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プロツアー・パリ11

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Round 7: 渡辺 雄也(神奈川) vs. 伊藤 渉吾(愛知)

By Jun'ya Takahashi  1000人をも超える大規模グランプリも八合目を越えて折り返しの山頂が見え始めてきた。しかし、登山で言えば休憩地点の八合目も、グランプリ・神戸2012ではそうはいかない。むしろここからが本番なのだ。  初日を通過するボーダーラインは7勝2敗。現状6ラウンドを終了した時点で全勝の好調なプレイヤーでも、ここから3連敗してしまえば初日落ちなのだ。負けて通過する可能性がなくなるまでは息をつく暇すらない過酷なトライアルである。  そんな最も気の休まらないポジションで走り続けている先頭集団にスポットライトを当ててみよう。 Round 7  その一人が伊藤 渉吾(愛知)だ。個人的にはグランプリ・横浜2004において、神河ブロックで行われたリミテッドグランプリの初日を、均等3色の驚異的なバランスで構築されたトリコロールを操り、栄えある全勝で駆け抜けていた姿が印象深い。同地区で謳われる『七本槍』の一本として知られる御意見番こと塩津 竜馬(愛知)のコメントを抜粋すると、「今まで目立った成績を残していないことが不思議なくらいに上手いプレイヤー」とのことだ。  そして、そんな伊藤の対戦相手としてテーブルの向かい側に座っているのが、対照的に「目立った成績以外を残していないことが当然のプレイヤー」である渡辺 雄也(神奈川)だ。改めて紹介するべき点が少ないことは残念だが、それだけ共有されている情報も多いということでもある。元プレイヤー・オブ・ジ・イヤー。この一言だけでも十分だろう。
Game 1
渡辺 雄也
渡辺 雄也
 ダイスロールの結果で伊藤は先手を選び、そのままスムースに初手の内容を確認するとキープを宣言した。  その流れるような所作とは対照的に渡辺は受け取った7枚としばらくのにらめっこをする。その苦悩の種は、3色の揃った5枚の土地と《霊廟の護衛》と《吠え群れの飢え》といった微妙な取り合わせ。筆者の好みでいえばマリガンなのだが、マナスクリューのありえない安定したマナベースは十分に魅力的であることも事実。だからこそ渡辺も悩んでいるのだろう。  悩み始めて30秒を過ぎたあたりだろうか。息を止めていたかのようにフッと一息吐きだすとゲームを始めることを宣言した。  伊藤は《銀の象眼の短刀》から《ドラグスコルの隊長》と展開し、青白らしい飛行クリーチャーによる強力なクロックを立ち上げる。  対する渡辺のドローは2連続の土地で、なんとか3ターン目に引きこんだ《軽蔑された村人》で体裁を整える形となった。  続くターンに7枚でキープしたにも関わらず芳しくない渡辺の動きをいぶかしんだ伊藤は、《銀の象眼の短刀》を《ドラグスコルの隊長》に装備した後にわずかな逡巡を見せる。手札には《猛火の松明》があり、攻撃せずに《軽蔑された村人》を除去することで渡辺の行動を阻害する選択肢もあるのだ。  このまま《ドラグスコルの隊長》で攻撃すれば4点のダメージを繰り返し、運よく5ターン以内にゲームを終わらせることができるかもしれない。だが、どっさりと手札を抱えている渡辺にそれが通じるのだろうか。  最終的に伊藤は《猛火の松明》で《軽蔑された村人》を焼くことにした。結果から言えば、手札には《霊廟の護衛》と《吠え群れの飢え》しか呪文が無かった渡辺はホッとしたものの、伊藤の目線から見ればそうではない。これからの展開を決定づける序盤なだけに難しい選択肢だった。  そんなこんなで1ターン分の猶予を得た渡辺は、初手から鎮座していた《霊廟の護衛》を繰り出して、満を持して攻撃し始めた伊藤の《ドラグスコルの隊長》との殴り合いを挑む。  その前向きな姿勢にデッキが応えたのか、渡辺の次なるドローは《声無き霊魂》で、伊藤の《ドラグスコルの隊長》を完全に封じ込めることができた。  しかし、それで足を止める伊藤ではない。  《霊廟の護衛》をブロックするためにプレイしていた《村の鐘鳴らし》に《銀の象眼の短刀》を移し替え、空が駄目なら地上から、と攻撃の手を休めない。その手札には《叱責》と《ヘイヴングルのルーン縛り》が残されており、手札の内容、場、共に渡辺を圧倒することとなった。  手札の頼りが少ないため、現存のリソースだけでゲームプランを組み立てなければならなくなった渡辺は、《村の鐘鳴らし》を《霊廟の護衛》でブロックしてスピリット・トークンを生みだすと、伊藤のターンエンド前に陰鬱を満たした《吠え群れの飢え》でスピリット・トークンを4/4に強化してダメージレースを挑む。  しかし、前述したように伊藤は《叱責》を抱えていたため、あっさりとその作戦は頓挫してしまう。  攻め手を失った渡辺は、次なる作戦として盤面の膠着を目指す。《ホロウヘンジの獣》で地上の戦線を受けとめ、空は《声無き霊魂》とスピリット・トークンに任せる。悪くない選択に見えたが、伊藤は膠着戦においても解答策を持っていた。  さきに述べた《ヘイヴングルのルーン縛り》である。
 膠着して消耗戦の様相を呈した頃、その過程で墓地に落ちていた《エルゴードの審問官》や《宿命の旅人》を餌に、静かに動き始めた《ヘイヴングルのルーン縛り》がゾンビトークンを生みだしていった。  除去を引きこむわずかな可能性に賭けて粘り強く戦線を支えていた渡辺だったが、ビーストのサイズにまで育ってしまったゾンビ・トークンを確認すると次のゲームへと思考を切り替えた。 渡辺 0-1 伊藤
Game 2
伊藤 渉吾
伊藤 渉吾
 お互いに決め手がわずかにしか存在しない肉弾戦になることを予期した渡辺は、静かに後手でゲームを始めることを伊藤に告げた。  そこでマリガンチェックのために手札を確認した伊藤は、サイドボードから色を変えて投入した《血統の守り手》と《ファルケンラスの貴族》を目の前にした。文句のない強力な2枚だが、懸念点として、手札のマナソースが《》2枚しかない。  だが、それは悩むポイントではない。  順調に7枚をキープした渡辺は、《アヴァシン教の僧侶》、《深夜の出没》、《霊廟の護衛》と展開していく。対する伊藤の場には《セルホフの密教信者》しかいないため、渡辺の圧倒的な勝勢だ。  しかし、5ターン目に4枚目の土地を引きこんだ伊藤の手札から《血統の守り手》が現れる。
 手札に解答の無い渡辺は強化呪文に見せかけたブラフアタックで勝機を探す。それでも伊藤の容赦ない《ファルケンラスの貴族》が完全に盤面を制圧した。  生みだしたトークンでクロックを作りながら、《ファルケンラスの貴族》によってライフの水準は維持されるなんとも詐欺くさいシステム。渡辺の対応策であった《ホロウヘンジの獣》もチャンプブロックでいなされて、段々と両者のライフと戦場には大きな差が生まれていく。  最終的に伊藤が《遠沼の骨投げ》を《堀葬の儀式》で再利用した段階で戦場には3体もの蝙蝠が羽ばたいており、緑白という色の宿命の通り、たった2枚だが何よりも強力なシステムクリーチャーが巧者同士の戦いに強引な幕引きをした。 渡辺 0-2 伊藤
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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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