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【トピック】 ワールド・マジック・カップ2016での出来事トップ5

【トピック】 ワールド・マジック・カップ2016での出来事トップ5

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Event Coverage Staff / Tr. Tetsuya Yabuki

2016年11月20日

原文はこちら

 ワールド・マジック・カップ2016は記憶に残る物語に満ち、心温まるチームワークや手に汗握る試合、一風変わったデッキの面白い動きにあふれていました。ここでは特に思い出に残る5つの出来事をご紹介します。

第5位:マケドニアをはじめとする小国の大活躍

「まさかマケドニアが......カナダまで?」解説者のサイモン・ゴーツェン/Simon Gortzenは、このクリップ動画のはじめに思わずそう漏らしています。

 この発言に込められたものを明らかにしましょう。ほとんどのチームにとってもそうですが、特に小国の人々にとってワールド・マジック・カップは最大の舞台であり、ここで大きな活躍を見せることで母国のファンに夢を与えています。オーストラリア代表、ベラルーシ代表、フィンランド代表、パナマ代表、そしてウクライナ代表は、初めてワールド・マジック・カップのトップ8入賞を成し遂げました。パナマ代表は、2日目進出も初めてのことだったのです!

 マケドニアの話に戻りましょう。パナマ代表と同様に、マケドニアは人口数百万人の比較的小さな国です。これまでにワールド・マジック・カップの2日目に進出したのも1度きりでしたが、今年は注目に値する勢いで2日目を勝ち進んでいきました。そして彼らは、(世界王者に2度輝いたシャハール・シェンハー/Shahar Shenharがキャプテンを務める)イスラエル代表、(現在世界ランキング3位のオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldが率いる)アメリカ代表、そして(プラチナ・レベル・プロのアレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayne擁する)カナダ代表との連戦を迎えました。どれも「ダビデとゴリアテ」さながらの厳しい戦いでしたが、マケドニアはそのすべてで勝利を収めました。彼らは強国相手に臆することなく、《密輸人の回転翼機》を組み込むという洗練されたアイデアの「アブザン」デッキを手に堂々と戦いました。今大会を通して、《大爆発の魔道士》や《深き闇のエルフ》、《包囲サイ》、そして《ドライアドの東屋》までもが、優れた使い手のもとで躍動したのです。

 トップ8入賞を懸けた戦いでオーストラリアに敗れたマケドニアでしたが、彼らは小国でもプロ・プレイヤーを擁する大国と渡り合えるのだということを、存分に示したのでした。


第4位:殺人悪鬼

 今大会では革新的なデッキは現れないと、多くのプレイヤーがそう思っていました。モダンにはすでに確立されたアーキタイプが豊富にあり、特にチーム共同デッキ構築・モダンの制限を受けて、ほとんどのチームが「感染」や「親和」、それから「発掘」、そしてその他第3のデッキという構成を組み上げました。

 しかしいくつかのチームがその一歩先を行き、想定される環境の中で「青赤『窯の悪鬼』」がこの上なく良い位置にあることを見出しました。これまで表舞台に立ったことはほとんどないこのデッキですが、ときにグランプリへ姿を現し、愛好家たちによってMagic Online上で育てられていました。そして今大会、ワールド・マジック・カップ2016にて、5つのチームがこのデッキを採用し、そのうち3つがトップ8に入賞しました。3人のうちひとりしか《稲妻》を使えないという制限の中、「青赤『窯の悪鬼』」は最高の選択肢だったと言えるでしょう。

 このデッキの強さが示された瞬間は多々ありましたが、面白いことにデッキ名に冠された《窯の悪鬼》以外のカードの活躍が目立ちました。例えば準々決勝では、オーストラリア代表のライアン・キュービット/Ryan Cubitが1ターン目に《僧院の速槍》を繰り出し、2ターン目には《魔力変》から《若き紅蓮術士》、そして《変異原性の成長》を3連発という強烈な動きを見せました。また別の準々決勝の試合では、フィンランド代表のレオ・ラオネン/Leo Lahonenが《氷の中の存在》を「変身」させるためだけに、《虚空の杯》に打ち消されることを承知で《ギタクシア派の調査》2枚を含む1マナの呪文を4枚唱え、続くターンに《ティムールの激闘》でゲームを奪いました。

