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【観戦記事】 準決勝:ベルギー代表 vs. イタリア代表

【観戦記事】 準決勝:ベルギー代表 vs. イタリア代表

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Tobi Henke / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年11月20日

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 チームメンバーのうち3人合わせて6回のグランプリ・トップ8入賞経験を持つベルギー代表は、今大会のトップ8入賞チームの中でも優れた戦績を残している。しかしその輝かしい経歴も、イタリア代表を前にしては霞んでしまうだろう。

 グランプリ・トップ8入賞回数こそ4回に留まっているものの、そこにプロツアー・トップ8入賞3回が加わるとなれば話は大きく変わる。とりわけ現在世界ランキング21位のアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciはそのうち2回を達成しており、2014年と2015年のワールド・マジック・カップでもイタリア代表メンバーの一員として戦い、2015年は見事優勝を果たした。そして今年はイタリア代表キャプテンとして、決勝ラウンドは自身がプレイするのではなくコーチ役に徹することを決意した。

 イタリア代表は、ワールド・マジック・カップ連続優勝という夢を追い続けることができるだろうか? 2度のタイトル制覇を果たした史上初の国になれるだろうか? それとも、準々決勝進出までだった最高記録を更新し、ワールド・マジック・カップ準決勝へ初めて進出したベルギー代表を前に膝を屈することになるのだろうか?

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 A席で対峙するのは、互いにほとんど干渉手段を持たないコンボ・デッキ同士。ベルギー代表のジェローム・バストーニュ/Jerome Bastogneのデッキは、《御霊の復讐》や《裂け目の突破》を用いて《グリセルブランド》を可能な限り素早く戦場へ送り出すことに特化したものだ。それを達成した後は、《滋養の群れ》で《世界棘のワーム》を追放することでライフを補充しつつライブラリーを掘り進め、再び《御霊の復讐》や《裂け目の突破》を唱え(ここまで来れば難しいことではない)、致命打を与える。しかし対戦相手となるイタリア代表のマティア・リッツィ/Mattia Rizziが操るのは、「感染」クリーチャーと強化呪文を組み合わせて素早く勝利を得ることで知られるデッキだ。

 B席では、イタリア代表のアレッサンドロ・ポルタロ/Alessandro Portaroの「ランタン・コントロール」とベルギー代表のブランコ・ネランク/Branco Neirynckの「ナヤ・バーン」による熱戦が繰り広げられた。ポルタロの《罠の橋》は攻撃をすべてシャッドアウトするが、ネランクのデッキがクリーチャーに頼るのは最序盤のみであり、後には23枚もの火力呪文が控えているのだ。

 そしてC席では、イタリア代表のアレッサンドロ・カサメンティ/Alessandro Casamentiが「むかつき」デッキを手に戦いに臨む。メングッチは「むかつき」デッキについて、ほぼすべてのデッキと有利に戦えると評していた。ただし、例外がひとつ――「『感染』だけは避けたいけどね」。各テーブルのデッキを決めたときに、ベルギー代表がそのことを知っていたわけではないだろう。だがピーター・ファーレン/Peter Vierenが「感染」デッキを持ってこの席に座っているのは、果たして偶然と言い切れるのだろうか。

C席:ピーター・ファーレン(感染) vs. アレッサンドロ・カサメンティ(むかつき)

 とりわけサイドボード前のゲームにおいては、カサメンティにできることはほとんどなかった。「むかつき」デッキは4ターン目には十分勝てる力を有しているが、こと対戦相手への干渉手段についてはないも同然であり、「感染」は3ターン目に勝てるデッキだった。

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落ち着いて第1ゲームの敗北を受け入れるアレッサンドロ・カサメンティ(写真中央)。

 だがサイド後の第2ゲームは話が大きく変わる。ファーレンの初動も遅れたことで、今度はカサメンティの方から仕掛けた。パズルのピースがひとつ足りないカサメンティはそれを《大霊堂の戦利品》で探しにいき、15点ものライフを失った。もしファーレンが《墨蛾の生息地》ではなく《貴族の教主》で攻撃し、強化呪文も使っていれば......という場面だったが、もちろんそんなことになるとは知る由もない。結果として、カサメンティは《天使の嗜み》と《むかつき》を唱え、ファーレンはそこへ《呪文貫き》を当てたが、カサメンティは《猿人の指導霊》を2枚追放してマナを支払ったのだった。

