト・ラウンドをつまずくことなく乗り越えたプレイヤーが、小さなチームや忙しいチームの一員だったり、あるいはチームに属してないプレイヤーだったりしたのは、ビッグ・チームの面々にとって興味深いことだろう。

 とはいえ、私たちはすぐに構築ラウンドのゆくえを見守ることになる。ドラフト・ラウンドの大切さがわかるのは、今日という日が終わったときになるだろう。

 おっとそれから、ドラフトのデータを見たい方のために、初日と2日目それぞれの全勝デッキのアーキタイプ分析も行い、それぞれの色がどれだけ使われたのかも見てみよう。どうぞ!

アーキタイプ 全勝の人数
赤白 13
白青 11
黒緑 10
青黒 8
赤緑 8
青赤 7
緑白 7
黒赤 6
青緑 3
白黒 3
緑単 1
白単 1
全勝デッキの数
35
34
29
29
27

前の記事: 【英語記事】 Round 11: Rich Hoaen vs. (20) Mike Sigrist | 次の記事: 【英語記事】 New Teams, New Terms
プロツアー『マジック・オリジン』 一覧に戻る