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【戦略記事】 チーム共同デッキ構築・スタンダード、メタゲームブレイクダウン

【戦略記事】 チーム共同デッキ構築・スタンダード、メタゲームブレイクダウン

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Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年12月11日

原文はこちら

 チーム共同デッキ構築・スタンダードは、各チームにユニークな難題を突きつける――それは、スタンダードのカード一式を用いて3つのデッキを作れ、というものだ。つまり、各チームはスタンダードで使えるデッキを3つ組み上げることになるのだが、それら3つのデッキとサイドボードも含めて、(基本土地以外)同じカードを4枚までしか使用できないのだ。

共通部分

 チーム全体にかかる制限により、「アブザン」デッキを3つ用意することは叶わなくなる。そこでうまくパーツを分けていく必要があるのだが、大きな問題となるのは各デッキの共通部分の扱い方だろう。

 今年の共通部分で極めて重要なのが、「フェッチ・ランド」だ。これらは、特に「バトル・ランド」と組み合わせられ、スタンダードのマナ基盤の中心を担っている。「フェッチ・ランド」を用いることで、強力な多色カードを使うことができ、「探査」の燃料を確保でき、そして生み出せるマナも安定する。その結果、現在のスタンダードの中心的なデッキにはどれも12枚もの「フェッチ・ランド」が採用されているのだが、チーム共同デッキ構築・スタンダードではチーム全体で《吹きさらしの荒野》4枚、《溢れかえる岸辺》4枚、《汚染された三角州》4枚、《血染めのぬかるみ》4枚、《樹木茂る山麓》4枚までしか使用できないのだ。そのため、すべてのデッキに「フェッチ・ランド」を採用できるだけの数はない。アメリカ代表のキャプテンであり現在世界ランキング8位のマイク・シグリスト/Mike Sigristも、次のように述べている。「共通部分で一番大事なのは『フェッチ・ランド』だね。ここに制限がかかるせいで、少なくともひとつのデッキがタップ状態で戦場に出る土地を増やすか、色を制限するか、という選択を迫られる」

 また、考慮すべきは「フェッチ・ランド」だけではない。他にも両立できないカードがいくつもあるのだ。シンガポール代表のキャプテン、シム・チャップマン/Sim Chapmanが、以下のように例を挙げてくれた。「エスパーやアブザン、そしてマルドゥにも採用される《乱脈な気孔》をどうするか検討するのも欠かせないと思う。それから、《ヴリンの神童、ジェイス》を使ったデッキはどれが良いかについても議論を重ねたし、誰が《搭載歩行機械》を使うかについても意見を戦わせたよ」

パズルを解く

 以上のように共通部分の扱いを念頭に置くと、どのようなデッキが両立できるのだろうか?「一番思いつきやすい組み合わせは、『エスパー』系と『アタルカ・レッド』と『ランプ』系だろうね」と語るのは、スウェーデン代表のキャプテンであり現在世界ランキング24位のヨエル・ラーション/Joel Larssonだ。「この組み合わせなら共通した部分はないし、どれも現在のスタンダードにおけるメタゲームを戦えるデッキだ」

 しかしそれでも、「ランプ」系のデッキ――《ニッサの巡礼》から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》へと繋ぐことを狙ったデッキ――は、スウェーデンをはじめとして多くのチームができれば回避したいと考えていた。スロベニア代表のキャプテン、ロビン・ドラー/Robin Dolarもそう考えるひとりであり、明確な意見を述べてくれた。「今大会では、『ランプ』系のデッキはダメだと思う。誰もがしっかりと対策を取ってくるだろうし、(相性最悪の)『アタルカ・レッド』が必ずと言っていいほど使われるだろうから」

