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プロツアー・パリ11

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Round 9: Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル) vs. Luis Scott-Vargas(アメリカ)

「LSV VS PVDDR・・・って、これじゃ何だかわからんね(笑)」

by Marc Calderaro / translated by Atsushi Ito


 今回幸運にも、この2人のドラフトピックを観賞し(ドラフト中彼らは隣同士に座っていた)、また語り合う機会を得た(後で同じように隣同士で座ってもらって、そのドラフトのことを喋ってもらったんだ)。両者ともに赤を基本色とした強力なデッキを組み上げており、2色目こそ互いに異なるけれども、いずれも十分なポテンシャルを備えている。

 Damo da Rosaは《飛行機械の組立工》とそれを探すための《宝物の魔道士》を搭載する一方、Scott-Vargasのデッキは1-1でピックした《イシュ・サーの背骨》と1-2の《カルドーサの炎魔》とのシナジーを始めとして、他にも多くの生け贄用アーティファクトが続く。またそれらの中で《微光角の鹿》と《剃刀のヒポグリフ》が、《屍気の香炉》や《胆液の水源》と絡んでいぶし銀の活躍を見せるのだ。

 このゲームの前に様々なプロたちが、ドラフトにおけるカードの点数と、一度ピックしてから《胆液の水源》の評価がいかに変わったかについて議論していた。Patric Chapinは《不純の焼き払い》より優先すると言い、Ben Starkはさすがにそんなはずはないと笑ったが、そこに居たプロたち全員がその選択もそう的外れとは言えないということを認めていた。したがってこのアーティファクトこそが、続くゲームでLSVのデッキの動きを確実に引き締めるキーパーツとなることだろう。

 他方、Pauloは自身のデッキについて、色付きのデカブツが苦手だが、アーティファクトならば複数枚ある《鋼の妨害》で対処できる、と評した。このマッチで《イシュ・サーの背骨》が(赤白の色んな生け贄エンジンによって)連打されることが「色付きのデカブツ」同様に苦手な方に含まれるのかそうでないのかは、これから明らかになる。

Game 1

 Pauloの赤青デッキが《突風掬い》で4点を先行し、さらに3つ目の土地を探すために《飛行の呪文爆弾》が生け贄に捧げられた。一方のLuisは《胆液の水源》、《闊歩するものの装具》、《錆びた斬鬼》(これもLSVのシナジー戦略を強化する1枚だ)と並べてご満悦である。Pauloは《刃族の狂戦士》《ルーメングリッドのドレイク》と展開し、ライフは早くも20対14。しかし《転倒の磁石》がクロックの増加を阻む。

 Luisの《錆びた斬鬼》が自ら《胆液の水源》を屠った後、《闊歩するものの装具》を纏って攻撃。Pauloは《突風掬い》か《刃族の狂戦士》、はたまた出たばかりの《剣爪のゴーレム》でこれをチャンプするか慎重に検討するも、結局スルー。ライフは15対14となり、戦闘後に《液鋼の塗膜》と《錆びた秘宝》がキャストされる。

 《剣爪のゴーレム》は《転倒の磁石》でタップされ、Pauloの残りのクリーチャーたちが(今キャストした《恐慌の呪文爆弾》の力を借りて)フルアタック。Luisのライフは7まで落ち込む。さらにPauloは《冷静な反論》のためのマナを立ててターンエンド。それにとどまらず、Pauloの手札には《カルドーサの首謀者》、《絡み線の壁》、そして何より《飛行機械の組立工》が眠っており、なおも意気軒昂だ。


見物人たちが注視する中で戦うLuis Scott-Vargas

 PauloはLuisの《シルヴォクの生命杖》の着地は許し、《錆びた斬鬼》がそれを纏って攻撃したことでライフは9対7。返すターンに《ルーメングリッドのドレイク》がタップされ、《転倒の磁石》は使いきられる。Pauloはぴったり6枚の土地を前に、より良いプレイを模索する・・・この馬鹿げたレアをプレイするか、カウンターのためにマナを立てるか。そして選択したのは、レアの方だった。

