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【観戦記事】 準決勝:Andrea Mengucci(イタリア) vs. 八十岡 翔太(日本)

【観戦記事】 準決勝:Andrea Mengucci(イタリア) vs. 八十岡 翔太(日本)

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Marc Calderaro / Tr. AOKI Chikara

2016年4月24日

原文はこちら

アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci(バント・カンパニー) vs. 八十岡 翔太(エスパー・ドラゴン)

 アンドレア・メングッチはフィーチャーマッチ・エリアに座っている。カメラの準備は整っていない。椅子の上で落ち着きがなく、何か手遊びをするものを探す。机の上に置いてあるトークンの束をパラパラとめくり始める。

 プロツアー『ニクスへの旅』トップ8入賞者で生粋のイタリア人はプロツアー・サンデーに帰ってきたが、対戦相手の殿堂顕彰者、八十岡翔太とは異なり、まだこの場所ではくつろげない。準決勝は初の舞台なのだ。

 テーブルの反対側の八十岡からは、静かに制御された落ち着きがあふれている。三度目のプロツアートップ8だけでなく、元プレイヤー・オブ・ザ・イヤー、プレイヤー選手権準優勝、そしてプロツアー・チャールストンチャンピオンである。元来寡黙な彼は、神聖なるプロツアー・サンデーのスポットライトを当然のものとし、また明らかに楽しんでいる。

 この対戦は消耗戦だ。バント・カンパニーがエスパー・ドラゴンの序盤の除去をかいくぐり、戦線を広げすぎて《衰滅/Languish(ORI)》が致命的にならないようにすれば勝利を得られるだろう。しかしエスパー・ドラゴンは邪魔されることなくコントロールを確立すると、打ち消しと除去に支えられたプレインズウォーカーとドラゴンが暴力的な勝利をもぎ取っていく。

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準決勝に臨むアンドレア・メングッチと殿堂顕彰者・八十岡翔太。2人の態度の違いは明白だ。

ゲーム展開

 第1ゲームは八十岡のどのゲームよりもゆっくりと進む。メングッチはすべてを余計に気をつけて行い、各ステップに正しく行動しようとしていた。八十岡が序盤の1対1交換を素早く行っても、メングッチは一貫してペースを一定に保った。メングッチは慎重さをもって、確実に物事を行う。

 何もない戦場に八十岡が《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》を呼び出す。メングッチはそのターン終了ステップに《集合した中隊/Collected Company(DTK)》を唱えたが、龍王の最初の一撃を止められるものではなかった。八十岡の攻撃が始まる。

 八十岡がメングッチにクロックを仕掛ける。そのしぐさから八十岡には《衰滅/Languish(ORI)》がありそうだが、メングッチはそれを無視してクリーチャーを戦場に追加し、さらに《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》でドラゴンを手札に送り返す。

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メングッチは明らかにナーバスになっていたが、集中力を損なっているわけではなかった。

 《衰滅/Languish(ORI)》が戦場を一掃するが、メングッチは常に手札を保持している。八十岡がこのゲームを取るにはそれより多く行動しなくてはいけない。《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》が《集合した中隊/Collected Company(DTK)》を「フラッシュバック」し、クリーチャーの数を維持してターンを返す。《衰滅/Languish(ORI)》はされない。2体の《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》、《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》、そして《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》が起動されるのを待っている。

 八十岡は熟考する。メングッチが6枚以上の土地をコントロールしているので、次のターンには80万点くらいのダメージをひねり出しそうだ。《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》で《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》を奪い、忠誠値を上げてターンを返す。だが4/5の《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》が2体いると《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》が7/7となり、メングッチがここから勝つのは難しくなかった。

 最適にプレイすることに集中していたメングッチはサイドボードに手を伸ばす。20秒ほどサイド・チェンジをしかけて、まだそれができないことを八十岡が指摘してくれた。

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八十岡は日曜日のスポットライトの下でも穏やかに、ストイックに。

 きまりが悪いことを悟られまいと、メングッチは大げさに謝罪したが、それなら無表情でしないと。またもナーバスになっているように感じられた。

 第2ゲームも同じく八十岡の序盤の戦術で始まる。戦場を黒く軽い除去で掃除する一方、各ターンのマナを《苦い真理/Painful Truths(BFZ)》のようなカードで最大効率化していく。