 中でも最高だったのは、レオ・ラオネンが初日に見せた実質2ターン・キルの瞬間でしょう。《ギタクシア派の調査》から《変異原性の成長》、《変異原性の成長》、《ティムールの激闘》と続けて唱え、《僧院の速槍》で一挙18点ものダメージを与えたのです。ぜひ上記のクリップ動画でその瞬間を振り返ってください。


第3位:イタリア代表が連続優勝の快挙に迫る

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 日曜日の決勝ラウンドの舞台にはただひとり、ワールド・マジック・カップ連続優勝を狙うプレイヤーがいました。イタリア代表のアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciです。しかしそれは彼ひとりの宿願ではなく、情熱と志をともにするマティア・リッツィ/Mattia Rizzi、アレッサンドロ・カサメンティ/Alessandro Casamenti、アレッサンドロ・ポルタロ/Alessandro Portaroの3人を含めたイタリア代表全員の願いでした。今大会で優勝を果たせば、イタリア代表はワールド・マジック・カップ史上初の2大会制覇という記録を打ち立てます。それを1度目の優勝の直後に達成するというのですから、彼らはまさに夢への道を歩んでいたのです。

 イタリア代表は初日1勝2敗というスタートから辛抱強く勝利を求め、チーム共同デッキ構築・モダン部門を見事4連勝で飾ると上位16チームへ入ります。そのおかげで2日目ステージ1第1回戦の不戦勝を獲得、そのまま上位を駆け上がります。準々決勝ではオーストラリア代表を破り、そして決勝までほぼ無傷で至った勢いあるベルギー代表との対戦に挑みます。

 もうひとつ印象的だったのは、決勝ラウンドで「ランタン・コントロール」を操ったポルタロの姿でしょう。「ランタン・コントロール」は今大会多くのチームが選択し、人気のアーキタイプとなりましたが、その大きな理由として『カラデシュ』の登場で強化されたことが挙げられます。《花盛りの湿地》や《光り物集めの鶴》はもちろんですが、《発明博覧会》も重要な1枚であることをポルタロは示してくれました。オーストラリア国内王者のデイヴィッド・マインズ/David Minesとの戦いで、ポルタロは《発明博覧会》を生け贄に捧げて2枚目の《真髄の針》を手に入れ、決して破れない檻を完成させました。準決勝ではブランコ・ネランク/Branco Neirynckの「ナヤ・バーン」を相手に、残りライフ1から《発明博覧会》の回復で火力圏外に逃れることができ、そこへさらに回復を重ねてネランクの手に負えない状況を作り上げることに成功しました。

 イタリア代表は最後まで素晴らしい活躍を見せてくれました。連続優勝という大願は叶わなかったものの、手が届くところまで迫ったという体験はきっと、誰もが羨む甘美なものだったことでしょう。


第2位:ベルギー代表のジェローム・バストーニュが「御霊の復讐」デッキへの深い造詣を見せる

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ベルギー代表のジェローム・バストーニュ/Jerome Bastogneは舌を巻くほどのゲームを見せてくれました。この週末の出来事トップ5に選ばれるのも当然です。

 ベルギー代表は、初日全勝から2日目もほぼ無傷という目覚ましい戦績で今大会を席巻しました。チームメンバーのうち3人(ピーター・フィーレン/Peter Vierenとパスカル・フィーレン/Pascal Vieren、ブランコ・ネランク/Branco Neirynck)は複数のグランプリ・トップ8入賞経験を持つ有名プレイヤーたちですが、実は比較的名前を知られていないジェローム・バストーニュこそがこのチームの秘密兵器でした。バストーニュは、何年にもわたって同じデッキを使い続けモダンで行われたワールド・マジック・カップ予選を勝ち抜いた「モダン・マスター」のひとりです。彼の武器は「グリショールブランド」とも呼ばれる「御霊の復讐」デッキであり、その深い造詣はデッキテク(英語動画)や決勝ラウンドでの鮮烈な勝利で示されています。