 さて、今度はLuisが考え込む番だ。まずは《きらめく鷹》でついさっき使い終えた《転倒の磁石》を回収すると、三度《錆びた斬鬼》をレッドゾーンに向かわせる。これはチャンプブロックされるが、《液鋼の塗膜》のおかげで《平地》をアーティファクトにして容易に再生可能だ。そして戦闘後、良いタイミングで駆けつけていた《金屑化》が《飛行機械の組立工》を、飛行機械を生み出す前に葬り去る。

 果たしてPauloはLuisのライフを何とか削りきることができるのか?もう1枚の《恐慌の呪文爆弾》が《きらめく鷹》(《シルヴォクの生命杖》装備済み)のブロックを封じ、さらにPauloは《絡み線の壁》をキャストした上でカウンターのためのマナを残し、静かにターンを返す。

 まばゆいばかりの照明の光の下、2人のプレイヤーは無言で。そして微動だにせず、一瞬たりとも視線を交わすことはなく。Luisのターン、《きらめく鷹》と《ルーメングリッドのドレイク》とが、ついに交換される。Pauloは慇懃にその交換を受け入れた。だが《転倒の磁石》の再登場については《冷静な反論》で許さない。続くターンでPauloは《空長魚の群れ》をキャスト、延々引き続けている《》を捨てる。

 そしてLuisの次のアタックでライフは3対8となり。Luisのキャストした《屍気の香炉》が、Pauloにこれがラストターンであることを告げる。

 PauloはLuisの《錆びた斬鬼》を《鋼の妨害》でバウンスするけれども・・・ほんの僅かにLuisのライフを削りきることができずに、《屍気の香炉》がPauloのライフを削り取った。

 Scott-Vargas 1-0 Damo da Rosa

 「ライフゲイン手段でもサイドインするかい?」と言って微笑むScott-Vargas。

Game 2

 呪文爆弾の置き合い(《飛行の呪文爆弾》と《起源の呪文爆弾》)でゲームが始まった。Pauloはそのまま《絡み線の壁》、《鉄のマイア》とキャストするが、3枚目の土地が置けない。

 その隙にLSVは《シルヴォクの生命杖》と《闊歩するものの装具》を展開した後、《剃刀のヒポグリフ》で《起源の呪文爆弾》を回収。

 ここで3枚目の土地を引き入れたPauloは《刃族の狂戦士》を金属術達成させて走らせ、マイアトークンをチャンプさせる。

 LSVは「またすぐ出てくるけどね」とポケットにトークンを押し込みながら言う。


これには思わずPVもイライラ

 2つの装備を纏った《剃刀のヒポグリフ》がPauloのライフを削り始める間に、回収した《起源の呪文爆弾》によってその予言は現実となる。さらに《平和の徘徊者》が《シルヴォクの生命杖》を装備してPauloのクリーチャーをブロックし、ライフレースは12対27とLuisの圧倒的優勢だ。

 Pauloは《宝物の魔道士》で《飛行機械の組立工》をサーチするが、キャストするためのマナが足りない。一方のLuisは《きらめく鷹》と《オパールのモックス》とを活用してマナを擬似的に増やし、結果その鷹は出たターンに2つの装備を纏うところまでいく。

 Pauloは呪文爆弾でドローを進めることによりようやく6マナ目にたどり着くが、もはや間に合うのか疑わしい。既に複数の飛行を持った生物が並んでいて、仮に《飛行機械の組立工》をキャストしてもなお守勢であり、しかも前のゲームのように即座に《金屑化》されるとしたら、その時点で敗北が決定してしまう。

 それでも、Pauloはそのリスクを承知の上で《飛行機械の組立工》をキャストする。

 しかしLuisは、今度は前からしっかり《金屑化》を抱えていたのだった。撃ちこんだそのターンのアタックでブラジルのプロツアーチャンピオンのライフを5まで削り、Pauloの《ニューロックの模造品》が若干決着を延ばしたけれども、大勢に影響はなかった。

 Scott-Vargas 2-0 Damo da Rosa

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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