 均衡を破ったのはメングッチの2枚目の《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》。複数の手掛かりを残し、4点のダメージを与える。八十岡が《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》でコントロールを奪うまでにライフを11まで落とす。

 メングッチは奪われた《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》を《反射魔道士/Reflector Mage(OGW)》で手札に戻したが、《衰滅/Languish(ORI)》がすべてを吹き飛ばす。メングッチは手掛かり・トークンを広げて何枚あるか確認し、再び《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》を送り込む。しかし、《衰滅/Languish(ORI)》再び。

 三度の《衰滅/Languish(ORI)》でクリーチャーは枯れたかに思われたが、メングッチは《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》と《精霊信者の賢人、ニッサ/Nissa, Sage Animist(ORI)》をコントロールしており、カードを最大限に利用する。

 メングッチが戦線の維持に苦心する一方で、八十岡は贅沢三昧だ。《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar(DTK)》を見つけ、《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》をプレインズウォーカーに変身させ、さらに幼いジェイスを置き直す。《忌呪の発動/Foul-Tongue Invocation(DTK)》、《究極の価格/Ultimate Price(DTK)》、1枚目の《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》を使い捨てて《忌呪の発動/Foul-Tongue Invocation(DTK)》を再利用。メングッチの脅威は全て取り除かれた。

 どのような小石も取り除かなくてはいけない八十岡だが、峠が越したようだ。

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メングッチの印象的なプレイが彼をここまで連れてきた。止めるつもりはないだろう。

 最後の抵抗として《オジュタイの命令/Ojutai's Command(DTK)》を唱えるメングッチ。モードの指定をしようとする。

「ドローとそれから......」

 八十岡はそれを制し、打ち消し呪文を見せる。

「投了で。」

 メングッチは続けた。

 サイドボーディング前のゲームを1本ずつ分け合い、今度こそメングッチは追加の15枚に手を伸ばす。

 ゲームとゲームの間にメングッチは再び神経質な仕草を始める。彼の動きは気をもんでいるのではなく、むしろコントロールされているようだ。それにもかかわらず、彼は不安とわずかな不快をさらけ出す。彼にとってこの試合は明らかに多くの意味がある。

 第3ゲームは八十岡のマリガンから始まり、2枚の土地を含む6枚をキープした。2ターン目の《強迫/Duress(DTK)》は何も落とせなかったが、《不屈の追跡者/Tireless Tracker(SOI)》と4枚の土地を露わにした。戦場にはすでに《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》がいる。

 3枚目の土地を引けていない八十岡にとって、普通ならなんとでもなるメングッチのアグレッシブな手札は致命的だ。メングッチはこれを好機と捉える。《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》を唱えて変身させ、《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》を追加する。早期の決着を望んでいる。

 続くターンに総攻撃で8点のダメージ、八十岡はまた3枚目の土地を置けない。ドロー・ステップにカードを1枚追加できただけ。

 対戦スコアは2-1となり、次が最後のゲームになるかもしれない。

 八十岡は《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》、《骨読み/Read the Bones(ORI)》でゲームを始めた。手札を整えるのが仕事のようだ。最低でも6ターン目までは毎ターン土地を置くことが、このマッチに必要なことだと理解している。5ターン目には忠誠値6の《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound(ORI)》、アンタップ状態の《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》を従えてターンを返す。

 メングッチは《爪の群れの咆哮者/Krallenhorde Howler(SOI)》と《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》をアンタップする。手札にはカードがたくさんあり、その状況を維持したいようだが、《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》がライフとカードアドバンテージ双方にプレッシャーをかけてくる。八十岡相手に1対1交換を続けていてもメングッチは勝てないだろう。これを知りつつ、能力を使うマナを残して《薄暮見の徴募兵/Duskwatch Recruiter(SOI)》を唱える。

 続く数ターン、メングッチは手札の枚数を維持しつつ、《石の宣告/Declaration in Stone(SOI)》で《龍王オジュタイ/Dragonlord Ojutai(DTK)》を除去したが、それは問題をひとつ取り除いたに過ぎない。八十岡は除去を操り、戦場の圧力を維持していた。メングッチは除去には対応できているものの、圧力には何もできていない。

