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Round 10: 伊藤 敦(東京) vs. Jörg Unfried(ドイツ)

Round 10: 伊藤 敦(東京) vs. Jörg Unfried(ドイツ)

By Keita Mori


 2日目のファーストドラフトを三連勝で飾った渡辺 雄也(神奈川)が第10回戦のフィーチャーマッチに招待され、"Gainsay" Andrew Cuneo(アメリカ)というMagic Online Championship(以下MOCS)参加選手との一戦を戦うことになった。

 時を同じくして、ドラフト3連勝を飾ったもうひとりの日本人選手が、ドイツからやってきたMOCS参加選手と試合を行う。前出の渡辺が日本のコミュニティを代表するトッププロであるとすれば、この試合の主人公、「まつがん」伊藤 敦(東京)は日本を代表するマジック・ライターのひとりと言えるだろう。

伊藤 敦

 伊藤は公式サイトや自身のブログといった媒体に情熱的な文章を綴ってきた男で、一選手としてゲームに臨むスタンスも、とにかく熱い。一見クールなたたずまいをしているだけに、ある種のギャップを感じるのも筆者だけではないだろう。

 しかし、熱いといっても伊藤は決して猪突というわけではない。独自性あふれる論理がつねに彼のバックボーンに存在しており、このイニストラードのドラフト環境では、それが戦術的にかなりフィットしているからこそのドラフト3連勝というスコアにつながっているのだ。

 はたして、あなたは白青ビートダウンを組み上げた際、《肉屋の包丁/Butcher's Cleaver(ISD)》をサイドボード要員として眠らせるだろうか? 少なくとも、伊藤は確信をもってこのカードをメインボードから外して試合に臨んでいるのだ。

伊藤 敦:白青
Jörg Unfried:黒緑タッチ白赤


Game 1

伊藤 敦

 1マリガンスタートながら、先手の伊藤が2ターン目に2/2威嚇の《幽体の乗り手/Spectral Rider(ISD)》召喚からゲームをスタート。続く3ターン目にさっそく2点のアタックを叩き込み、戦闘後に2/3飛行の《礼拝堂の霊/Chapel Geist(ISD)》を上空に送りこんだ。

 対するJörg Unfriedの立ち上がりは《断崖の避難所/Clifftop Retreat(ISD)》タップイン、セット《森/Forest(ZEN)》というマルチカラーマナベースのスタートで、伊藤の終了ステップに瞬速もち《待ち伏せのバイパー/Ambush Viper(ISD)》を呼び出し、続く自ターンには四色目の供給を可能とする《沼/Swamp(LRW)》を置いてから2/3《エストワルドの村人/Villagers of Estwald(ISD)》を召喚するという動きを見せた。

 伊藤は威嚇(白)と飛行というふたつの回避能力を活用して4点のダメージをたたき出し、Unfriedのライフを14点に。戦闘後には、多数の種族プロテクションに加えて警戒と先制攻撃をも備えた《精鋭の審問官/Elite Inquisitor(ISD)》を盤上に追加してターンを返した。

 2/2《村の食人者/Village Cannibals(ISD)》を展開しつつ《沼/Swamp(LRW)》を置いただけのJörg Unfriedを尻目に、伊藤の軽妙なアタックが続く。乗り手、審問官、霊の3体のアタッカーのダメージ6点が通って、Jörg Unfriedの残りライフが8点に。さらに伊藤は戦闘後に2/2飛行&警戒の《修道院のグリフィン/Abbey Griffin(ISD)》を召喚し、回避能力つきのダメージクロックをさらに拡大した。

 Jörg Unfriedは《夜の恐怖/Night Terrors(ISD)》で伊藤の手札の最後の一枚である《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》を追放してみたものの、これは実質的に投了前に相手のデッキの中身を確認しにいったという意味合いのアクションに等しかった。

 "Ponza"にできたのは、せいぜい《待ち伏せのバイパー/Ambush Viper(ISD)》でのチャンプブロックで《精鋭の審問官/Elite Inquisitor(ISD)》からの本体ダメージを誤魔化すことくらいで、航空戦力4点、白い威嚇で2点という伊藤の巨大なクロックに対して回答が用意できなかったのだ。

伊藤 敦 1-0 "Ponza" Jörg Unfried


Gamd 2

Jörg Unfried

Jörg Unfried

 先手のJörg Unfriedは初手を一見するなり、力強くキープを宣言。対する伊藤は2ゲーム続けてのワンマリガンからゲームをスタートすることになった。

 後手の伊藤が2ターン目に1/1《物騒な群衆/Unruly Mob(ISD)》を展開し、先手Jörg Unfriedは3ターン目に2/2の《歩く死骸/Walking Corpse(ISD)》を召喚。

 ただ、さきほどは3枚の土地をならべた段階でドイツ勢は4種類のマナを供給することができるマナベースを構築していたが、今回は《沼/Swamp(LRW)》だけが三枚盤上に並べられていた。

