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(週刊連載)第26回:リミテッドセブン~『基本セット2012』 7つの分析(渡辺雄也の「リミテッドのススメ」より)

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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.07.25

第26回:リミテッドセブン~『基本セット2012』 7つの分析


 みなさんこんにちは。渡辺です。

jpnats11_mainimage01

 今年の日本選手権が終了しましたね。
 優勝は愛知の石田龍一郎選手!
 構築部門で全勝という圧倒的な成績で駆け抜けてくれました。
 津村さん鍛冶さんの記事を読んで、僕もちょっとMOでデッキを回してみまたのですが、確かにデッキが強いと感じました。
 二人の記事に詳しい解説が載っているので多くは語りませんが、どんな角度からでも勝ちにいけるような構成は非常に好感が持てました。構築部門全勝というもの納得の結果です。

 優勝した石田さんと日本代表チームとなった藤本さんと三原さんには、是非とも今年の世界選手権で頑張っていただきたいですね。


 さてそろそろ本題に入りますか。この記事はリミテッドの記事ですし。
 今回の内容ですが、今回は新ブロック恒例の、「7つの分析」をやろうと思います。
 分析の方法については、以前の記事をご覧ください。

 既に日本選手権という大きなイベントで『基本セット2012(M12)』リミテッドを行っているので、環境初期と言えるような時期ではないのですが、ある程度やった後だからこそ分かる部分もあります。

 今回は、僕が練習や日本選手権のドラフトをやって感じたことも交えながら、「7つの分析」をしていきたいと思います。


その1 クリーチャー除去

 まずはM12のアンコモン以下のカードで、除去と呼べるようなカードをリストアップしてみましょう。

コモン
アンコモン

 除去と呼べそうなカードはこれくらいですね。

 コモンは《平和な心》や《破滅の刃》といった優秀なものから、《災難の瀬戸際》や《投げ飛ばし》といった使いにくそうなものまであって、数自体は豊富に用意されています。

 色別に見ると、やはり従来の除去色である黒と赤に除去が豊富に用意されていますね。
 もはやおなじみの《破滅の刃》から始まり、《火葬》や《ショック》といった小回りの効く除去カードが多いです。

 白にも毎年お世話になっている《平和な心》があります。システムクリーチャーは対処できませんが、それでも安心安定のクオリティです。

 今回は緑にも《アラクナスの蜘蛛の巣》という優秀な除去カードが用意されているので、どの色でも除去を確保できるようになっています。
 また《垂直落下》も飛行クリーチャーが比較的多い環境なので、メインから使用しても良いカードという認識です。

 青で除去カードと呼べるようなのは《氷の牢獄》だけですが、M12ではエンチャント-オーラなどをはじめ、自分のカードを対象に取るカードが多くて簡単に剥がされてしまうという印象でした。
 起動型能力まで封じられるのは魅力ですが、ちょっとリスクが大きいように感じられましたね。

 アンコモンまで行くと、《忘却の輪》や《火の玉》のような優秀カードもちらほら。
 このくらい優秀なカードは最悪タッチしても使ってよいレベルです。相手の爆弾レアに対処できるカードや1枚でゲームを終わらせられるカードはやはり基本セットのリミテッドでは超重要です。

 《天界の粛清》や《焼却》のような特定の色にしか効かない専用の対策カードは基本はメインには積まない方が良さそうです。
 やはり相手に依存してしまうのと、後で述べますが環境がかなり速いので、これらが手札で腐る時の1枚分のロスは非常に痛いです。
 《マーフォークの物あさり》が複数枚デッキに入っている時にはメイン投入も考えても良いですが、これらのカードは基本サイドボードに忍ばせておいて、サイド後から使いましょう。


 M12はどの色にも除去が用意されているので、自分がやっている色の除去カードはしっかりと確保するようにしましょう。
 後でもちょっと触れますが、システムクリーチャーやエンチャント-オーラがかなり強い環境なので、それらをきちんと対処できるようにしなくてはなりません。
 そういった展開を打破できるのは、やっぱり除去カードですからね。


その2 システムクリーチャー

 M12でシステムクリーチャーと呼べそうなものをリストアップしてみました。

コモン
アンコモン

 こうして見ると、M12はシステムクリーチャーが豊富ですね。

 コモンの《ギデオンの法の番人》《マーフォークの物あさり》と強力な2体に加え、アンコモンには各色の「魔道士」シリーズと、対処できなければ盤面がどんどん不利になってゆくクリーチャーが多いです。
 これらは全て単体で仕事をしてくれるので、他のカードとのシナジーを気にせず使えるのが良いですね。

