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【観戦記事】 決勝:タイ代表 vs. イタリア代表

【観戦記事】 決勝:タイ代表 vs. イタリア代表

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Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2015年12月13日

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 金曜の朝、73の国々が第1回戦を迎えた。それから2日と半日にわたる熾烈な戦いを経て、優勝タイトルをめぐる国はわずかふたつになった。タイ代表とイタリア代表の2チームに。

 この試合においては、プロツアーの経験豊富な強力なチームと比べてタイ代表の側が「挑戦者」であることは間違いない――とはいえ、キャプテンのヴィーラパート・シリラートヴォラクル/Veerapat Sirilertvorakulは長年にわたるキャリアの中で11度のプロツアー出場経験を持っている。これまでにプロツアー・トップ8入賞を果たしたプレイヤーはいないものの、今大会にて大躍進を遂げたこの国は、私たちに新たな才能の到来を見せつけている。準々決勝ではデンマーク、準決勝ではフランス、と立て続けにワールド・マジック・カップ優勝国を打ち破り、タイ代表は今、トロフィーにあと一歩のところまで迫っている。祖国のプレイヤーたちからの声援を胸に、彼らは決意に満ちた表情で決勝に挑む。

 一方、キャプテンのマルコ・カミルッツィ/Marco Cammilluzziやワールド・マジック・カップ予選を勝ち抜き代表入りしたアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciをはじめとしてスター・プレイヤーを取り揃えたイタリア代表は、前評判通り順当に勝ち上がってきた。名前を挙げたふたりはプロツアー・トップ8入賞の経験を持ち、ヨーロッパのマジック・シーンでは高い評価を受けているプレイヤーたちだ。もうひとつの席に座るのは、本大会を双頭巨人戦のように戦ってきた、ウィリアム・プッチ/William Pizziとフランチェスコ・ビフェロ/Francesco Biferoのコンビだ。構築ラウンドではプッチがカードを操り、ビフェロがチーム公認のコーチとしてアドバイスを送る、と役割をしっかり分けて戦う両者だが、その見据える先は同じだ。

 決勝ラウンドのフォーマットであるチーム共同デッキ構築・スタンダードでは、各国ともスタンダードのカード一式を用いて3つのデッキを作ることになる。タイ代表は「アタルカ・レッド」と「エスパー・ドラゴン」、そして《吹きさらしの荒野》や《コイロスの洞窟》、《砂草原の城塞》でマナ基盤を整えた「アブザン・ミッドレンジ」を選択。一方カナダ代表、ブラジル代表、アメリカ代表とともに世界規模の同盟を組んだイタリア代表は、「アタルカ・レッド」と「エスパー・ドラゴン」、そして《吹きさらしの荒野》でマナを安定させた「ティムール『大変異』」という構成。採用したデッキのおかげで、イタリア代表は《溢れかえる岸辺》やサイドボードのカードを、「エスパー・ドラゴン」と《吹きさらしの荒野》を用いるデッキとの間で分けずに済んでいる。

 さらに、この試合ではイタリア側にもうふたつ有利な点があった。ひとつは、「ティムール『大変異』」が「アタルカ・レッド」と当たったこと。《焦熱の衝動》や《光輝の炎》といったカードのおかげで、イタリア代表はティムール側の有利を感じている。そしてもうひとつ、イタリア代表は初日と2日目ともにマッチ・ポイントでタイ代表を上回っており、3つの試合すべてで先手を取ることができた。

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B席:ヴィーラパート・シリラートヴォラクル(アタルカ・レッド)vs. ウィリアム・プッチ(ティムール「大変異」)

 1ゲーム目は、シリラートヴォラクルが《鐘突きのズルゴ》と《ドラゴンの餌》で戦端を開き、一方のプッチは2ターン目《爪鳴らしの神秘家》という立ち上がり。プッチは《鐘突きのズルゴ》の攻撃に対して《跳ねる混成体》で奇襲をかけるが、シリラートヴォラクルは《アタルカの命令》で相討ちに持ち込んだ。続けてプッチの手札から《集合した中隊》が放たれ、《死霧の猛禽》と《棲み家の防御者》が盤面に加わる。今大会を通して幾度となく《集合した中隊》で噛み合わないカードを引き込み苦しんだイタリア代表だが、このカードは決勝の舞台でついに、求めに応じてくれたのだ。2体のクリーチャーは一気に盤面を安定させ、ゲームの形勢は一変した。最後には《ティムールの魔除け》がシリラートヴォラクルのブロックを封じ、プッチは全軍攻撃で勝負を決めたのだった。

 2ゲーム目、シリラートヴォラクルは《僧院の速槍》を2枚連続で繰り出し、さらに《稲妻の狂戦士》も加わる強力な初手を見せた。しかしプッチは、それに対する完璧な解答を用意する。《光輝の炎》で盤面を一掃し、窮地を脱したのだ。続く《集合した中隊》でめくれたのは《凶暴な拳刃》と《死霧の猛禽》で、タイ代表はまたもや一気に劣勢に追い込まれた。シリラートヴォラクルは《ティムールの激闘》を通して勝つチャンスをうかがったが、プッチはそれを否定する《払拭》を抱えていた。そして数ターン後、シリラートヴォラクルはサイズで勝るティムールのクリーチャーたちを前に、膝を屈したのだった。

