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【戦略記事】 プロツアー『イクサラン』初日ドラフト・ラウンド全勝者たち

【戦略記事】 プロツアー『イクサラン』初日ドラフト・ラウンド全勝者たち

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年11月3日

原文はこちら

 プロツアーのドラフト・ラウンドは見逃されやすい。初日と2日目の最初の3戦がドラフトで行われるにも関わらず、構築ラウンドの戦いが始まるなりドラフトの話題は押しやられてしまう。だがそれは、大きな間違いだ。

 プロツアー参加者の誰に聞いても、ドラフト・ラウンドは「成功を左右する」部分だとすぐに答えるだろう。それは、「今日の人」の中からトップ8入賞者を選り分ける重大な要素なのだ。ドラフト・ラウンドの結果がその日に与える影響の大きさは、決して馬鹿にできない。

 今大会最初の3回戦を終え、454人のうち57人が全勝という最高のスタートを切った。続くスタンダード・ラウンドでの勝利は約束されていないものの、今日の成功からそこまでかけ離れることはないくらいの優位は得たというわけだ。(無論、彼らもこれから徹底的に打ち負かされる可能性はあるが、それでも優位であるのは事実だ。)

 見事全勝を果たしたプロたちに、成功を支えた戦略について尋ねてみよう。

 まずは「Ultimate Guard Pro Team」を代表し、現在世界ランキング1位のリード・デューク/Reid Duke。彼はその最高のステータスにふさわしい活躍を今大会でも見せてくれた。

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リード・デューク

 デュークは、意識して向かおうとしているアーキタイプや戦略を、状況に応じて変える手法を語る。「僕の場合、マーフォークを最も意識している。しっかりドラフトできれば最強のアーキタイプだけれど、うまくいかないと最弱の戦略になるんだ」

 それを克服するために、彼は流れてくるカードの見極めに力を入れていた。「シグナルをしっかりと読み取ること。それが第一だと肝に銘じなくちゃいけない」

 「優れた」カードを目にしただけで、「マーフォーク戦略が空いている」と勘違いしてはならない。他にマーフォーク戦略をドラフトしているプレイヤーが、たまたまより良いカードをピックした結果流れてきただけかもしれないのだ。

 デュークは今回マーフォーク戦略を回避したが、彼いわく「がっかりな」デッキに仕上がったようだ。「つまらないものになったね。まあ、面白くなり得るタイミングもなかったけれど」

 デュークがドラフトしたのは、白黒の(吸血鬼でない)デッキだ。彼は口の端に笑みを浮かべて言う。「最大の『コンボ』は《聳えるアルティサウルス》と《プテロドンの騎士》だよ。防御と攻撃を同時にできる」 決して最高の「コンボ」とはいえないが、彼は《聳えるアルティサウルス》と《プテロドンの騎士》を2枚ずつ採用し、それらをうまく駆使していた。使えるものを使え、ということだ。

 続けて、チーム「ChannelFireball」から世界ランキング2位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa。彼はルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas、新たな殿堂顕彰者ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leyton、そして(こちらも殿堂顕彰者となった)マーティン・ジュザ/Martin Jůzaというチームメイトたちともに、開幕を全勝で飾った。

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(左から)パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ、ジョシュ・アター=レイトン、
ルイス・スコット=ヴァーガス、マーティン・ジュザ

 ダモ・ダ・ロサは、デュークの言うアーキタイプを意識したドラフトをさらに進め、戦略を決める前後でピックの優先順位を大きく変える手法について語ってくれた。

「ドラフト序盤は柔軟性の高いカードを優先して取っていく。《ティシャーナの道探し》は、マーフォーク戦略なら《川守りの恩恵》の方が良いし恐竜戦略なら《襲撃》の方が良い。それでも早い段階では《ティシャーナの道探し》を優先する」

 だがひとたびアーキタイプが決まれば、《ティシャーナの道探し》のようなカードではなくそのアーキタイプに合ったものをピックしていく。そのため、デュークが言うようにそのアーキタイプへ向かうタイミングを把握することが大切なのだ。