 逆に他のカードとのシナジー専門のカードも何枚かあります。

 《組み直しの骸骨》は普通に使っても強いですが、《貪る大群》と組み合わせると凶悪なパンプアップ装置になりますし、《ゴブリンの爆発投げ》はタフネスの上がるオーラと組み合わせれば、ほぼデメリットなしの2点砲台になります。
 これらの一癖あるカードは、上手く使えた時の強さが大きいですね。

 M12のリミテッドではこれらシステムクリーチャーが活躍することが非常に多いので、自分の色のシステムクリーチャーは積極的に狙っていきましょう。

 特に白の《ギデオンの法の番人》と青の《マーフォークの物あさり》はコモンとは思えないスペックなので、その2枚のどちらかはできれば使えるようにしたいですね。


その3 タフネス1クリーチャー

 環境のタフネス1クリーチャーの比率と、それに有効に対処できるものを見ていきます。

 まず環境のタフネス1クリーチャーですが、上で挙げた《ギデオンの法の番人》《マーフォークの物あさり》、各色の魔道士シリーズはどれもタフネス1。

 また優秀な飛行生物である《嵐前線のペガサス》や《空回りのドレイク》等もタフネス1。
 他にも《夜の子》や《聖なる狼》など、ここでは挙げきれないくらいタフネス1のクリーチャーは環境に多いです。
 マナ域埋めに《珊瑚マーフォーク》や《ゴブリンの長槍使い》も普通に使われるくらいですし、そういったクリーチャー達が頻繁に相打ちし合う環境という認識です。

 ではそれらに有効に対処できるカードを探してみましょう。
 M12には「ティム」能力を持ったクリーチャーがいないので、そういったカードでの大量虐殺を狙うのは残念ながら無理。
 赤と黒の除去は小回りのきくものが多いので、それらで対処するのが一番分かりやすい対処手段です。

 またシステム以外のクリーチャーに対しては、タフネスの高いクリーチャーを用意するのも有効です。

 《グリフィンの歩哨》や《大蜘蛛》は同じマナ域のカードでの突破は容易ではないので、相手の攻勢を鈍らせるにはなかなか良い働きをしてくれます。

 あと思ったよりも活躍するのが《ゴブリンの付け火屋》。

 「エルドラージ覚醒」の時は安定のサイドボード落ちだった彼ですが、今回のM12ではタフネス1クリーチャーの多さも相まって、メインで使っても遜色ない働きをしてくれます。
 相手のクリーチャー2体をこれ一枚で止めているのを見た時は、「こいつも出世したなぁ」とちょっと感動したりもしました。
 赤の狂喜クリーチャーの発火元としても良い働きをしてくれるので、赤をやるなら取っておいて損はないと思いますよ。


その4 マナ基盤

 M12でマナ基盤となりえるのは、レアの土地を除くとこの2種類。
 おなじみの《不屈の自然》はおいといて、どの色で使うことができる《マナリス》の存在は大きいです。

 この《マナリス》のおかげで、緑以外でも3色をやることが比較的容易になりました。
 《火の玉》のようなシングルシンボルの強力なカードをタッチしたい場合には、《マナリス》が一番適しています。
 ドラフトでは2パック目までに確保しておけば、3パック目で色の合ってない爆弾カードを使うことも検討できるようになるので、受けの広いカードとして重宝しますね。

 《マナリス》の問題点は、アーティファクトであることとその重さ。
 うっかり《躁の蛮人》で破壊されたら目も当てられません。
 また比較的ゲームスピードが早い環境なので、3マナで盤面に何も影響を与えないアクションはかなり弱いです。
 自分が後手だった場合、そのテンポ・ロスが響いて負けてしまう場合もあります。

 それらのデメリットを補ってまで使いたいカードがある場合のみ、《マナリス》を使うようにしましょう。
 《マナリス》のご利用は計画的に。


その5 コンバットトリック

 環境にあるコンバットトリックと呼べるカードは上の7つ。
 今回のコンバットトリック呪文は各色にそれぞれ散っているので、どの色からどのカードを打たれるのかはある程度予測が立てられます。

 緑なら《剛力化》、赤なら《殺戮の叫び》といったように各色から打たれるものはほぼ決まっているので、どの色から何を打たれるか覚えておくと良いでしょう。
 相手のマナの立て方を見て何が打たれるか分かるようになれば、それだけで戦闘の進め方がかなり楽になりますよ。

