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【観戦記事】 準決勝:Seth Manfield(アメリカ) vs. Samuel Ihlenfeldt(アメリカ)

【観戦記事】 準決勝:Seth Manfield(アメリカ) vs. Samuel Ihlenfeldt(アメリカ)

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Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年11月5日

原文はこちら

セス・マンフィールド/Seth Manfield(世界ランキング11位/スゥルタイ・エネルギー) vs.サミュエル・イレンフェルト/Samuel Ihlenfeldt(マルドゥ機体)

「この対戦に向けての練習はどうでした?」と、サミュエル・イレンフェルトは席につきながら言った。彼は興奮し、活力に満ちた様子だった。対面する相手は試合中のおしゃべりを好まないことは知っていたが、どうにも抑えきれないようだ。彼は初めて参加したプロツアーで、いま準決勝の舞台にいる。そして世界最高のプレイヤーとこれから矛を交える。昂ぶらないわけがない。

「面白くはなかったかな」と、世界ランキング11位のセス・マンフィールドは答えた。

「それは良かった」とイレンフェルトは冗談めかして言った。今大会で「マルドゥ機体」を手にした彼の選択は、間違えていたかもしれない。しかしここで戦うマンフィールドの「スゥルタイ・エネルギー」との相性は、他のデッキと当たるよりはるかに良い。チーム「Genesis」の「スゥルタイ・エネルギー」は、重くなっていった「ティムール・エネルギー」を速度で狙い撃ちにしたデッキだ。そのため同じ速度のアグロやミッドレンジ戦略を相手にすると、「エネルギー」デッキが本来持つ強みを発揮できないのだ。

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アルバカーキの地で最高の週末を過ごすセス・マンフィールド(写真左)とサミュエル・イレンフェルト(同右)

 そしてイレンフェルトの側は、得られた優位を存分に活かすことだろう。元世界王者にしてプロツアー・トップ8入賞4回を誇るプレイヤーとこれまでにない大舞台で対面しているのだから、デッキの相性くらい優位に立たせてくれてもいいはずだ。

 イレンフェルトのゲーム・プランは、軽量クリーチャーで序盤から積極的にダメージを与えていくこと。その後マンフィールドの繰り出す優れた軍勢を前に攻撃を通せなくなったら、機体で空から襲撃し勝利を引き寄せたいところだ。マンフィールドは序盤から攻めかかってくる小型クリーチャーをさばき、《キランの真意号》や《霊気圏の収集艇》で止めを刺されないようライフを保つことに全力を尽くすことになる。

ゲーム1

 先手のマンフィールドは最初の数ターンで《牙長獣の仔》を2体展開し、《霊気との調和》を2枚プレイした。彼は6個ものエネルギーを貯蔵し、《牙長獣の仔》は4/4に成長する。

「どうぞ」 マンフィールドが攻撃を宣言すると、イレンフェルトが言った。彼にできることはなかった。彼の盤面には《経験豊富な操縦者》、《屑鉄場のたかり屋》、《ボーマットの急使》、《歩行バリスタ》と並んでいたが、この地の「エネルギー」をたっぷり貯め込んだ《牙長獣の仔》2体による攻撃を前に誰も飛び込めなかった。それでも攻撃を終えたマンフィールドがエネルギー貯蔵庫から離れると、イレンフェルトは反撃の機会を得た。

 イレンフェルトは全軍を攻撃に向かわせた。しかしマンフィールドがこの週末を通して何度もそうしてきたように、そこで《顕在的防御》が飛び出した。彼は《歩行バリスタ》による砲撃の可能性を意識してブロック指定前にそれを放ち、これからブロックさせる《牙長獣の仔》を守った。それからエネルギーを消費して強化すると、イレンフェルトのドワーフを丸呑みにした。

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大きなプレッシャーの中でも、サミュエルの・イレンフェルトの熱意は弱まらない。

「大丈夫だ、できる」 イレンフェルトは自身に言い聞かせ、立て直しを図る。その言葉は彼の靴下に書かれていた。この週末、イレンフェルトは恐竜が描かれた靴下を履いていた。そこには「君ならできる」と書かれている。彼の躍進を支えてきた言葉だ。

 だがマンフィールドはゲン担ぎなど意にも介さず《巻きつき蛇》を盤面へ追加。そして彼はエネルギーを一気に開放した。蓄えられた位置エネルギーが運動エネルギーに変わり、力を生んだ。マンフィールドの《牙長獣の仔》は5/5と4/4に育ち、その上でまだエネルギーは残っている。手に負えない状況とはまさにこのことだ。

