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【トピック】 「East West Bowl」の興隆

【トピック】 「East West Bowl」の興隆

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Marc Calderaro / Tr. Keiichi Kawazoe

2016年4月22日

原文はこちら

「まだその名前を知らなくとも許されるでしょう......」 グランプリ・バンクーバー2016(プロツアー『ゲートウォッチの誓い』の1週間前)のとき、私は「East West Bowl」についてこんな書き出しで始めた。そこから何ヶ月かたち、多くのことが変わった......はずだ。

 当時から今までの流れを見なおしてみよう。

  • グランプリ・バンクーバー2016:トップ8をかけた15回戦にBen Weitz、Eugene Hwang、そしてEric Seversonが挑んだ。Seversonはトップ8に進出し、3つ目のプロツアーの権利を得た。
  • プロツアー『ゲートウォッチの誓い』:Pascal Maynard、Andrew Brown、そしてJiachen (JC) Tao(Weitzと組んだ青赤エルドラージデッキで環境を破壊した)がトップ8に残り、結果Taoが優勝した。
  • グランプリ・ヒューストン2016:Mark Jacobsonが初日無敗を記録し、そのまま難なくトップ8に到達した。
  • グランプリ・デトロイト2016:Ben Friedmanが初日無敗だったが、最後の悲劇的な3連敗によってトップ8を逃した。
  • グランプリ・アルバカーキ2016:Andrew Brown、Seth Manfield、Eugene HwangそしてJC Taoがともにトップ8をかけた15回戦へと進み、ManfieldとTaoがTop8へと進んだ。Taoにとってこれはプロツアー以来初めて参加する個人戦のグランプリであった。

 繰り返すが、2月1日の時点で、私は「このチームの名前をまだ知る必要はない」と書いた。そこからまだ3か月も経っていないが、多くが変わったのだ。

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「East West Bowl」参加者の全容

 「East West Bowl」はこの週末、多くのチームの垣根を超え成功を収めるだろう。その理由を見出すのは簡単だ。私は彼らからこうした変化についての反応を得たかったが、彼らが時としてチームの人に囲まれていたが故に難しかった。「East West Bowl」(東西対抗戦)は、17人によって争われる。

 各ラウンドの間での会話を振り返ると、さらに2人が歩きまわっているという状態に出会うのはほぼ不可能なことだった。2人が3人、そして、5人集まるとすぐに8人になってしまうのだ。チームメイトたちはいつも集まって、そのラウンドでの出来事を分析しているのだ。赤や青のパーカーをまとったほんのわずかなプレイヤーは海へと変わり、海洋はその両者を混ぜ込んで沿岸まで融合してしまうのだ。

 このチームの形式は、チーム「Ultra PRO」のオンラインでのやり方(つまり国中のいたるところから最適な戦略をデジタルに共有する手法)を進化させたものである。もちろん「リアル」な練習も、だいたい地理的に2つの場所に分かれてしっかりとやっている。どういう区切りだろうか? そう、東と西だ。青のパーカーはカリフォルニアに、一方赤のパーカーは北東部に(おおよそはメリーランド周辺)、それぞれ集まっている。

 Neal Oliverは「本当にオンラインでのやりとりが多いんだ」と言う。それは地理的な制約によるのだが、チームはうまくシステムを構築し、実際にうまく運用している。両海岸の間でプレイするのは時差の関係もあって難しい(実際Ben Freidmanは仕事のある日の深夜1時からゲームを始めて痛い目に遭っている)が、この巨人たちのチームは互いの技能、結果、そして友情に対する相互理解で結びついている。それは実際、プロツアー『ゲートウォッチの誓い』での狂気じみた働きのおかげである。

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「East West Bowl」 西チームは(左上から順に)Mark Jacobson、Eric Severson、Ben Weitz、Paul Yeem、Neal Oliver、Jiachen Tao、Andrew Brown、Scott Lippというメンバーだ

「この間のプロツアーでの最大の変化は皆知ってるだろう?」とMark Jacobsonは言った。それは洞察力と人格両面に関してだ。「俺は彼らが構築フォーマットにどれだけ強いか、プロツアーを見るまで知らなかったんだ。でも、結果皆の疑いを拭い去ったんだ」

「最近のグランプリはそのプロツアーの結果の現れだね」とSeversonは他のチームメイトを褒める。

「彼らを見れば、また同じことをしてくれると感じられるはずさ」と、プロツアー『戦乱のゼンディカー』でトップ8に残ったRicky Chinは言う。「もちろん僕もまた、ね」と笑う。

 Jacobsonは「波に乗るとかそんな感じかな」と冗談を言った。

 このチームは強豪プレイヤーたちの印象的な集まりの原動力を、プロツアーから「East West Bowl」へと取り去った。このプロツアーに対する準備は無計画なものであったが、しかしながら成功した。今回、彼らはツールとシステムを、この偉大なお披露目会に向けて両立できるように準備したのだ。

