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プロツアー・フィラデルフィア11

読み物

(翻訳記事) Round 2: 6倍《ぶどう弾》か2倍《けちな贈り物》か?
Frank Karsten(オランダ) vs. Gaudenis Vidugiris(アメリカ)

by Blake Rasmussen / Translated by Yusuke Yoshikawa


 殿堂プレイヤー、フランク・カーステンにそれ以上の紹介は不要だが、彼がフィラデルフィアに来た理由については説明が必要かもしれない。彼はプロツアーがエクステンデッドで予定されていた時点では、参加のつもりはなかったという。しかし、フォーマットがモダンに変更になったというアナウンスが、彼の気持ちを変えた。

「デッキビルダーのパラダイスみたいなものじゃないか。そして私にはこの環境を読み解くチャンスがあると思ったよ。」 カーステンは言う。

 多くの予想を裏切ることなく、カーステンは自身の懐刀である《けちな贈り物》をテーブルに置いてみせた。その横には《紅蓮術士の昇天》。会場の大多数のイゼット・カラーのデッキとはまた違った、青赤のコンボデッキだ。

 その魅力は?

「《けちな贈り物》が2倍撃てるじゃないか」

 カーステンは《けちな贈り物》で《紅蓮術士の昇天》を指して笑った。

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ゴーデニス・ヴィドゥギリスとフランク・カーステンはともに素晴らしいプレイヤーで、ともに青赤デッキを使っているが、その由来はまったく異なる。

 この第2回戦で、カーステンと対峙するヴィドゥギリスの《蒸気孔》デッキは、紅蓮術士の力を《紅蓮術士の刈り痕》という形で利用していて、短く「Aussie Storm」と呼ばれているデッキの一種だ。

 ヴィドゥギリスはカーステンの戦いの系譜とは交わってこなかったが、プロツアー・名古屋のトップ8に入賞しており、その他数多くのグランプリタイトルに名を刻んでいる。


Game 1

 第1ゲームは双方が初手をキープ。それが手早い判断で行われたことは、見ている全員に対して手札の内容の手がかりになったことだろう。

 盤面に向かうゴーデニスは、《沸騰する小湖》から《》を引き出し、《血清の幻視》をキャストした。彼が1枚のカードをライブラリトップに残したことで、このグランプリ・デンバー・チャンピオンが相当有利な立ち位置にいるシグナルが示された。

 このシグナルは、カーステンが《ギタクシア派の調査》に2ライフを払ったことでさらに確かめられた。公開されたのは、2枚の《炎の儀式》、2枚の《捨て身の儀式》と《紅蓮術士の刈り痕》。

「『儀式』がいっぱいだね」 カーステンが言う。

 もはやゴーデニスが2ターン・キルに必要なのは《ぶどう弾》だけだ。そのことを考えつつ、カーステンは《ギタクシア派の調査》に2ライフを、さらに《沸騰する小湖》に1ライフを払い《》を持ってきた。

 そしてカーステンは《有毒の蘇生》を使い、《沸騰する小湖》をヴィドゥギリスのライブラリトップに戻した――そう、それは可能なのだ――そうすることで、彼に1枚の無意味なドローを与え、《紅蓮術士の刈り痕》を遅らせ、カーステンの手札に待ち受けているであろう《差し戻し》を間に合わせるのだ。

 ヴィドゥギリスは単に《蒸気孔》をタップ状態で置くのみでターンを返す。

fm2_Karsten.jpg
ときに殿堂プレイヤーは、《有毒の蘇生》が真にできることを教えてくれる。

 だが不運なことに、ほかにできるアクションもなく、殿堂者はタップアウトで《紅蓮術士の昇天》を置くだけだった。これでヴィドゥギリスの前方はオールクリア、そしてトップのカードはまさに《ぶどう弾》であったのだった。

ヴィドゥギリス 1-0 カーステン


Game 2

 カーステンはマリガンして6枚から。まず《》と《定業》から入り、1枚をトップに残した。ヴィドゥギリスは同じく青のキャントリップ、《思案》で応え、ライブラリをシャッフルしないことを選んだ。

 彼はまたも第2ターンの勝ちを狙える状態にあるのだろうか?

 再びの《ギタクシア派の調査》が、たくさんの『儀式』と《ぶどう弾》、《紅蓮術士の刈り痕》からなる手札を明らかにした。トップのカード次第ではあるが、これはまたしても2ターン・キルの可能性を秘めている。カーステンは土地をプレイするのみで、《差し戻し》を構えてターンを返した。

 ヴィドゥギリスはカーステンのアンタップ状態の土地を考え、ここは《蒸気孔》を置いて満足しておくことにした。

 カーステンの《思案》はライブラリのシャッフルと《魔力変》を手札にもたらした。このおかげで、《》と《燃え柳の木立ち》のみの土地から《差し戻し》をキャストすることが可能になる。

 ヴィドゥギリスは《シヴの浅瀬》からタップアウトで《煮えたぎる歌》をキャスト、カーステンはこれを通した。2枚目の《煮えたぎる歌》にカーステンの手が止まる。この難所をどう乗り切るかの計算を始めた。結局カーステンはこれも解決させ、ヴィドゥギリスには7つの赤マナとストームカウント2が与えられる。

 ヴィドゥギリスはそのうち3つを使い《紅蓮術士の刈り痕》、そこから《魔力変》《捨て身の儀式》を経由して、すべてが解決された。そしてこのターン6つ目の呪文、決め技の《ぶどう弾》がキャストされた。生み出される18点のダメージはカーステンのライフ残量とまさに同じである。

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耳を澄ませてみれば、《ぶどう弾》の音が聴こえるだろう。

 しかし、カーステンはコピーのうち1つを《差し戻し》で打ち消した。これでダメージは15点となり、かろうじてライフ3で生き残った。

 《紅蓮術士の刈り痕》の効果で、ヴィドゥギリスは手札をすべて捨てる。しかし勝つために必要なのは、ただ1枚の《ぶどう弾》かコピー、もしくは他の焼き呪文をトップデッキして通すことだけだ。

 カーステンは生き延びるための仕事を始めた。まず《思案》を2ターン続けてキャストし、ヴィドゥギリスは《紅蓮術士の刈り痕》の効果で無駄ドローを捨てるだけが続く。

 《有毒の蘇生》が《思案》を戻すが、それによってではコンボを成就させるだけのアクションを見つけられなかった。代わりに、もう1枚の《有毒の蘇生》をヴィドゥギリスに向けて使い、擬似《Time Walk》とする。

 《定業》、《ギタクシア派の調査》、《差し戻し》の雨あられの末、カーステンはついに《けちな贈り物》にたどり着いた。シナリオを頭に描きつつ、彼はもう1ターンが必要だと考え、ターンを返した。それがヴィドゥギリスの最後のターンになる。はずだった。

 ヴィドゥギリスにとって幸運なことに、しかし《けちな贈り物》ファンにも不運なことに、ヴィドゥギリスはそのターンをうまくやってのけた。

 《定業》が《ぶどう弾》を導き、《けちな贈り物》ではコピーと呪文本体の両方を止めることはできず、カーステンは握手のために手を差し出すのだった。

ヴィドゥギリス 2-0 カーステン

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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