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【観戦記事】 決勝:Xu Su(中国) vs. 菅谷 裕信(千葉)

【観戦記事】 決勝:Xu Su(中国) vs. 菅谷 裕信(千葉)

By 矢吹 哲也

「マジックを長く続けていると、たまにこういうチャンスが来るんですよねえ」

 と、菅谷 裕信はそのキャリアを振り返るようにしみじみと口にした。長いマジック歴の中で、グランプリ・トップ8入賞は1回の優勝を含めてこれで5回目。十分な実績を持つベテラン・プレイヤーは、風格を感じさせる姿で対戦相手を待つ......と思いきや、どうやら緊張している様子だ。

 ここでの勝利は、彼にとって大きな意味がある。

 今シーズン、グランプリ・シドニー2015で5位の成績を収めた菅谷は、プロツアー『ゲートウォッチの誓い』への参加と合わせて現在プロ・ポイント7点。この最終戦を制し今大会の優勝を勝ち取ればここに8点が加算され、15点。そして今大会のトップ8入賞により参加権を得たプロツアー『異界月』への参加で18点。来シーズンのプロ・プレイヤーズ・クラブ「シルバー」レベルの条件を満たし、さらなるプロツアー出場の機会が得られるのだ。

 気づけば長いキャリアを持ち、「ベテラン」、「古豪」と呼ばれるようになっても、菅谷のマジックへの熱意に衰えはない。大きなチャンスを前に緊張するのはその証拠だ。

 やがて、対戦相手となる中国のシュイ・スー/Xu Suが、その背に大きな後押しをふたつ受けて菅谷の前に現れた。

 ひとつは、開催地出身プレイヤーとしての威信。栄光のトップ8、その8つの席を海外からやって来たプレイヤーたちに5つも占められた。だがスーは勝利を重ね、地元コミュニティにトロフィーを掲げた姿を見せられるまであと1勝のところに来ている。

 もうひとつは、グランプリ・上海2014での雪辱。あのとき逃したグランプリ・タイトルが、今、目の前にある。

 勝ちたい気持ちのぶつかり合い。これぞ競技の世界。

 ありったけの想いを込めて、両者は手を握り合う。

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ゲーム展開

 両者キープで最終決戦が開幕した。菅谷は《燃えさし眼の狼/Ember-Eye Wolf(SOI)》で戦端を開き、スーも《グール呼びの共犯者/Ghoulcaller's Accomplice(SOI)》、《親切な余所者/Kindly Stranger(SOI)》で応戦。3ターン目にして《ステンシア仮面舞踏会/Stensia Masquerade(SOI)》を貼った菅谷は《ヴォルダーレンの決闘者/Voldaren Duelist(SOI)》を加えて攻勢に出る。

 その返しのターン、スーが《永遠の見守り/Always Watching(SOI)》を繰り出すが、菅谷は強化された《ヴォルダーレンの決闘者/Voldaren Duelist(SOI)》と《燃えさし眼の狼/Ember-Eye Wolf(SOI)》を戦闘へ送り込み、《燃えさし眼の狼/Ember-Eye Wolf(SOI)》の能力を2回起動して一挙9点。これで残りライフを6点まで減じたスーだが、こちらも反撃で菅谷のライフを同じく残り6点まで追い詰めた。スーはさらに《グール呼びの共犯者/Ghoulcaller's Accomplice(SOI)》の追加と《ファルケンラスの後継者/Heir of Falkenrath(SOI)》で盤面を固める。

 物量で劣る菅谷はそれでも臆せず攻撃に向かった。ここでスーはクリーチャーを失うことを嫌ったか、《燃えさし眼の狼/Ember-Eye Wolf(SOI)》の攻撃を通す決断を下した。菅谷の土地は5枚。パワー強化の能力は2回までしか使えず、ライフは残る計算だ――だがこの判断が、菅谷に勝機をもたらした。菅谷は《燃えさし眼の狼/Ember-Eye Wolf(SOI)》の能力を2回起動し、残った赤マナひとつで《アドレナリン作用/Rush of Adrenaline(SOI)》を放ったのだった。


一瞬の隙を突き、1ゲーム目を勝ち取った菅谷。

 あと1勝――それを意識したのか、サイドボーディングに入った菅谷はまるでグランプリ・トップ8の舞台が初めてであるかのように緊張した。手は震え、息は荒く、忙しなくカードを交換する彼の姿は、彼の操るデッキに満載された吸血鬼の狂気が乗り移ったかのようだ。それでも彼は自分を見失わない。シャッフル後、続くゲームの初手を持つと戦いに集中する。