 17人を同じ所に集めるということには、多くのマネジメントを必要とする。しかし、一方それはチームの強みを輝かせる場でもあるのだ。Ben Weitzは集団を扱いやすいレベルに分割し、全員を整列させたのだ。「East West Bowl」の狭間は埋まったのだ。ここにはバント・カンパニーのミラーで対戦していたプレイヤーたちがいた。その中には、生み出す天才という評価を多くの人から受けているTommy Ashtonも含まれている。また、「Andrew [Brown]も僕も、いつもコントロールを使いたいのだけど」とNeal Oliverは言った。Jarvis Yuは彼らのことを後に「Wafo-Tapaのようだ」と評した。

 これは、あなたがスタンダードや他の競技フォーマットをどのように理解するのか、という話である。その点に対して最善を尽くし、あなたが信頼するに足る人がいるということだ。Oliverの言を借りれば、他のプレイヤーが別のデッキを担当することで、コントロール使いはその選択が可能かどうかを検討する余地を得られるということだ。「僕らは『そういう奴ら』が『他のこと』をすることを期待していて、自分は自分のすべきことを知っていたんだ」

 この方法は、時として原形の出処が不明確になったとしても、うまく働いていると言える。

「このデッキは俺が組んだんだ」とBrownは言うが、Oliverは「それは違うさ」と返す。

「そうだな、俺が一番重要な貢献をしたんだな」「それも違うさ」

 そして、同時に二人は私の顔を見て笑ったのだった。

 それぞれのデッキに到達した経緯を問わず、Jarvis Yuは自身の選択に自信を持っていた。「僕らはこのフォーマットの構造をしっかり理解できていると信じているよ」と言う。もしもあなたが数多の人と一緒に当たれるのなら、メタゲームを何度も再現することさえできるのだろう。

 構築とリミテッドの練習、そしてAlex Majlatonが開くリミテッド講座は、より多くの人と協働する手段を見つけたように見えた。彼らの多くは、自分たちが最大のチームであっても、その規模が維持可能であると考えていた。

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「East West Bowl」東チームは(左上から順に)Timothy Wu、Michael Majors、Ricky Chin、Alex Majlaton、Pascal Maynard、Seth Manfield、Jarvis Yu、Ben Friedman、Tommy Ashtonというメンバーだ

 彼らは往々にして自分自身のことをしているため、このシステムが動く限りこの人数が維持できない理由はSeversonには見いだせなかった。「これは皆に集中攻撃の計画を立ててもらい、同じ場所に向かうための初めての機会なんだ」 多少道のりは荒くとも、誰もがそれを達成できるという自信を持っていた。

 「East West Bowl」の出来栄えは、このプロツアー『イニストラードを覆う影』で最も質問されることの一つだ。彼らは再び高く飛び上がれるかもしれないが、一方失意に沈むかもしれない。しかし、たとえそうだとしても、それは彼らの決意には影響しない。彼らをチームの前線で発見したとしても、彼らの誰ひとりとしてそこに至るまでに近道を通ったりはしていないのだ。彼らは、このようなチームを作って運営することには多くの献身や時間、そして多くのコミュニケーションが必要になることを知っている。こんな規模になる場合には特に。

 しかし、Andrew Brownは秘訣を得たと考えていて、それは「第一は友人、チームメイトは第二」というものだ。彼はチーム名と全員と親密なわけではなく、「僕は他の全員とちゃんと関わりたいんだ」と言った。

 この考えはTimothy Wuも言っていた。「そのトップ8...」頭を振りながら言うには、「それはとても良い繋がりなんだ」と。彼はこの台詞を、Jarvis Yuが「East West Bowl」のメンバーを「老人」と評し、その肩を掴んだ直後に放った。

 Wuは「皆貢献する意思はあるんだ。それで全てさ」と強調する。Wuは彼の調整仲間と多くの時間を費やしており、「East West Bowl」もそのやり方の珍しい形の一つだというのだ。そうしたマジックプレイヤーたちはお互いが「波に乗る」手助けをすることを好む。それは相互作用のように見えるもので、他のプレイヤーと一緒にいない「East West Bowl」メンバーを見つけられない理由なのだ。

 Jarvis Yuいわく、「そう、本当に調整している間幸せになるような何かがあるんだよ」ということらしい。

「僕らはお互いにプレッシャーをかけるのではなく、マジックが楽しいということを忘れないようにしようとしてるんだ」とBrownは言う。「僕は長い間こうすることを夢見ていて、そして今そうしているんだ。見てよ、僕は今こうしていることが幸せだと言っているし、実際ここにいられて幸せなんだ」 彼の言葉はチームの思いをうまく代弁している。

 「East West Bowl」は一部の人にとってうまくいかないように感じられたかもしれないが、実際はこのように国の両岸という距離があってさえ強固な結束に裏打ちされているのだ。トロフィーとこの繋がりが、今回のプロツアーで彼らの心にしっかりと残ることは想像に難くないだろう。

 彼らはこの週末うまくやるかもしれないし、そうでないかもしれない。しかしどちらにせよ、彼らはきっと楽しむだろうし、また次のプロツアーでもより良くなって戻ってきてくれることだろう。

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