 迎えた第3ゲーム、ファーレンは先手を取り戻すと、4ターン目に《ぎらつかせのエルフ》と《墨蛾の生息地》と《荒廃の工作員》による致命打を繰り出した。カサメンティは《暗黒》を唱え、ファーレンが《払拭》で応じる。カサメンティの《殺戮の契約》。ファーレンは《変異原性の成長》で勝負を決めたのだった。

ピーター・ファーレンがアレッサンドロ・カサメンティを2勝1敗で下す。

B席:ブランコ・ネランク(ナヤ・バーン) vs. アレッサンドロ・ポルタロ(ランタン・コントロール)

 ネランクが《ゴブリンの先達》2枚と《野生のナカティル》という強力なスタートを切った。ポルタロは《呪文滑り》のブロックで受けるダメージを減らすが、瞬く間に残りライフを8点まで落とした。しかし《発明博覧会》で9点に回復すると、《集団的蛮行》で《ゴブリンの先達》を除去しつつ11点へ、そして2枚目の《集団的蛮行》でもう1体の《ゴブリンの先達》も除去して13点へ。ネランクの攻め手はまだ尽きていないものの、《罠の橋》が間に合ったためクリーチャーは役に立たなくなった。

 火力呪文をいくつか引き込みポルタロのライフを残り5点まで追い詰めたネランクだったが、ポルタロが《洞察のランタン》、《グール呼びの鈴》、《写本裁断機》のトリオを揃えると、それ以上の延焼は防がれた。《発明博覧会》がポルタロのライフを火力圏外へ逃し、《アカデミーの廃墟》で《黄鉄の呪文爆弾》を再利用し出すと、ネランクはカードを片付けた。

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アレッサンドロ・ポルタロ(写真右)に封じられる前に彼を残りライフ5点まで追い詰めたブランコ・ネランク(同左)。

「4枚積まれる《破壊的な享楽》は厄介だな」と、ポルタロはサイドボーディングを行いながらつぶやいた。ネランクはそれについての明言を避ける。「たぶんね......」

「いや」とポルタロは笑顔を作る。「たぶんじゃ済まないかな」

 だが第2ゲームでは、アーティファクト破壊は問題でなかった。もしゲームが4ターン目まで長引いたなら、多少は関わりがあったことだろう。《野生のナカティル》と《僧院の速槍》と《稲妻》が2ターン目にしてポルタロのライフを残り12点にする。《紅蓮地獄》によって小型クリーチャーが排除されながらも、生き残った《野生のナカティル》が《アタルカの命令》の支援を受けて残り5点。そして次のターンにはゲームが決着した。

 ここでこの試合は一時中断。全員の視線がもうひとつの試合に注がれる......

A席:ジェローム・バストーニュ(御霊の復讐) vs. マティア・リッツィ(感染)

 第1ゲームは互いに、広告さながらにただ発信するのみだった。やり取りのない純粋なスピード勝負は、リッツィの勝利に終わる。

 しかしバストーニュが《突然のショック》をサイドボードから投入し、リッツィが《呪文貫き》と《貪欲な罠》を加えると、この上なくやり取り豊かなゲームに変わった。第2ゲーム、リッツィは純粋なスピード勝負で決着をつけることはできなかったが、常に《繁殖池》を1枚立たせて《呪文貫き》の存在を示唆した。このとき実際には《呪文貫き》を持っていなかったが、バストーニュはそれを意識せざるを得ない。

 《信仰無き物あさり》で手札を整えたバストーニュは、盤面に3枚の土地を並べ、手札には《猿人の指導霊》2枚、《捨て身の儀式》、《裂け目の突破》、《グリセルブランド》が揃った。さらに《突然のショック》を引き込むと次のターンに負ける心配はなくなり、彼はじっくり待つことを選んだ。続けてもう1枚マナ源を手に入れると、《呪文貫き》もかわせるようになった。

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忍耐が報われることを願うジェローム・バストーニュ(写真左)とチームメイトたち。

 《信仰無き物あさり》をもう1枚引き、それを唱える。まだ《裂け目の突破》のためのマナは十分にあり、悪い動きではないだろう。しかし不運にも、バストーニュは2枚目の《怒れる腹音鳴らし》を引いてしまい、それを捨てることを迫られた。するとリッツィはこの隙を見逃さず《貪欲な罠》をプレイ。バストーニュは動かざるを得ない。《裂け目の突破》で《グリセルブランド》を繰り出し、ドローを進める。14枚の中に《滋養の群れ》は1枚あり、《世界棘のワーム》も十分に手に入った。しかしもう14枚の中に2枚目の《滋養の群れ》はなく、さらに《猿人の指導霊》が足りず《魔力変》から《御霊の復讐》へ繋ぎ《怒れる腹音鳴らし》で勝つというプランが成立しなかった。

