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プロツアー「テーロス」

観戦記事

第6回戦:英雄の破滅
Luis Scott-Vargas(アメリカ) vs. Paul Rietzl(アメリカ)

Tobi Henke
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Tobi Henke / Tr. Yusuke Yoshikawa

2013年10月11日


ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas(世界ランキング15位、ニクソス・レッド) vs. Paul Rietzl

(オルゾフ・ミッドレンジ)

 本日の早朝、世界ランキング15位のプレイヤー、ルイス・スコット=ヴァーガスはプロツアー殿堂顕彰者に列せられた。それ以前には、1回の優勝を含む5回のプロツアー・トップ8入賞、加えて数えきれないほどの実績を示し、世界中で「LSV」として知られる男に、ここでの紹介はほとんど必要だろう。このラウンドで彼が対面するのは、こちらも同様に1回の優勝を含む3回のプロツアー・トップ8入賞を刻んでいる有名プレイヤー、ポール・リーツェルだ。

 これは明白に巨星同士の激突でありながら、世界で最も著名なチーム同士の戦いでもある。ルイス・スコット=ヴァーガスはチーム「ChannelFireball」のキャプテンであり、リーツェルはチーム「StarCityGames」のメンバーなのだ。この素晴らしい組み合わせにふさわしく、双方のプレイヤーはこのラウンドに5勝0敗、無傷の連勝で臨んでいる。しかしながら、6勝0敗に進めるのは一方のみ......


プロツアー・アムステルダム2010優勝者であるポール・リーツェルは、チーム「StarCityGames」が選んだものとは別のデッキを手に着席した。対戦相手は、世界ランキング15位かつ殿堂顕彰者のルイス・スコット=ヴァーガスで、こちらは自身のチームのデッキを選んでいる。

 LSVは「ChannelFireball」謹製の「ニクソス・レッド」は、わずかにミッドレンジ志向のデッキで、赤への信心を高めることで《ニクスの祭殿、ニクソス》の実に並外れた力を引き出せるようにし、《燃えさし呑み》や《嵐の息吹のドラゴン》といったカードの「怪物化」能力を起動することを目指す。

 一方のリーツェルは、チームメイトの大部分がプレイすることに決めたデッキリストに合流しなかった。チーム「StarCityGames」のプレイヤーの大多数は青単信心を選んでいるが、リーツェルはオルゾフ・ミッドレンジで行くことにした。後に彼が語ったことには、「チームの他のメンバーと別のデッキを使うことに、実際のプレイの場での有利さがあると思ったんだ。もし相手があるデッキを使っていると思い込んでいるなら、マリガン判断に大きく影響するからね。」

 リーツェルによると、彼のデッキは赤いデッキに対し相性があまり良くないとのことだ。「《燃えさし呑み》のような遅いカードは《破滅の刃》や《英雄の破滅》で対処できるから気にならないし、そうした特定のタイプの赤いデッキには有利だけれど、序盤から攻撃的に来る赤いデッキには、《骨読み》のような相性の悪いカードが俺のデッキには多すぎるんだ。」

ゲーム展開

 そして実際に、スコット=ヴァーガスは第1ゲームを《灰の盲信者》から《ドムリ・ラーデ》という攻撃的な序盤で始めた。一方のリーツェルは《思考囲い》でスコット=ヴァーガスの手札から《歓楽者ゼナゴス》を落としていた。リーツェルの最初のクリーチャーは第3ターンの《管区の隊長》となった。その間、《ドムリ・ラーデ》は数枚のクリーチャーを供給したが、スコット=ヴァーガスが真に欲していたのは土地だった。第4ターン、彼は単に《炎樹族の使者》をプレイしてターンを返した。スコット=ヴァーガスの次の土地は《奔放の神殿》で、《鍛冶の神、パーフォロス》を唱えるために待ちわびた4マナをすぐには供給してくれなかった。とはいえ、《ドムリ・ラーデ》からもう1枚の《灰の盲信者》がめくれて、スコット=ヴァーガスは盤面とライフ総計の両面で確固たるリードを得た。《ドムリ・ラーデ》は《英雄の破滅》で対処されたものの、ついに、《灰の盲信者》と《炎樹族の使者》によって《鍛冶の神、パーフォロス》が顕現。リーツェルの最後の悪あがきの《骨読み》は回答をもたらさず、《鍛冶の神、パーフォロス》が止めのダメージを与えた。

「第1ターンの《思考囲い》の代わりに、第2ターンに《管区の隊長》を唱えるプランもあった。たぶんそっちが良かったのかな」リーツェルは首を傾げた。 「まあ、それだと受けるダメージを減らせたかもしれないね」とはスコット=ヴァーガスの微妙な助言。結局、赤いデッキの平均的ドローを考えると、第1ターンの《思考囲い》がベターだということに彼らの考えは落ち着いた。「変な手札を持っていたもんだ」とリーツェルはコメントした。


スコット=ヴァーガスは、自身のチームの赤単信心戦略が強烈な攻撃力を持っていることを示そうとしている。

 第2ゲームは全く変わった様相を見せた。リーツェルが第1ターン《万神殿の兵士》、第2ターン《管区の隊長》、次いでスコット=ヴァーガスの《灰の盲信者》を《破滅の刃》したのだ。リーツェルの攻勢を《ボロスの反攻者》が食い止めたところで、今度は《冒涜の悪魔》で空から攻撃する手に出た。これは《ドムリ・ラーデ》が《ボロスの反攻者》に《冒涜の悪魔》との格闘を命じたことで失われたが、今度は盤面がクリアになり地上戦力が攻撃を続けることができた。《管区の隊長》の兵士は数を増し、すぐにスコアをタイに戻した。

 シャッフルの間に、彼らは2つのデッキの相性について話していて、スコット=ヴァーガスはリーツェルのデッキに対してあまりテストプレイをしていなかったことを認めた。「まだ俺のデッキの全部のカードを見せたわけではないかもね」リーツェルはとぼけてみせた。「今なら何が出てきても驚かないさ」スコット=ヴァーガスは動揺するでもなく皮肉った。


リーツェルのオルゾフ・デッキは多数の強力な軽量クリーチャーと、それを支援する効果的な除去を組み合わせたものだ。

「俺が青いデッキを使っていると思ってた?」リーツェルは尋ねた。

「ああ」スコット=ヴァーガスは肩をすくめて言った。「けど、何も変わらないさ」

「まあね」

 最終ゲームはいささか拍子抜けの結果に終わった。スコット=ヴァーガスが唱えた呪文は《灰の盲信者》ひとつのみ、それも《破滅の刃》に遭ってしまい、第3ターンに《ニクスの祭殿、ニクソス》を置いてそれ以上のプレイをすることなくターンを返した。第4ターンには土地もその他のプレイもなかった。2枚目の《ニクスの祭殿、ニクソス》で《燃えさし呑み》を戦場に出すことはできたが、相変わらず土地は3枚のままだった。一方のリーツェルは、すでに2枚の《万神殿の兵士》と《冒涜の悪魔》を唱えていた。《英雄の破滅》がスコット=ヴァーガスの唯一のブロッカーを排除し、このトーナメントでの無敗の座から追いやった。

ポール・リーツェル 2 - 1 ルイス・スコット=ヴァーガス
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