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MO世界選手権ダイジェスト: 電脳世界かく戦えり

MO世界選手権ダイジェスト: 電脳世界かく戦えり

by Shiro Wakayama


 世界選手権本選でしのぎを削っていたプレイヤー達が、6回戦の初日を終え、ディナーへと繰り出す。ドラフトを始める。はたまた、まだ決まっていないモダンのデッキについて情報収集を始めた。国を背負った代表選手たちは、国別対抗戦で火花を散らす。

 思い思いにプレイヤー達が散っていくのをしり目に、アナログゲームなはずのマジック:ザ・ギャザリングの世界選手権会場でひときわ異彩を放つ、12台のPCの周りに人が集まりだした。

 2002年から稼働を開始したMagic Online上の最強プレイヤーを決める、Magic Online Championship Series(以下MOCS)が始まるのだ。

Magic Online

 ここに集まった12人のプレイヤーは、QPと呼ばれるポイントを集め、そのポイントを持ったプレイヤーだけが参加できる――しかも月に一度しか開催されない!――トーナメントで勝利し、世界選手権への切符とともに、もう一つの世界選手権である、MOCSへとやってきた。
(詳細な説明は鍛冶友浩の週刊連載記事第4回「世界選手権への道は・・・いくつある?」で確認していただきたい。)

 世界選手権の脇で行われる、パブリックイベントの一つと勘違いしてはいけない。
 デジタルデータ上で、どれだけ活躍しても、どれだけ称賛を受けても、現実世界に還元できない、数多くのソーシャルゲームと、MOは違う。
 
 参加するだけで、$4,000+MO上でのスタンダードコンプリートセットが贈呈され、優勝者には$25,000+副賞という、プロツアークラスの、とんでもない賞金が用意されているのである。
 もちろん、世界選手権への参加権利も提供されるので、本選での成績いかんでは最大$70,000の賞金という、もはやゲームの域を超えた、途方もない夢がMOCSと世界選手権には用意されている。

 今回で第3回を迎えるMOCS。過去に行われた第1回ではyaya3の名でMOPOYも獲得した八十岡が、準優勝。第2回では、スタンダードを席巻した、Caw-Blaadeの原型となる《戦隊の鷹/Squadron Hawk》を使ったコントロールと、《苦花/Bitterblossom》+《変身/Polymorph》で《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》という、奇怪なデッキを操り、Archer.こと、浅原が準優勝。
 十分な結果とも言えるのだが、今一歩優勝に至れない、非常に口惜しい結果となってしまっている。

 日本人が毎年出場している、MOCS。日本からは、今年も二人のプレイヤーが参加する。

彌永&吉岡

彌永 淳也(左) & 吉岡 祐樹(右)

 一人目は「SEVERUS」こと彌永 淳也。今はトーナメントプレイの第一線は退いてしまったものの。精力的に活動していたころはプロプレイヤーレベル6まで到達したほどの実力者である。学業等、私生活が忙しく、今年のプレミアイベント参加は日本選手権のみだったが、MOCSで権利を獲得し、久し振りにトーナメントシーンへと帰ってきた。

 彼のMO上での名前SEVERUSは、ローマの皇帝セプティミウス・セウェルスに由来しているとは本人の談。
 貴族でもエリート中のエリートがなるのがローマの皇帝だ。だが、セプティミウス・セウェルスはアフリカというローマ時代で言えば辺境の地、属州で生を授かり、田舎貴族とも言えるような生い立ちから、ローマの皇帝まで上り詰めた。
 彼の軌跡は、レーティングや、プロポイントによる招待という、王道とも言えるような形ではない、MOCS勝利による出場権利を獲得した彌永の出場経緯とどこか重なる。
 世界選手権本選は6勝0敗と、土つかずのまま最高の成績で初日を終了し、勢いそのままに、ディスプレイの前へと座り、戦闘準備を始めるSEVERUS。