 2体目の《巻きつき蛇》まで追加される次のターンの話は、もうしない方が良いのかもしれない。マンフィールドは2体目の《巻きつき蛇》を繰り出すと残ったエネルギーを注ぎ込み、《牙長獣の仔》は山のようなサイズになった。これだけ大きいとタップするだけでもひと苦労だろう。それでも彼は、イレンフェルトが投了するまでなんとかそれを繰り返した。

 2ターン目に戦場へ降り立って以来、マンフィールドの《牙長獣の仔》はイレンフェルトに戦場での主導権を握らせなかった。イレンフェルトは攻撃もブロックも安心してできなかった。エネルギーは、実際に使わなくてもゲームを支配しうる。そして実際に解き放たれれば、文字通りゲームを終わらせてしまうのだ。

「この舞台に立てて本当に嬉しいです」 第2ゲームに向けてシャッフルをしながら、イレンフェルトは言った。敗北に気を落としたものの、その心は挫けていない。

「僕もだ」とマンフィールドが答える。「嬉しそうに見えないかもしれないけれど」

 確かに。マンフィールドは、マジックに対して徹底的にストイックなプレイヤーだ。だが私たちは知っている。世界王者になったときの彼の豊かな感情を――それは今でも、彼の中のどこかにあるはずだ。

「冷静に立ち向かうべきなのはわかっています」とイレンフェルトが続けた。「でもこんな場所で最高のプレイヤーと戦えるなんて、落ち着いていられませんよ。この週末だけで、プロ・ポイント0点から一気にシルバー・レベルになったんですよ」

 イレンフェルトは、世界中のマジック・プレイヤーが見る夢を叶えた。そのことを、彼はひとときたりとも忘れていない。

ゲーム2

 第2ゲーム、先手のイレンフェルトは《模範的な造り手》から《経験豊富な操縦者》、《屑鉄場のたかり屋》と展開し盤面を埋める。大抵の相手なら、これでゲームが決まるほどの動きだ。しかしマンフィールドの序盤の動きもまた強かった。彼は《巻きつき蛇》から《ピーマの改革派、リシュカー》という、かつての「黒緑『巻きつき蛇』」を彷彿とさせる動きを見せ、4/5と4/4で盤面を固めてターンを返した。これを前にしては、いかに勇敢なドワーフの軍勢でも足を震わせて動けなかった。(その後すぐに3/3の《歩行バリスタ》が戦線に加わることを除いても、たまらない展開だ)。

 それでもイレンフェルトは恐れず進んだ。クリーチャーたちを攻撃に向かわせ、マンフィールドのライフを残り11点に落とし込む。この戦闘で《経験豊富な操縦者》を失ったものの、マルドゥの軍勢にとって勝利のための犠牲はつきものだ。彼のゲーム・プランは、可能な限りマンフィールドのライフを削って《キランの真意号》で勝利を引き寄せることなのだ。イレンフェルトは《キランの真意号》でマンフィールドのライフを残り7点に落とした。念のため《巻きつき蛇》も除去しておき、これ以上の悪さを予防する。

 だが先ほど、「その後すぐに3/3の《歩行バリスタ》が戦線に加わる」と言ったのを覚えているだろうか? マンフィールドはここでそれを繰り出した。イレンフェルトは攻撃のためにガードを下げ、マンフィールドに反撃のチャンスが生まれていた。彼は《歩行バリスタ》を強化し、大打撃でこのゲームを奪ったのだった。

 第3ゲームを迎えるにあたり、マンフィールドは難しい選択に迫られた。次のゲームからサイドボードを使用するのだが、サイドボーディングの方針について、彼はこの試合が始まるそのときまで「Genesis」のチームメイトである(世界ランキング5位の)ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonと意見が合わなかったのだ。

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プロツアー『イクサラン』準決勝の舞台でも厳しい表情を変えないセス・マンフィールド

 ネルソンは《ならず者の精製屋》をすべて抜くことを提案したが、マンフィールドはその意見を受け入れられなかった。ネルソンが言うには、サイド後の試合では地上戦力は控え、攻めることに捕われ過ぎないことが肝要だという。さもなければ機体によって攻め負けるだろう、と。だがマンフィールドは、その考えはあまりに馬鹿げていると思っていた。