 そして「必ず使われるもの」を全員が把握しているなら、さらに一歩進むチャンスが生まれる。「『アタルカ・レッド』と『ランプ』系ともうひとつ強いデッキを使う以外の選択肢が狭いからこそ、僕は前者ふたつを倒せるような新しいデッキを考え続けてきました」と語るのは、イギリス代表のキャプテンであり現在の世界ランキング22位のファブリツィオ・アンテーリ/Fabrizio Anteriだ。そして、そのようなアプローチをかけたのは彼だけではない。スロバキア代表のキャプテン、イヴァン・フロック/Ivan Flochも、例えば「4色ラリー」は「アタルカ・レッド」と「エルドラージ・ランプ」の両方と相性が良く、今大会に予想されるメタゲームを有利に戦えるという。しかし、たとえそういったデッキを見つけ出しても、他のふたつのデッキと折り合いを付けなければならない!

メタゲーム分析

 以上をすべて鑑みると、このフォーマットは実に挑戦しがいのあるパズルとなる。ここバルセロナの地に集った各チームは、一体どのようにそのパズルを解いたのだろうか。以下にアーキタイプごとの一覧と、チーム内のデッキの組み合わせ一覧を掲載する。

アーキタイプ使用者数使用率
アタルカ・レッド5023%
アブザン3114%
エスパー・ドラゴン3114%
緑エルドラージ・ランプ3014%
先祖の結集209%
白黒(青)トークン146%
ジェスカイ105%
マルドゥ73%
ティムール73%
その他199%

 使用されたアーキタイプは実に幅広く、「画面をスクロール」する必要があるほどだ。以下に詳細を挙げる。

  • 「アブザン」の内訳は、「アブザン・アグロ」が23人、「アブザン・コントロール」が3人、「レッド・アブザン」が3人、「ブルー・アブザン」が1人、「アブザン『大変異』」が1人、となっている。そしてどのデッキも、《包囲サイ》に信頼を寄せている。
  • 「緑エルドラージ・ランプ」の内訳は、赤緑のものが17人、青緑のものが7人、緑単色のものが2人、白緑のものが1人、ジャンドのものが1人、ナヤのものが1人、ティムールのものが1人、となっている。そしてどのデッキも、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を目指してマナ加速を行っている。
  • 「先祖の結集」の内訳は、「4色ラリー」が17人、「アブザン・ラリー」が3人、となっている。
  • 「白黒(青)トークン」の内訳は、白黒のものが9人、エスパーのものが5人、となっている。
  • 「ジェスカイ」の内訳は、「ダーク・ジェスカイ」が8人、ドラゴンに寄せたものが1人、3色のものが1人、となっている。
  • 「マルドゥ」の内訳は、「マルドゥ・ドラゴン」が4人、「マルドゥ・ミッドレンジ」が2人、「マルドゥ・トークン」が1人、となっている。
  • 「ティムール」の内訳は、「大変異/瞬速」型が4人、黒をタッチしたものが2人、「獰猛」メカニズムを中心に組まれたものが1人、となっている。
  • 「その他」の内訳は、「黒赤ドラゴン」が3人、「赤単」が3人、「白黒アグロ」が3人、「バント『大変異』」が2人、「赤緑『上陸』」が2人、「エルフ」が2人、「ジェスカイ・トークン」が1人、「エスパー・コントロール」が1人、《悪魔の契約》と《大オーロラ》を使用したものが1人、「アブザン・トークン」が1人、となっている。

 結果を見ると「アタルカ・レッド」が最も人気を集めたデッキであり、大半のチームが《僧院の速槍》や《強大化》を駆使するデッキを使用することになった。この結果は、ブラジル代表のキャプテンであり世界ランキング6位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaにとって、驚くものではなかったようだ。「『アタルカ・レッド』はほとんどのチームが使うと思う。他のデッキと被るカードが一番少ないし、極めて強力なデッキだからね」。

