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Deck Tech: 《けちな贈り物》コントロール by 八十岡 翔太 (モダン)

Deck Tech: 《けちな贈り物》コントロール by 八十岡 翔太 (モダン)

By Keita Mori


 スイスラウンド終了時点での世界選手権を総括するなら、Top 8の席の半数を独占したChannelFireball(以下CFB)勢の大勝というニュースがヘッドラインを飾るだろう。実際、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(以下POY)賞の行方もCFB所属の三名の誰かがプレイオフの結果次第で受賞というありさまで、最終的にはOwen Turtenwaldの受賞という結末を迎えた。

CFB at Nagoya

 それにしても、CFBのパフォーマンスは圧巻だった。

 圧倒的勝ち点を背景にConley WoodsやLuis Scott-Vargas(以下LSV)が行った「選別作戦」は、世界中のプロを慄然とさせた。選別作戦とは、チームの同僚とマッチアップした場合はトス(投了)してTop 8入賞へのアシストを行い、それ以外の対戦相手であれば合意の上での引き分け(Intentional Draw)にもトスにも応じず、ガチンコ勝負を挑むというチームオーダーだ。上位のチームメイトがチーム外のライバルを蹴落とすことができれば、相対的にライン上の瀬戸際を漂っているほかのチームメイトが有利になる。

Round 18

 選別作戦の具体例といえば、第18回戦のフィーチャーマッチ、彌永 淳也 vs. LSVの試合が代表的だ。すでにプレイオフ進出確定のLSVと「IDできればプレイオフ確定」というラインの彌永がマッチアップし、LSVは上記のチームオーダーを徹底して彌永との握手を拒んだ(※結局マッチは彌永 淳也が2-1で勝利し、結局は両者ともプレイオフに進出している。詳細はカバレージ参照)。
 もっとも、チームメイトのために動くというのは別にCFBだけが特別というわけではないが、現役最強レベルのプロたちが組んでいるという意味では、やはりその動向が「目立つ」ことは間違いない。

 このおそるべきChannelFireballというチームについては、日本を代表するプロであり、ともにPOY受賞歴もある中村 修平と津村 健志が共同で執筆してくれた記事(Magic Weekend名古屋にて掲載)があるので、まずはこちらをご一読いただきたい。

 Feature: 『Channel Fireball』とは、何だ?

 この記事の中でCFB勢が繰り返しているフレーズが「日本勢は最近弱いデッキばかり使っている」というものだ。たしかに一時期に比べると日本勢のプレイオフ進出率はさがり、1シーズン前のアムステルダムのカバレージで掲載された「日本勢は、なぜ勝てなかったのか。」という記事がコミュニティ内でも反響を呼んだことは記憶に新しい。

 しかし、日本には、

八十岡 翔太

 八十岡 翔太がいた。

4色《けちな贈り物》コントロール『ヤソコン』 Played by 中村 修平
世界選手権2011 モダン6-0
2 《沼/Swamp(LRW)》
1 《森/Forest(ZEN)》
1 《島/Island(CHK)》
4 《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows(FUT)》
2 《黄昏のぬかるみ/Twilight Mire(EVE)》
2 《偶像の石塚/Graven Cairns(FUT)》
1 《草むした墓/Overgrown Tomb(RAV)》
1 《湿った墓/Watery Grave(RAV)》
1 《繁殖池/Breeding Pool(DIS)》
1 《血の墓所/Blood Crypt(DIS)》
1 《踏み鳴らされる地/Stomping Ground(GPT)》
1 《闇滑りの岸/Darkslick Shores(SOM)》
1 《地盤の際/Tectonic Edge(WWK)》
3 《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》
2 《霧深い雨林/Misty Rainforest(ZEN)》

-土地(24)-

4 《桜族の長老/Sakura-Tribe Elder》
2 《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》
2 《永遠の証人/Eternal Witness(CMD)》
1 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage(ISD)》

-クリーチャー(9)-
2 《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek(ROE)》
1 《強迫/Duress(M10)》
1 《カラスの罪/Raven's Crime(EVE)》
3 《罰する火/Punishing Fire(CMD)》
1 《燻し/Smother(ONS)》
1 《喉首狙い/Go for the Throat(MBS)》
1 《破滅の刃/Doom Blade(M12)》
1 《壌土からの生命/Life from the Loam(RAV)》
2 《知識の渇望/Thirst for Knowledge(MRD)》
4 《けちな贈り物/Gifts Ungiven(CHK)》
2 《滅び/Damnation(PLC)》
1 《全ての太陽の夜明け/All Suns' Dawn(5DN)》
1 《消耗の蒸気/Consuming Vapors(ROE)》
1 《粗野な覚醒/Rude Awakening(5DN)》
2 《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives(5DN)》
3 《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil(ISD)》

-呪文(27)-
4 《タルモゴイフ/Tarmogoyf(FUT)》
1 《強情なベイロス/Obstinate Baloth(M11)》
3 《思考囲い/Thoughtseize(LRW)》
1 《根絶/Extirpate(PLC)》
2 《原基の印章/Seal of Primordium(PLC)》
2 《古えの遺恨/Ancient Grudge(ISD)》
2 《焼却/Combust(M12)》

