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【戦略記事】 プロツアー『イクサラン』ドラフト・ラウンド全勝者たち

【戦略記事】 プロツアー『イクサラン』ドラフト・ラウンド全勝者たち

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年11月4日

原文はこちら

 昨日は初日のドラフト・ラウンド全勝者たちに話を聞き、『イクサラン』リミテッドの戦略を垣間見た。2日目となる本日は、さらに多くの情報が手に入るはずだ。注目すべきアーキタイプはどれか(海賊の日に船酔いする海賊みたいにならないよう、どの戦略を選ぶべきか)。そして、57人いた初日ドラフト・ラウンド全勝者たちの中で、今日も全勝し、2017-2018年シーズンの「ドラフト・マスター」獲得へ先行するプレイヤーは誰か!

 初日ドラフト・ラウンド全勝者たちの記事に掲載されていた表を見ると、優れた成績を残したアーキタイプがあることに気づくだろう。以下に新しい情報を加えたデータを掲載する。大まかに言えば、成功したアーキタイプはさらなる成功を収め、失敗したアーキタイプはさらなる失敗を喫したようだ。

色の組み合わせ初日全勝者数2日目全勝者数合計割合
白黒1361920.4%
緑青1351819.4%
青黒1081819.4%
赤白851314.0%
緑白2688.6%
赤緑4266.5%
青赤3255.4%
黒赤2244.3%
黒緑1011.1%
白青1011.1%

 では、上位のアーキタイプから見ていこう。プレイヤーたちは「マーフォーク(緑青)」や「吸血鬼(白黒)」を「夢のデッキ」だと評しているが、「青黒海賊」についてはほとんど言及していない。それでも上記の表を見るに、同じく高い勝率を誇っている。特筆すべきは、黒赤でも青赤でもなく、青黒の海賊が良い結果を残している点だ。海賊は青と黒と赤の3色にあるが、赤をドラフトする場合は白と組み合わせる方向を狙うべきなのだろう。

 白黒、緑青、青黒の3つを「Tier 1」とするなら、赤白はただひとつの「Tier 2」と言える。その下には恐竜の3色である白、赤、緑の他の組み合わせ(緑白と赤緑)が迫っている。海賊の3色と異なり、ドラフトでの勝率という点では組み合わせごとに大きな差はついていないようだ。

 私を含むラクドス教徒にとっては悲しいことに、黒赤の組み合わせは黒緑、白青とともに最下位争いをする結果になった。全勝を狙うなら、黒赤にはあまり期待できなさそうだ。しかし希望もある。上記の表はあくまで全勝だけを集めたデータであり、2勝1敗や1勝2敗、全敗のすべてを反映したものではない。もしかしたら同じラクドス教徒の仲間が、安定して2勝1敗を記録しているかもしれないのだ。そうなれば「ラクドスの復活」のときだ!

 次の話題へ進む前にもうひとつ、白青で全勝しているただひとりのプレイヤーのことが気になっている人がいるかもしれないから、ここで触れておこう。一体何が起きたのか? 実際のところどうだったのか? ポール・リーツェル/Paul Rietzlに聞いてみよう。これはリーツェルいわく、最悪のデッキだったそうだ。彼は(《森》1枚と《未知の岸》1枚、宝物・トークンを駆使して)緑をタッチし、《凶暴な踏みつけ》2枚と《噛み付く帆背びれ》を採用した。そんなデッキでどうやって全勝を果たしたのかと尋ねると、彼自身もわからない様子だった。「良い子は真似をしないように」とだけ言っておこう。

 では、さまざまな障害を最もうまく乗り越えていったのは誰か? 初日のドラフト・ラウンド全勝者57人のうち、6人が2日目も全勝を果たした。世界ランキング7位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald、ブライアン・ホンズ/Bryan Hohns、ギョーム・マティノン/Guillaume Matignon、エリアス・ワッツフェルト/Elias Watsfeldt、ヤオ・ツーラ/Yao Zile、そして「Mr. 76%」こと松本 友樹の6名だ。この6名のほとんどが、現時点でトップ8入賞の可能性を残している。ドラフト・ラウンドでの活躍が彼らを支えているのだ。

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プロツアー『イクサラン』ドラフト・ラウンド全勝者たち
(左から)オーウェン・ターテンワルド、ヤオ・ツーラ、エリアス・ワッツフェルト、ブライアン・ホンズ、ギョーム・マティノン、松本 友樹

 まずは松本 友樹をご紹介しよう。プロツアー主催者のリッチ・ハーゴン/Rich Hagonにならって先ほど彼のことを「Mr. 76%」と呼んだが、そのニックネームは彼のグランプリやプロツアーにおけるリミテッド勝率の圧倒的な高さに由来している。名付けられた当時は76%もの勝率を誇り、現在でも74%という驚異的な勝率を維持しているのだ。その数字は、グランプリ・千葉2015およびグランプリ・京都2016の優勝と、グランプリ・静岡2015でのトップ8入賞という輝かしい成績によって支えられている。そしてプロツアーでも今週末の全勝のように目覚ましい活躍を見せ、彼の高い勝率は揺るがない。

 プロ・プレイヤーたちも、その数字を見て思わず鼻を鳴らす――それも当然だろう。どのフォーマットでも、目指すべき到達点は勝率66%だ。本当に限られた偉大なプレイヤーでさえ、70%かあるいは71%か。松本の勝率は一体どういうことなのか?