 アーキタイプごとの分析は以上だ。続けて、チーム内のデッキの組み合わせを見ていこう。

3つのデッキの組み合わせ使用チーム数
「アタルカ・レッド」+「4色ラリー」+「白黒トークンorアグロ」8
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「アブザン」7
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「エルドラージ・ランプ」6
「エルドラージ・ランプ」+「アブザン」+「ジェスカイ」6
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「ティムール」4
「アタルカ・レッド」+「エルドラージ・ランプ」+「4色ラリー」4
「エスパー・ドラゴン」+「エルドラージ・ランプ」+「アブザン」4
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「アブザン・ラリー」3
「アタルカ・レッド」+「エルドラージ・ランプ」+「アブザン」3
「アタルカ・レッド」+「エルドラージ・ランプ」+「エスパー・トークン」3
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「エルフ」2
「アタルカ・レッド」+「4色ラリー」+「アブザン」2
「エスパー・ドラゴン」+「アブザン」+「赤単」2
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「白黒トークン」1
「アタルカ・レッド」+「エスパー・ドラゴン」+「マルドゥ」1
「アタルカ・レッド」+「エルドラージ・ランプ」+「ジェスカイ」1
「アタルカ・レッド」+「エルドラージ・ランプ」+「白黒アグロ」1
「アタルカ・レッド」+「4色ラリー」+「マルドゥ」1
「アタルカ・レッド」+「4色ラリー」+「黒赤ドラゴン」1
「アタルカ・レッド」+「アブザン」+「エスパー・トークン」1
「アタルカ・レッド」+「アブザン」+「マルドゥ」1
「アタルカ・レッド」+「アブザン」+「ジェスカイ」1
「エスパー・ドラゴン」+「バント『大変異』」+「マルドゥ」1
「エスパー・ドラゴン」+「アブザン」+「マルドゥ」1
「エルドラージ・ランプ」+「白黒トークン」+「ティムール」1
「エルドラージ・ランプ」+「マルドゥ」+「バント『大変異』」1
「アブザン」+「ティムール」+「マルドゥ」1
「アブザン」+「ジェスカイ」+「黒赤ドラゴン」1
「アブザン」+「先祖の結集」+「赤単」1
「アブザン」+「ジェスカイ」+「黒緑オーロラ・パクト」1
「白黒トークン」+「ジェスカイ」+「ティムール」1
「赤緑『上陸』」+「黒赤ドラゴン」+「エスパー・コントロール」1

 ご覧の通り、チーム共同デッキ構築・スタンダードという名のパズルは実に様々な解答を見せてくれた。だがその中でも最も人気を集めたのは、「アタルカ・レッド(《樹木茂る山麓》と《血染めのぬかるみ》を用いる)」と「4色ラリー(他の「フェッチ・ランド」が投入される)」、そして「白黒(《乱脈な気孔》や《磨かれたやせ地》《コイロスの洞窟》でマナ基盤を作る)」系のデッキの組み合わせだった。

 もうひとつ、多くのチームが選択したのは、「アタルカ・レッド(こちらでも《樹木茂る山麓》と《血染めのぬかるみ》が必要となる)」と「エスパー・ドラゴン(《溢れかえる岸辺》と《汚染された三角州》を用いる)」、そして「アブザン(《砂草原の城塞》や《ラノワールの荒原》に《吹きさらしの荒野》が添えられる)」系あるいは「ティムール(3色を安定させるために《吹きさらしの荒野》を使う)」系の組み合わせだった。

 今大会が始まるにあたって、おそらく皆さんもスタンダードの中心は「フェッチ・ランド」を12枚使用するデッキだ、という印象を持っていたことだろう。だが、制限は創造性を育む。ワールド・マジック・カップは私たちに、「フェッチ・ランド」に頼りすぎずともスタンダードの第一線で戦えるデッキはたくさんあることを示してくれた。今回のメタゲーム分析から何らかの兆候を感じることができるなら、きっと明日の最後に公開される上位入賞デッキからは次の大会に向けたクールなアイデアを見出だせることだろう。

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