 今回のコンバットトリックの中でダントツで使いやすいと思ったのは《歯止め》です。

 自分のクリーチャーを除去から守れるのは当然ですが、クリーチャーを対象にして、エンチャントされているオーラを剥がしたりもできるのはかなり偉いです。
 相手の《精神の制御》で取られてしまった自分のクリーチャーを取り返したり、《平和な心》で動けなくなっているクリーチャーを助けたりと活躍の場は多く、エンチャントに対処する場合なら後から引いてきても良いので、使い勝手はかなり良かったです。
 白をやるなら必ずデッキに忍ばせておきたい1枚ですね。


その6 装備品

 環境にある装備品は以下の3つ。

 レアにも《世界薙ぎの剣》がありますが、色んな意味で問題外。

 さてこの3つの装備品ですが、レアリティがアンコモンなのに加え、正直どれもいま一つのカードなので、環境への影響力はそれほど大きくありません。
 《トロール皮》や《霊魂のマントル》のような強力オーラと比べたらちょっと悲しくなってきます。

 ただまったく使えないかと言われるとそうではありません。

 《大剣》は白や青の飛行クリーチャーに装備すればかなり速いダメージクロックになりますし、《カイトシールド》はタフネスの低い地上クリーチャーをサポートする時に重宝します。《聖なる狼》や《稲妻の精霊》なんかに装備する動きはなかなかにいやらしかったです。

 《速足のブーツ》も相手の除去を避けるのでそれなりに役には立ってくれます。

 今回の3つの装備品は、どれもデッキによっては使い道があるので、どんなデッキで使えばその効果を最大限発揮できるかを考えながらデッキを組むようにしましょう。


その7 ブロックのメカニズム

 M12は基本セットなので目新しいメカニズムはありませんが、敢えて挙げるとするなら「狂喜」ですね。
 ラヴニカブロックの「ギルドパクト」で登場した能力で、黒・赤・緑のクリーチャーに割り振られていた能力です。

 今回のM12でもそれは同じで、狂喜は黒・赤・緑のクリーチャーが持っていますね。
 特に赤の狂喜クリーチャーの性能は高く、《血まみれ角のミノタウルス》はコモンとは思えない性能です。

 ドラフトでは、狂喜をかき集めることで強力なデッキを作ることは可能ですが、狂喜クリーチャーの数自体がそこまで数が多くないのと、強い狂喜クリーチャーは皆早めにピックしてしまうので、ミラディンの傷跡ブロックの毒デッキのようにデッキ内のクリーチャーを全て感染クリーチャーにするようなことは現実的にはできません。
 おそらく多くても5枚くらいが限度ですね。

 ただ少数とはいえせっかく取れた狂喜クリーチャーが使えないのは勿体ないので、それらをきちんと使えるデッキ構成を目指すようにはしましょう。狂喜せずに出せなかった《血まみれ角のミノタウルス》ほど悲しいものはありませんからね。

 狂喜のカードが確保できている時は《ゴブリンの投火師》や《苛まれし魂》のようなダメージを通しやすいカードは優先して取るようにしましょう。


番外 先手か、後手か M12編

 最後にこの環境の先手後手の話を。

 現状僕の中ではシールドなら後手。ドラフトなら先手という認識です。

 シールドはプレリでやっただけですが、基本セット特有の「どちらが先にレアにたどり着けるか」というゲーム展開になることが多く、逆に軽量クリーチャーに押し切られる展開というのはほとんどありませんでした。

 クリーチャー同士の相打ちを繰り返して、レアを出す。典型的なシールドのパターンです。
 レアがなく、ビートするしか勝ち手段がないというような場合を除いて、シールドは従来通り後手を取った方が良さそうです。

 逆にドラフトは絶対に先手が欲しいと思えるような、高速環境。
 狂喜クリーチャーを上手く使うなら断然先手の方が良いですし、環境にあるクリーチャーも前のめり仕様になっていて、それを後押しするコンバットトリックも充実しています。

 シールドと違って単色気味にデッキを組むことができるので《ガラクの仲間》や《鎧の軍馬》のようなカードが輝くことが多いですね。

 また、守るためのカードが少ないというのもあります。タフネスの高いクリーチャーが少ないので、大抵のクリーチャーは戦闘で相打ちしてゆきます。
 なので膠着しにくく、スピーディーなゲーム展開が多いですね。

 この環境のドラフトは強力レアを出される前にゲームを決められることもあるくらい「早い」環境なので、従来の基本セットのような所謂「レアゲー」が緩和されているように思います。

 コモンの群れで強力レアに打ち勝つこともできるので、「基本セットのリミテッドはレアゲーだから・・・」と言わず、自分なりの戦略を練って、その戦略でレアパワーを乗り越えましょう!
 コモンの群れで強力レアを倒す楽しみもドラフトの醍醐味の一つですからね!


 では今回はこの辺で。また来週お会いしましょう。

基本セット2012

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