 バストーニュは《貪欲な罠》を通し、土地を置いてターン終了。《グリセルブランド》は墓地へ行き、手札を整理して《沼》と《猿人の指導霊》、《御霊の復讐》、《世界棘のワーム》、《裂け目の突破》、《突然のショック》2枚という布陣にした。《猿人の指導霊》で生み出したマナも使って《突然のショック》を撃ち込むことで、バストーニュはリッツィの攻撃を阻んだ。

 続く2ターン、バストーニュは《御霊の復讐》で《グリセルブランド》を戦場に戻し、攻撃とドローでライブラリーの残りが2枚になるまで引き尽くした。《突然のショック》が「感染」クリーチャーを焼き払うと、リッツィに《グリセルブランド》の攻撃を止める手立てはなかった。

 2度目の攻撃で、このゲームはバストーニュのものになった。

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選択肢を慎重に吟味するマティア・リッツィ(写真左)とコーチ役のアンドレア・メングッチ(写真右)

 先ほどのゲームは、長大なジェットコースターに乗っているかのようだった。ときに思わぬ高さまで上がったかと思えば一気に下り、突然転回した。無論、これほどの熱戦はそう起きるものではない。

 第3ゲーム、バストーニュは《突然のショック》でリッツィの「感染」クリーチャーを1体残らず撃ち抜いた。リッツィはなんとか形勢を変えようと《貴族の教主》でダメージを与えたものの、その涙ぐましい努力は結実しない。《グリセルブランド》が再びバストーニュへ勝利をもたらすのに、時間はかからなかった。そしてこのゲームの勝利が試合の勝利を決め、優勝を懸けて行われる決勝戦の席を歓喜に沸くベルギー代表へもたらしたのだった。

ジェローム・バストーニュがマティア・リッツィを2勝1敗で下す。
ベルギー代表がイタリア代表を破り、決勝へ!

「《呪文貫き/Spell Pierce(ZEN)》は1枚たりとも引かなかった」 リッツィがマッチの後に明かした。しかしその顔に浮かぶ笑みは、そのことをまったく不満に思っていないことを示していた。「それでも、十分な成績さ。本当に満足しているよ」

ベルギー A席 - 「御霊の復讐」
ワールド・マジック・カップ2016 トップ8 / チーム共同デッキ構築・モダン (2016年11月18~20日)
5 《沼》
2 《山》
2 《血の墓所》
4 《血染めのぬかるみ》
2 《黒割れの崖》
4 《悪意の神殿》

-土地(19)-

4 《猿人の指導霊》
4 《グリセルブランド》
2 《怒れる腹音鳴らし》
4 《世界棘のワーム》

-クリーチャー(14)-
4 《信仰無き物あさり》
4 《御霊の復讐》
4 《夜の囁き》
3 《捨て身の儀式》
2 《魔力変》
1 《苦しめる声》
1 《神々の憤怒》
4 《裂け目の突破》
4 《滋養の群れ》

-呪文(27)-
2 《否定の契約》
3 《突然のショック》
1 《紅蓮地獄》
2 《神々の憤怒》
4 《虚空の力線》
2 《粉砕の嵐》
1 《仕組まれた爆薬》

-サイドボード(15)-
ベルギー B席 - 「ナヤ・バーン」
ワールド・マジック・カップ2016 トップ8 / チーム共同デッキ構築・モダン (2016年11月18~20日)
2 《山》
2 《踏み鳴らされる地》
3 《聖なる鋳造所》
4 《沸騰する小湖》
4 《樹木茂る山麓》
3 《乾燥台地》
2 《銅線の地溝》

-土地(20)-

4 《ゴブリンの先達》
4 《僧院の速槍》
4 《野生のナカティル》
1 《渋面の溶岩使い》
4 《大歓楽の幻霊》

-クリーチャー(17)-
4 《溶岩の撃ち込み》
4 《稲妻》
4 《アタルカの命令》
4 《ボロスの魔除け》
4 《焼尽の猛火》
3 《裂け目の稲妻》

-呪文(23)-
1 《渋面の溶岩使い》
3 《流刑への道》
4 《破壊的な享楽》
3 《頭蓋割り》
2 《安らかなる眠り》
1 《跳ね返す掌》
1 《稲妻のらせん》