 準々決勝では、《思考囲い》による干渉を受けながらも2ターン目に勝利しました(英語動画)。

 その技は準決勝でさらに冴え渡り、解説者たちからもこの週末のベスト・マッチだと声が挙がりました。イタリア代表のマティア・リッツィとの試合の第2ゲーム、両者とも手札に勝ち手段を抱えながらも、相手の対応を意識して仕掛けません。リッツィは《突然のショック》を恐れ「感染」での大打撃を繰り出せず、バストーニュは常に《呪文貫き》をかわせるよう立ち回ります。そしてリッツィが《貪欲な罠》で《怒れる腹音鳴らし》を2枚とも追放しようとしたそのとき、バストーニュはここが勝負どころだと直感し、大胆なプレイを見せたのです。リッツィは《呪文貫き》を持っていませんでした。《裂け目の突破》が通り、《グリセルブランド》が戦場に降り立ちます。しかし彼は28枚ものカードを引きながらも2枚目の《滋養の群れ》を引き込めず、そこで動きは止まりそのままターンを渡すことになりました。

 それでもバストーニュは勝利を収めたのです! 彼は襲い来るリッツィの「感染」クリーチャーへ《突然のショック》を撃ち込んで生き残りながら、《グリセルブランド》による2度の攻撃でこのゲームを制しました。どちらが勝つかまったくわからない凄まじい戦いでしたが、今大会最も面白いゲームのひとつであることは間違いないでしょう。

 ベルギー代表は優勝トロフィー獲得まであと一歩のところまで来ました。しかし決勝では、バストーニュをもってしてもギリシャ代表の勢いを止めることは叶わなかったのです。


第1位:ギリシャの努力がついに結実する

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ギリシャ代表

 ワールド・マジック・カップ創設以来、ギリシャ代表は常に上位争いを繰り広げてきました。ギリシャ代表はわずか2ヵ国しかない2日目進出率100%のチームであり(もうひとつはスコットランド代表)、ワールド・マジック・カップ2014では決勝まで進出しました。国内王者のビル・クロノパウロス/Bill Chronopoulosは2年前にも代表の一員として戦い、決勝でデンマーク代表に敗れました。

 この週末を迎えるにあたり、彼は勝利のみを追い求め、かつてあと一歩のところで逃してから夢見続けたワールド・マジック・カップ制覇のタイトルを必ず獲得すると誓いました。チームメイトのニコラス・カポニス/Nikolaos Kaponis、パナギオティス・パパドパウロス/Panagiotis Papadopoulos、ペトロス・ツィオティス/Petros Tziotisは、クロノパウロスに決勝で負ける悔しさをもう一度与えるわけにはいかないと奮起しました。

 クロノパウロスは信頼を置いている「発掘」デッキを選択し、その選択が正しかったことを確信しました。最終戦も絶対に勝てる――チームメイトたちはこの週末、彼に全幅の信頼を寄せてきました。ここまで来て疑う余地などあろうはずもありません。クロノパウロスが《災いの悪魔》を「蘇生」し《秘蔵の縫合体》と《恐血鬼》とともに最後の攻撃を与えると、ベルギー代表の残りライフは、試合を決める《燃焼》の範囲内に落ち込んだのでした。

「みんな、やったぞ!」 優勝決定の瞬間、クロノパウロスの第一声が飛び出しました。チームメイトたちは言葉にならない喜びを爆発させました。

 最高の団結力を見せたこのチームには、この週末を通して何度となくネタにした笑いの種がありました。パパドパウロスは今大会、ほとんどの試合で負けましたが、「ここぞ」というときだけは勝利をものにしていたのです。彼はトップ8入賞を懸けた大事な試合ので勝利を収め、そして決勝では、ピーター・ファーレンを相手に1ターン目《ぎらつかせのエルフ》から2ターン目《古きクローサの力》、そして《変異原性の成長》3連発という2ターン・キルを決めたのでした!

 ギリシャ代表は、ここロッテルダムの地で悲願を達成しました。この地はギリシャのマジック・ファンにとって、今後永遠に栄光の地として語り継がれることでしょう。2度目の挑戦とその結実を描く血と汗と涙の物語は、これにて閉幕です。ギリシャ代表、ワールド・マジック・カップ2016優勝おめでとう!

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