 実は現時点では、まだ試合数そのものが少ないのだ。彼が経験してきたプロツアーやグランプリでのドラフトはおよそ25回だ。同じくらいの経験をしたプレイヤーたちの中では誰よりも高い勝率を記録しているのは事実だが、まだ評価を固めるには早いだろう。彼が今の2倍くらい試合をこなしたとき、本当の勝率が見えてくるはずだ。その頃には、現在より下がっていると思われる。

 松本のキャリア序盤の成功がどこまで続くかは未知数だが、今後数シーズンで彼の勝率は66%に近いところで落ち着くだろう。それでも今は、ドラフトで事もなげに勝ち星を得る注目の新人がプロツアー・シーンに現れた、ということを伝えておこう。

 続けて、エリアス・ワッツフェルト。ラウンドの合間に会場の隅で静かに座っている彼に声をかけてみた。この時点で彼の成績は10勝3敗。トップ8入賞が見えている。

「こういう競技的な舞台は苦手なんです」と、スウェーデン出身のプレイヤーは言った。何とも似つかわしくない発言だが、彼はこう続ける。「最近のプロツアーでも10勝2敗までいきましたが、その後1勝3敗で終了し、その次も10勝2敗から4連敗......どうしても、ラウンドの合間に『ここで負けたらどうしよう』とか『また負けたらどうしよう』とか考えてしまうんです」 彼は今大会でも10勝2敗の好成績を記録し、そして今、試合中以外での弱気を乗り越えるべく戦っていた。

 それでも、試合については心配ないと彼は言う。「ゲームに影響は出ないです。そこまで持ち込むわけではないので」 この切り替えの良さも、今大会のドラフト・ラウンド全勝につながっているのだろう。

 ワッツフェルトは語る。「『イクサラン』ドラフトは好きです。選択肢に幅のある環境では、ひとつひとつの判断が重要になります......例えば『ここで《潜水》をピックするべきか? 本当に良いカードか?』という風に」 ワッツフェルトのドラフトは2日とも「緑青マーフォーク」であるため、彼の場合は必ず《潜水》をピックするのだろう。

 マーフォークのような戦略では、攻撃を続けることが何よりも大切だと彼は言う。「バウンスや打ち消しがあるので、コンバット・トリックには対抗できます。攻撃する側に回った方が、有利に立ち回れるんです」

「君の場合は《潜水》を絶対ピックするよね」と指摘すると、彼は笑顔を見せて肩をすくめた。

「軽めのカードが好きなんです......でも、重めのデッキには可能性があると思いますよ」 練習が足りていないと前置きをしながらも、彼はそう強調した。「その場合タフネス4が必須です。特に《財力ある船乗り》や《葉を食む鞭尾》ですかね。ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonのフィーチャー・マッチは見ました? 彼が2/1、2/1と展開したところに相手が1/4、1/4と展開して、それだけで決着していましたよ!」

 重めのデッキに希望を持たせてくれたことには感謝するが、ワッツフェルト自身がマーフォークをドラフトし続ける限り、私は懐疑的な姿勢を崩さないだろう。

 同じくマーフォークを連続でドラフトして全勝を収めたプレイヤーもいる。2010年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースで惜しくも2位になった、ギョーム・マティノンだ。ワッツフェルトと同様に、マティノンも『イクサラン』のドラフトを心から楽しんでいる。「卓内で正解となるアーキタイプを見つけるのが難しいんだ」と、彼はこの環境のドラフトと他の環境との違いを述べる。

「これまでの評価基準をすべて変える必要がある」とマティノン。「例えば、通常のセットなら多色カードは単色カードに劣るだろう? でも良いデッキを手にするためには良いアーキタイプを手にしなくちゃいけない」

 『イクサラン』における「良いアーキタイプ」とは、すなわち「良い部族」だ。マティノンの評価では、マーフォーク、吸血鬼、そこから一段落ちて海賊とのことだ。「だから多色のマーフォークと単色の吸血鬼が同じくらいの評価になるんだ」と、彼は腕で天秤を表現しながら説明した。

 昨日の記事で出た柔軟性を意識したピックに、マティノンは異議を唱える。「俺は『柔軟性』という言葉が好きじゃないな。その場で最も強いカードを取るだけだ。良いデッキを見つけるためなら、3手目だろうが5手目だろうが、喜んで犠牲にするよ」

 マティノンは、こうしてプロツアーの舞台に戻ってこれたことをとても喜んでいた。「そこまで熱心にやりたいわけじゃないんだけどね! ただプロツアーが大好きなのさ」 ここまでの成績を見るに、この発言には疑問が残るだろう。

 初日と2日目で同じアーキタイプを選択してどちらも全勝したのは、マティノンとワッツフェルトのふたりだけだ。中国初の競技チーム「MTGSheep」(参考:英語記事)の一員であるヤオ・ツーラは、初日を赤白、2日目を緑青で全勝を達成。現在世界ランキング7位の殿堂顕彰者オーウェン・ターテンワルドは、白黒と赤白で無敗を通した。

 ドラフト・ラウンド全勝者6名全員のアーキタイプは、以下の通りだ。

全勝者ドラフトのアーキタイプ
ブライアン・ホンズ青黒、赤白
ギョーム・マティノン緑青、緑青
松本 友樹青黒、白緑
オーウェン・ターテンワルド白黒、赤白
エリアス・ワッツフェルト緑青、緑青
ヤオ・ツーラ赤白、緑青

 最初の表と改めて見比べてみると、上位4アーキタイプ以外のものはひとつしかない――しかも、そのひとつも第5位だ。今後『イクサラン』ドラフトを楽しむ際は、記事冒頭の表を参考にして色を決めるのも悪くないだろう。

 皆さんもぜひ、『イクサラン』ドラフトを楽しんでほしい!

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