 2ゲーム目、スーは初手の7枚を見るなりマリガンを宣言。菅谷は7枚の手札をキープし、スーのマリガンを見守る。

 6枚でキープしたスーが《精神病棟の訪問者/Asylum Visitor(SOI)》、《遠沼の亡霊/Farbog Revenant(SOI)》で盤面を作り、対する菅谷は《苛虐な魔道士/Sanguinary Mage(SOI)》、《吸血貴族/Vampire Noble(SOI)》と吸血鬼を展開していく。

 スーは2体のクリーチャーで攻撃後、《収穫の手/Harvest Hand(SOI)》を追加。菅谷が《両手撃ち/Dual Shot(SOI)》で《精神病棟の訪問者/Asylum Visitor(SOI)》を退場させたが、スーは《灰口の雄馬/Stallion of Ashmouth(SOI)》を展開し、菅谷の攻撃に備えた。菅谷は《吸血貴族/Vampire Noble(SOI)》を盤面に追加し、《ステンシア仮面舞踏会/Stensia Masquerade(SOI)》を繰り出すと猛攻撃を開始した。攻撃を通して一回りサイズを上げた《吸血貴族/Vampire Noble(SOI)》に、スーは《粗暴者の貶め/Humble the Brute(SOI)》を差し向けた。

 菅谷は《ヴォルダーレンの決闘者/Voldaren Duelist(SOI)》を繰り出し、攻撃を続ける。これで3点のダメージが通り、スーのライフは残り9点。スーはさらに除去を撃ち込むと、猛然と反撃に出た。これをすべてスルーした菅谷のライフも、残りひと桁に。


自国の応援をその背に受け、グランプリ・上海2014での雪辱を果たすべく奮戦するスー。

 空いた盤面に全軍で攻め込む菅谷。スーは満を持して《執念/Tenacity(SOI)》を放つ。

 菅谷はそれに対応して《傲慢な新生子/Insolent Neonate(SOI)》を生け贄に捧げ、《殺人衝動/Murderous Compulsion(SOI)》を「マッドネス」で唱えた。残るクリーチャーが《執念/Tenacity(SOI)》によりアンタップし、ダブル・ブロックに向かってくると、それも《放たれた怒り/Uncaged Fury(SOI)》で一掃する!

 スーはドロー後、墓地の《グール呼びの共犯者/Ghoulcaller's Accomplice(SOI)》からゾンビを生み出しターンを渡した。菅谷は+1/+1カウンターを乗せた《苛虐な魔道士/Sanguinary Mage(SOI)》で攻撃。

 スーは《呪われた魔女/Accursed Witch(SOI)》を引き込んだが、これでは菅谷の吸血鬼軍団を止められない。

 菅谷はさらに《ヴォルダーレンの決闘者/Voldaren Duelist(SOI)》を加え、攻撃。

 ついに追い詰められたスーは、最後のドローに望みをかけ――

 右手を、伸ばした。


菅谷 2-0 スー

 菅谷の狂気は歓喜に変わった。

 長年にわたりマジックをやっていて過去に幾度となく結果を出しても、嬉しいものは嬉しい。こうして2度目のグランプリ優勝に加えてプロ・プレイヤーズ・クラブ「シルバー」レベルを達成した菅谷の目の前に、プロツアーの舞台が一気に開けた。

 この試合、まるで初めてのグランプリ・トップ8かのように緊張していた菅谷は、まるで初めてのグランプリ優勝かのように笑顔を溢れさせ、興奮した様子でしゃべり、仲間たちと喜びを分かちあう。

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 8年間。前回のグランプリ優勝から長い時を経て、マジックは再び彼に新鮮な緊張感と興奮と、そして大きな喜びをもたらした。菅谷がプレイを続けチャンスを待っていたように、マジックも待っていたのかもしれない。このひとりのベテランが、再び最高の笑顔を見せてくれるそのときを。

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 トップ8入賞時、菅谷は右手を開いてカメラに向けた。5本の指は、5度目のグランプリ・トップ8。そして大きく開いたその手には今――

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 8年ぶりのグランプリ優勝トロフィーが収められている。

菅谷 裕信、グランプリ・北京2016優勝おめでとう!

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