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(翻訳記事) マジック・ウィークエンド・フィラデルフィアを5枚のカードで

(翻訳記事) マジック・ウィークエンド・フィラデルフィアを5枚のカードで

by Josh Bennett / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru

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 一月前、モダン構築は無限の可能性を秘めた荒野だった。3日前、注目されていたのは《雲上の座》だった。そしてバイヤーの店頭からは《精力の護符》がなくなった。2日前、誰一人想像もしなかったほどに激しい環境だった。今、サミュエル・エストラティが王座に就き、そして新たなプロツアーの予定が待ち受けている。この週末を5枚のカードで振り返ろう。


1) 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

 《雲上の座》は事前に注目を集めていたが、初日の注目の的になったのは多元宇宙でも最大最悪のエルドラージだった。結局、この、止めようのない、《Time Walk》内蔵の、戦場を飲み込んでしまう戦闘機械以上に効率の良いマナの使い方は存在しなかった。このカードには伝説のクリーチャーだという欠点はあるものの、そんなことは数にも入りはしない。さらにひどいことには、中にはこれを《裂け目の突破》から出してくるプレイヤーもいて、裂け目の大きさを見せつけるだけではなく、比較的確実に使えるようにしているのだった。


2) 《定業》

 トップ8には《欠片の双子》、《紅蓮術士の昇天》、感染コンボが存在した。惜しくも届かなかった組を見ると、ジェレミー・ニーマン/Jeremy Neemanの《巣穴からの総出》(モダン9−1)、ジョン・フィンケル/Jon Finkelの《紅蓮術士の刈り痕》(モダン8−1−1)があった。それら全ての青系コンボデッキは信じがたいほどの冗長性と爆発力を持っていて、その鍵になっているのは一見どうということのないカードだった。《定業》(と、一緒に悪事をやる仲間の《思案》や《ギタクシア派の調査》)はデッキの中から必要なものを探してくるための助けになっている。また、カードを引く能力で、手札破壊への耐性にもなっている。第1ターンに《思考囲い》や《強迫》でキーパーツを捨てさせても、それで防げるわけではないのだ。


3) 《野生のナカティル》

 この週末に至るまでは、スーパーチーム「ChannelFireball」は一週間にわたる調整によって《紅蓮術士の刈り痕》の使い方を把握していた。しかし、殿堂者にして緑白ビートの神ブライアン・キブラー/Brian Kiblerはそれ以上の選択肢があると固執していた。彼の選んだ選択肢、中量級ナヤ・デッキによってジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonは決勝進出を果たした。

 ここに来て、《野生のナカティル》はこのデッキの目印となるカードであり、第1ターンの理想型と言えるが、このデッキを「ズー」と呼ぶのは大きな見落としがあると考えている。このデッキは、素早いクロックを刻み始めたら後は相手を妨害するのが本性である。いわゆるズー・デッキと違い、このデッキはプレインズウォーカーにも妨害できるコントロール手段を持っており、その上でその絶大な火力で押しつぶしてしまうのだ。


4) 《猛火の群れ》

 この暴力的なデッキの最初の犠牲者は、冗談だと思ったに違いない。だが、この問題の本質は、誰かが初手に《墨蛾の生息地》を出したら第2ターンには相手が死んでいるかもしれない、ということだ。冗談で済まないのは対戦相手の方だったようだ。《猛火の群れ》が《大祖始》(や《刈り取りの王》、《ドラゴンの嵐》)を投げると、感染クリーチャーは一撃必殺の刃となるのだ。

 このデッキの作り方にはいくつもの方法があった。《暗黒への突入》《大霊堂の戦利品》を使ってライブラリーからコンボのカードを引き出すもの、刃を確実に届かせるために《否定の契約》や《殺戮の契約》(さらにはリミテッド専用カードだった《使徒の祝福》)を詰め込んでいるもの。トップ8に残ったサム・ブラック/Sam Blackはまた逆の方向を取った。彼の青単にはコンボ・デッキ対策に大量の打ち消し呪文が入っていて、確実さを増すために《猛火の群れ》のコストに使うカードに《ドラゴンの嵐》を選んだ。これなら《刈り取りの王》と違い、《深遠の覗き見》で持ってくることが出来るのだ。

 もう一つの注目点は、ブラックがこのデッキにつけた名前だ。「ジュリエット」。なぜジュリエットかは言うまでもなく、しばしばスーサイド・ポイズンとなるからだ。


5) 《血染めの月》

 プロツアーには、そのイベントの一番の注目点となる瞬間が存在するものだ。フィラデルフィアにおいては、その瞬間は決勝戦の第4ゲームに訪れた。サミュエル・エストラティが、戦場に基本でない土地を並べ、手札にフェッチ土地を抱え込んだジョシュ・アター=レイトンの目の前に《血染めの月》を出した瞬間だろう。アター=レイトンは完璧にとらえられたように見えた。彼は準々決勝でアレッサンドロ・ポルタロと対戦し、毎ゲームごとに《血染めの月》を出していた。ポルタロは驚いていた。《血染めの月》を想定していなかったのだ。アター=レイトンは後に、負けの大部分は《血染めの月》でロックされたせいだと語った。

 しかし、決勝になると、エストラティはその致命的なエンチャントを出すことができなかった。第2ゲーム、第3ゲームとも《血染めの月》は登場しなかった。エストラティの狙いが実を結んだのは第4ゲームだった。空に月が昇れば、世界は全て彼のコンボのために回っているようなもの。意識するべきはただ《稲妻》だけとなる。そして、彼は王冠を手に入れたのだった。

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