-サイドボード(15)-

 CFBの面々も含めた世界中が認めるデッキビルダーが八十岡 翔太だ。彼はオンラインと現実世界のPOYタイトルを両方とも獲得した唯一のプレイヤーで、プロツアーサンデーでの活躍ぶりが充実すれば殿堂入り間違いなしと言われているプレイヤーだ。

 八十岡はこの世界選手権のために新たなモダンデッキを脳内構築し、そのリストは渡辺 雄也、中村 修平といった日本のトッププロにシェアされた。デッキの概要を聞いたCFB所属のBen Starkまでもがレシピのシェアを懇願したというエピソードもある。

Ben Starkがシェアを頼む一幕

 ちなみに、Starkは《全ての太陽の夜明け/All Suns' Dawn(5DN)》が調達できずにZooを選択することとなったということだ。

 渡辺と八十岡はそれぞれがマッチアップされる不運などもあって大きく勝ち越すことはかなわなかったが、このデッキを使って中村 修平が見事に6連勝を飾っており、プロプレイヤークラブにおけるレベル8資格へと到達している。

 八十岡がデザインしたのは1枚挿しのカードをツールボックス/Toolbox的に運用する《けちな贈り物/Gifts Ungiven(CHK)》コントロールで、カード一枚一枚の選択が絶妙な配合となっている。

中村 「これは本当に素晴らしいデッキで、下のラインから連勝を狙う私には願ってもないものでした。ビートダウンにとにかく有利に戦えるデザインでしたからね。除去が豊富で、本当に安心して運用できました。」

八十岡 「(苦笑しつつ)実はビートダウンだけじゃなくて、コンボやコントロールにもかなり有利に戦えるギミックが入っているんで、対策できていない相手であれば必殺技が決まっちゃうパターンもあるんですよね」

 八十岡が「カラスローム」と呼ぶこの2枚の組み合わせが決まってしまうと、それだけでコントロールデッキやコンボデッキの手札は壊滅的な被害を被ってしまうことになる。ただ、上記のような必殺パターンに限らず、このヤソコンが特殊極まる内容のデッキであるために、対戦相手が正確なリアクションをとれないという形でアドバンテージを享受することもあったようだ。

中村 「なんというか、『わからん殺し』はありましたね。相手を幻惑できているおかげで有利になった試合が、間違いなく序盤戦にありました。ただ、八十岡のデッキということで3日目中盤以降は少しずつ正体が知れわたってしまうので、最終的にはローグデッキならではのアドバンテージも小さなものになっていたとは思います」

八十岡 「僕の対戦相手もプレイングをミスってくれていたらもっと楽だったけどな(苦笑)。 まあでも、『わからん殺し』の話じゃないけど、実際にSam Black(アメリカ)の《けちな贈り物/Gifts Ungiven(CHK)》コントロールとあたったときに、カラスロームを決めただけで勝てたりもしているので、デッキの狙いは良かったと思います」

中村 「コントロール相手で、そのコンボが決まらないにせよ、《罰する火/Punishing Fire)》への対策が不十分な相手にそれだけで勝利したという試合もありましたね」

 中村が6回戦でマッチアップした相手は順に《包囲の搭、ドラン/Doran, the Siege Tower(LRW)》、赤単親和、Nexk LevelっぽいBlue、バント、《むかつき/Ad Nauseam(ALA)》ストーム、CFB Zoo(Owen Turtenwald)というデッキが相手だった。

八十岡 「今回のこのデッキについては、メタゲームが動かない限りあまりいじるところはないかもしれないですね。一番苦心したのはマナバランスで、プレイングで一番難しいのも、どの土地をサーチすべきか、それがタップインすべきかアンタップインすべきか、といった判断だと思います。」

 八十岡が想定していたメタゲームとはどんなものだろう?

八十岡 「圧倒的にZoo、次いで《欠片の双子/Splinter Twin(ROE)》コンボ。あとは雑多という読みでした。そんなに大きく外していなかったかもしれないですね。」

 自身のレベル8資格到達だけでなく、三日目4-1-1という戦績が必達であった中村修平のアシストをデッキ供与というかたちで行って世界選手権をしめくくった八十岡。しかし、意外なことに彼自身は世界選手権最終戦(18ラウンド)を対戦相手への投了(トス)というかたちで終えていた。これは賞金圏内ではあまりないことだ。

八十岡 「いや、相手がどうしてもプロポイントがほしいというので、まあいっかな、と思って投了しました。ベスト16に入れば来季のプロプレイヤーレベルが上がるかも、というラインにいたみたいでしたから。

 ・・・でも、彼は最終17位でしたけどね」

 苦笑する八十岡。

中村 「・・・すいません! ごっつぁんゴールで16位にすべりこんだのは・・・私です!」

 中村、破顔一笑。

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