 この点には彼のチームメイトたちも頷き、異議を唱えなかった。彼らもまた、世界選手権に向けて1か月前から『イクサラン』ドラフトの練習に打ち込んできている。ドラフトの意見交換は十分だ。

「今回は、リミテッドについてのミーティングは行いませんでした。スタンダードの練習に注ぎ込み......かなりの手応えを得られましたね」

 と言いつつ、アター=レイトンは白目を剥いた。チーム「ChannelFireball」が昨晩遅くまでデッキを決められなかったことは、すでに知れ渡っている――彼が殿堂顕彰パーティーを早めに切り上げてプレイテストを続けたほどだ。だがそれができたのも、リミテッドの戦略に自信を持っていたからだろう。

 今回のドラフトで何を求めるべきかという点について、4人の意見は明確だ。「緑絡みの『恐竜』以外ですね」とアター=レイトンが断言すると、スコット=ヴァーガスがそれを補足するように「基本的に恐竜をやらない」と付け加えた。4人は赤白の恐竜デッキはどうなのかと少し検討したが、やがて彼らの意見は一致した。チーム「ChannelFireball」はチームでの取り組みというものを熟知している。今回のドラフト・ラウンドで彼らの多くが全勝を果たしたというのも、頷ける話だ。

 最後に、プロツアー『破滅の刻』でトップ4に入賞した香港のヤン・ウィンチャン/Yam, Wing Chun。応援席からは「Yammy」の愛称で呼ばれるヤンは、他のプレイヤーと大きく異なる戦略を有していた。」

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ヤン・ウィンチャン

「うん、白を決め打ちしているよ」と、ヤンはこともなげに言う。「白のベスト・カードの大半が、アンコモンやレアでなくコモンだから」

 ヤンにとって白は懐の深い色であり、2人か3人は抱えられるという。その上で、彼は卓上の戦略も駆使して白を狙っていた。「毎回3人くらいは白を狙うプレイヤーがいるけれど、最初のパックで少なくともひとりは白を諦めてもらうんだ」 それができるだけのカード量が白にはあり、十分な戦力を整えられると彼は考えているのだ。

 ヤンはこの戦略を用いて15回ほどドラフトをプレイし、その強力さに心を奪われた。今回は初手で《司教の兵士》を手に入れると、あとは振り返らなかった――《司教の兵士》から《軍団の飛び刃》、《薄暮まといの空渡り》と立て続けにピックしていき、見事な「白黒吸血鬼」に仕上げたのだ。

 チームメイトの中にはこの戦略に懐疑的な者もいたが、ヤンは我が道を突き進んだ。

 興味深いことに、各卓の全勝者のデッキを見てみると白が多く、ヤンの戦略がそう間違ったものでないことがわかる。他には青と黒が優れた成績を残しているようだ。見てみよう。

色の組み合わせ全勝者数備考
緑青13(赤をタッチしたものが3つ)
白黒13(青をタッチして《人質取り》を採用したものが2つ)
青黒10 
赤白8 
赤緑4 
青赤3 
黒赤2 
緑白2 
黒緑1 
白青1(緑をタッチしたものが1つ)

 この表からいくつか重要なことが読み取れる。まず、白青は助けがなければ困難であること。この組み合わせだけ多色カードがなく、加えて主軸となるテーマもない。そういった要素が結果に表れた形だ。また、アター=レイトンが断言した通り緑絡みの恐竜も活躍したとは言い難い。

 マーフォークと吸血鬼の色はどちらも最大勢力となっており、「これらの部族をドラフトできれば最も期待できる」という共通見解が証明された。とはいえ、それも絶対のものではない。デュークが懸念しているようにマーフォークは失敗のリスクが大きく、その場合はヤンの戦略が優位になるだろう。白狙いでドラフトを始めれば、白黒か赤白に落ち着く。どちらも優れた色の組み合わせだ。

 いずれにしても、2マナ域はしっかり確保しておこう。序盤の展開は大切だ!

 明日は、今日のドラフトで全勝した57人のうち再び全勝を果たしたプレイヤーに注目していく。どの戦略が最も強力か、その目で確かめてほしい。

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