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八十岡は観察し、彼のプレイ速度と同じくらい素早く情報を得る。

 八十岡には《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》がおり、ゾンビ・トークンを作成してくれる《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet(OGW)》を追加。メングッチは吸血鬼が率いるゾンビ軍団に攻撃できない。ジェイスがなぜ吸血鬼やゾンビに手を貸しているのか手掛かりも掴めないが、ご存知の通りジェイスの動機は時々不可解なのだ。

 ライフが2対25となってメングッチには元気がない。なぜライフがわかったのかというと、メングッチが意気消沈してつぶやいたからだ。それでも手に入れたカードを戦場に送り込み、サイズ十分な援軍とする。

 残念ながらそれは意味をなさなかった。《乱脈な気孔/Shambling Vent(BFZ)》が加わり、インスタント除去でブロックが阻まれ、八十岡がレッドゾーンにクリーチャーを送り込む。スコアは2-2となった。

 決勝ラウンドを通して初めて第5ゲームに進む。さきの4ゲームも熱戦だったが、すべての決着がつく。

 メングッチは序盤に八十岡を出し抜く。最初の3ターンは今までのゲームと似通っていた。4ターン目にメングッチは八十岡の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を《オジュタイの命令/Ojutai's Command(DTK)》を打ち消しつつ自分の《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を墓地から戦場へ戻す。すでに《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》と《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》もある。

 八十岡には、ない。何も。

 続くターンに《集合した中隊/Collected Company(DTK)》からの《跳ねる混成体/Bounding Krasis(ORI)》で《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy(ORI)》を2回使うメングッチ。八十岡はわずかに色事故を起こしており、それが足かせになっている。

 メングッチは6枚目の土地を置き、《森の代言者/Sylvan Advocate(OGW)》と《伐採地の滝/Lumbering Falls(BFZ)》が荒ぶる。総攻撃で12点のダメージを与え、八十岡の残りライフは1。

 メングッチは人目を忍んだ動きを始め、ナーバスになっているのがわかる。勝利は目前だ。ゲームの最中よりもちょっとだけ動きが大きくなる。

 八十岡が自身を守りきれずに握手を求めたのを見たメングッチは、手を大きく振って握り返した。成し遂げたことを、誇らしげに。

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アンドレア・メングッチが3-2で八十岡翔太を破って決勝へ進出!

Andrea Mengucci - 「バント・カンパニー」
プロツアー『イニストラードを覆う影』 トップ8 / スタンダード
4 《森》
3 《平地》
2 《島》
3 《梢の眺望》
4 《大草原の川》
3 《伐採地の滝》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《進化する未開地》

-土地(25)-

4 《薄暮見の徴募兵》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《森の代言者》
4 《跳ねる混成体》
4 《反射魔道士》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《不屈の追跡者》
2 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー(26)-
4 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》
1 《オジュタイの命令》

-呪文(9)-
2 《狩猟の統率者、スーラク》
1 《龍王ドロモカ》
2 《払拭》
2 《侵襲手術》
3 《否認》
2 《石の宣告》
3 《悲劇的な傲慢》

-サイドボード(15)-
八十岡 翔太 - 「エスパー・ドラゴン」
プロツアー『イニストラードを覆う影』 トップ8 / スタンダード
4 《沼》
4 《島》
4 《窪み渓谷》
4 《詰まった河口》
1 《水没した骨塚》
3 《コイロスの洞窟》
2 《乱脈な気孔》
3 《大草原の川》
2 《港町》

-土地(27)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《龍王オジュタイ》
2 《龍王シルムガル》

-クリーチャー(10)-
4 《シルムガルの嘲笑》
3 《究極の価格》
2 《意思の激突》
2 《闇の掌握》
2 《精神背信》
3 《忌呪の発動》
2 《苦い真理》
1 《骨読み》
3 《衰滅》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-呪文(23)-
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
3 《強迫》
2 《死の重み》
2 《否認》
1 《苦渋の破棄》
1 《無限の抹消》
1 《悪性の疫病》
1 《闇の誓願》
1 《龍王の大権》
1 《死の宿敵、ソリン》

-サイドボード(15)-

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