-サイドボード(15)-
ベルギー C席 - 「感染」
ワールド・マジック・カップ2016 トップ8 / チーム共同デッキ構築・モダン (2016年11月18~20日)
2 《森》
2 《繁殖池》
4 《霧深い雨林》
4 《新緑の地下墓地》
1 《吹きさらしの荒野》
1 《植物の聖域》
2 《ペンデルヘイヴン》
4 《墨蛾の生息地》

-土地(20)-

4 《ぎらつかせのエルフ》
4 《貴族の教主》
4 《荒廃の工作員》
1 《ヴィリジアンの堕落者》

-クリーチャー(13)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《変異原性の成長》
4 《顕在的防御》
4 《古きクローサの力》
4 《巨森の蔦》
2 《ひずみの一撃》
1 《よじれた映像》
1 《四肢切断》
3 《強大化》

-呪文(27)-
1 《呪文滑り》
3 《台所の嫌がらせ屋》
2 《払拭》
2 《自然の要求》
2 《呪文貫き》
1 《墓掘りの檻》
1 《よじれた映像》
1 《霊気のほころび》
2 《四肢切断》

-サイドボード(15)-

イタリア A席 - 「感染」
ワールド・マジック・カップ2016 トップ8 / チーム共同デッキ構築・モダン (2016年11月18~20日)
2 《森》
1 《ドライアドの東屋》
2 《繁殖池》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
1 《新緑の地下墓地》
2 《ペンデルヘイヴン》
4 《墨蛾の生息地》

-土地(20)-

4 《ぎらつかせのエルフ》
4 《貴族の教主》
4 《荒廃の工作員》

-クリーチャー(12)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《変異原性の成長》
4 《古きクローサの力》
2 《顕在的防御》
4 《巨森の蔦》
1 《ひずみの一撃》
1 《呪文貫き》
1 《よじれた映像》
2 《使徒の祝福》
1 《四肢切断》
4 《強大化》

-呪文(28)-
1 《ヴィリジアンの堕落者》
3 《自然のままに》
2 《呪文貫き》
2 《よじれた映像》
1 《払拭》
1 《ひずみの一撃》
2 《四肢切断》
3 《貪欲な罠》

-サイドボード(15)-
イタリア B席 - 「ランタン・コントロール」
ワールド・マジック・カップ2016 トップ8 / チーム共同デッキ構築・モダン (2016年11月18~20日)
1 《沼》
4 《花盛りの湿地》
1 《黒割れの崖》
3 《燃え柳の木立ち》
4 《空僻地》
2 《発明博覧会》
1 《アカデミーの廃墟》
1 《幽霊街》

-土地(17)-

1 《呪文滑り》

-クリーチャー(1)-
4 《オパールのモックス》
4 《古きものの活性》
4 《洞察のランタン》
4 《写本裁断機》
4 《グール呼びの鈴》
4 《コジレックの審問》
3 《真髄の針》
2 《外科的摘出》
2 《思考囲い》
1 《黄鉄の呪文爆弾》
2 《突然の衰微》
2 《集団的蛮行》
1 《紅蓮地獄》
4 《罠の橋》
1 《世界のるつぼ》

-呪文(42)-
2 《呪文滑り》
2 《トーモッドの墓所》
2 《溶接の壺》
2 《自然の要求》
2 《外科的摘出》
2 《古えの遺恨》
1 《突然の衰微》
1 《魂の裏切りの夜》
1 《幽霊街》

-サイドボード(15)-
イタリア C席 - 「むかつき」
ワールド・マジック・カップ2016 トップ8 / チーム共同デッキ構築・モダン (2016年11月18~20日)
1 《島》
4 《闇滑りの岸》
4 《金属海の沿岸》
4 《欺瞞の神殿》
2 《啓蒙の神殿》
1 《戦慄艦の浅瀬》
4 《宝石鉱山》

-土地(20)-

4 《猿人の指導霊》
1 《研究室の偏執狂》

-クリーチャー(5)-
4 《睡蓮の花》
3 《否定の契約》
4 《天使の嗜み》
4 《血清の幻視》
4 《手練》
3 《大霊堂の戦利品》
4 《五元のプリズム》
4 《ファイレクシアの非生》
1 《稲妻の嵐》
4 《むかつき》

-呪文(35)-
1 《殺戮の契約》
3 《暗黒》
2 《強迫》
2 《ハーキルの召還術》
4 《神聖の力線》
1 《摩耗+損耗》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《戦慄艦の浅瀬》

-サイドボード(15)-

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