 セプティミウス・セウェルスよろしく、このまま世界王者戴冠まで駆け抜けてほしい。 


 もう一人のMOCS参加プレイヤーは、yoshidoraこと吉岡 祐樹。
 埼玉に在住の会社員で、リアルマジックは旧ミラディンの頃に引退。MOはβ版(インベイジョン発売当時)から触っていて、趣味程度に、仕事の気分転換として続けていく中で、ゼンディカーで本格的にドラフトを開始したとのこと。
 パックを増やせたらいいなぁという程度で続けていたら、QPが増え、苦手ではないフォーマットのMOCS予選に狙って出ていたら、権利が取れてしまったとのこと。
 「参加するだけで賞金が出る。というか、旅費位は十分にペイできる。」という話を、MOCSで優勝してから友人から聞くという、無欲な吉岡。

 MOCS参加権利を巡って、世界中で何千人ものプレイヤーが血眼になっているということを、吉岡は知っているのだろうか?
 並みいる強豪たちを蹴散らして、MOCSを勝利した吉岡は、初日のスタンダードを、既存のアーキタイプとは全く異なる、赤緑ステロイドという言葉が相応しいデッキで、4-2とまずまずの成績で終了し、エクストララウンドとも言うべきMOCSへと臨む。

年に一度のQueue

 年に一度しか開催されない、超レアなイベントがMO上に姿を現す。SEVERUSと、yoshidoraがこのイベントへと入室し、MOCSが、始まる。


Day 1

彌永 淳也

 《金屑の嵐/Slagstorm》によって、色を問わず、クリーチャーデッキに対して優位を取れる赤が濃い形の《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run(ISD)》ランプを使って全勝した彌永は、勿論同じデッキをMOでも使用する。

 《金屑の嵐/Slagstorm》によるクリーチャーデッキ耐性と、《太陽の宝球/Sphere of the Suns》を採用したことによって、2マナ域でのマナブーストの確率がさらに上げたことで、コントロールにも優位に戦うことができる少し既存の形とは違う調整が施されている。
 このデッキは「rizer」こと石村 信太朗とともに、MO上で調整したそうだ。

 本選のメタゲームとは異なり、少し赤単が多そうな印象を受けるMOCSのスタンダードラウンド。

 彌永は、同系のケッシグウルフランプと赤単等を破り、3-1とまずまずの成績で折り返す。

 吉岡は、メインボードに《殴打頭蓋/Batterskull》、サイドボードに《ヴァルショクの難民/Vulshok Refugee》《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》と、赤単に対してかなり効果的な構成をしているデッキなのだが、ライブラリーが機嫌を損ねてしまったのか、土地が止まってしまって赤単に2連敗。星を一つ取り戻して1勝2敗としたものの、最終戦に敗れて1勝3敗と少し苦しいスタートとなってしまう。

 2日目は、上級者向けともっぱら噂のイニストラードドラフト。世界選手権本選と合わせてドラフトを3回しなければいけないという超ハードスケジュールである。

MOCS飯

ハードスケジュールに、栄養補給は不可欠


Day 2

 本選のドラフトが少し振るわず、3-3で、通算9-3とした彌永。
 逆に吉岡はドラフトでブレイクして5-1。こちらも同じく9-3で二日目を終えた。
 Top8には4敗以上がボーダーと思われるので、崖っぷちではあるが、まだまだ目のある二人。

 一方、昨日17点獲得して1位タイとなったSEVERUSと、成績が少し振るわなかったyoshidora。
 前代未聞のプロツアーサンデーダブル出場するためには、ここからの3ラウンドも頑張らなければいけない。
 彼らの雄姿を、ダイジェストでお届けしよう。


SEVERUS's Picks

 《荘園のガーゴイル/Manor Gargoyle》、《解放の樹/Tree of Redemption》と幸先よく強力なレアでピックを開始。

 2パック目で《オリヴィア・ヴォルダーレン/Olivia Voldaren》を引き当てるも、意図的になのか、これをスルー。青緑という推し進めているカラーを主張していく。
 3パック目2手目では《小悪魔の遊び/Devil's Play》が流れてきて、これをしっかりとキャッチし、強力なレアを擁するものの、脇を固める基本パーツが少し心許ない構成になってしまった彌永のデッキ。
 このリミテッドラウンドを勝ち越せれば、モダンの成績如何では十分にプレイオフも狙える位置にいるだけに頑張ってもらいたい。


yoshidora's Picks

吉岡 祐樹

吉岡 祐樹

 《ケッシグの檻破り/Kessig Cagebreakers》というボムからスタートして、順調に《ウルヴェンワルドの神秘家/Ulvenwald Mystics》《エストワルドの村人/Villagers of Estwald》とピックしていき、途中で《錯乱した助手/Deranged Assistant》をつまんでいたところで、2パック目に《スカーブの殲滅者/Skaab Ruinator》を開封することに成功。

