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プロツアー・パリ11

読み物

Round 4: Ben Stark(アメリカ) vs. 渡辺 雄也(神奈川)

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「ミスター・ジュラはどちらですか」

by Tim Willoughby / translated by Kaoru Yonemura


ベン・スターク(白青コントロール)対 渡辺雄也(青黒コントロール)

 理論上、渡辺雄也は今なお年間最優秀プレイヤーの立場にある。2010年の最優秀プレイヤーレースが未だに終わっていないからだ。ここパリで、この週末土曜日に、ブラッド・ネルソンとギョーム・マティノンがそのタイトルを賭けて戦うのだ。そのときまで、年間最優秀プレイヤーは渡辺なのである。渡辺はチーム・ギョームのステッカーをデッキボックスに貼り、自分の所属を明確にしている。彼の対戦相手である、アメリカのトップのベン・スタークは、同胞であるブラッド・ネルソンの側につくだろう。

 素早いデッキチェックの結果、問題がなかったことにスタークは調子づいているようだった。

「アトランタで何が起こったか聞いてるかい? トップ8まであと2ラウンドってところで、《進化する未開地》3枚と《広漠なる変幻地》3枚と書いたことで【ゲームの敗北】を食らったんだ。実際は4枚と2枚だったのさ。まあ、相手は変身デッキだったから、立て直せたけどな」

Game 1

 ゲームが始まり、スタークはすぐに動いた。《金属海の沿岸》からマナを出して第1ターンに《思案》(訳注:おそらく《定業》の誤り)、そして次に《戦隊の鷹》を出した。スタークが(3枚連続で出てきた)《金属海の沿岸》のおかげで調子よく進んでいる一方で《忍び寄るタール坑》を並べてゆっくりとしか進展できないでいた渡辺だったが、第3ターンに《永遠溢れの杯》をX=1で唱えてテンポを取り戻し、《マナ漏出》分のマナを残した。


渡辺雄也とベン・スタークは長く楽しい消耗戦を演じている

 《精神を刻む者、ジェイス》が登場した時、渡辺から《マナ漏出》は飛ばなかった。渡辺の計画は別の所にあったのだ。彼はスタークの《戦隊の鷹》が飛んできて削っていくのに任せ、《ボーラスの工作員、テゼレット》を召喚。そしてその能力で《永遠溢れの杯》を5/5にし、デッキの一番上を調整して忠誠度が2増えている《精神を刻む者、ジェイス》を蹴散らそうとする。

 スタークは《戦隊の鷹》で《ボーラスの工作員、テゼレット》を片付け、《ギデオン・ジュラ》を唱えると、その-2能力を使って《永遠溢れの杯》を排除する。彼の小型飛行クリーチャーがゲームを彼の有利に進行させ、渡辺にクロックを刻んでいく。《コジレックの審問》が渡辺から放たれ、スタークに増援がほとんどないことを公開させる(《戦隊の鷹》1枚を捨てさせ、手札にはあと1枚と土地数枚だけになった)。しかし日本人プロの側にも増援はなく、《饗宴と飢餓の剣》を戦場に出しただけだった。

 《ギデオン・ジュラ》と《戦隊の鷹》からの攻撃でライフを9点にされて、渡辺はため息をついた。不格好なビートに聞こえるが、もう1体《戦隊の鷹》を出されればゲームは終わってしまう。2人目の《ボーラスの工作員、テゼレット》を出して、《饗宴と飢餓の剣》をただの5/5クリーチャーに変えて攻撃できるようにする。《ギデオン・ジュラ》を倒すのに充分なパワーを見せて、スタークが唱えたばかりの《戦隊の鷹》をブロックに回させようと圧力をかけた。

 血の臭いをかぎ取ったベンはスターク軍に攻撃命令を下す。まず《天界の列柱》を起動し、《ギデオン・ジュラ》をクリーチャーにする。しかしこれは即座に渡辺の《喉首狙い》の餌食になってしまう。スタークは2体目の《ボーラスの工作員、テゼレット》を攻撃して殺し、渡辺のライフを7にする。

 渡辺はスタークに最初の攻撃を当てて15点にし、それから《精神を刻む者、ジェイス》と《転倒の磁石》を唱える。《渦まく知識》能力を起動して何枚かのカードを見た渡辺は、(カウンター1個のおかげで)スタークの攻撃を生き残ったプレインズウォーカーを見て喜びの表情を見せた。