 後手の伊藤は3ターン目に1/1《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》、4ターン目に3/2飛行《月鷺/Moon Heron(ISD)》とクリーチャーを並べ、土地が3枚で詰まってしまったJörg Unfriedは《猛火の松明/Blazing Torch(ISD)》を《歩く死骸/Walking Corpse(ISD)》に装備させて身構えるという動きにとどまる。

 続く5ターン目にも土地セットをふくめて何のアクションも取れないJörg Unfriedを前に、伊藤は3/2《月鷺/Moon Heron(ISD)》1体でのアタックを宣言。

 Jörg Unfriedは《猛火の松明/Blazing Torch(ISD)》を投げつけてこれを討ち取るが、これによって伊藤は墓地にクリーチャー・カードを獲得することとなり、3/4飛行《縫い合わせのドレイク/Stitched Drake(ISD)》を戦闘後に召喚することが可能となった。さらに《物騒な群衆/Unruly Mob(ISD)》もクリーチャーの死亡によって+1/+1カウンターを獲得し、2/2というサイズに成長した。

 哀れ、Jörg Unfriedは6ターン目にも土地を置けず、対照的に伊藤はアタックを継続し、戦闘後に2/2《修道院のグリフィン/Abbey Griffin(ISD)》という航空戦力の追加に成功。続く7ターン目にJörg Unfriedが《エストワルドの村人/Villagers of Estwald(ISD)》を呼び出したところで、それらのブロッカーを《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》で伊藤がタップアウト。

 全軍突撃によって10点ものダメージをたたき出した。

 伊藤 敦が往年の「真空波動拳」にも喩えた擬似回避能力付与呪文を前に、ドイツ勢は間もなく投了を宣言した。

伊藤 敦 2-0 "Ponza" Jörg Unfried


 戦後、ここまでイニストラード×3の世界選手権のドラフトを4連勝で飾った伊藤に、この環境でのドラフトについてインタビューを行った。お近くのショップや大会で、あるいはMagic Onlineでのドラフトの際の一助していただければ幸いだ。

 伊藤曰く、この環境で彼はデッキの土地を15枚ないし16枚というところまで切り詰めてもデッキが機能するようなピックを心掛けているという。

伊藤 「とにかくフラッドしたくないです。そういう構成にすればスクリューのリスクは大きくなるわけだけど、それだけに、土地が2枚ないし3枚で十分にクリーチャーが展開できるようなマナカーブでピックを行っていくことを心掛けています。」

 たしかに伊藤は第1ドラフトでは4枚!?もの《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》が印象的な青赤デッキを組み上げ、鮮やかに3連勝を飾っている。

 そのときのデッキ構成比率は15:15:10(土地:生物:呪文)だ。4から5マナ域のカードはとくに枚数に留意し、相当に優秀なものでないと採用しないというのが基本方針であるようだ。ちなみに、《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》は「まつがん」に言わせると「見たら全部取る。」というお気に入りの一枚。

伊藤 「第1ドラフトの青赤は《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets(ISD)》がきちんととれていたので、変身条件を考慮してかなり呪文を多めにとっています。まあ、3枚入っていた《夜鳥の手中/Nightbird's Clutches(ISD)》がキーカードでしたね。とにかく、並べたクリーチャーででかいダメージがたたき出せるので。」

 試合のレポートの際にも「真空波動拳」について少し触れたが、伊藤はこの環境においてクリーチャーをならべ、それらに回避能力を付与するというゲームプランの有効性について、繰り返し言及している。

伊藤 「インスタントの強い除去が少ない環境なので、並べて回避能力をつける類のテクニックがかなり有効です。なんとか10点削れば、あとは回避能力もちでコツコツ削るか、《夜鳥の手中/Nightbird's Clutches(ISD)》や《戦慄の感覚/Feeling of Dread(ISD)》でブロッカーを排除して殴りきるプランがかなり現実的です。関連して、並べることに意味がある環境なので、クリーチャーを多めにピックすることも心掛けています。」

 たしかに、伊藤の今回の白青デッキの構成は16:17:7(土地:生物:呪文)だ。そして、クリーチャーを減らしたくないという理由、および、出して装備という一連のアクションが重い(3+3=6マナ)という理由により、冒頭で紹介した《肉屋の包丁/Butcher's Cleaver(ISD)》は不採用という決断となっているのだそうだ。


 昨年度は千葉で行われた世界選手権において、決勝戦の観戦記事も担当した伊藤 敦。

「間違いなく、世界最高の舞台で、最後の戦いを直接見守ったという経験は自分の中で大きな財産となった。」という彼は、今度は「取材される側」として栄光の舞台を目指すべく、次戦、ラスボス級のプレイヤーであるOwen Turtenwald(アメリカ)との一戦へ臨むこととなった。

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