 彼は熟考した。迷っているのがこちらにも伝わってきた。そして決断する――それは、少し不公平な折衷案だった。彼は4枚の《ならず者の精製屋》のうち3枚をサイド・アウトし、1枚だけお守り代わりに残したのだ。

ゲーム3

 第3ゲーム、イレンフェルトにとってはこれが逆転するチャンスだった。最初の2ゲームを落とし、彼にはもう後がない。だがまだ、逆転の可能性は残っている。

 しかし初手の7枚を引き込むと、それは厳しいものになった。

「まさかこんな終わり方なんて」と、ダブル・マリガンを強いられたサミュエル・イレンフェルトは自身の運命を呪った。マンフィールドの方もマリガンを喫したもののイレンフェルトは先手であり、ここで必要なのはマンフィールドの姿勢を崩し続け安心感を与えないことだ。クリーチャー1枚に機体2枚という手札では、実現できそうにない。

 マンフィールドは《霊気との調和》から《牙長獣の仔》、《巻きつき蛇》とこのデッキのベスト・ムーブのひとつを見せた。《霊気拠点》で得られるエネルギーにもおまけがつく充実ぶりだ。《牙長獣の仔》は、エネルギーの余力を残しながら4/4に成長した。

「どうやら風はあなたに吹いているようだ」 イレンフェルトは悪い予感を受け、少し落ち着かない様子で言った。盤面には《模範的な造り手》と《キランの真意号》、《霊気圏の収集艇》がある。しかし成長し続ける《牙長獣の仔》に対抗するためには、これでは足りなかった。

 マンフィールドは《霊気との調和》でさらにエネルギーを貯め、すべてを《牙長獣の仔》へ注ぎ込み10/10にした。彼は巨大な猫を攻撃へ送り出した。イレンフェルトは手札と盤面を見つめ、決着がついたことを悟った。

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セス・マンフィールド(写真左)に敗北しながらも、サミュエル・イレンフェルト(同右)は満面の笑顔だった。初めてのプロツアーでこれだけの成功を収めた喜びに満ちていた。

「素晴らしいプレイでした!」とイレンフェルトは興奮した様子で言った。マンフィールドの手を握りながら、「あなたのデッキが最強です。本当に」と伝えた。

 セスは「仕事モード」を崩さなかったものの、イレンフェルトの熱意は届いたようだ。彼は小さく笑顔を見せると感謝の言葉を返し、「君も見事なプレイだった」と添えたのだった。

セス・マンフィールドがサミュエル・イレンフェルトを3連勝で下し、パスカル・メイナード/Pascal Maynardとの決勝へ!

Seth Manfield - 「スゥルタイ・エネルギー」
プロツアー『イクサラン』 / スタンダード (2017年11月3~5日)
2 《沼》
4 《森》
1 《島》
4 《花盛りの湿地》
2 《異臭の池》
4 《植物の聖域》
4 《霊気拠点》

-土地(21)-

4 《光袖会の収集者》
4 《牙長獣の仔》
4 《巻きつき蛇》
3 《歩行バリスタ》
4 《ならず者の精製屋》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
3 《人質取り》
1 《スカラベの神》

-クリーチャー(25)-
4 《霊気との調和》
4 《顕在的防御》
4 《致命的な一押し》
2 《ヴラスカの侮辱》

-呪文(14)-
3 《貪る死肉あさり》
1 《スカラベの神》
3 《強迫》
2 《短命》
2 《否認》
1 《本質の散乱》
1 《人工物への興味》
2 《自然に仕える者、ニッサ》

-サイドボード(15)-
Samuel Ihlenfeldt - 「マルドゥ機体」
プロツアー『イクサラン』 / スタンダード (2017年11月3~5日)
3 《山》
3 《平地》
4 《感動的な眺望所》
2 《泥濘の峡谷》
4 《秘密の中庭》
4 《産業の塔》
2 《霊気拠点》
1 《ラムナプの遺跡》

-土地(23)-

4 《発明者の見習い》
4 《模範的な造り手》
2 《ボーマットの急使》
4 《屑鉄場のたかり屋》
3 《経験豊富な操縦者》
2 《ピア・ナラー》
3 《熱烈の神ハゾレト》
2 《歩行バリスタ》

-クリーチャー(24)-
3 《致命的な一押し》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
2 《霊気圏の収集艇》

-呪文(13)-
1 《ピア・ナラー》
3 《暴れ回るフェロキドン》
2 《強迫》
2 《マグマのしぶき》
2 《削剥》
3 《黄昏+払暁》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《平地》

-サイドボード(15)-

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