ヴィーラパート・シリラートヴォラクル 0-2 ウィリアム・プッチ
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C席:チョム・パシドパルチャヤ/Chom Pasidparchya(アブザン・アグロ)vs. マルコ・カミルッツィ(アタルカ・レッド)

 1ゲーム目はカミルッツィが《ドラゴンの餌》から《鐘突きのズルゴ》、さらに強化呪文と見事な引きを見せ、彼のデッキは土地2枚で十分に機能した。一方、タイ代表側のコーチであるアエカラシュ・ソラクップ/Aekarash Sorakupからアドバイスを受けて戦うパシドパルチャヤは、操るデッキがコストの重い方へ寄ったものであるため、土地が2枚で止まれば順調な展開が妨げられる。彼は《搭載歩行機械》を2枚繰り出したものの、赤いデッキの猛攻を止めるには不十分だった。《包囲サイ》を投入することも叶わず、パシドパルチャヤのライフは瞬く間に0まで削り切られたのだった。

 2ゲーム目は、マルコ・カミルッツィがサイド・インした《龍爪のヤソヴァ》についてルールを確認するという場面があり、開幕までひと呼吸置くことになった。(補足しておくと、《龍爪のヤソヴァ》の能力をスタックに置く際は、対象に取る時点でそれよりパワーの小さいものでなければならない。ジャッジはこのようなちょっとした確認でも、喜んで答えてくれるのだ)。ゲームが始まると、パシドパルチャヤがサイドから投入した《正義のうねり》などの除去が的確にカミルッツィのクリーチャーを撃ち抜き、パシドパルチャヤはライフを多く保ったままゲームを進めることができた。ゲームが後半に移れば、「アブザン」デッキのものだ。《風番いのロック》が戦場を「強襲」すると、カミルッツィはカードを片付けたのだった。

そして3ゲーム目は、他の試合の決着を待って行われることになった。

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A席:スッティポン・ポピトゥクグル/Suttipong Popitukgul(エスパー・ドラゴン)vs. アンドレア・メングッチ(エスパー・ドラゴン)

 1ゲーム目は激しいカードの応酬が行われた。《ヴリンの神童、ジェイス》には《究極の価格》、《龍王オジュタイ》には《衰滅》、続くクリーチャーにも《忌呪の発動》。戦場にクリーチャーが残ることなくゲームは進行したが、しかし長い消耗戦のすえにポピトゥクグルがついに《ヴリンの神童、ジェイス》を生かしたままターンを迎えることができた。即「変身」した《ヴリンの神童、ジェイス》は「フラッシュバック」でポピトゥクグルにアドバンテージをもたらし、そしてその小さな有利は瞬く間に膨れ上がり、メングッチの手に負えないものとなったのだった。

 2ゲーム目も両者ともに《ヴリンの神童、ジェイス》を繰り出すが、メングッチが除去呪文を差し向けたのに対し、ポピトゥクグルはそれができなかった。メングッチの《ヴリンの神童、ジェイス》は「変身」を果たし、《時を越えた探索》の「フラッシュバック」に成功するとイタリア側に大きなアドバンテージを生み出した。メングッチの盤面は《黄金牙、タシグル》でさらに強化され、一方のポピトゥクグルはマナにもトラブルを抱えた。このゲームをメングッチが取るまで、多くの時間はかからなかった。

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 迎えた3ゲーム目、再び盤面に姿を現したクリーチャーすべてに除去が当てられ、両者は消耗戦に突入する。このゲームの勝敗を分ける鍵となったのは、メングッチが《無限の抹消》を通して《龍王オジュタイ》を指定し、ポピトゥクグルのデッキのクリーチャー密度を大きく下げたプレイだ。これによりメングッチはこのゲームの優位を確定させたが、彼にもまだ、勝ち手段を盤面に安定させるという仕事が残っていた。《龍王オジュタイ》は《忌呪の発動》を受けたが、ポピトゥクグル側に「ドラゴン・ボーナス」を受けるために公開するカードは失われている。やがてメングッチは《僧院の導師》と《黄金牙、タシグル》を盤面に残すことに成功し、対するポピトゥクグルはライブラリー・トップから《強迫》を引き込むのみだった。《強迫》がメングッチの手札を明らかにし、そこにまだ4枚も有効なカードがあることを確認すると、ポピトゥクグルは敗北を受け入れ右手を差し出したのだった。

スッティポン・ポピトゥクグル 1-2 アンドレア・メングッチ

 イタリア代表の面々は喜びを爆発させた。優勝トロフィーを掲げた彼らの喜びは、歌となって口から飛び出す。陽気に響くその歌の名は、「世界チャンピオン!(Campioni del mondo !)」――母国イタリアのファンに捧げる、勝利を祝う情熱的な調べだった。

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イタリア代表、ワールド・マジック・カップ2015優勝おめでとう!

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