 最終的に《礼儀正しい識者/Civilized Scholar》《錯乱した助手/Deranged Assistant》《セルホフの密教信者/Selhoff Occultist》《甲冑のスカーブ/Armored Skaab》《根囲い/Mulch》から墓地を肥やし、《蜘蛛の発生/Spider Spawning》や《骨までの齧りつき/Gnaw to the Bone》《スカーブの殲滅者/Skaab Ruinator》を活用していく墓地エンジンを搭載しつつ、《ケッシグの檻破り/Kessig Cagebreakers》や《エストワルドの村人/Villagers of Estwald》等緑の優良クリーチャーで盤面を作っていく、かなりテクニカルなデッキに仕上がった。

 本人曰く、「65点くらいですかね。パワーカードはありますけど、墓地にカードを送り込む手段が少ないのが少し残念です。《隊商の夜番/Caravan Vigil》があるので、《沼/Swamp》を1枚だけ入れて、《蜘蛛の発生/Spider Spawning》を活用するつもりです。」とのこと。


yoshidora's Round 5-7

 Round 5は渡辺 雄也とのフィーチャーマッチでライブラリアウトデッキを作っていた「Gainsay」Andrew Cuneoとマッチアップ。

 Game 1は《アンデッドの錬金術師/Undead Alchemist(ISD)》と《グール呼びの鈴/Ghoulcaller's Bell》という、マニアックだが、非常に強力なコンボが成立。青緑というカラーコンビネーション故に、除去手段を殆ど持たないyoshidoraは圧敗。

 だが、Game 2は《スカーブの殲滅者/Skaab Ruinator》と対戦相手の《グール呼びの鈴/Ghoulcaller's Bell》が友情コンボを達成。Gainsayのデッキに2枚目の《アンデッドの錬金術師/Undead Alchemist》が入っていることが判明し、驚くも、危なげなく勝利。

 3本目はまたしても相手の戦略との友情コンボが発生する。《セルホフの密教信者/Selhoff Occultist》と《グール呼びの鈴/Ghoulcaller's Bell》によって、《蜘蛛の発生/Spider Spawning》によって7体の蜘蛛が発生。

tokens

 さらに《スカーブの殲滅者/Skaab Ruinator》をトップデッキする!・・・のだが、《アンデッドの錬金術師/Undead Alchemist》が登場したことによって、yoshidoraのライブラリは加速度的に削れてしまい、惜しくも敗北してしまう。

 Round 6,7も、デッキ自体は悪くないものの、相手との噛み合いも悪く、ドラフトラウンドを0-3で終えてしまうこととなった。


SEVERUS's Round5-7

 引きがかみ合わないことも災いしてしまい、マリガントラブルが響いてしまったRound 5と6。
 Round 7はタッチした《小悪魔の遊び/Devil's Play》等がかみ合い、何とか1-2とする。


 2日を終えての勝ち点はこちら

 本選の好調とは裏腹に、主戦場であるはずのMOでは成績が振るわなかったyoshidora。全勝してもプレイオフへの参加は絶望的となってしまい、明日のMOCSはプレイオフ参加ではなく、順位を上げる戦いとなるが、本選のTop8は十分に狙える位置にいる。
 5年以上やっていなかったリアルマジックで、TOP8に入り、アリーナでマジックをしている吉岡の姿を見れることを、期待しよう。

 もう一人の日本人プレイヤー彌永 a.k.a SEVERUSは、2日目の成績が負け越しだったので厳しくはなってしまったが、3日目のモダンを4-0すれば、ほぼ確実にプレイオフに進出できる。

 本選、MOCSの両方に彼が登場するためには、通算成績8勝1敗1分け以上がボーダーラインという、とてつもなく厳しい戦いとなるが、彼が、アリーナへと戻ってくることを期待しよう。

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