 《ボーラスの工作員、テゼレット》は渡辺の3度目の召喚に答えて再び現れ、《漸増爆弾》を引き寄せる。そして渡辺はスタークに攻撃して残りは10点となる。日本人の呼んだプレインズウォーカーが流れを引き寄せたのか? 《精神を刻む者、ジェイス》が毎ターンスタークに消術をかけているのを見ると、答えはイエスだと思えた。スタークにとっての無駄な引きを2回挟んで、渡辺の総攻撃がゲームを決めた。

 渡辺 1-0 スターク

 第2ゲームのためにサイドボードをしながら、彼はゲームを振り返っていた。「どこかで流れを変えなければならなかったんだが、どこだか判らないな。マッチ後に教えてくれないか」

 渡辺はただ微笑む。彼は会話に気を向ける前にもう1ゲーム残されていることを理解していたのだ。

Game 2

 第2ゲームの序盤、渡辺の初手が《漸増爆弾》なのに対し、ベンは《戦隊の鷹》を呼び出した。スタークは《漸増爆弾》には気も留めないふりで、上機嫌で《石鍛冶の神秘家》を唱え、《饗宴と飢餓の剣》を引き寄せる。スタークの《呪文貫き》が《コジレックの審問》を止め、《饗宴と飢餓の剣》が渡辺の手札を捨てさせる働きを見せる。


渡辺は......表情に出さない。

 さらなる《呪文貫き》が《転倒の磁石》を止めるも、彼の部隊に対処しようとする《漸増爆弾》を止める手段はほとんどない。彼はただ待ちながら《戦隊の鷹》を唱える。次の《転倒の磁石》を《マナ漏出》で止めても、渡辺はスタークの速攻に対して冷静さを保っているようだった。彼の呪文は全て打ち消され、土地は3枚で止まっているというこの状況で、彼の取れる選択肢は非常に少ない。ゆっくり展開した第1ゲームの後、この第2ゲームは非常に速く決着がついた。そしていよいよ運命のゲームを迎えることになる。

 渡辺 1-1 スターク

Game 3

 渡辺の初手《強迫》で、《定業》2枚と、《漸増爆弾》《》《金属海の沿岸》《氷河の城砦》《地盤の際》が公開され、渡辺は青のドロー呪文のうち1枚を選んだ。次のターン、問題なく《漸増爆弾》が戦場に出されたが、毎ターン出てくる《墨蛾の生息地》への対策にはならない。土地がクリーチャー化しても土地であり、《漸増爆弾》で吹き飛ばすことはできないのだ。

 スタークは《石鍛冶の神秘家》を唱え、《饗宴と飢餓の剣》を引き寄せる。しかしその白クリーチャーには《破滅の刃》が突き刺さり、即座に除去された。渡辺は《マナ漏出》を《呪文貫き》でかいくぐって《ボーラスの工作員、テゼレット》を戦場に出し、スタークの《漸増爆弾》に吹き飛ばされる前に自分の《漸増爆弾》を見つける。スタークは《地盤の際》で《墨蛾の生息地》に備え、戦場にある土地でないパーマネントはスタークの《饗宴と飢餓の剣》だけだ。

 《忍び寄るタール坑》も加えて攻撃した渡辺だったが、次に《呪文貫き》で《マナ漏出》をかいくぐってプレインズウォーカーを呼び出すのはスタークの番だった。彼が呼び出したのは《ギデオン・ジュラ》で、即座に忠誠度を8にのばして渡辺に攻撃を強制してくる。


......ベンは表情豊かだ。その差は......ゆうやでもない(イヤッフー!)

 次のターン、《ギデオン・ジュラ》は《饗宴と飢餓の剣》を振るい、《ボーラスの工作員、テゼレット》が作り出した5/5の《漸増爆弾》の反撃でサイズを縮ませられても、相変わらず前のめりにデッキをめくる。スタークは《天界の列柱》で《ボーラスの工作員、テゼレット》を狙い、《墨蛾の生息地》にブロックさせてから《ギデオン・ジュラ》の能力で《漸増爆弾》を始末する。

 《ボーラスの工作員、テゼレット》の+1能力で《漸増爆弾》を引き寄せると、渡辺は恥じらうことなく唱える。彼はプレインズウォーカーの死を受け入れているようで、スタークが《天界の列柱》を向けたらすぐに墓地に送った。

 渡辺は《ギデオン・ジュラ》を《忍び寄るタール坑》の攻撃で倒したが、スタークが再び《ギデオン・ジュラ》を唱えるとイスに深く座り直した。素早い攻撃の後、手札も空の彼はカードをかき集めるのだった。

 スターク 2-1 渡辺

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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